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インドネシアの上水道事業の課題と取り組み

ドキュメント内 インドネシア共和国 (ページ 53-77)

2-1 都市部の上水道事業の課題と取り組み 2-1-1 都市部の上水道事業の課題

「イ」国の都市部の上水道事業は、第1章で述べたように「開発資金の確保」が最重要課題となっ ている。一方、水道事業を担うPDAMにおいても、経営、財務、技術の面で多くの課題を抱えてお り、上水道セクターの資金調達のための金融システムの課題もあり、水道普及率がなかなか向上しな い要因となっている。

(1) PDAMの財務改善の課題

BPPSPAMによれば、2007年12月時点で全国の306のPDAMの内、健全な財務状況にあった

のは79であった。その後の2012年12月時点での集計では、328のPDAMの内、171のPDAM が健全な状況というように改善は見られてきているものの、未だ半数程度のPDAMの財務状況が 健全な状況になく、依然コスト・リカバリーと債務の返済が大きな課題となっている。

「イ」国政府では、インフラ財源の逼迫から、民間資金を活用したPPP事業の促進と、フルコ ストリカバリーを前提とした民間銀行からの資金調達を施設整備の基本方針としているが、多く のPDAMが債務を抱え、安い水道料金から経営が悪化し、民間銀行からの資金調達ができない状 況にあり、施設整備が出来ず、水道普及率が向上しないという悪循環に陥っている。

一方、「イ」国政府では、PDAMの債務を減免するため、「財務省の財政改善行動計画にかかる 政令(Pre-53/PB/2006)」、ならびに「財務省のPDAMの債務に関する政令(No.120/PMK.05/ 2008)」

(2012年にPMK No. 114/2012に改訂)を発令して、PDAMの財務改善を図ろうとしているが、

救済策が非元本債務の減免、元本債務返済のリスケジュールに留まり、財務改善に必要なPDAM の収入増に繋がる施設整備ための資金調達の手当てがないため、PDAMの財務改善が思うように 進んでいない状況にある。

(2) 上水道セクターの金融システムの課題 1) PDAMへの民間銀行からの融資保証制度

これまで民間銀行からPDAMへの融資に対するリスクヘッジの仕組みが未整備で、民間資金の 導入がほとんど図られていなかったが、政府が民間銀行からPDAMへの融資のリスクを保証する 新たなスキームを定めた「PDAMへの民間銀行融資に係る中央政府の債務保証と利子補助に関す る大統領令(No.29/2009)」を2009年6月23日に発布し、2009年8月1日から施行されている。

一方、民間銀行の融資の申請に当たっては、PDAMでは±7%の金利支払いと初期投資額の返済 を可能とするような収益性のあるプロジェクトの融資申請書類を民間銀行に提出する必要がある。

現行の水道料金体系では、支払利息や減価償却費を含まない運営維持管理費だけのコスト・リカ バリーのケースが多く、初期投資額まで返済可能な収益性のあるプロジェクトにするには、水道 料金をその水準まで改訂する必要がある。

また、小規模都市で地理的条件の悪い地域や貧困層居住区の水道施設整備等の収益性の低いプ

ロジェクトにおいては、このスキームの活用は難しく、民間銀行からの融資が受けられないPDAM については、中央政府からの補助金制度が依然必要な状況にある。

2) 財務省からPDAMへの貸付金利

低金利の海外借款に対し、財務省では1990年代から為替等のリスクヘッジとして、10%前後の 金利を上乗せして PDAMに 11~12%で貸し付けており、PDAM が現在抱える債務の返済を困難 にしているひとつの要因ともなっていた。

1998 年のアジア経済危機以降、これまで、財務省は対外債務削減のため新規の海外借款を

PDAM/地方政府に許可してこなかったが、2009 年 6 月に WB と 3 都市の上下水道整備事業

(UWSSP13)の融資に合意し、都市部の上水道事業における海外借款を再開している。

WBから財務省への貸付条件は、ドル建てで、金利はLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)であ る。財務省からPDAM/地方政府への貸付条件は、現在はLIBORが0.5%前後と低いため、ルピ ア建てで、LIBOR + 財務省の貸付金利は5.5%前後となっている。

(3) PDAMの水道事業経営上の課題

PDAMにおいては、顧客に対する水道サービスの改善と水道事業の採算性確保のために、解決 すべき多くの課題を抱えている。

事業経営・財務に係る課題 1) 安い水道料金:

水道料金改定の権限が首長にあり、インフレ等に伴う料金改定も政治的な判断から容易に改訂 が行われず、自然上昇によるコスト増と水道料金の据え置きがコスト・リカバリーを益々難しく している。

2) PDAM局長の権限の制約とあいまいな責任体制:

水道事業体のトップであるPDAM局長の日常的な業務執行は、裁量の余地が広く、必要な範囲 で自由度を広く取れることが、経営手腕を発揮出来る重要な要件であるが、現状においては首長 に従属的でかつその権限が制限されているため、PDAM局長の責任範囲があいまいで無責任体制 に陥りがちである。

3) 設備産業としての自覚の欠如(Asset managementの欠如):

上水道事業は施設の補修・更新を伴う設備産業であるが、設備産業に不可欠なAsset management

(施設建設後の経年劣化・老朽化に伴う必要な施設の補修・更新等)の自覚が欠如している。PDAM の会計に減価償却費が営業費用として計上されない慣行は、設備産業に不可欠な再投資資金の調 達必要性の自覚の欠如の現れであり、必要な水道料金の改定と相まって改善しなければならない 課題である。

4) 施設整備費を含むフルコストリカバリーの自覚の欠如:

