第 2 章 ラマン利得効率の分布測定方法の提案
2.5. 後方散乱光を用いた光ファイバ片端からの測定
2.5.1. 測定原理
ここで,PPinは励起光(CW光)の入射光強度,αPは被測定光ファイバ長さ方向の励起光の 波長における光損失の平均値,Lは被測定光ファイバの長さを示す.
また,本測定方法においては,CW光の波長を1520nmから1580nmの範囲で5nm間隔に 変化させた.両測定方法を用いて得られた結果を比較して図 2-12 に示す.図中のプロット は,本測定方法で得られた結果を示しており,各種光ファイバの長さ方向にわたるラマン利 得効率の平均値を,CW光の波長1550nmの時の参照光ファイバのラマン利得効率で正規化 した値を示している.各種光ファイバのラマン利得効率は,また実線および破線は従来の測 定方法を用いて得られた結果を示している.これより両者は非常に良い一致をしており,本 測定方法が妥当であることが確認できる.
図2-14. 光ファイバ中のラマン相互作用
図2-13. 後方散乱光を用いたラマン利得効率の測定装置構成
SIGNAL PUMP
BACKWARD BACKWARD FORWARD FORWARD
RAMAN INTERACTION
Z
z z-vT/2 PUMP LD
SIGNAL LD
FIBERS UNDER TEST
0 L Z
PC
PD
AVERAGER COUPLER
CIRCULATOR
DISPLAY
REFERENCE FIBER
OPTICAL FILTER PULSED LIGHT
PULSED LIGHT
DELAY FIBER
される.ここでTは信号パルス対する遅延時間を示す.光速vを被測定光ファイバ内で一定 と仮定すると,図2-14に示すように,位置Z = zからの信号パルス光の後方散乱光は,−Z 方向に伝搬し,位置Z = z−vT/2において+Z方向に伝搬する励起パルス光との間で後方ラマ ン増幅される.増幅した信号パルス光の後方散乱光は位置Z = 0まで伝搬し,波長フィルタ を介して光検出器にて検出される.ここで波長フィルタは励起パルス光が発生するレイリー 後方散乱光およびフレネル反射光を除去するために使用される.ここで,励起パルス光があ る時と無い時において,受光される信号パルス光の後方散乱光強度Pon(z),Poff(z)はそれぞれ 次のように表される.
) 17 2 ( )
( )
( 2 exp )
( ) 0 ( )
( 0 ⎥⎦⎤ −
⎢⎣⎡−
=P R z W C
∫
z dz G zz
Pon S e S S z
α
S B( ) (0) ( ) exp 2 ( ) (2 18)
0 ⎥⎦⎤ −
⎢⎣⎡−
= S e S S
∫
z Soff z P R z W C z dz
P
α
ここで,PS(0)は信号パルス光の被測定光ファイバへの入射光強度,Re(z)は被測定光ファイバ の後方散乱係数,WSは信号パルス光のパルス幅,CSは信号光の波長における光部品(光カ プラ,光サーキュレータ,波長フィルタ)の透過率である.また,GB(z)はラマン利得であ り,式(2-17)を式(2-18)で割ることで得られる.この時,vT/2 ≤ z ≤ Lの範囲において,
) 19 2 2 (
exp 2 )
( 3 ⎥ −
⎦
⎢ ⎤
⎣
⎡ ⎟
⎠
⎜ ⎞
⎝⎛ −
⎟⎠
⎜ ⎞
⎝⎛ −
⋅
= vT
z vT P z h z
GB
γ
Pここで h3は位置に依存しない定数であり,励起パルス光のパルス幅に関係する値である.
γ(z−vT)およびPP(z−vT/2)は,位置z-vT/2におけるラマン利得効率および励起パルス光の光強 度を示す.ラマン利得GB(z)が位置vT/2だけ移動した位置のラマン利得効率および励起パル ス光の光強度を反映しているのは,励起パルス光が信号パルス光の入射時間からTだけ遅れ て入射するためである.式(2-19)より,ラマン利得 GB(z)は,励起パルス光の入射遅延時 間TによってvT/2だけ平行移動した波形が得られる.また,ラマン利得GB(z)は信号パルス 光の後方散乱光と励起パルス光との間が交差する位置において得られるため,ラマン利得 GB(z)の測定距離分解能は励起パルス光のパルス幅によって決定される.したがって,式
(2-19)より,ラマン利得効率γ(z)は0 ≤ z ≤ L− vT/2の範囲において,以下のように与えられ
る.
( )
) 20 2 ( )
( exp
) 0 (
2 / ) ln
(
0
−
⎥⎦⎤
⎢⎣⎡−
⋅
= +
∫
z PP B
dz z P
q
vT z z G
γ α
ここでPP(0)はZ = 0で入射した励起パルス光の光強度,αP(z)は励起光の波長における被測定 光ファイバの光損失を示す.被測定光ファイバの任意の一点Z = z0においてラマン利得効率 が既知であると仮定すると,式(2-20)は以下のように正規化される.
( )
(
/2)
exp ( ) (2 21)ln
) ( exp
2 / ln
) (
) (
0
0 0
0
0
−
⎥⎦⎤
⎢⎣⎡ +
⎥⎦⎤
⎢⎣⎡ +
=
∫
∫
z P B
z P B
dz z vT
z G
dz z vT
z G z
z
α α γ
γ
したがって,式(2-21)より,正規化ラマン利得効率は,ラマン利得分布と励起パルス光の 波長における損失分布から得られることが分かる.後者は,図 2-13 の装置構成において,
信号光源と波長フィルタを除けば容易に求めることができる.前節2.4で述べた相対測定方 法を用いて,ラマン利得効率が既知である光ファイバを参照光ファイバとして被測定光ファ イバに接続すれば,正規化したラマン利得効率の分布から真のラマン利得効率を得ることが できる.また参照光ファイバを用いることで,励起パルス光の入射光強度 Pp(0)を測定する ことなく,測定上の誤差を低減できる.以上のように,信号パルス光の入射時間に対して,
励起パルス光の入射時間に遅延を持たせ,信号パルス光の後方散乱光を解析することで,測 定装置を光ファイバの一端に集約してラマン利得効率の分布を測定することが可能である.