第4章 インドネシア上水道セクターの我が国の協力実績と今後の方向性
1. 水道公社による上水道事業の現地調査結果
1.4.1. 概 要
対象地域人口は33万4,352人であり、給水人口10万6,222 人、給水率は31.8%である。顧客 に中低所得層が約80%を占めている。顧客数は32,401ユニットであり、同上水道施設の稼働給水 能力は376L/秒となっている。
全職員数は202人であるが、常勤従業員数は150人である。その内、上水道事業に携わる職員 数は69人(46%)、間接部門(総務、管理、財務)は73人(48%)、その他9人(6%)となっている。
組 織
水道公社は、本社の他に、4つの支店、5つの営業所をもっており、またオンラインでの料金引き 落としサービスも2008年より開始している。
1.4.2. 財務・経営
ビジネスプラン、財務改善アクションプランの現状
Karanganyar PDAMの財務性はずっと“healthy”であり、特に財務省政令No.120に沿ったビジネ スプランを提出する義務はなく、提出していない。2006、2007 年は設備投資を行なったため若干 利益は減少しているものの、財務体質そのものは基本的に悪くはないといえよう。
2006 年に財務省からの債務の全額返済が完了している。財務性が健全な理由として、1)1990 年代後半に大きい額の借入計画があった際に、為替変動が激しい状況であったこと、2)中央政府 に返済する利息が 12%と高かったこと、3)水道利用者の所得は高くないため、将来的な水道料金 の大幅な値上げも難しいこと、4)試算した結果では返済できる借入額ではなかったこと、5)そのた め、できるだけ借金しない事業経営を行なってきたこと、があげられる。
それでも借り入れた40億Rpは、利息やペナルティで3倍の返済額に膨れていた。
財務状況
事業収支をみると、水道事業収入(2008年)は120億ルピアであり、2007年の107億ルピアから
約12%の伸びとなっている。営業収入(水道収入+水道以外収入)全体では139億ルピアであり、
2006年より約11%増えている。
営業費用(直接費+間接費)(2008年)は123億ルピアであり、こちらも2007年より約11%の増 加となっている。公社全体の事業収支(減価償却費、利息費など含む)をみると、15 億ルピアの黒
付属資料1
字で、2007年よりも全額で約 5%の微増となっている。売上利益率は 11.3%と調査対象の水道公 社中で2番目に高い値となっている。
1㎥当たりの生産費は925ルピア/㎥となっており、調査対象の水道公社の中で2番目に低くな っている。直接費の内、取水費、水処理費、送配水費の割合は、おおよそ5:1:14となっており、送 配水に係る費用が全体の約70%と大きく、対照的に水処理費は約4%にすぎない。
2008年における債務状況をみると、長期負債はゼロであり、中央政府からの債務もない。
長期負債比率11は 0%と健全であり、これは長期負債がゼロであるためである。資産負債比率12 は19.0%であり、安定している。流動資産負債比率13は197.5%と高く、短期的な資金繰りにも十分 余力があるといえよう。
損益計算書、貸借対照表は次の通りである。
表 1-28 損益計算書
2008 2007
事業収入
水道事業収入 12,049,000,200 10,741,969,050 水道事業以外収入 1,814,933,540 1,765,966,442
計 13,863,933,740 12,507,935,492
事業支出
水源費 1,599,391,402 1,183,966,827
処理費 264,851,445 206,236,801
送水費 4,847,238,121 3,935,490,259
計 6,711,480,968 5,325,693,888
事業総損益 7,152,452,771 7,182,241,603 間接費(総務・事務費) 5,663,961,363 5,797,987,938 利益・損失 1,488,491,407 1,384,253,665 その他収入 73,963,339 109,238,820 その他経費 ▲ 601,000 ▲ 2,070,174 その他損益 73,362,339 107,168,645 税引前事業純損益 1,561,853,746 1,491,422,311
