• 検索結果がありません。

概要

ドキュメント内 水都・桐生の形成史に関する研究 (ページ 103-106)

第 5 章 新たな⽔⼒都市・桐⽣の検討

5.1 概要

現在⾚岩⽤⽔は、制度上農業⽤⽔として位置づけられている。しかし市街化が進み、市域の農地 が減少し、実質的な農業⽤⽔としての機能は失われつつある。ここまで論じてきたように、⾚岩⽤⽔は 農業⽤途の他に、撚⽷機械の⽔⾞動⼒として利⽤された歴史的側⾯を持つが、そのような視点で⽔

路の保全や PR がなされるような状況にはない。このまま特段の施策がなければ、すでに姿を消した⼤

堰⽤⽔と同様の結果になる可能性は⾼い。

しかし「不要である」という理由で、埋め⽴てや暗渠化によって⾚岩⽤⽔を地上から消すことは、この まちの歴史的特徴と魅⼒を⼤きく毀損することとなる。近代以降の都市の経緯を振り返ってみれば、

歴史的な価値をないがしろにし、近視眼的に不要と考えられるものを切り捨ててきた過程こそが、近代 化の負の側⾯であり、それが地域の特徴を失わせ、地⽅都市衰退の⼀因となってきたのである。

とはいえ、歴史的な価値を再評価することは確かに重要ではあるが、遺構等の安易な復元事業に よって、当事者となる地域の⼈々の負担が増えるような施策は実施すべきではない。価値あるまちの 歴史資産を守り続けるためには、現在の社会において、それらが担いうる新たな役割を⾒出し、活⽤を 通して保全するための知恵を出すことが必要である。

まちの⽤⽔路の保全策においては様々なアイディアがあるが、⽤⽔路の⽔⼒を⼩⽔⼒発電に活⽤

する⽅法も⼀つの選択肢として考えられる。元々⽔⾞動⼒の源であった⾚岩⽤⽔が、時代が変わり、

利⽤形態は変わりつつも、地域の⼈々にエネルギーを供給する都市の⽔辺として復活させることができ れば、歴史の⽂脈から⾒ても意義のあることといえる。

ただし事業の実現性については充分な注意が必要である。前述のように⼩⽔⼒発電への活⽤を実 施するにしても、設備設置に多額の投資をして、投資回収のめどが⽴たないような計画であれば、別の 戦略を再考するべきである。特に市街地の⽤⽔路には⼩⽔⼒発電で重要になる有効落差(後述す る)が得にくく、事業環境は厳しいと考えられるため、検討は慎重に⾏う必要がある。

そこで桐⽣の⾚岩⽤⽔を対象に⼩⽔⼒発電を実施した場合の事業採算性を明らかにするために、

経済産業省の補助⾦である「地産地消型再⽣可能エネルギー⾯的利⽤等推進事業費補助⾦」に

「桐⽣市の⽔路を活⽤したエネルギーマネジメント事業可能性調査」というテーマで申請し、採択を受 けて実施した。本事業は筆者が籍を置くパシフィックコンサルタンツ株式会社が、桐⽣市の承認を得て 申請し、群⾺⼤学の天⾕教授を中⼼に各⽅⾯の協⼒を得ながら進めた。

5.1.1 桐⽣市の⼩⽔⼒利⽤の現状

桐⽣市では、平成 22 年度に「緑の分権改⾰推進事業(⼩⽔⼒発電)」を実施し、市域全域の⼩

⽔⼒発電のポテンシャル調査を実施している。図 5-1-1 は、市内の⼩⽔⼒発電候補地を地図上⽰

したものである。各候補地は期待発電量の概算も⾏っており、その合計は 1,563kW である。しかし、

その後実際に設置された⼩⽔⼒発電設備は、⿊保根浄⽔場に設置した 1.4kW のみであり、残念な がら⼩⽔⼒発電の普及につながる結果が得られたとは⾔い難い。

97 5.1.2 ⼩⽔⼒発電の導⼊を妨げる主要因

⼩⽔⼒を含めた⽔⼒発電は、⼀般に下記式(1)の式で算出される。式から読み取れるように、発 電量は流量と落差に⽐例する。式(1)が⽰すように、流量と落差という⼆つのパラメータが発電量に影 響することになるが、流量については設備の規模によって処理できる量が限定されるので、落差の有無 がより重要であり、対象とする河川に対し、落差の取れる箇所を選定するというのが⼀般的な検討⽅

法である。

図 5-1-1 桐⽣市の⼩⽔⼒発電の賦存分布量

98

⽔⼒発電をする場合には、⽔⾞、発電機およびパワーコンディショナーに加え、堰や導⽔路の設置 など、設備機器の導⼊と⼟⽊⼯事で、⼩額とはいえない初期投資が必要になる。⼩⽔⼒発電事業 の成⽴は、発電による収益が初期投資額および維持費に⾒合うか否かで判断することとなる。

⼀⽅で、有効落差を取れる地形の候補を調査すると必然的に河川の上流部にあたる⼭間地が多 く選ばれることになる。前述の緑の分権改⾰推進事業においても、⼭間地から多くの候補地が選定さ れている。しかし、⼭間地という⽴地は需要家から遠く離れているケースが少なくなく、送電線などのイン フラが整備されていないことも多い。このような地点での発電事業は、上記の機器設備に加え、⾃営 線や電柱などの送電設備の建設コストも必要となる。こうした事情は⼩⽔⼒事業の投資回収を不利 にすることとなり、これが、⽇本が豊富な⽔と⼭間地を国⼟に多く持ちながらも、⼩⽔⼒発電の普及が 停滞している⼤きな要因と考えられる。

5.1.3 市街地⽤⽔路での⼩⽔⼒発電の可能性

⾚岩⽤⽔を含め、市街地を流れる⽤⽔路は平野部に存在するため、⼤きな落差を期待することは できない。⼀般にこのような⽤⽔路での⼩⽔⼒発電は事業性としては最も厳しい条件といえる。そのた め、地域の⽤⽔路の活⽤策として⼩⽔⼒発電の実施に向けた取り組みが各地域で散⾒されるものの、

いずれも⼤掛かりな設備を動員しつつも⾟うじて電球をともす程度(数ワット程度)の発電量しか得られ ない事例がほとんどである。このような発電量では市⺠に対しての再⽣可能エネルギーの啓蒙効果は あったとしても、発電そのものについては、実質的な⽤途はないと⾔わざるを得ない。加えて⾚岩⽤⽔の 場合は、農地⾯積の減少による取⽔量の制限によって、流量も⾮常に少なくなっており、⼩⽔⼒発電 の条件としてはより厳しいと考えられる。

⼀⽅で、市街地の⽤⽔路は需要家と近接しており、送電インフラの建設を極⼩に抑えられるメリット が存在する。また、⼩規模ゆえにダム建設等の⼟⽊⼯事を伴う機器の設置ではなく、⼩型の投げ込 み式の発電⽔⾞を⽔路に設置する⽅式とすることが可能であり、設置コストの削減によって発電量が 少ないとしても⼀概に事業性がないとは⾔い切れない。しかし実際のところ、⾚岩⽤⽔のような低流量、

低落差の市街地の⽤⽔路は、発電量が⼩さすぎるという理由で、⼩⽔⼒発電の対象としてみなされ ること⾃体ほとんどなく、これまで数字を伴った事業検討はほとんどされてきていない。

・・・

P︓期待発電量 Q︓流量 g︓重⼒加速度 H︓有効落差 η︓効率

99

ドキュメント内 水都・桐生の形成史に関する研究 (ページ 103-106)