3 . 1 緒言
触媒反応特性が担持金属粒子径に大きく依存することは古くカか斗ら報告されており' その関係を議論するために種々の触媒調製法によつて粒子径が異なる触媒が調製され てきた印
とで金属表面積を増大させる効果だけではなく,触媒反応に最適な金属粒子径が存在 するからである.このように,構造敏感型反応において触媒性能を向上させるために は,担持された金属の粒子径を可能な限り精密に,かっ広範囲に制御することが必要 となる.しかし,第 1章で述べたように,従来の触媒調製法では,粒子径分布をシャ ーフヲこ保ったまま,金属粒子径を担持量と無関係に制御することは極めて難しい.
一方,本研究で提案した触媒調製法では,マイクロエマルション中で作製した超微 粒子を凝集させることなく無機担体に固定化できることを示した.つまり,液相中の 金属粒子の大きさを広範囲に,かつ精密に制御することができれば,目的とする触媒
を調製することが可能である.
マイクロエマルション中で作製する粒子の大きさの制御については,現在まで水と 界面活性剤のモル比 (w値)および内殻水相中に可溶化させた金属塩の濃度が有効な 因子として報告されている82‑88).しかし,これらの因子だけでは広範囲に金属粒子径を 変化させることができるとは言えない.さらに,これらの報告は界面活性剤および金 属塩濃度が非常に希薄な条件で検討されており,本研究で用いる濃厚系マイクロエマ ルション中での粒子径制御の研究例はほとんど見られない.また,マイクロエマルシ ヨン中で作製する金属粒子の大きさは経時変化があるため3 粒子径変化を動力学的に 詳細に検討した報告例も見られる94).しかし,本触媒調製法において微粒子径を精密 に制御するためには,粒子成長が無視できる準安定な粒子径と制御因子との関連を調 べることが重要である.
そこで本章では,液相中の微粒子径測定が容易な ZnS粒子を取り上げ,濃厚系マイ クロエマルションにおいて, ZnS粒子径に及ぼす種々の因子の影響を調べ,液相 ZnS 微粒子の安定化モデルおよびZnS粒子の粒子径制御法の構築を試みた.
49
3 . 2 実験
液相中での ZnS粒子の作製は, 2.2節と同様である.界面活性剤としては非イオン 性界面活性剤であるポリオキシエチレン (n=23) ドデシルエーテル (Brij35),アニオ ン性界面活性剤で、あるジ (2‑エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウム (AOT)お よびカチオン性界面活性剤であるセチルトリメチルアンモニウムクロリド (CTAC) を用いた.有機溶媒は炭素数 2から 10の直鎖アルコール,炭素数7から 12の直鎖炭 化水素,シクロヘキサンおよびイソオクタンを用いた.ZnS粒子原料には Zn(N03)2お
よび Na"Sを用いた.界面活性剤濃度は O.lMとした.特に断らない限り w値 は ふ 金
属塩濃度は, [Zn(N03)2]aq=5.0x10‑2Mおよび[Na2S]aq=2.5x10‑2Mとした.
また, 2.3節と同様に紫外可視吸光分析法を用いて,液相 ZnS粒子の大きさを測定 した.また,液相中の逆ミセルの内殻水相径測定には, X線小角散乱法を用いた.
3 . 3 結果および考察
3 . 3 . 1 ZnS 粒子径に及ぼす w 値および金属塩濃度の影響
マイクロエマルション中で作製する超微粒子の大きさを変化させるためには,通常 w値および内殻水相の金属塩濃度を変化させている.いずれの因子もミセル内のイオ ン数を変える変える因子であり, ZnSに類似した性質を持つと考えられる CdS粒子の 大きさの制御には,有効な因子であることが報告されている100).そこで,まず 2.3.1項 で述べた準安定な ZnS粒子径に及ぼす w値および金属塩水溶液濃度の影響について調 べた.ZnS粒子作製にはAOT/n‑ヘフ。タン系のマイクロエマルションを用いた.
w値を変えて ZnS粒子を作製した場合の準安定な ZnS粒子径の変化を Fig.3.1に示 す.また, 1.4節で述べたように,内殻水相径が生成する微粒子径に影響を及ぼしてい ることも考えられるため, X線小角散乱から求めた逆ミセルの内殻水相径を同図に示 す.ここで内殻水相径は以下のようにして求めた.内殻水相に Zn(N03)2のみを可溶化 させた w値の異なるマイクロエマルション溶液について SAXS測定を行い,得られた パターンを Guinierプロットし,直線部分の傾きから分散相の慣性半径を求めた.w値 と慣性半径の関係を用いて w値を 0に外挿した値,つまり全く水を可溶化させていな い状態の値から AOT分子の厚みを求めた.Guinierプロットから求めた分散相の大き さと AOT分子の厚みの差をとり,これを内殻水相径とした.得られた AOT分子の大 きさは 1.2nmであり, M. Adachiら150)の報告と良好な一致が見られた.この図から, ZnS
50
5
ZnS p a r t i c l e s i z e
waterpool s i z e
4。 。
3 2 εC
¥ω
一一Nω
o o e g m
玄
h ω N
一ω ω
一
υ
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10
8 62 4
w value
jーFigure 3 . 1 Change i n ZnS p a r t i c l e s i z e w i t h w value and waterpool s i z e .