項 目
11 長期負債比率(長期負債総額÷資本金総額)
12 資産負債比率(総負債÷総資産)。負債が総資産に占める割合を示す。総資産に占める負債の割合が低いほど、
資本構成は安定していると言える。
13 流動負債(1年以内に返済すべき負債)を流動資産(短期間で換金可能な資産)がどの程度カバーしているかを 示す比率。この比率が高いほど、短期的な資金繰りに余裕があることを示す。流動比率が100%以下であれば、
短期的な支払のために、資本や長期負債が使用されていることになる。
付属資料1
表 1-29 貸借対照表
2008 2007
A-1 流動資産 4,037,450,313 4,982,885,182
A-2 固定資産 20,670,603,136 16,602,259,725
A-3 その他資産 5,336,417,887 6,250,640,052 A 総資産合計 30,044,471,337 27,835,784,959
B-1 流動負債 2,044,382,579 1,189,619,185
B-2 長期負債 0 0
B-3 その他負債 3,665,514,014 2,849,431,725
B-4 資本金 24,334,574,743 23,796,734,048
B 総負債・資本金合計 3,044,471,337 27,835,784,959 項 目
水道料金と徴収の現状
2007年のフルコストリカバリー率は既に 100%を超える 112.4%であり、フルコストリカバリーを達 成している。平均水道料金は1,661ルピア/㎥であり、調査対象の水道公社の中では2番目に低い 料金となっている。
2009年には水道料金の値上げを予定している。Directorによると、地方議会での水道料金の値 上げの承認は必ずしも難しくなく、ロビイングが大切との回答があった。
水道料金の回収率は91.3%(2006年)から93.2%(2008年)の2%増と徐々に改善されてきてい る。
財務・経営上の問題点と原因
財務的にはBPPSPAMによる評価は“healthy”であり、多くの水道公社のように特に大きな問題を 抱えていない。今後気になる点としては、上水道事業収入の伸び12%(2008年)に対して、上水道 事業支出はそれ以上の35%の増加(2008年)となっており、その動向を注視する必要がある。特に、
顧客構成をみると中低所得が約 80%、一般住民以外の産業・商業・事務所などの割合はわずか 数%を占めるに過ぎないため、過剰な水道料金の値上げや一般住民以外からの徴収による収入 増に多くは見込めない。
1.4.3. 施設の運営維持管理
取水・浄水施設の運営維持管理の現状
水源は泉が15箇所、深井戸12箇所の計27箇所ある。
Papahan の湧水池の水源が、雨季に濁度と鉄分の含有量が少し高くなるが、それ以外は基本的
に清浄水のため水処理をしていない。2007年には、鉄分の処理プラントを設置して対応している。
付属資料1
ソロなどの水道公社に比べると水源には恵まれているが、近年、主水源である湧水池の水量が 減少しており、WOSUSOKASプロジェクトによる水源の確保に大いに期待している。
送配水管網の運営維持管理の現状
管路全長は45万kmあるが、1981年にADBの援助で敷設された送水管14kmが老朽化して おり、水質の悪化がみられたが、その内の8kmは交換が終了している。
管路の破損・修繕は年平均2,000箇所であり、3名が毎日その業務に従事している。
無収水削減対策の現状
無収水率は2008年で22.3%と比較的低い値であるものの、2006年以降若干無収水率があがっ てきており、その原因は特定できていない。
表 1-30 無収水率の推移
2006 2007 2008
% % %
18.5 19.4 22.3
無収水低減のためのモニタリングと運転の効率化を行なっているが、特に漏水探知機を使用し た対策は行なっていない。違法接続については常時チェックしており、年間20-50件の違法接続を 摘発している。
水質管理の現状
水質検査は原水、処理前、処理後、給水栓の各工程で14項目について1日1回実施している。
