三角形 ∆n の重心を zn = xn +iyn とする.三角形 ∆n の3頂点のx座標の最小値を an, 最大値を bn とする.また,三角形 ∆n の3頂点のy座標の最小値を cn, 最大値を dn
とする.an と cn は単調増加,bn と dn は単調減少であり,
a1≤an < bn ≤b1, c1 ≤cn < dn ≤d1, lim
n→∞(bn−an) = lim
n→∞(dn−cn) = 0
であるから,an と bn はある共通の極限値 x0 に,cn と dn はある共通の極限値 y0 に収 束する.z0= x0+iy0 とおく.an ≤xn ≤bn かつ cn ≤yn ≤dn であるからzn も z0 に収 束する.自然数 k を固定すると n ≥ k のとき zn ∈∆n ⊂ ∆k であり,∆k は閉集合だか ら,zn の極限 z0 も ∆k に属する.特に z0 ∈∆⊂D であるから,f(z) は z0 で正則であ り,補題3.1より
f(z) =f(z0) +f′(z0)(z−z0) + (z−z0)φ(z), lim
z→z0
φ(z) = 0
を満たす複素関数 φ(z) が存在する.f(z0) +f′(z0)(z−z0) は1次関数であり Cにおいて 原始関数を持つから,定理4.1により任意の n について
∫
∂∆n
{f(z0) +f′(z0)(z−z0)}dz = 0 すなわち
∫
∂∆n
f(z)dz =
∫
∂∆n
(z−z0)φ(z)dz が成立する.φ(z) は ∆ で連続であるから|φ(z)| の ∆n における最大値 Mn が存在する.
∆n の3辺の長さの和を δn とすると(∆0 = ∆ としておく)任意の自然数 n について z0∈∆n であったから,z ∈∂∆n のとき |z−z0| ≤δn であり,命題4.5より
|I(∆n)|= ∫
∂∆n
f(z)dz =
∫
∂∆n
(z−z0)φ(z)dz
≤l(∂∆n)δnMn = δn2Mn = δ204−nMn
が成立する.これと(4)より
δ024−nMn ≥ |I(∆n)| ≥ 4−n|I(∆)| ≥0 すなわち δ20Mn ≥ |I(∆)| >0
を得る.z∈∆n のとき |z−zn| ≤δn →0 であることと z →z0 のとき φ(z) →0 となる ことから limn→∞Mn = 0 である.以上により I(∆) = 0 であることが示された.□ 定義 4.5 D を C の開集合とする.
(1) D が凸集合であるとは,D の任意の2点に対して,その2点を結ぶ線分が D に含 まれることである.
(2) D が(α に関して)星形であるとは,D の点 α が存在して,任意の z ∈D に対し てα と z を結ぶ線分が D に含まれることである.
凸集合 D 星形集合
α z
D
注意 4.1 (1) D が凸集合ならば D は D の任意の点について星形である.
(2) D が α について星形ならば,任意の z1, z2 ∈ D に対してz1, α, z2 を順に結ぶ折れ 線は D に含まれるから D は(弧状)連結である.
例 4.17 複素数平面 C,上半平面 H = {z ∈ C | Imz > 0},開円板 U(α;r) = {z ∈ C |
|z−α|< r},はすべて凸開集合,従って,その中の任意の点について星形開集合である.
D = C\ {x ∈R|x ≤0} はたとえば 1 に関して星形である.一方 C\ {0} は星形でない.
定理 4.3 f(z) が C の星形開集合 D で正則ならば,D で正則な関数 F(z) であって F′(z) =f(z) を満たすもの,すなわち f(z) の D における原始関数が存在する.
