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2.5 臨床に関する概括評価

2.5.3 臨床薬理に関する概括評価

2.5.3.3 特別な母集団における薬物動態及び薬力学的作用

2.5.3.3.1 腎機能障害患者

中等度腎機能障害を伴う国内の2型糖尿病患者を対象にカナグリフロジン100 mg又は200 mgを単回経口投与したとき(TA-7284-07試験),正常腎機能患者と比べ,中等度腎機能障害 患者では,いずれの投与量においてもカナグリフロジンの Cmaxに変化は認められなかった.

AUC0-∞は100 mg及び200 mgでそれぞれ約26%及び約22%上昇し,t1/2はわずかに延長し,

クリアランスの低下が認められた.また,国内の2型糖尿病患者及び健康成人を対象に実施 した母集団薬物動態解析において,推算糸球体ろ過量(以下,eGFR)低下に伴うクリアラン スの低下が示唆された[2.7.2.3.7].

海外の腎機能障害者(非2型糖尿病患者)を対象にカナグリフロジン200 mgを単回経口 投与したとき(DIA1003 試験),正常腎機能者に比べて,軽度,中等度及び高度腎機能障害 者におけるカナグリフロジンのCmaxはそれぞれ約27%,9%及び10%低下した.AUC0-∞では それぞれ約15%,29%及び53%高く,中等度腎機能障害者でのAUC0-∞の上昇の程度は日本人 と類似していた.末期腎不全者におけるAUC0-∞は透析前及び透析後共に正常腎機能者と同程 度であった.なお,カナグリフロジンの透析抽出比は 0.047 未満であり,カナグリフロジン は4時間の透析によりほとんど除去されなかった.

以上より,軽度,中等度及び高度腎機能障害者のカナグリフロジンの AUC の上昇は正常 腎機能者と比較して最大でも50%程度であること,カナグリフロジン200 mgを52週間投与 したときの安全性及び忍容性が確認されていることから,臨床用量である 100 mg投与にお いて,腎機能障害者では用量調節が必要となるような血漿中カナグリフロジン濃度の上昇は ないと考えられた.

中等度腎機能障害を伴う国内の2型糖尿病患者を対象に,カナグリフロジン100 mg又は

200 mgを単回経口投与したときの薬力学的作用に及ぼす影響について検討した(TA-7284-07

試験).中等度腎機能障害患者の UGE0-24hの増加量は正常腎機能患者の約 70%であった.一 方,24時間平均腎尿糖再吸収阻害率の平均値は,中等度腎機能障害患者で100 mg及び200 mg においてそれぞれ60.8%及び66.5%,正常腎機能患者ではそれぞれ47.8%及び52.7%であり,

中等度腎機能障害患者においては正常腎機能患者と同等以上の腎尿糖再吸収の阻害作用が確 認された.

海外の腎機能障害者(非2型糖尿病患者)を対象に,カナグリフロジン200 mgを単回経 口投与したとき(DIA1003 試験),軽度,中等度及び高度のいずれの腎機能障害者において

もUGE0-24hは投与前値に対して増加したが,増加量は腎機能低下に伴い減少した.

以上より,カナグリフロジン投与による UGE 増加作用は腎機能低下に伴い低下すると考 えられた.中等度腎機能障害を伴う2型糖尿病患者では,100 mg以上の投与量では腎尿糖再 吸収が十分に阻害されているものの,UGE0-24hは正常腎機能患者と比べて約 30%低下するこ とが示された.

2.5.3.3.2 肝機能障害患者

海外の軽度及び中等度肝機能障害者を対象にカナグリフロジン 300 mg を単回経口投与し

たとき(DIA1013試験),正常肝機能者と比較したカナグリフロジンのCmaxは,軽度及び中

等度肝機能障害者においてそれぞれ 107.49%及び 95.79%,AUC0-∞はそれぞれ 109.57%及び

110.83%であった.このように,正常肝機能者に対する軽度及び中等度肝機能障害者の血漿

中カナグリフロジン濃度の変動は小さく,軽度及び中等度肝機能障害者において用量調節の 必要はないと考えられた.なお,高度肝機能障害者にカナグリフロジンを経口投与した際の 薬物動態は検討していない.

2.5.3.3.3 高齢者

国内の2型糖尿病患者及び健康成人を対象に実施した母集団薬物動態解析では,年齢は薬 物動態パラメータに対して有意な共変量ではなかった.また,国内の2型糖尿病患者を対象 に,カナグリフロジン(50 mg,100 mg,200 mg及び300 mg)を1日1回12週間反復経口 投与した用量設定試験(TA-7284-04試験)において,用量補正した血漿中カナグリフロジン のトラフ濃度と投与12週後の AUC0-2.17hを高齢者(65歳以上)と非高齢者(65歳未満)で 比較した.その結果,高齢者のトラフ濃度の平均値は非高齢者よりも約10~30%高い値を示 したが,AUC0-2.17hの平均値は同程度であった.

以上より,加齢はカナグリフロジンの薬物動態に臨床上意義のある影響を及ぼさず,高齢 者において用量調節が必要となるほどの血漿中カナグリフロジン濃度の変動はないと考えら れた.

2.5.3.3.4 性差

国内の2型糖尿病患者及び健康成人を対象に実施した母集団薬物動態解析では,男性と比 べ女性でセントラルコンパートメントの分布容積は10.9%低下することが示唆された.また,

国内の2型糖尿病患者を対象に,カナグリフロジン(50 mg,100 mg,200 mg及び300 mg)

を1日1回12週間反復経口投与した用量設定試験(TA-7284-04試験)において,用量補正 した血漿中カナグリフロジンのトラフ濃度と投与12週後のAUC0-2.17hを女性と男性で比較し た.その結果,AUC0-2.17hは男性に比べて女性で約20%高い値を示したが,トラフ濃度の平均 値はいずれの時点においても同程度であった.

以上より,性別による血漿中カナグリフロジン濃度の変動は小さく,性別による用量調節 の必要はないと考えられた.

2.5.3.3.5 遺伝子多型

海外の臨床第I,II及びIII相試験を統合し,UGTの遺伝子多型がカナグリフロジンの薬物 動態に与える影響を検討した.その結果,UGT1A9*3を有する被験者の定常状態における用 量補正したトラフ濃度は,UGT1A9*3を有しない被験者と比べ平均値で81%上昇した.しか しながら,UGT1A9*3 を有する被験者のトラフ濃度の 5~95 パーセンタイルの範囲は

UGT1A9*3を有しない被験者の5~95パーセンタイルの範囲内であった.

このように UGT1A9*3 アレルを有する被験者ではカナグリフロジンの血漿中トラフ濃度 の平均値は81%上昇したものの,そのばらつきの範囲はUGT1A9*3を有しない被験者の範囲 内であった.また,カナグリフロジン200 mgを52週間投与したときの安全性及び忍容性が 確認されていることから,臨床用量である100 mg 投与において,用量調節の必要はないと 考えられた.

2.5.3.3.6 小児

小児にカナグリフロジンを経口投与した経験はない.