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濯流培養を利用した肝臓シミュレータの開発

5.1濯流培養を利用した肝臓シミュレータ構築の意義

第3章において初代肝細胞のスフエロイドとよばれる組織体培養法を確立し, 第4章において静置培養 下のスフエロイド培養肝細胞は二次元状の単層培養肝細胞よりも高い薬物構造変換機能を維持でき, 生 体肝臓内の「薬物構造変換過程jや「薬物による酵素活性の変化」を評価できる肝臓シミュレータとし て有望であること を示した。 しかしながら, 肝臓シミュレータに求められる機能である「薬物の消失速 度」については, 静置培養下のスフエロイド肝細胞 であっても生体レベルを反映できるまでには至らな かった。 そこで, 生体肝臓内の薬物消失速度を培養肝細胞レベルで評価しようとする場合, 一つ一つの 培養肝細胞の薬物構造変換活性を生体レベルまで向上させることが必要である。 ここで, 静置培養条件 は培養液に流れがないため生休肝臓とは異なる培養環境である。 このため, 肝細胞の生存や機能維持に 必要な酸素や栄養物質の供給を十分にできない, あるいはPUFの構造上の特徴から多孔質内に蓄積する 肝細胞の代謝老廃物を十分に除去できないことが考えられる。

一方, 生体肝臓は, 複雑多11皮な機能を行う肝細胞が集合した組織体であり, 血液の流れのもとに細胞 と血液のあいだで様々な物質交換が行われている。 このため, 肝細胞の薬物構造変換機能を向上させる 肝臓シミュレータとしては, 細胞からある程度組織が再構築された培養法の利用と血流を考慮した培養 条件の利用が理想的であると考えられる。 すなわち, 培養環境を改善することによってスフエロイド肝 細胞の薬物構造変換機能をさらに向上させることが , 生体肝臓に近い薬物構造変換活性を有する肝臓シ ミュレータの開発につながる。 その方法として, 肝細胞と培養培地の問で良好な物質交換が行われるよ うにするために, 生体肝臓内のような生休流れを考慮した培養条件を構築することが有効であると忠わ れる。

5.2本章の目的

ある一定レベルの血中濃度を保たなけれ 生体内に取り込まれた薬物が薬理効果を発慢するためには

しかしながら, Fig. 5-2-1で示すように, 薬物は時間経過に伴って血中の薬物濃度が減少す ばならない。

る。 このような薬物濃度の減少は肝臓によって支配され, 各薬物によって減少傾向が異なることから 薬物の消失速度の評価は薬物治療において欠くことのできない評価項目である。

治療有効濃度

最低薬効発現濃度

ωm州鳴門廿吾容鰍

薬物投与後の時間

薬物投与後の血中濃度の時間推移

Fig. 5-2-1

培養肝細胞を利用した肝臓シミュレータによって生体肝臓内の薬物消失速度を評価する場合, 細胞当 生体に近い培養環境 りの薬物構造変換機能を生体に近い状態にすることが望ましい。 そこで本章では,

を与え肝細胞と培養培地の物質交換を良好にすればスフエロイド肝細胞の薬物構造変換機能が向上する と考え, 培養条件を静置培養法から濯流培養法に改善した培養装置を開発し, 培養条件の違いによる薬 物構造変換機能の比較を行った。

動物実験による肝臓内の薬物消失速度の評価にはラットとイヌが利用される。 イヌの場合, 薬物投与 ラットのような小動物の場合には,

後の定期的な血液のサンプリングによって消失速度が評価されるが,

これまでの研究から多くの薬物 外科的に摘出した肝臓を濯流する装置を用いて評価 されることが多く,

まず開発の第一歩としてラットの肝細胞を利用し においてその消失 速度が報告されている。 本章では ,

て研究を行うことにした 。 そこで, 少量のラット/スフエ ロイド肝細胞 を含んだ滋流培養装置を用いた 肝臓シミュレータによるモデル薬物の消失速度を測定し, 細胞当りの活性を生体肝臓と比較することで

89 シミュレータの可能性について検討した。

ここで, 生体肝臓の特徴を考えてみると, Fig. 5-2-2で示すように細胞層の問に血管が巧みに走ってい る基本構造の繰り返しである。 このため, 均一流路を設定した充填層型培養装置を利用することにより 生体肝臓に近い培養条件が確立できるものと思われる。 そこで, 井11鳴ら勺こよって報告されたPUFブロッ クに多数の細管を設けた多細管型PUFモジューlレ(Multi capillary PUF : MC-PUF packed-bed module)培養装 置を改良して利用することにした。

A

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I(IL �夜の流れ

肝動脈

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�一一肝細胞

‘←一一類洞

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4暖一一細胞外マトリックス

Fig. 5-2-2 肝臓の構造72) A;肝小葉の構造 B,肝小葉内の拡大図

5.3濯流培養を利用した肝臓シミュレータの開発と性能評価

5.3.1実験方法

5.3.1.1 培養装置

Fig.5-3-1に示す多細管型PUF(MC-PUF)充填層にラット/スフエロイド培養肝細胞を固定化したモジュー ルを利用した。 これは, 円柱状のPUFにドリルを用いて培地が流れる細管を三角配置状に多数開けた情 造になっている。

このモジュールは以下の特徴を有する。

( 1 )均ーな培地流路を確保できる。

( 2 )幾何形状が簡単であることから, PUFを加工しやすい。

( 3 )高い充填率を(79%)を達成できるため, 装置がコンパクトになる。

MC-PUF充填層モジュールを利用した培養装置をFig.5-3-2およびPhoto. 5-3-1に示した。 その基木構造 は, MC-PUF充填層内をシリコンチューブにより, ガス交換させた培養培地を循環させる方式である。

装置は, MC-PUF充填層, ガス交換器などから構成され, 培地の循環ラインにはシリコンチューブを利 用した。

また, 井l鳴ら2)の装置と違い, 循環ライン中に三方バルブを2ケ所取り付け 薬物注入およびサンプリ ングを行ったO

Hcìght of PUF Dìamcter of PUF Capìllary dìameter Capillary number PU F packing ratio

: 50 mm : 12 mm 1.5mm 14 79 %

肝細胞/スフエロイド

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