証明: D は α ∈D に関して星形であるとする.任意の z ∈D に対して Cz を α を始点,
z を終点とする線分として
F(z) =
∫
Cz
f(ζ)dζ
により D を定義域とする複素関数 F(z) を定義する.z0 = x0 + iy0 ∈ D とするとき F′(z0) = f(z0) を示せばよい.D は開集合だから,ある r >0 があって U(z0;r)⊂D と なる.従って |z−z0|< r のときz0 と z を結ぶ線分 lz は D に含まれる.α, z0, z を頂点 とする三角形 ∆ の周を ∂∆ (この順番に向き付ける)とすると,定理4.2より
∫
Cz0
f(ζ)dζ+
∫
lz
f(ζ)dζ−
∫
Cz
f(ζ)dζ =
∫
∂∆
f(z)dz = 0 が成立するから lz のパラメータ表示 z = z0+t(z−z0) (0≤t≤1)より
F(z) = F(z0) +
∫
lz
f(ζ)dζ = F(z0) + (z−z0)
∫ 1 0
f(z0+t(z−z0))dt よって
F(z)−F(z0) z−z0
=
∫ 1 0
f(z0+t(z−z0))dt
が成立する.f(z)はz0で連続だから,任意の正の実数εに対してある正の実数δ があって z ∈D かつ|z−z0| < δ ならば|f(z)−f(z0)|< ε が成立する.従って |z−z0|< min{δ, r} ならば
F(z)−F(z0) z−z0
−f(z0) =
∫ 1 0
f(z0+t(z−z0))dt−
∫ 1 0
f(z0)dt
≤
∫ 1
0
|f(z0+t(z−z0))−f(z0)|dt <
∫ 1
0
ε dt =ε が成立するから,F(z) は z0 で複素微分可能であり
F′(z0) = lim
z→z0
F(z)−F(z0) z−z0
=f(z0).
□
α z z0
D
Cz
Cz
0
lz
C D
定理 4.4 (星形開集合における Cauchy の積分定理) f(z) が Cの星形開集合 D で正則 ならば,D内の区分的になめらかな任意の閉曲線 C に対して
∫
C
f(z)dz = 0
証明: 定理4.3によって D においてf(z) の原始関数F(z)が存在するから,定理4.1によ り結論を得る.□
例 4.18 α を複素数の定数として,f(z) = eαz
z2+ 1 とおく.r を正の実数(定数)として,
Cr を円周 |z| = r とする.0 < r <1 ならば Ir :=
∫
Cr
eαz
z2+ 1dz = 0 が成立する.実際,
f(z) は D := C\ {i,−i} で正則である.D は星形ではないが,D′= {z ∈C| |z|< 1} は 凸集合だから星形であり D′ ⊂ D より f(z) は D′ で正則である.また 0 < r < 1 より Cr は D′ に含まれる.従って D′ と f(z) に定理4.4を適用して結論を得る.一方 r > 1 のときは Cr を含むような D の部分集合であって星形開集合であるものはとれないので,
Ir = 0 とは結論できない.
i
−i 0
1
Cr D′
C1 C2 D
α β
定理4.3と定理4.1から次の定理(定理4.4と同値であるが)も導かれる.
定理 4.5 f(z) を C の星形開集合 D で正則な関数とし,α, β を D の2点とする.C1 と C2 を α を始点,β を終点とするD内の区分的になめらかな2つの曲線とすると
∫
C1
f(z)dz =
∫
C2
f(z)dz
なお,定理4.4と定理4.5はD が単連結開集合,すなわち D 内の任意の閉曲線を D内 で連続的に変形して1点にできる(D のホモトピー群が単位元のみからなる)という条 件の下で成立する.(星形開集合は単連結であるが,逆は成立しない.)
問題 4.11 次の各々の線積分について,Cauchy(コーシー)の積分定理(定理4.4)が適 用できて 0 になることが結論できるか?理由も述べること.(0 と結論できない場合は積 分の値を求める必要はない.0 になる可能性があってもよい.)
(1)
∫
C
exp(z)dz (C は 円周 |z|= 1)
(2)
∫
C
ez
z2+ 4dz (C は 円周 |z|= 1) (3)
∫
C
ez
z dz (C は 円周 |z|= 1) (4)
∫
C
1
z4−16dz (C は4点 1, i, −1, −i を頂点とする正方形の周) (5)
∫
C
z
ez+ 1dz (C は4点 1−i, 1 +i, −1 +i, −1−i を頂点とする正方形の周) 問題 4.12 (発展) C を z = eit (0 ≤t≤π)でパラメータ表示される曲線(半円周)とす るとき,
∫
C
1
z2+ 3dz の値を求めよ.(ヒント:定理4.5を用いて積分路を変える.)
