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熱伝導解析の定式化

第 3 章 時間依存解析モデルの定式化と検証

3.2 若材齢挙動のモデル化

3.2.4 応力・クリープ解析フローと有限要素定式化

3.2.4.2 熱伝導解析の定式化

図-3.4に基づくシミュレーションを行う場合,線膨張係数,温度ひずみ,自己収縮 ひずみおよび弾性係数を算出するために構造体に生じる温度分布の予測が必要となる。

そこで,応力・クリープ解析フローの出発点となる熱伝導解析について概説する。ここ では,熱伝導解析フローを示すと共に一般的な非定常熱伝導問題における有限要素定式 化について述べると共に,熱伝導解析における熱源として取り扱われるコンクリートの 水和発熱を断熱温度上昇曲線に基づきモデル化する手法について述べることとする。

非定常熱伝導問題の支配方程式は,物体内の熱伝導率があらゆる方向で一定である場 合,次式で表現される[3.15]。

𝜌𝑐

𝜕𝑇𝜕𝑡

= 𝜆 (

𝜕𝜕𝑥2𝑇2

+

𝜕𝜕𝑦2𝑇2

+

𝜕𝜕𝑧2𝑇2

) + 𝑄̇

(3.2.23)

ここで,𝜌は密度[kg/m3],𝑐は比熱[kJ/(kg・K)],𝑇は温度[K],𝜆は熱伝導率[W/(m・K)],

𝑄̇

は発熱率,𝜌𝑐は熱容量[kJ/m3]である。この熱伝導方程式を解くためには,初期温度𝑇0

[K]と次式で表現される熱流束𝑞 [W/m2]が必要である。

𝑞 = 𝛼

𝑐

(𝑇 − 𝑇

𝑐

)

(3.2.24) ここで,𝛼𝑐は熱伝達率[W/(m2・K)],𝑇は物体の境界面温度[K],𝑇𝑐は外部温度[K]である。

式(3.2.23)にガラーキン法を適用して整理することにより,解析対象全体の支配方程式 は次式のようになる。

[𝐾]{∅} + [𝐶] {

𝜕∅𝜕𝑡

} = {𝐹}

(3.2.25)

ここで,[K] は熱伝導マトリクス, [C] は熱容量マトリクス,{F}は熱流束ベクトル,

{∅}は全体の節点温度ベクトルであり,本式の右辺が発熱量と境界条件により構成され るベクトル量である。

図-3.5に熱伝導解析のフローを示す。熱伝導解析では,任意時間増分⊿tにおいて,

式(3.2.25)の節点温度⊿φを解く。本報では,熱伝導マトリクス[K]と熱容量マトリクス [C]は一定であると仮定した。

第3章 時間依存解析モデルの定式化と検証

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図-3.5 熱伝導解析フロー

開始

熱伝導マトリックス [K]

熱容量マトリックス [C]

時間増分 t

i

= t

i-1

+ Δt 境界条件の計算 {F

1

} 内部熱生成量の計算 {F

2

} [K]{Ø}+[C]{∂Ø/∂t} = {F} = {F

1

} + {F

2

} {Ø} :節点温度, {F} :熱流速ベクトル

直接時間積分

(陰的時間積分)

反復解法の選択

(例:ニュートンラプソン法)

収束判定

Q

i

= Q

i-1

+ ⊿Q, Ø

i

= Ø

i-1

+ ⊿Ø, t

e

, r t

i

t

final step

終了

Yes

No Yes

No

第3章 時間依存解析モデルの定式化と検証

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まず,任意の時間増分を選択し,それに応じて境界条件と内部発熱量を求める。内部 発熱量は,日本建築学会マスコンクリートの温度ひび割れ制御設計・施行指針(案)[3.3]

や HYMOSTRUC[3.16],CEMHYD3D[3.17],複合水和発熱モデル[3.18]および

CCBM[3.19]などの水和反応モデルに基づき予測される断熱温度上昇量を要素毎に与 えることで評価する。その後,一般化台形則を用いた直接時間積分と増分型反復手法を 選択し,指定した収束条件を満たせば,熱量𝑄,節点温度φ,有効材齢𝑡𝑒,反応度𝑟が保 存される。これを指定時間まで繰返して解析は終了となる。

断熱温度上昇曲線を用いて内部発熱量を求める場合,熱生成速度は平均熱生成速度と みなされる。Reinhardt & Blaauwendraadら[3.20]の手法を参考にして,次式に示す反 応度(dgree of reaction)に基づき整理する。この手法を用いたシミュレーションは,多く の研究者によりその有効性が検証されている[3.21]。

