問題 4.6 a, b を実数とする.
(1) a を始点,b を終点とする実軸上の線分を C1 とするとき,C1 を含む C の開集合 D で連続な任意の関数 f(z) に対して
∫
C1
f(z)dz =
∫ b a
f(x)dx が成立することを 示せ. (右辺の積分は実変数複素数値関数の積分である.)
(2) ia を始点,ib を終点とする虚軸上の線分を C2 とするとき,C2 を含む Cの開集合 D で連続な任意の関数 f(z) に対して
∫
C2
f(z)dz = i
∫ b a
f(iy)dy が成立すること を示せ. (右辺の積分は実変数複素数値関数の積分である.)
問題 4.7 複素数平面において 0 を始点,α ∈ C を終点とする線分を Cα とする.また a0, a1, . . . , an ∈Cとして
f(z) =anzn+an−1zn−1+· · ·+a1z+a0, F(α) =
∫
Cα
f(z)dz とおく.
(1) 線積分の定義に従って F(α) を求めよ.
(2) F(z) は C で正則で F′(z) =f(z) が成立することを示せ.
定理 4.1 Cの開集合 D において F(z) が f(z) の原始関数ならば,D 内の任意の区分的 になめらかな曲線 C に対して,
∫
C
f(z)dz = F(β)−F(α)
が成立する.ここで α は C の始点,β は C の終点を表す.特に C が閉曲線ならばこの 積分の値は 0 である.
α
β
D
証明: z= φ(t) (a≤t≤b)を C のパラメータ表示とすると命題4.2より d
dtF(φ(t)) =F′(φ(t))φ′(t) =f(φ(t))φ′(t)
であるから(実変数複素数値関数に対する)微分積分の基本定理により
∫
C
f(z)dz =
∫ b a
f(φ(t))φ′(t)dt= [F(φ(t))]ba =F(φ(b))−F(φ(a)) =F(β)−F(α) を得る.□
例 4.14 C を複素数平面の区分的になめらかな任意の閉曲線,f(z)を多項式関数,α∈C を任意の複素数とすると ∫
C
f(z)dz = 0
例 4.15 C を複素数平面の区分的になめらかな任意の曲線,α を C の始点,β を C の 終点,γ を 0 と異なる任意の複素数とすると,
∫
C
eγzdz = 1
γ(eβγ −eαγ) 証明)F(z) = 1
γeγz が C におけるeγz の原始関数であるから.
例 4.16 D := C\ {0} において f(z) = 1
z は原始関数を持たない. 証明)C を単位円周
(正の向き)とする.もしD におけるf(z)の原始関数 F(z)が存在すれば定理4.1により
∫
C
f(z)dz = 0
でなければならない,一方,例4.9よりこの積分の値は 2πi であるから矛盾である.
定義 4.4 C の開集合 D が(弧状)連結(arcwise connected)であるとは,D の任意の2 点に対して,その2点を始点と終点とする D内の折れ線が存在することである.
α
β D
命題 4.6 複素関数 f(z) が連結開集合 D において正則で f′(z) = 0 が任意の z ∈ D に ついて成立すれば f(z) は定数関数である.すなわち,ある複素数c が存在してすべての z ∈D についてf(z) =c が成立する.
証明: α =a1+a2i と β =b1+b2i を D の任意の2点とする.まず α と β を結ぶ線分 C が D に含まれると仮定する.
h(t) :=f(α+t(β −α)) とおくと命題4.2と f′(z) = 0 より
h′(t) = (β−α)f′(α+t(β −α)) = 0 となるから h(t) は [a, b] において定数である.従って
f(β) =h(1) = h(0) =f(α)
を得る.一般の場合は,α と β を結ぶ D 内の折れ線が存在する.この折れ線は α=z0, z1, . . . , zn = β をつないだものとすると,前半の議論より
f(α) =f(z0) =f(z1) =· · ·= f(zn) =f(β)
を得る.以上によりf(z)の任意の α, β∈D における値が等しいことが示されたから f(z) は定数関数である.□
D が連結でないと上の命題は一般には成立しない.たとえば D = {z ∈C| Rez ̸= 0} としてf(z) を Rez > 0 のときは f(z) = 1, Rez < 0 のときは f(z) = 0 と定義すると,
f(z) は D で正則で f′(z) = 0 であるが,f(z) は 0 と 1 の2つの値をとるから定数関数 ではない.
命題 4.7 f(z) は連結開集合 D において正則と仮定する.u(x, y) = Ref(x+iy) が任意 の (x, y) ∈D についてux(x, y) =uy(x, y) = 0 を満たせば(特に u(x, y) が定数関数なら ば)f(z) は定数関数である.
証明: v(x, y) = Imf(x+iy) とおけば定理3.3と仮定より
f′(x+iy) =ux(x+iy) +ivx(x, y) =ux(x, y)−iuy(x, y) = 0 となるから,前の命題より f(z) は定数関数である.□
問題 4.8 α, β ∈C とする.C をαを始点,β を終点とする区分的になめらかな任意の曲 線とするとき,次の線積分の値を α と β を用いて表せ.
(1)
∫
C
z2dz (2)
∫
C
eizdz (3)
∫
C
cosz dz (4)
∫
C
zez2dz 問題 4.9 n を 2以上の自然数として,f(z) =z−n とおく.
(1) D = C\ {0} における f(z) の原始関数を求めよ.
(2) C∫ を D 内の(すなわち 0 を通らない)区分的になめらかな閉曲線とすると,
C
z−ndz = 0 が成立することを示せ.
問題 4.10 D+ := C\ {x∈R|x ≤0} とおく.
(1) C を D+内の区分的になめらかな閉曲線とするとき
∫
C
1
zdz = 0 が成立することを 示せ.
(2) C を −i を始点,i を終点とする D+ 内の任意の区分的になめらかな曲線とすると き,
∫
C
1
z dz の値を求めよ.