5 回転数と Cauchy の積分公式
5.1 回転数
以下では簡単のため,区分的になめらかな閉曲線を単に閉曲線と呼ぶ.
定義 5.1 (回転数) C を複素平面における(区分的になめらかな)閉曲線,z0 を C上に ない複素数とするとき,
ν(C, z0) := 1 2πi
∫
C
1 z−z0
dz
を C の z0 のまわりの(または z0に関する)回転数(winding number)または指数(index) という.(回転数の記号は統一されていない.ν でなく ind が用いられることも多い.)
z0
C
以下で見るように,ν(C, z0) は点が閉曲線 C に沿って始点から出発して始点に戻って くるとき,点 z0 のまわりを何周したかを表す量である.
例 5.1 n を整数として,パラメータ表示 z =eint = cosnt+isinnt (0≤t≤2π) で表さ れる閉曲線を Cn とすると,
ν(Cn,0) = 1 2πi
∫
Cn
1
zdz = 1 2πi
∫ 2π
0
ineint
eint dt = 1 2πi
∫ 2π
0
in dt= n
となる.実際 Cn は単位円周上を n周(n < のときは負の向きに |n|周)する閉曲線で ある.
命題 5.1 回転数 ν(C, z0) は整数である.
証明: 閉曲線 C のパラメータ表示を z =φ(t) (a≤t≤b) とする.z0 を C 上にはない複 素数としてa≤t≤b を満たす実数 t に対して,
h(t) =
∫ t
a
φ′(s) φ(s)−z0
ds と定義する.回転数と線積分の定義より
ν(C, z0) = 1 2πi
∫
C
1 z−z0
dz = 1 2πi
∫ b a
φ′(t) φ(t)−z0
dt = 1 2πih(b) であるから,h(b) が 2πi の整数倍であることを示せばよい.
まず、不正確だが直感的な証明を行う.複素数の対数 logz を用いると,
d
dslog(φ(s)−z0) = φ′(s) φ(s)−z0
であるから(?),
h(t) = [log(φ(s)−z0)]s=ts=a = log(φ(t)−z0)−log(φ(a)−z0) となる.ここで t に b を代入すると,
h(b) = log(φ(b)−z0)−log(φ(a)−z0)
この右辺は φ(a) = φ(b) (C は閉曲線だから)より 0 になるように見えるが,実はlogz の虚部は 2πi の整数倍の不定さがあるので,この式の右辺は2πi の整数倍である.
上では原始関数として複素数の対数 log を用いたが,logz は本当の関数ではない(値 が無数にある)ので,以上の「証明」は不正確である.
そこで,z̸= 0 のとき,exp(logz) =z は(logz の値,すなわちz の偏角の選び方によ らず)成立することに着目して h(t) の指数関数を考察しよう.もし上の式が正しいとす ると,
exp(h(t)) = exp(
log(φ(t)−z0)−log(φ(a)−z0))
= exp(
log(φ(t)−z0)) exp(
−log(φ(a)−z0))
= φ(t)−z0
φ(a)−z0
となることが予想される.もしこれが正しければexp(−h(t))(φ(t)−z0) =φ(a)−z0 は t によらない定数となるはずである.そこで,
g(t) = exp(−h(t))(φ(t)−z0) =e−h(t)(φ(t)−z0) が定数であることを示そう. g(t) を t で微分すると,
g′(t) =−h′(t)e−h(t)(φ(t)−z0) +e−h(t)φ′(t) =− φ′(t) φ(t)−z0
e−h(t)(φ(t)−z0) +e−h(t)φ′(t) = 0 が成立するから,実際に g(t) は定数である.特に h(a) = 0 に注意すると,
φ(a)−z0= e−h(a)(φ(a)−z0) =g(a) =g(b) =e−h(b)(φ(b)−z0) (5) が成立する.C は z0 を通らない閉曲線だからφ(a) =φ(b)̸= z0 であり,これと(5)より e−h(b) = 1,従って h(b) = 2πi ν(C, z0) は 2πi の整数倍でなければならない.以上により ν(C, z0) が整数であることが正確に証明された.□
命題 5.2 C を閉曲線とすると,ν(C, z) は z の関数としてC\C で連続である.
