第 3 章 ラマン利得効率の分布測定方法の性能解析
3.2. ラマン利得効率の分布測定方法の性能解析
3.2.4. 測定距離分解能と測定可能距離の関係
図3-5は,実験によって得られたSNRと前節の計算によって得られたSNRを比較した結果 を示している.これより,両者は非常に良く一致しており,前節で述べた SNR 設計方法が 妥当であることが確認でき,これを用いて本測定方法の測定可能距離を推定することができ る.
図3-5. 計算および実験によって得られたSNRの比較 (a)L=25km (b)L=50km
10 20 30 40 50
10 20 30 40 50 60
0
(a)
L= 25 km
PCW
(L) = 7 dBm
PCW(L) = 3 dBm
PCW(L) = −3 dBm
MEASURED CALCULATED
SN R [dB]
POSITION [km]
10 20 30 40 50
10 20 30 40 50 60
0
(b) L = 50 km
PCW
(L) = 7 dBm
PCW
(L) = 3 dBm
MEASURED CALCULATED
SN R [dB]
POSITION [km]
それぞれ約20km,65km以上で所要のSNRを下回り,被測定光ファイバ全体を測定不可能 であることが分かる.これは,被測定光ファイバの光損失が大きいために,受光するCW光 強度およびラマン利得(すなわち,励起光であるパルス光強度)が小さくなるためである.
このように,本測定方法では,光ファイバの両端からそれぞれCW光,パルス光を入射する 構成であるため,被測定光ファイバの長さが測定可能距離に大きく影響することが分かる.
図3-7は,励起光であるパルス光のパルス幅を変化させた時の,被測定光ファイバの長さ と所要のSNRを満足する測定可能距離の関係を示している.図中のパルス幅W = 1,4およ び 10µs は,それぞれ測定距離分解能100m,400m,1000mに対応している.図中の直線A は,被測定光ファイバ全体を測定できることを意味している.従って,各測定距離分解能に おける最大測定可能距離は,図3-7に示す直線Aと曲線の交点で与えられる.この時の最大 測定可能距離をzmaxとすると,光検出器にAPDを用いた場合,測定距離分解能100m,400m, 1000mに対して,zmax = 85km,109m,123kmが得られる.これはそれぞれ,18.7dB,24.0dB,
27.1dBのダイナミックレンジに相当する.また,これよりも長い距離を測定する際には,図
3-6の曲線に従って測定可能距離が減少することが分かる.従って,zmaxよりも長い光ファイ バを測定する場合には,CW光,パルス光の入射光強度およびパルス幅を,調整することで 光ファイバ全体の測定が可能であることが分かる.
本測定方法における測定可能距離は,光ファイバの光損失特性,利得効率にも大きく依存
する.図3-8は,1.31µm帯零分散単一モード光ファイバ(SMF)で構成されている実際の光
ファイバ伝送路の典型的な光損失特性およびラマン利得効率の波長依存性を示している.実 用的観点から,分布ラマン増幅を適用するWDM光通信システムでは,様々な通信光の波長 に対するラマン利得効率を把握する必要がある.前章で述べたように,本測定方法は,CW 光の波長を変化させることで,ラマン利得効率の波長依存性を評価することが可能である.
このため,CW光の波長を変化させた時の測定可能距離を把握することが重要である.図3-9 は,図3-8の光ファイバの特性に基づいて計算したCW光の波長と最大測定可能距離zmaxの 関係を示している.なお,通信光波長帯としてC-bandおよびL-bandを想定した.また,CW 光の入射光強度,光検出器の効率,光サーキュレータおよび波長フィルタの透過率はこの波 長帯において一定と仮定した.図 3-9 より,L-band で最大測定可能距離は大きく減少し,
1625nmでは,1550nmと比較して約60%となることが分かる.以上のように,CW光の波長
を変化させた場合,図3-9に従って最大測定可能距離が制限されることが分かる.
図3-6. SNRの距離依存性
図3-7. 被測定光ファイバの長さと測定可能距離の関係
0 50 100
0 20 40 60
APD (M=20) PD (M=1)
SNR [dB]
POSITION [km]
SNR=5dB
L=40kmL=80km
L=120km
W=1µs
PP(0)=12dBm PCW(L)=7dBm
50 100 150 200
50 100 150 200
0
APD (M=20) PD (M=1)
MEASURABLE LENGTH [km]
FIBER LENGTH [km]
PP(0)=12dBm PCW(L)=7dBm
4µs10µs
4µs 10µs 1µs
W=1µs
A
図3-8. SMFで構成された既設光ファイバ伝送路の典型的な光損失特性およびラ マン利得効率の波長依存性
図3-9. 測定可能距離のCW光波長依存性
NORMALIZED MEASURABLE LENGTH
WAVELENGTH [nm]
1540 1560 1580 1600 1620 0.5
0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
P
P(0)=12dBm P
CW(L)=7dBm W=1µs
α
P=0.26dB/km APD(M=20)
C-BAND L-BAND
1540 1560 1580 1600 1620 0.20
0.21 0.22 0.23 0.24
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
OPTICAL LOSS α
CW[dB/k m ]
WAVELENGTH [nm]
R A M A N GAI N EFFICI ENCY [1 /W /km]
PUMP WAVELENGTH = 1450nm