第4章 ティーム保育に見る教師の協働性と若手教師の育成
第3節 教師間の共通理解
Ⅰ.教師間の共通理解から見た教師集団の特徴
前節では、筆者を含む計4名の保育関係者の検討によって、教師間の共通理解の具体的な 内容として、15項目が抽出されたことを示した。それでは、それら15項目の具体的な構造 がどのようなものであるかを探ってみよう。
Ⅱ.方法
1.調査の協力者・方法・期間・倫理的配慮
岡山県内の公立・私立幼稚園で勤務する教師に対する質問紙調査を行った。調査の協力者、
方法、期間、倫理的配慮等に関する説明は、第1章第3節(本論の48~50頁)で述べた通 りである。
2.調査内容
ここでは、3つの質問項目に対する回答について扱った。第1は、「下記の1~15は、テ ィーム保育を実践する上で「ティーム内の保育者で共通理解すべきこと」を示しています。
現在のあなた自身にとっての優先度(あなたはどの程度、共通理解する事として優先してい るか?)、達成度(あなたはどの程度、実践で共通理解できているか?)について、当ては まる数字(1~7)に◯をつけてください」という項目である。被調査者の回答方法は、下 記の通りである。
共通理解の優先度:「非常に優先している」「優先している」「やや優先している」「どちら とも言えない」「やや優先していない」「優先していない」「全く優先していない」の7段階 評定(7~1点)による得点化
共通理解の達成度:「非常に共通理解できている」「共通理解できている」「やや共通理解 できている」「どちらとも言えない」「やや共通理解できていない」「共通理解できていない」
「全く共通理解できていない」の7段階評定(7~1点)による得点化
第2は、「0~100までの得点で自己評価し、ご記入ください」「あなた自身のこれまでの ティーム保育実践度は?」という項目である。被調査者の回答方法は、0~100の数字での
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回答である。本節では、ティーム保育経験度と表記した。
第3は、「0~100までの得点で自己評価し、ご記入ください」「あなた自身の他教師と協 働する能力は?」という項目である。被調査者の回答方法は、0~100の数字での回答であ る。本節では、他教師との協働力と表記した。
3.分析方法
統計分析ソフトである「IBM SPSS Statistics 24」を使用した量的分析を行った。
Ⅲ.各種分析に基づく教師集団の特徴の解明
1.教師間の共通理解に関する 15 項目の重み付け
教師間の共通理解に関する15項目は、優先度や達成度の観点からどのような重み付けや 順序付けがされているのであろうか。15 項目のどの項目が上位に位置付けられ、どの項目 が下位に位置付けられているかを、15項目間の比較によって明らかにする。
そこで、共通理解の優先度に関する15項目について、教師による7段階評定(7~1点)
による得点を集計し、各項目の平均点に差はあるかを検証した。同じように、共通理解の達 成度に関する15項目についても、各項目の平均点の差を検証した。具体的には、回答の平 均点と標準偏差を算出したところ、表1・2が示された。そして、独立変数を教師間の共通 理解に関する項目、従属変数を共通理解の優先度とする対応のある1要因の分散分析を行 った。また、独立変数を教師間の共通理解に関する項目、従属変数を共通理解の達成度とす る対応のある1要因の分散分析を行った。Mauchly の球面性検定の結果が有意であったた め、Greenhouse-Geisserのεによる修正からF値を算出し、有意確率を判断したところ、
統計的に有意な主効果が認められた(共通理解の優先度:F(9.99, 5604.03)=74.82, p<.01,共通 理解の達成度:F(10.08, 5653.71)=70.84, p<.01)。Bonferroni法による多重比較の結果、15項 目の間に表1・2に示す有意な差が見られた。表1・2では、15 項目の中で得点の高いも の、すなわち共通理解の優先度あるいは達成度として高く位置付けられているものから順 番に並べた。
