第 4 章 若材齢・長期挙動による初期応力を考慮した高強度 RC 柱の短期挙動解析
4.4 数値解析手法の検証
4.4.9 仮想骨組を対象とした長期クリープ挙動の考察
本項では,これまで構築してきた解析モデルを用いて例題解析を実施する。とりわけ,
長期クリープ挙動に焦点を当て,構造物レベルでの挙動を定性的に把握することを目的 とする。その理由は,構形式によっては,柱の負担軸力の違いにより時間とともにクリ ープによる軸変形差が生じるため,柱間をつなぐ梁に過大な応力が生じることが懸念さ れるためである。図-4.38にその一例を示す。図は,セットバックを有し,上層部と 下層部が偏在して結合されているものであり,柱の軸縮量が大きくなる事例であろう。
本章の目的を達成するためにセットバックを有したモデル構造物を作成する。本章で は高層建物を想定しているが,高層建築物の設計は,時刻歴応答解析をはじめ,実験な どを通じて構造性能を把握しなくてはならない。しかし,高層建築物の設計自体が本章 の目的ではないため,詳細な設計は行わない。そこで,[4.24]および[4.25]を参考に,
図-4.39に示す仮想骨組を作成した。
柱が負担する軸力の違い 上層部と下層部
偏在して結合
収縮による
早期の斜めひび割れ
図-4.38 軸縮差が問題視される構造物の一例
第4章 若材齢・長期挙動による初期応力を考慮した高強度RC柱の短期解析
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図-4.40にFEM要素分割図を示す。コンクリート要素には,8節点のソリッド要素 を用いて離散化した。基礎および基礎梁は,剛体とした。また,鉄筋には埋め込み鉄筋 要素を用いた。
X Z Y
A B
①
②
全方向 自由度拘束 低軸力 高軸力
図-4.40 FEM 要素分割図 図-4.39 仮想骨組の概要
5.0m×29層
6.5m×3スパン
A B C
1 2 3 4 5 D
E
6.5m×4
5.0m×29
スラブ 柱・梁共通
主筋 補強筋 D41 D13
縦筋・横筋共通 D13
せん断余裕度
外柱:1.12 内柱:0.90 梁:1.17 断面寸法[mm]
柱:1100×1100 梁:650×900
A B C D
1 2 3 4 解析対象範囲
解析対象 範囲
第4章 若材齢・長期挙動による初期応力を考慮した高強度RC柱の短期解析
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本解析では,下層階に着目した1/4モデルを解析対象とした。フルモデルを解析対象と した場合,計算時間が膨大にかかる事が予想されるからである。また,構造物中で最も 高軸力が作用しクリープ変形が大きくなる下層階を抽出している。境界条件は,対象性 を考慮して図に示す対象面方向の自由度を拘束した。
解析手法は,3.3 節で述べた手法を採用する。本解析では,柱にのみ乾燥収縮とクリ ープを考慮し,他の部材は全て弾性体である。コンクリートの強度は,49[N/mm2]とし た。躯体は,材齢196日目に完成すると仮定し,軸力は,全層が完成した196日目に作 用させる。なお,低軸力柱と高軸力柱の軸力比は,各0.1と0.3である。軸力導入後,
約10年間時間経過解析を実施する。
図-4.41に低層部および高層部の材齢-柱軸ひずみ関係を示す。低層部に取り付く 柱には,約226[μ]が生じている。また.高層部に取り付く柱は,約780[μ]のひずみが 生じている。図-4.42に高さ方向のひずみ分布図を示す。高軸力側の柱が大きく縮ん でいることが分かる。軸力載荷時に-330[μ]であったひずみが,約10年後には-780[μ]
まで増加している。これにより,外柱や梁が高軸力側の柱に引張りを受け,変形してい ることが分かる。約10年後におけるA通り梁の部材角を算出したところ,約1/2500程 度となった。以上のことから,約10年後の予測として,特に,高層RC造建物の下層 階の長期クリープ挙動を確認したが,一方で,構造物の耐力等には影響はないと考えら れる。しかし,水平曲げ部材の撓みは,RC構造物の使用性能評価において重要な項目 であるため,十分な検討が必要である。
0 150 300 450 600 750 900
0 1000 2000 3000 4000
材齢(日)
弾性+クリープひずみ A1柱
A2柱
図-4.41 FEM 要素分割図
柱に生じる軸ひずみ[μ]
[日]
第4章 若材齢・長期挙動による初期応力を考慮した高強度RC柱の短期解析
- 126 - 軸力載荷時
-330[μ]
A2柱 A1柱
4000日目 -780[μ]
A1柱
A2柱
X Y Z
-750[μ]
0
図-4.42 高さ方向のひずみ分布図
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