定理14 ([68]) Tikhonov汎関数
(4.9) inf
f∈HK{αf2HK +d−L f2H} における極値関数 fd,α(p)はKL(p,q;α)を用いて
(4.10) fd,α(p)= (d,LKL(·,p;α))H
と表される. ここで,KL(p,q;α)はヒルベルト空間HK(L;α)の再生核で,これは正則な方 程式
(4.11) K˜(p,q;α)+ 1
α(LK˜q,LKp)H = 1
αK(p,q) の解K˜(p,q;α)として定まる. ここで,
K˜q = K˜(·,q;α)∈HK for q∈E, Kp = K(·,p) for p∈E.
(4.10)で,dが誤差や雑音を含むときには誤差評価が必要である. これについて
定理15 ([35],[25]). (4.10)において次の評価を得る:
|fd,α(p)| ≤ 1
√α
K(p,p)dH.
この定理は良い近似を得るためにはαを小さくとりたいが,それはデータの誤差dH の 関係で,制限を受けることを意味している. これは間違ったデータから真の解を得ること はできないから極めて自然なことを述べている. ここで,具体的な解法では予めαをどの くらいにとれば良いか,小さくとれる限界はどのようになるか等いろいろ難しいが,重 要な問題があっていろいろな方法が提案されている. いづれにしても,αをいくつか取っ て,対応する極値関数の様子を見ることが重要である.感覚的には,αを次第にゼロに近 づけていき,対応する極値関数がある関数に近づくさまを見て,逆にそれが乱れ出す前の αが,αの取れる限界と考えられる.([17],[20])を参照.
これらの具体的な応用,適用については参考文献を参照していただきたい. ([7,29-37,66-71]).
を考える. この表現が一般に初期条件u(x,0) = F(x)を満たす熱方程式 ut(x,t) = uxx(x,t) の解u(x,t)を与えるが、この積分変換は数理物理で極めて基本的で、医学などでも盛んに 問題にされている. 例えば[77]とその文献を参照.
n = 1のとき文献 [44]に2,3章の考えで, uF(x,t)の関数の特徴づけを関数の複素解 析性を用いて与え、それがもとで関数の解析接続に関する多くの具体的な公式が導かれ
([62]). それを用いると複素関数を用いる逆変換は簡単であるが、実数値のみを用いる逆
変換は複雑な公式になり、実軸上から関数の解析性を捉らえる必要がある. 例えばよく 知られている次の公式は 無限階数の微分を含んでおり実逆変換の困難性を良く示してい る: 有界な連続関数F に対してt =1のとき
e−D2[(L1F)(x)]=F(x) pointwisely on R
([26], p. 182). 5節の方法で再生核として全空間の Sobolev空間の再生核を用いて結構良
い解を[68,33]で得たが, 意外なことに[35]で,再生核ヒルベルト空間として強い条件を
持つ解析関数からなる Paley-Wiener空間を用いると各段によい結果が得られることが分 かった.
Paley-Wiener空間については Stenger[74]を参照、sampling theoryとして、膨大な文 献がある. この空間を近似関数に用いる方法はsinc methodと呼ばれている.
L2(Rn,(−π/h,+π/h)n),(h> 0)関数gのフーリエ変換 f(z)= 1
(2π)n
Rn
χh(t)g(t)e−iz·tdt
を考える. ここで、z=(z1,z2, ...,zn),t= (t1,t2, ...,tn),dt =dt1·dt2···dtn,z·t=z1t1+···+zntn
で(−π/h,+π/h)の特性関数χに対してχh(t)= Πnν=1χ(tν).像空間は再生核 Kh(z,u)= 1
(2π)n
Rn
χh(t)e−iz·te−iu·tdt = Πnν 1
π(zν−uν)sinπ
h(zν−uν)
を持ち、Paley-Wiener空間Whを成し、 各νに対して、ある定数Cνでzν→ ∞のとき
|f(z1, ...,zν,zν+1, ...,zn)| ≤Cνexp π|zν|
h
,
Rn
|f(x)|2dx< ∞
を満たす指数型の整関数からなる. このとき、更に、j= (j1, j2, ..., jn)∈ Zn に対して等式 1
(2π)n
Rn
|g(t)|2dt = hn
j
|f(jh)|2 =
Rn
|f(x)|2dx
が成り立つ. これは
f(x)=(f(·),Kh(·,x))HKh =hn
j
f(jh)Kh(jh,x)=
Rn
f(ξ)Kh(ξ,x)dξ
を意味し、全体 f(x) が離散点{f(jh)}j で表されることを意味する(sampling theorem).
{h j}j の有限個をとった場合の誤差評価については[23,45]を参照. この空間を用いると次 の定理が得られる:
定理16 ([35])任意のL2(Rn)関数gと任意のα >0に対して,
F∈HinfKh
αF2HKh +g−uF(·,t)2L2(Rn)
(5.2) =αF∗t,α,h,g2HKh +g−uF∗t,α,h,g(·,t)2L2(Rn)
の意味における最良近似関数Ft,α,h,g∗ が唯一つ存在して、それは (5.3) Ft,α,h,g∗ (x)=
Rn
g(ξ)Qt,α,h(ξ−x)dξ と表される. ここで、
Qt,α,h(ξ− x)= 1 (2π)n
Rn
χh(p)e−ip·(ξ−x)dp αe|p|2t +e−|p|2t .
HKh の関数F に対して、関数uF(x,t)を考え、gとして、uF(ξ,t)を考えれば、α→ 0の とき、一様に Ft,α,h,g∗ → F.
Sobolev空間のときには, α = 0 のとき、対応する(5.3)は存在しないが([68],[33]), 現在のPaley-Wiener 空間Wh の場合にはα = 0に対して、積分 (5.3) はそのまま存在す る. すなわち、 定理 16 で, 結果は α = 0 に対して成り立つ. すなわち、いまの場合、
Tikhonov正則化法は必要ないことが分かる.さらに、(LtFt,∗0,h,g)(x) = (g(·),Kh(·,x))L2(Rn)
から、(LtFt,0,h,g∗ )(x) は g の Paley-Wiener 空間 Wh 上への直交射影で, Ft,0,h,g∗ と g の差 LtFt,∗0,h,g−gL2(Rn)を評価できる. もちろんF∗t,0,h,g は任意のL2(R)関数gとWhの関数F に対する方程式LtF = gにおけるMoore-Penrose一般逆である.
Paley-Wiener空間Whを用いたとき,Tikhonov正則化法は不要であるが,Moore-Penrose の一般逆の構造は複雑であるからTikhonov正則化法の一般的な解Ft,α,h,g∗ を考えて,α= 0 を考えた方が良い.
Sobolev空間HS とPaley-Wiener空間Wh 何れの場合にもα→ 0とh →0における収 束性に興味があるが,数値実験では,30倍くらいh→ 0のときの収束の方が早くなって いる. 数値実験の例については論文[33,35]を参照. 一般のL2(R)関数gについて,誤差 評価が確立され,見かけ上再現が実証されているので,熱伝導における逆問題は一応の解 決に達したと考える.