その結果、次に示す内容が明らかになった。第1に、「5 子ども一人一人の基礎情報(家 庭環境・健康状態・アレルギー等)」「6 子ども一人一人の発達過程、特性、実態、課題」と いった、幼児に関する基本的かつ重要な情報は、教師間の共通理解において上位に位置付け
第4章 第3節
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表1.共通理解の優先度に関する 15 項目の平均値と標準偏差及び分散分析による多重比較の結果
表2.共通理解の達成度に関する 15 項目の平均値と標準偏差及び分散分析による多重比較の結果
5 6 7 9 4 10 12 3 1 11 13 2 14 15 8
5 子ども一人一人の基礎情報(家庭環 境・健康状態・アレルギー等)
M=6.24
(SD= .85) n.s. > > > > > > > > > > > > >
6 子ども一人一人の発達過程、特性、実 態、課題
6.14
(.79) > > > > > > > > > > > > >
7 子ども一人一人に適した援助 6.03
(.84) > > > > > > > > > > > >
9 保護者からの連絡事項 5.88
(.89) n.s. n.s. n.s. > > > > > > > >
4 対象集団(学級・学年等)の実態 5.88
(.84) n.s. n.s. > > > > > > > >
10 保育のねらい 5.76
(.85) n.s. n.s. n.s. > > > > > >
12 保育をする上での注意事項や配慮 5.75
(.84) n.s. n.s. > > > > > >
3 子ども一人一人の重点目標 5.71
(.94) n.s. n.s. n.s. > > > >
1 園の教育目標(教育方針) 5.67
(1.00) n.s. n.s. > > > >
11 保育の流れや時間配分 5.59
(.90) n.s. n.s. n.s. n.s. >
13 保育の内容や指導方法 5.57
(.87) n.s. n.s. > >
2 学級の教育目標 5.53
(.97) n.s. n.s. >
14 保育の役割分担 5.48
(.97) n.s. n.s.
15 保育観の共有 5.43
(1.04) n.s.
8 子ども一人一人の家庭での様子 5.34 (1.01)
5 6 9 1 4 11 12 7 14 10 13 3 2 15 8
5 子ども一人一人の基礎情報(家庭環 境・健康状態・アレルギー等)
M=5.82
(SD= .91) > > > > > > > > > > > > > >
6 子ども一人一人の発達過程、特性、実 態、課題
5.46
(.83) n.s. n.s. n.s. > > > > > > > > > >
9 保護者からの連絡事項 5.44
(.95) n.s. n.s. n.s. n.s. > > > > > > > >
1 園の教育目標(教育方針) 5.39
(.99) n.s. n.s. n.s. > > > > > > > >
4 対象集団(学級・学年等)の実態 5.37
(.85) n.s. n.s. > > > > > > > >
11 保育の流れや時間配分 5.30
(.94) n.s. n.s. n.s. > > > > > >
12 保育をする上での注意事項や配慮 5.30
(.93) n.s. n.s. > > > > > >
7 子ども一人一人に適した援助 5.21
(.87) n.s. n.s. > > > > >
14 保育の役割分担 5.18
(.96) n.s. > > > > >
10 保育のねらい 5.14
(.95) n.s. > > > >
13 保育の内容や指導方法 5.04
(.93) n.s. n.s. > >
3 子ども一人一人の重点目標 4.95
(.96) n.s. n.s. n.s.
2 学級の教育目標 4.93
(1.00) n.s. n.s.
15 保育観の共有 4.90
(1.05) n.s.