PDAMの予算は、運営維持管理費と施設整備費に分離されており、施設整備費は中央政府/地 方政府の補助金で賄う慣行になっており、運営維持管理費だけを水道料金収入で賄っている。施

13 UWSSPの詳細は本報告書「第3章3-3世界銀行(WB)」参照。

設整備費を含むフルコストリカバリーの自覚の欠如とそれを許さない現行の安い水道料金体系が、

施設整備費を含むフルコストリカバリーが要求されるPPP事業において、大きな進展が図られな い要因となっている。

5) 低い料金徴収率:

請求した水道料金が100%徴収されてもコスト・リカバリーが十分できないPDAMにとって、

平均80%の料金徴収率が収入不足を更に深刻化させている。給水は通常未納料金が3ヶ月を経過

すると停止されることになっているが、料金徴収率を向上させるための工夫・努力が必要である。

技術的課題

1) 高い無収水率:

漏水、盗水、量水器の故障等による高い無収水率が経営を圧迫している。無収水率は全国平均

で約 40%~50%と推定されており、漏水探知の技術的向上の必要性が高いが、更に根本的な問題

として、地上に見える漏水の補修や故障量水器の交換に必要な予算が確保できないことが大きな 要因となっている。また、予算の制約から無収水率の正確な測定に不可欠なバルク流量計の設置 や、配水ブロック化のためのバルブの設置もなされていない。

2) 技術者の不足:

PDAMには水道施設の計画・設計・工事監理を行う技術者が不足している。IKKにおいても計 画・設計・工事監理を公共事業省の州事務所の担当職員がコンサルタントを雇用して行っており、

施設建設後の取水施設や浄水場等の不具合の補修や改善が、予算の制約だけでなく技術的にも出 来ない状況にある。

2-1-2 都市部の上水道事業の取り組み

「イ」国政府では、都市部の上水道事業の取り組みとして、水道普及率の向上とそれに伴う必要な PDAMの経営改善、財務省によるPDAMの債務救済、民間資金の活用(PPP事業)、水道普及率促進 のための給水管接続実績に応じた補助金(Water Hibah)、小規模都市を対象とした給水・衛生施設整 備プログラム(IKK)等を行っている。

(1) PDAMの経営の健全性の評価

PDAMの経営の健全性の評価は、2005年から毎年、BPP-SPAMがPDAMから独自にデータを 収集して行っている。評価は3段階で、健康(Healthy)、不健康(Unhealthy)、病気(Sick)とな っている。PDAMの経営の健全性の評価は、これまで財務、経営、技術分野の9項目の指標で評 価していたが、現在は、以下の財務・経営、サービス、オペレーション、人材各分野の18項目の 指標で評価している。(カッコ内は評価の重みづけ数値)

① 財務・経営分野(0.25):ROE(0.055)、営業比率(0.055)、支払準備率(0.055)、料金徴収率(0.055)、

支払い能力(0.03)

② サービス分野(0.25):普及率(0.05)、顧客増加(0.05)、顧客苦情処理率(0.025)、顧客給水栓での 水質(0.075)、家庭用水使用量(0.05)

③ オペレーション分野(0.35):生産効率(0.07)、無収水率(0.07)、給水時間(0.08)、給水圧(0.065)、

水道メーター交換(0.065)

④ 人材分野(0.15):1,000 給水接続栓当たりの従業員比率(0.07)、トレーニングを受けた職員の割 合(0.04)、人材開発コストの従業員コストにおける比率(0.04)

評価点は各分野の各項目を5段階評価し、各項目ごとの重みつけをして採点される。上記4つ の分野ごとの重みづけは、それぞれ0.25、0.25、0.35、0.15となっている。全分野の項目が満点の 場合で5点となる。評価点が2.8より高い場合は“Healthy”で、2.2~2.8では“Less Healthy”、2.2よ り低い場合、“Sick”と評価される。

各年における評価データが揃っているPDAMの2007年~2012年の評価結果を表 2-1-1に示す。

2012年末現在で財務状況が健全なPDAMは171となっており、年々増加し2012年末にようやく 全体の半数に至っている。

2-1-1 PDAMの経営の健全性の評価結果

年月 健康

(Healthy)

不健康

(Unhealthy)

病気

(Sick)

合 計

2007年12月 数 79 114 113 306 比率 26% 37% 37% 100%

2008年12月 数 90 118 116 324 比率 28% 36% 36% 100%

2009年12月 数 103 115 119 337 比率 31% 34% 35% 100%

2010年12月 数 143 127 71 341 比率 42% 37% 21% 100%

2011年12月 数 144 105 86 335 比率 43% 31% 26% 100%

2012年12月 数 171 101 56 328 比率 52% 31% 17% 100%

出典:BPP-SPAM

(2) 水道公社経営健全化計画「PDAM Health Program」

本計画は、公共事業省のPDAM経営改善のための技術支援プログラムである。このプログラム は、上記の評価結果に基づく”Unhealthy” 及び”Sick”状態のPDAMを対象として実施されている。

1) 目的と目標

計画の目的は、PDAMの経営健全化計画の策定における技術的支援を行うことである。

計画の目標は、病気状態にあるPDAMの水道事業を、自立、持続可能な事業に変えることであ る。そのため以下の行為を行う。

① 技術、財務、経営の分野で直接・間接に病気状態に追い込んでいる問題点を特定し、調査結 果を基に問題の解決策を検討する。

② 上記の各種の問題解決策の中から最善の解決策を選択する。

③ 上記2点を勘案して以下の計画を含むPDAM経営健全化計画を策定する。

a FINPRO14、FRAP、ならびに必要に応じてRPKP15

14 FINPRO: Financial Projection(財務予測)

15 RPKP: Corporate Performance Improvement Planのインドネシア語の略語(業務実績改善計画)

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