Papahan の水源が乾季には鉄分、マンガンの含有量が大きくなること、ADB 支援の老朽化した管
路6kmによる水質悪化が問題となっている。
運営維持管理上の問題点と原因
一部老朽化した管路の更新と鉄分やマンガンの水質管理が運営維持管理上の一つの課題とし てあげられている。鉄分の除去については、2007 年に貯水槽に隣接して鉄分除去の設備を建設 しており、それによる水質の向上が期待されている。
付属資料1
1.4.4. 顧客サービス 顧客サービス
最近3年の顧客数は、29,181接続(2006年)から32,401接続(2008年)へと11%増加がみられ た。2008年現在、全顧客の内、一般住民が約94%と大多数を占めている。2015年には52,000顧 客へと顧客の増加を目指している。
表 1-31 顧客数の推移
顧客タイプ 2006 2007 2008 2015 一 般
一般以外(工業・商業他) 1,984 1,993 1,997
50,000 2,000 30,404
27,197 29,063
1000顧客数当たりの従業員数は、4.8人/1000接続(2007年)から、4.6人/1000接続(2008年)
へと若干減少する傾向にある。
顧客からの苦情件数は年間100-125件であり、水道メーター検針員/料金徴収員の態度、鉄分と マンガンの含有についてが多くなっている。
1.4.5. 人材育成 人材育成の現状
人材育成は重要視しており、年間10人程度は外部の訓練機関(大学、専門大学校など)に送っ ている。年間の人材育成費は50億Rpであり、予算の39%を充てて人材の育成を積極的に促進し ている。特にポンプ・オペレーターのスキル向上や電子パネル操作の知識などの訓練が必要とし ている。またWaterCADなどの活用能力を向上させるための訓練が必要と考えている。
1.4.6. 今後の目標と投資計画
今後5年間の目標は次表の通りである。
付属資料1
表 1-32 今後 5 年間の目標
(million Rp) 項 目 2009‐2013 1.Solo Raya都市圏バルク水給水事業 1,151,397
2.IKK給水事業 10,510
3.給配水管の整備プログラム 2,597
4.送水管修繕プログラム 4,047
5.深井戸開発プログラム 1,779
6.既存施設の拡張・修繕プログラム
- 浄水施設 5,498
‐配水施設 6,000
‐その他 6,998
1,188,955
老朽化した送配水管の更新・修繕や給水範囲の拡大のための給配水管の整備は、同水道公社 の重要な投資分野として計上されている。しかしながら、最も投資金額が大きい計画は Solo Raya バルク水供給事業(通称:WOSUSOKASプロジェクト)である。今後5年間で1兆1,500億ルピア の投資額を予定しているが、その全ては中央政府からの資金で賄う計画となっている。
<WOSUSOKASプロジェクト>
カラガンニャ水道公社のDirectorが、同プロジェクトの取りまとめ役として、各水道公社間の調整 も行なっている。
浄水施設の建設にあたっては、①上流に建設し、処理水を各水道公社が購入する、②各水道 公社が購入後、それぞれの浄水施設で処理する、の 2 案あるが、Director は個人的には①のほう がいいと考えている。例えば、浄水施設の建設費、運転費のコストが低くなること、処理した水を送 水したほうが管路が長持ちすること、水処理の薬品管理も一括のほうが手間がかからないこと、など のメリットがある。
各水道公社が購入するBulk Waterの価格については、各水道公社間でのさらなる調整が必要。
水道料金が、ソロ市では約1,700Rp/m3、カラガンニャ県では約1,100Rp/m3と異なるのでこうした点 は十分に考慮が必要だが、いづれにしても各PDAMが損をしない価格に設定することが重要。
地域住民の農業用水との兼ね合いに関して、乾季にはウオノギリダムの 18,000 m3/日が利用 可能であるが、農業用水に必要分は約6,000 m3/日であり、残りは上水道に使用可能。
また Cipta Karya がウオノギリダムの総合的水資源利用に関して大学や研究機関などの関係機
関と研究を進めているが、より効率的な農業の工夫(三期作→二期作への転換、休閑地の利用な ど)についての提言もその中に含まれている。