証明: z0 を C上にない点として,z0 と C との距離(z0 と C 上の点との距離の最小値)
を r > 0 とする.複素数 z は z0 に近づけるので,|z−z0| < r
2 としてよい,このとき任 意の ζ ∈C に対して
|ζ−z|= |(ζ −z0)−(z−z0)| ≥ |ζ −z0| − |z−z0| > r−r 2 = r
2 が成立することに注意すると,命題4.5よりC の長さを l(C) として
|ν(C, z)−ν(C, z0)| = 1
2πi
∫
C
( 1
ζ−z − 1 ζ −z0
) dζ
≤ l(C) 2π max
ζ∈C
1
ζ−z − 1 ζ −z0
= l(C) 2π max
ζ∈C
|z−z0|
|(ζ −z)(ζ −z0)| ≤ l(C) 2π
|z−z0|
1
2r2 = l(C) π
|z−z0|
r2 −→0 (z →z0) が成立する.以上により ν(C, z) は z0 で連続,従って C\C で連続である.□
命題 5.3 複素数z1 と z2 を閉曲線 C と交わらない折れ線で結べればν(C, z1) =ν(C, z2) が成立する.
z1 z2
C
証明: z1を始点z2 を終点とする折れ線Lで C と交わらないものが存在する.各線分の両 端に関する回転数が同じであることを示せばよいから,最初から L は線分であると仮定 してよい.Lのパラメータ表示をz =φ(t) (a≤t≤b)とすると,前の補題よりν(C, φ(t)) は区間 [a, b] で tについて連続である.一方 ν(C, φ(t)) の値は整数であるから,もし定数 でなければ不連続となり矛盾である.(もし ν(C, φ(t)) が区間[a, b] で2つ以上の整数値を とれば,中間値の定理によって整数以外の値もとることになる.)□
定義 5.2 C を閉曲線として,複素数 z0 を C 上の任意の点 z が|z| < |z0| をみたすよう にとる(|z0| を十分大きくすればよい).このとき C と交わらないような折れ線で z0 と 結べるような点z の全体 U を C の外部領域と呼ぶ(下左図).
C z0
z
C z0
z1 z
命題 5.4 閉曲線 C の外部領域 U は連結開集合である.
証明: U が開集合であることを示そう.z1 ∈ U とすると z1 は C 上にはないから,ある 正の実数 ε が存在してU(z1;ε) = {z ∈ C| |z−z1| < ε} は C と交わらない.このとき,
任意の z ∈U(z1;ε) に対して z1 と z を結ぶ線分は C と交わらない.また U の定義によ り z0 と z1 を結ぶU 内の折れ線が存在する.この折れ線と z1 と z を結ぶ線分をつなげ てできる折れ線は z0 と z を結ぶから z ∈U である(上右図).これで U(z1;ε) ⊂U が 示されたから U は開集合である.U の任意の2点 z1 と z2 に対して z0 と z1 を結ぶ折れ 線 C1 と z0 と z2 を結ぶ折れ線 C2 が存在する.このとき C1+ (−C2) は z1 と z2 を結ぶ 線分だから U は(弧状)連結である.□
命題 5.5 閉曲線 C の外部領域を U とすると,任意の z ∈ U に対してν(C, z) = 0 で ある.
証明: 正の実数 R を C が開円板 U(0;R) に含まれるようにとる.z0 を |z0| > R を満た す複素数とする.このとき (z−z0)−1 は凸開集合(従って星形開集合)U(0;R) で正則だ から,Cauchyの積分定理(定理4.4)により ν(C, z0) = 0 である.z を U の任意の点と すると,z0 と z を結ぶ U内の折れ線が存在するから命題5.3より ν(C, z) =ν(C, z0) = 0 を得る.□
命題 5.6 z0 ∈Cとする.a, bを正の実数とする.C1 を z0−ai を始点,z0+bi を終点と する曲線で半直線{z0+t | t ∈ R, t ≤0} と交わらないものとする.また, C2 を z0+bi を始点,z0−ai を終点とする曲線で半直線{z0+t|t∈R, t≥0} と交わらないものとす る.このとき C = C1+C2 を C1 と C2 をつないでできる閉曲線とすると,ν(C, z0) = 1 が成立する.
