第4章 インドネシア上水道セクターの我が国の協力実績と今後の方向性
1. 水道公社による上水道事業の現地調査結果
1.7.1. 概 要
対象地域人口は154万751人であり、その内、現在49万656 人に給水しており、同上水道施 設の生産能力は1,009 L/secとなっている。給水率は31.8%であり、顧客数は79,298ユニットであ る。
全職員数は417人であるが、常勤従業員数は336人である。その内、パートタイムなどの常勤職 員以外の従業員数は81人(19%)となっている。上水道事業に直接携わる職員数は200人(48%)、
間接部門(総務、管理、財務)は217人(52%)となっている。
1.7.2. 財務・経営
ビジネスプラン、財務改善アクションプランの現状
2005年まで“unhealthy”であったが、2006年より“healthy”となり財務状況は改善してきている。そ のため財務省のビジネスプランは提出する必要がなくなった。独自のビジネスプラン(財務状況含 む)も作成している。
過去には国際復興開発銀行(IBRD)からローンを借りていたが、その債務も全額返済し終わっ ている。
財務状況
事業収支をみると、水道事業収入(2008年)は849億ルピアであり、2007年の725億ルピアから 約17%の伸びとなっている。営業収入(水道収入+水道以外収入)全体では934億ルピアであり、
2007年より約16%増えている。
営業費用(直接費+間接費)(2008年)は741億ルピアであり、こちらも2007年より約10%の増 加となっている。公社全体の事業収支(減価償却費、利息費など含む)をみると、146億ルピアの黒 字で、2006年よりも全額で約2倍の大幅増となっている。売上利益率は15.7%と調査対象の水道 公社の中で最も高い値となっている。
直接費の内、約 50%がバルク水の購入にあてられており、特徴的である。電気費・燃料費は直 接費の14%、薬品費は1%を占めている。
2008 年における債務状況をみると、過去に国際復興開発銀行(IBRD)からの債務もあったもの の、現在は全額返済しており、長期負債はゼロとなっている。
付属資料1
長期負債比率20は 0%であり、資産負債比率21は 40.3%であり、総資産額に占める総負債額は 低く、調査対象水道公社の中でも安定しているといえる。流動資産負債比率22は 236.4%と調査し た水道公社の中では最も高く、短期的な資金繰りにも十分余裕があるといえる。
損益計算書、貸借対照表は次の通りである。
表 1-51 損益計算書
(million Rp)
2008 2007
事業収入
水道販売収入 84,961 72,520
新規接続収入 5,951 6,874
その他水道事業以外収入 2,495 925
計 93,407 80,319
直接費支出
人件費 19,641 17,658
電気および燃料費 10,459 9,274
薬品費 798 859
維持管理・資機材費 1,249 1,264
総務費 4,442 4,243
クレジット貯蓄 600 552
浄水 100 5,834
バルク水 36,792 27,482
計 74,080 67,166
事業総損益 19,327 13,153
利益・損失 1,312 314
その他収入 1,754 640
その他経費 442 326
その他損益 3,376 5,436
税引前事業純損益 14,639 7,403
項 目
表 1-52 貸借対照表
(million Rp)
2008 (予測) 2007
A-1 流動資産 29,074 17,792
A-2 固定資産 65,800 66,410
A-3 その他資産 11,307 6,152
A 総資産合計 106,181 90,354
B-1 流動負債 12,298 9,247
B-2 長期負債 0 0
B-3 その他負債 30,506 16,869
B-4 資本金 63,378 64,238
B 総負債・資本金合計 106,182 90,354
項 目
20 長期負債比率(長期負債総額÷資本金総額)
21 資産負債比率(総負債÷総資産)。負債が総資産に占める割合を示す。総資産に占める負債の割合が低いほど、
資本構成は安定していると言える。
22 流動負債(1年以内に返済すべき負債)を流動資産(短期間で換金可能な資産)がどの程度カバーしているかを 示す比率。この比率が高いほど、短期的な資金繰りに余裕があることを示す。流動比率が100%以下であれば、
短期的な支払のために、資本や長期負債が使用されていることになる。
付属資料1
水道料金と徴収の現状
4 年前に水道料金の改定が行なわれており、現在もその料金体系を使用している。一般世帯の 接続費用は110万ルピア/箇所であり、それ以外は業種によって200万、600万、800万ルピア/箇 所となっている。
顧客からの売掛金回収日数は49日であり、回収率は97%である。
1.7.3. 施設の運営維持管理
取水・浄水施設の運営維持管理の現状
水源は表流水からの計5箇所がある。設計給水能力は1,090L/秒であり、実際の稼動給水能力 は1,009L/秒となっており、稼働率は93%である。
特に大規模な浄水施設はないが、Wonorejo 取水施設には簡易的な沈殿処理と薬品(クロライ ト)注入する設備がある。Krian 浄水施設拡張(20L/sec→120L/sec)とそれにともなう新規水源開発
(Magetan Cannal川)は現在建設中であり、2009年10月に完了予定となっている。
外部からのバルク水に依存する割合が高いのが特徴的である。バルク水は、Taman Tira Sidarjo
