第 5 章 分布ラマン増幅を用いた海底光通信システム用光ファイバケーブルの設計
5.4. 低損失海底光ファイバケーブルの試作および特性
前記検討結果より,図5-2に示す光ファイバCを用いて,約10 kmの長さを持つ海底光フ ァイバケーブルを試作し,ケーブル製造工程における光ファイバの諸特性の変化を測定した.
ケーブル構造,外観をそれぞれ図5-3,図5-4に示す.ケーブルは6本の光ファイバを実装 したユニットで構成され,ユニット部は樹脂埋めを施したタイト構造となっている.ケーブ
ル外径は22.5 mmであり,重量は0.9 kg/mであった.また,ケーブルカットオフ波長は1.35
〜1.44 µmであった.なお,海底光ファイバケーブルには,図5-4に示すように無外装ケー
ブルと鉄線を周囲に施した外装ケーブルがある.通常では,陸上に近い浅海部には外装ケー ブル,深海部には無外装ケーブルが用いられ,敷設場所や環境に応じて使い分けられる.
図5-5にケーブル製造工程毎に信号光および励起光の波長における光損失特性とラマン利 得効率を測定した結果を示す.これより,光ファイバ素線状態,集合(ユニット)化した状 態,ケーブル状態のいずれにおいても,光損失特性およびラマン利得効率の変化は非常に小 さく,安定な特性を維持していることが分かる.試作された海底光ファイバケーブルの信号 光および励起光の波長における光損失特性は実装した6本の平均でそれぞれ0.169 dB/kmと
0.195dB/kmであり,図5-2に示す条件を十分満足していることが分かる.またラマン利得特
性は6本のうち2本を測定し,平均で0.240 W-1km-1であった.
図5-6は信号光の波長における光損失特性の温度依存性を測定した結果を示している.測 定では,4 本の光ファイバを直列に接続し,海中の温度を想定した5〜30℃の範囲で温度を
図5-3. 試作した海底光ファイバケーブルの構造
COATED OPTICAL FIBER (OUTER DIAMETER: 0.25 µm) RESIN-COATED
OPTICAL FIBER UNIT
3-SECTION INNER STEEL PIPE STEEL WIRE
OUTER COPPER PIPE INSULATOR
JACKET
図5-4. ケーブル外観(左:無外装,右:外装)
図5-5. ケーブル製造工程における光損失特性およびラマン利得効率の変化
0.14 0.16 0.18 0.20 0.22 0.24 0.26 0.28
FIBER UNIT CABLE
0.30
0.16 0.18 0.20 0.22 0.24 0.26 0.28
OPTI CAL LO SS [dB/km] RAMAN G A IN E F FIC IE N CY [1/W/km ]
OPTICAL LOSS
RAMAN GAIN EFFICIENCY (NUMBER OF MEASURED FIBERS: 2)
1.55 µm 1.48 µm MAX.
MIN.
AVE. 6 FIBERS MEASURED LENGTH: 10 km
CABLING PROCESS
図5-6. 試作した海底光ファイバケーブルの光損失特性の温度依存性
TIME [HOUR]
LO SS CH ANGE [dB] TEMPERA T URE [ ° C]
0 25 50 75 100 125 150 175 -0.010
-0.005 0 0.005 0.010
0 10 20 30 40
LOSS CHANGE
TEMPERATURE MEASURED LENGTH: 39.2km
変化させて,その間の光損失変化を測定した.これより,光損失特性の変化は±0.002 dB/km 以下であり,非常に安定な特性を維持していることが分かる.励起光の波長における光損失 特性については,信号光の波長よりも短波長であり,温度変化によって生じる光ファイバの 曲げによる影響は小さいため,信号光の波長による光損失特性の変化よりも小さいと考える ことができる.また,ケーブル敷設時の光損失特性の変化については,Cの光ファイバと同 種の光ファイバを用いた海底光ファイバケーブルの敷設実験によって,約0.005dB/km 以下 であることが確認されている[5-4], [5-5].
以上の検討結果より,試作した海底光ファイバケーブルは,信号光および励起光の波長に おける光損失特性およびラマン利得効率の観点から,非常に安定な特性を有しており,遠隔 励起増幅方式を用いた最大約 370km の長距離無中継海底光通信システムが実現できること を確認した.
また,本章で述べた海底光ファイバケーブルは,図5-7に示すように,我が国の沖縄本島 と宮古島間の約330 kmの遠隔励起増幅方式を用いた無中継海底光通信システムに用いられ,
2005 年に運用が開始されている.このように,分布ラマン増幅を用いた長距離海底光ファ イバ伝送路の経済的な構築に寄与している[5-6].
図 5-7. 検討した海底光ファイバケーブルを用いた海底光通信システムのルート
(2005年4月導入)