z0 C2
z0+bi
z0−ai
C1
z0
C2 z0+bi
z0−ai
z0
C1 z0+bi
z0−ai
証明: z0 は C 上の点ではないから閉円板 {z ∈ C | |z−z0| ≤ r} が C と交わらないよ うな正の実数 r がとれる.C′ を円周 |z−z0| = r (正の向き)とする.C1 , z0+bi と z0+ri を結ぶ線分,−C′ の右半分,z0−ri と z0−ai を結ぶ線分,の4つの曲線をつな げてできる閉曲線を γ1 とする.また,C2 , z0−ai と z0−ri を結ぶ線分,−C′ の左半 分,z0+ri と z0+bi を結ぶ線分,の4つをつなげてできる閉曲線を γ2 とする.
z0
C C′
z0+ri
z0−ri z0+bi
z0−ai
C1
C2 γ2 γ1
z0
γ2
z0+bi
z0−ai
z0
γ1
z0+bi
z0 −ai
このとき,γ1 に沿っての線積分と γ2 に沿っての線積分の和は,2つの線分に沿っての積 分が互いに向きが逆で打ち消し合って,C に沿っての線積分と −C′ に沿っての線積分の 和になるから,
ν(C, z0)−ν(C′, z0) = 1 2πi
∫
C
dz
z−z0 − 1 2πi
∫
C′
dz
z−z0 = 1 2πi
∫
γ1
dz
z−z0 + 1 2πi
∫
γ2
dz z−z0 ここで1/(z−z0)は星形開集合 D =C\ {z0+t|t≤0} で正則でありγ1 はD に含まれる から,Cauchy の積分定理により
∫
γ1
dz
z−z0 = 0 が成立する.同様に,1/(z−z0) は星形 開集合 D′ = C\ {z0+t|t≥0} で正則であり γ2 は D′ に含まれるから,
∫
γ2
dz
z−z0 = 0 が成立する.以上により ν(C, z0) = ν(C′, z0) が示された.よってC′ のパラメータ表示
z =z0+reit (0≤t≤2π)を用いて
ν(C, z) =ν(C′, z0) = 1 2πi
∫ 2π 0
ireit
reit dt= 1
□
例 5.2 C を α ∈ C を中心とする半径 r > 0 の円周とする.z0 が C の内側,すなわち
|z0−α|< r であればν(C, z0) = 1 である.実際 z0 と C が命題5.6の仮定をみたすこと は明らかである.(C のうち実部が Rez0 以上の部分を C1, C のうち実部が Rez0 以下の 部分を C2 とすればよい.)|z0−α|> r のときは z0 は C の外部領域に属するから,命題 5.5により ν(C, z0) = 0 である.
例5.2
z0 α
C
例5.3
1
−1
C1 C2
例 5.3 閉曲線 C をパラメータ表示 C : z(t) =
{
1−e2it (0≤t≤π) e−2it−1 (π ≤t≤2π) で定義される閉曲線とする.
C1 : 1−e2it (0 ≤t≤π), C2 :e−2it−1 (π ≤t≤2π) とすると,C =C1+C2 である.z0 を C上にない複素数とすると
(1) |z0−1|< 1 ならば ν(C, z0) = 1, (2) |z0+ 1| <1 ならば ν(C, z0) =−1,
(3) それ以外のとき(z0 が C の外部領域に属するとき)は ν(C, z0) = 0.
が成立する.証明)まず ν(C, z0) = 1
2πi
∫
C
1 z−z0
dz = 1 2πi
∫
C1
1 z−z0
dz+ 1 2πi
∫
C2
1 z−z0
dz = ν(C1, z0)+ν(C2, z0) に注意する.C1 は正の向きの円周 |z−1| = 1だから,前の例により |z0−1| <1 のとき ν(C1, z0) = 1, |z0−1| > 1 のとき ν(C1, z0) = 0 である.一方 C2 は円周 |z+ 1|= 1 を負 の向きに一周するから,正の向きの円周 −C2 に対して前の例を適用すれば,|z0+ 1| <1 のとき ν(−C2, z0) = 1, |z0 + 1| > 1 のとき ν(−C2, z0) = 0 である.回転数の定義から ν(−C2, z0) =−ν(C2, z0) であることに注意すると,以上をまとめて上の式を得る.