(シンガポール)、Hanon Da Tirta Birasa(マレーシア)の会社から購入している。その内、1つはもと もとシドアルジョ水道公社の浄水施設だったが、当時効率的な運営ができなかったためフランスの 会社に売却し、いくつか所有者が代わって現在に至っているという背景がある。
表 1-53 取水施設リスト
実際の生産能力 (㎥/day)
1 Tawangsari 1 1995 River 47,520
2 Tawangsari 2 1998 River 23,760
3 Kedunguling 2008 River 4,752
4 Porong - River 1,426
5 Siwalanpanji - River 6,178
83,636 Total
No. 施設名 建設年次 水資源タイプ
送配水管網の運営維持管理の現状
全配水管路の約50%が老朽化している。旧オランダ植民地時代の1900年代初頭に建設された
送水管1.5kmがあり、内面の掃除を試みたがきれいにならなかった。将来的には更新したいが、そ
れによって水質に影響が出ているわけではないので、優先順位としては高くはない。
ただ水圧が上流のところと末端では10分の1以下に落ちているのが問題だが、原因を特定でき ていない。
付属資料1
無収水削減対策の現状
無収率は 34.6%(2007 年)であり、30%台へと低減することに成功している。その内訳は、技術
的問題に起因するものが約6割、違法接続によるものが約4割となっているが、訪問当日は技術部 門不在のため、正確な内容は分からないとの回答であった。
漏水対策チームを設置し、夜間点検などを行って漏水や違法接続を継続的にチェックしている。
またそれとは別に、計画的に年間8,000~10,000箇所の水道メーターを交換している。通常、4年 に一度を更新の目安としている。
表 1-54 無収水率の推移
2004 2005 2006 2007
無収水率(%) 40.0 % 40.6 % 40.3 % 34.6 %
水質管理の現状
水質検査は原水、処理前、処理後、給水栓の各工程で 27 項目について検査している。水源の 深井戸の内、一つは鉄、マンガンの含有量が高く、その処理にコストがかかっている。
運営維持管理上の問題点と原因
水道公社からの情報によると、乾季に水量と水質が不安定になってしまい、その対応に苦慮して いることが運営維持管理上の問題点としてあげられる。これは表流水をすべて水源としていること が影響している。
また、配水管路の約50%、オランダ時代の送水管の老朽化が問題として顕在化している。
しかしながら、水道公社としては現状を改善するというよりは、バルク水を含めた新しい水源と取 水の確保に重点を置いていく方針である。
1.7.4. 顧客サービス 顧客サービス
最近3年間の顧客数は、71,870接続(2006年)から79,298接続(2008年)へと10%の増加がみ られた。2008年現在、全顧客の構成は、一般住民が約 92%と大多数を占め、産業・商業などのビ ジネス関連が4.3%、貧困層が3.5%となっている。2015年には、現在の顧客数の約2.4倍にあた る18万8000接続と大幅な顧客数増加を目標としている。
付属資料1
1.7.5. 人材育成 人材育成の現状
年間の人材育成費は214億ルピアであり、予算の約4分の1をあてており、比較的積極的に取 り組んでいる。全職員数の約 7 分の 1(60 人)が 1 年間に何らかの訓練・研修に参加している。
USAIDからの支援を受けていることもあり、英語を話せるスタッフも数人いる。
1000顧客数当たりの従業員数は、4.95人/1000接続(2007年)となっている。
顧客からの苦情件数は年間500件であり、苦情内容としては、濁り、低い水圧、高い水道料金と 接続費、水道メーター検針員と料金徴収者の態度などが多い。
1.7.6. 今後の目標と投資計画
今後5年間の目標は次表の通りである。
表 1-55 今後 5 年間の目標
No. Target 2008 2009 2010 2011 2012
1 Current ratio 2.36 1.19 1.02 1.01 1.31
2 Waterworks Profit/Loss rate(%) 12.1% 17.8% 14.5% 13.1% 13.9%
3 Water loss level (%) 31.1% 35.0% 38.6% 43.4% 46.8%
4 No. of employee/ 1000 customers
4.81 4.72 4.69 4.51 4.34
5 Period of invoicing/ billing debts (days)
49 49 48 48 48
現在、稼動給水量は1,010L/secであるが、2013年には4,000L/secを目標に、7つの浄水施設の 拡張とバルク水の購入を計画している。2013年には750L/secのバルク水の購入を予定している。
Umblan Bulk Water プロジェクトは、既存の取水・浄水施設の代替案として考えている。水源の
一つである深井戸は鉄、マンガンの含有量が高く、処理コストも高いため、Umblan のほうが生産コ ストは安くなる。もしUmblanプロジェクトが実現すれば、水量の割当ては分からないが、深井戸から の取水量を少なくし、生産コストを下げることが可能となる。
一方、30%前半にまで改善した無収水率が、今後5年間の計画では47%まで悪化している。そ の理由については確認できなかったものの、老朽化した送配水管の更新・修繕よりは新規水源の 確保に重点を置いていく方針であることから、無収水低減の優先順位は高くない。言い換えれば、
水源に必ずしも恵まれていないシドアルジョ水道公社にとって、現在は外部のバルク水をやりくりし ているものの、将来的な新規水源の確保は喫緊の課題となっている。
付属資料1