𝑟 = 𝑄(𝑡)/𝑄

𝑚𝑎𝑥

(3.2.26) ここで,𝑄𝑚𝑎𝑥は全水和熱,𝑄(𝑡) は時間𝑡までに生成される熱量であり,熱生成速度を積 分することで求められる。熱生成速度は反応度と温度の関数として次式により表現され る。

𝑞(𝑟, 𝑇) = 𝛼 ∙ 𝑞(𝑟) ∙ 𝑞(𝑇)

(3.2.27) ここで,𝛼は材料定数,𝑞(𝑟)は反応度の関数である。𝑞(𝑇)は温度の関数として次式によ り算出される。

𝑞(𝑇) = 𝑒𝑥𝑝 (−

𝑇𝑏

𝑘

)

(3.2.28) ここで,𝑏は材料定数(Arrhenius 定数),𝑇𝑘は絶対温度である。断熱温度上昇曲線を用い て内部発熱量を求める場合,𝑞(𝑟, 𝑡)は次式に示す平均熱生成速度𝑞̅とみなされる。

𝑞(𝑟, 𝑇) = 𝑞̅ =

𝐶∆𝑇∆𝑡

(3.2.29)

ここで,𝐶は熱容量,∆𝑡は選択した時間間隔,∆𝑇は当該時間間隔における温度上昇であ

る。実験値を用いて式(3.2.28)および式(3.2.29)から𝑞(𝑇)および𝑞(𝑟, 𝑇)が求められる。続 いて式(3.2.27)にこれらを代入すると未知量𝛼 ∙ 𝑞(𝑟)が求まる。さらに𝛼 ∙ 𝑞(𝑟)を基準化す

第3章 時間依存解析モデルの定式化と検証

- 43 - ることで𝑞(𝑟)が得られる。

この手法は,①ポルトランドセメントの基準化熱生成速度-反応度関係の誘導・定式 化と②その定式化に基づく断熱温度曲線を利用したコンクリートの基準化熱生成速度

-反応度関係の誘導に大別される。特徴は,初期反応度と呼ばれるパラメータが重要と なる。Reinhardt & Blaauwendraadらは以下の手順により初期反応度を定義している。ま ず,ポルトランドセメントの熱生成速度‐時間関係(図-3.6)を実験的に取得し,熱 生成速度-反応度関係(図-3.7)および最大熱生成速度-温度関係(図-3.8)を用い て,基準化熱生成速度-反応度関係(図-3.9)を誘導・定式化している。図-3.9 は 養生温度が異なっても,対象とした全てのセメントについて共通の関係が現れることが 示されている。続いて,コンクリートに対する図-3.9の関係が求まれば,コンクリー トの熱生成速度が求まると考え,実験的に取得したコンクリートの断熱温度曲線取得か ら平均熱性速度を求めることで(図-3.10),コンクリートの基準化熱生成速度-反応 度関係(図-3.11)が得られるとされている。

図-3.6 ポルトランドセメントの 熱生成速度-時間関係[3.18]

熱生成速度 q(W/g) 0.020

0.015 0.010 0.005

0 2 4 6 8 10 12

養生時間(時間)

40.5℃

32.2℃

23.9℃

セメント no.31

4.5℃

※養生温度

図-3.8 ポルトランドセメントの 最大熱生成速度-温度関係[3.18]

最大熱生成速度 qmax(W/g) 0.020

0.015 0.010 0.005

0 10 20 30 40 50

温度(℃) セメントno.11

25 31 43 16 18 24 41

図-3.7 ポルトランドセメントの 熱生成速度-反応度関係[3.18]

熱生成速度 q(W/g) 0.020

0.015 0.010 0.005

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 40.5℃

32.2℃

23.9℃

セメント no.31

4.5℃

※養生温度

反応度 r

図-3.9 ポルトランドセメントの 基準化熱生成速度-反応度関係[3.18]

0.5 1.0

0

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 反応度 r 基準化熱生成速度 q/qmax

第3章 時間依存解析モデルの定式化と検証

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図-3.11に示すように,この定式化では𝑟 = 0 時点で熱生成が生じており実現象と乖 離する。これは,断熱温度曲線から平均熱生成速度を求めたことにより,断熱温度曲線 の時刻0に対応する初期温度が反映されたためと考えられる。この手法では,r = 0に対

応するr’を初期反応度と定義し,r軸をr’軸に写像することで実現象との整合を図って

いる。Reinhardt & Blaauwendraadらが検討したコンクリート調合の範囲では,初期反応

度としてr’ = 0.1が推奨値として示されている。