AOTjn‑heptane , [AOηorg=0.1 M,
[ Zn(N03)2]aq=5.0x10
・2M ,[Na2S]aq=2.5x10
・2M
51
粒子径はw値が1.5から 3にかけて 3nmから 3.3nmと大きくなり, W値が 3以上では 粒子径に変化は見られなかった.また, ZnS粒子径と逆ミセルの内殻水相径との関係
も相関性が認められなかった.
次に,原料金属塩 (Zn(N03)1)の水溶液濃度,すなわち逆ミセル内における金属塩 濃度を変えて ZnS粒子を作製した.Zn(NO治水溶液濃度は 7.5x10‑2M,5.0x10‑2M およ び2.5x10‑2M とした.Na2S濃度は Zn2+/S2‑モル比が 2となるよう調整した.Zn(N03)2濃 度に対する ZnS粒子径の変化を Fig.3.2に示す.この図から,内殻水相の金属塩濃度 を変化させても, ZnS粒子径の変化はほとんど見られず, 3.3nm程度で一定であった.
検討した塩濃度範囲外では,塩濃度が低い場合,微粒子数が少なく吸光度が低いため 吸収端を同定することができなかった.また3 塩濃度が高い場合には,微粒子作製前 の溶液が白濁し, ZnS微粒子を作製することができなかった.
以上の実験結果についてミセル内のイオン数と ZnS粒子径の関係を Fig.3.3に示し た.ここでは AOT1分子が油水界面を占有する面積を 3.4x107dmmol‑1として計算した
l別 5η. この図から,ミセル内のイオン数を 100倍以上変化させても作製される ZnS粒 子の大きさの変化は小さいことがわかる.また,ミセル内のイオン数はいずれの場合 も平均 1個以下であり,作製された微粒子を構成するイオン数を概算すると,数 100
""'1000個であった.このことを考慮すると,ミセル内のイオン数が ZnS粒子径に大き な影響を及ぼしているとは考えにくい.以上の結果から,従来の制御因子では濃厚系 マイクロエマルション中の ZnS粒子の大きさを広範囲に変化させることは困難である ことがわかった.
3 . 3 . 2 ZnS 粒子径に及ぼす電位決定イオン比 ( [ Z n2 + ] a q/ [ S 2 ‑ ] a q ) の影
塑
ZnSのように水に難溶性の塩は,結晶を構成するイオンのうち,どちらかが溶液中 にわずかでも存在すると,それが結品表面に析出して界面電位を与える.このイオン をその固休に対する電位決定イオンという.H. Inoueら凶)はマイクロエマルションを 用いる ZnS粒子作製において,電位決定イオン比 ([Zn2+]a/[S2‑]aq)を変えることで
u v
吸収スペクトルの吸収端が変化することを報告している.そこで,準安定な ZnS粒子 径に及ぼす電位決定イオン比の影響を調べた.電位決定イオン比は 0.5,1および 2と
した.微粒子作製のためのマイクロエマルシヨンには,AOT/シクロヘキサン系,Brij35/1・
ヘキサノール系および CTAC/l‑ヘキサノール系を用いた.各界面活性剤を用いた場合 の準安定な ZnS粒子径と電位決定イオン比の関係を Fig.3.4に示す.この図から,各 マイクロエマルション系で電位決定イオン比を変化させることで, 0.2nm程度の変化
52
、
4.5
ε
c、、、 4 ω
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ιJ
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4L回 ‑圃.
の 0...
(c /) 3
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2.5
o
0.025 0.05 0.075 0.1 [Zn(N03)2]aqFigure 3.2 Change in ZnS particle size with concentration of aqueous solution of zinc nitrate. AOT/n‑heptane, [AOηorg=0.1 M, [Zn2+]aq/[S2‑]aq=2, w=6
5 3
ε
C. . .
̲
、
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4
3.5
3
2.5
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0.001 0.01 0.1
Zn2+ ions in a micell
Figure 3.3 Relationship between Zn2+ ions in a micell with ZnS particle size.
4
ミ ε 3 . 5
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3