8 子ども一人一人の家庭での様子 4.88 (1.00)
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られていた。特に、「5 子ども一人一人の基礎情報(家庭環境・健康状態・アレルギー等)」 は、共通理解の達成度において他よりも格段に高く、実際に共通理解を達成できたと教師が 自認している状況が見られる。幼児に関する基礎情報として、例えば健康状態を挙げてみて も、近年はアレルギー等も多種多様であり、生命に関わる場合もあるため正確な情報を共有 しなければならず、共通理解の意識としても高くなると考えられる。また、「6 子ども一人 一人の発達過程、特性、実態、課題」に関しては、例えば、幼児一人一人に対するきめ細か な保育が、ティーム保育の意義の1つとして重要であり、また社会からの高いニーズでもあ る以上、幼児の発達や特性についての共通理解は、必然的に重要性が増すと考えられる。
第2に、「子どもに関する内容」の6項目において、「8 子ども一人一人の家庭での様子」
は、共通理解の内容として他と比べてかなり低く位置付けられていた。この質問紙調査は、
共通理解の項目間の比較による重み付けを論じているため、幼児の家庭での様子に対する 教師の認識そのものの重要性が劣ることを意味しないが、そうした家庭での様子を教師間 でやり取りすることは、共通理解の優先度・達成度として相対的に低い実態が明らかとなっ た。
2.教師間の共通理解の因子構造
教師間の共通理解に関する15項目に関する因子構造を検討してみよう。因子分析は、上 記の「共通理解の優先度」と「共通理解の達成度」のそれぞれで行い、両者の結果を踏まえ た総合的な判断として、教師間の共通理解の因子構造を捉えた。
(1)共通理解の優先度及び共通理解の達成度に関する因子分析
「共通理解の優先度」に関する因子構造について検討した。15項目の相関係数行列の固有 値の減衰状況とスクリー・プロットの形状から総合的に見て、単因子解を採用するのが適当 であると判断した。方法は、最尤法を用いた。表3に、因子負荷量、共通性、項目得点の平 均値と標準偏差を示す。累積分散説明率は39.3%、Cronbachのα係数は0.90である。
また、「共通理解の達成度」に関する因子構造について検討した。15項目の相関係数行列 の固有値の減衰状況とスクリー・プロットの形状から総合的に見て、単因子解を採用するの が適当であると判断した。方法は、最尤法を用いた。表4に、因子負荷量、共通性、項目得 点の平均値と標準偏差を示す。累積分散説明率は41.4%、Cronbachのα係数は0.91であ る。以上から、教師間の共通理解は、単因子構造で説明できると考えられる。
第4章 第3節
- 155 - 表3.「共通理解の優先度」に関する因子分析結果(最尤法)
表4.「共通理解の達成度」に関する因子分析結果(最尤法)
因子 共通性 M SD
7 子ども一人一人に適した援助 .732 .535 5.21 .871
13 保育の内容や指導方法 .720 .519 5.04 .930
10 保育のねらい .720 .518 5.14 .949
14 保育の役割分担 .711 .505 5.18 .965
15 保育観の共有 .708 .501 4.90 1.051
12 保育をする上での注意事項や配慮 .706 .498 5.30 .929
6 子ども一人一人の発達過程、特性、実態、課題 .663 .440 5.46 .833
8 子ども一人一人の家庭での様子 .615 .378 4.88 .998
11 保育の流れや時間配分 .611 .373 5.30 .943
4 対象集団(学級・学年等)の実態 .597 .356 5.37 .845
3 子ども一人一人の重点目標 .592 .351 4.95 .955
2 学級の教育目標 .582 .339 4.93 .996
5 子ども一人一人の基礎情報(家庭環境・健康状態・アレ
ルギー等) .534 .285 5.82 .912
9 保護者からの連絡事項 .508 .258 5.44 .948
1 園の教育目標(教育方針) .471 .222 5.39 .990
項目
因子 共通性 M SD
10 保育のねらい .728 .526 5.76 .853
13 保育の内容や指導方法 .717 .654 5.57 .871
7 子ども一人一人に適した援助 .684 .659 6.03 .844
8 子ども一人一人の家庭での様子 .680 .530 5.34 1.013
6 子ども一人一人の発達過程、特性、実態、課題 .677 .649 6.14 .795
12 保育をする上での注意事項や配慮 .674 .613 5.75 .836
15 保育観の共有 .640 .457 5.43 1.037
14 保育の役割分担 .632 .587 5.48 .974
9 保護者からの連絡事項 .592 .367 5.88 .889
3 子ども一人一人の重点目標 .588 .557 5.71 .945
4 対象集団(学級・学年等)の実態 .582 .363 5.88 .841
5 子ども一人一人の基礎情報(家庭環境・健康状態・アレ
ルギー等) .552 .341 6.24 .848
2 学級の教育目標 .551 .848 5.53 .974
11 保育の流れや時間配分 .548 .444 5.59 .898
1 園の教育目標(教育方針) .473 .364 5.67 .997
項目