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本章に記した調査の実施においては、 「創価大学平成 25 年度次世代共同研究プロジェクト助 成金」を利用した。

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半構成的面接調査は、高齢者施設での看護経験年数 1 年以上の看護師 5 名に対して実施 した(調査期間:2014 年 1 月から 3 月)。

3) 調査内容

質問票や面接調査における質問内容の概略は、以下のとおりである。

【質問票調査】

(1)属性:性別、年齢、訪問看護・高齢者施設経験年数、事業所の設置主体 (2)高度実践看護師による診断と応急対応の必要性

(3)高度実践看護師による薬物投与(内服薬・注射薬剤・グリセリン浣腸や坐剤・外用剤・

吸入薬)に関する判断や実施、調節、評価の必要性

(4)高度実践看護師による処置(酸素療法・褥瘡・胃瘻等)実施の判断やこの実施、評価の 必要性

(5)高度実践看護師による検査(検体検査・単純 X 線・CT・MRI・超音波検査・12 誘導心電図) 実施の判断や所見評価の必要性

(6)高度実践看護師が医行為を実施するにあたって、「医師による指示」との兼合いに関す る質問項目

(7)医行為の実施に付随した責任の所在

(8)高度実践看護師の裁量権拡大に対する賛否と理由 (9)看護師と医師との間における連携状況に関する質問項目

質問票の作成にあたっては、「平成 17 年度社団法人日本看護協会看護政策事業:訪問看護 ステーションにおける看護師の裁量権の拡大に関する研究」で実施された調査研究報告(野 末・金子・上野ほか,2005)を主として参考にした。

【面接調査】

(1)医師の具体的指示が出されていない医行為やその判断の必要性が利用者に発生した場 面の有無や頻度、具体的状況。

(2)医師の具体的指示が出されていない医行為の実施に関する判断やその実施が必要とな った場合の対処方法。

(3)医師の具体的指示をタイムリーに受けられない現況の有無や頻度、また、そのことから 考えられる居宅サービスに関する問題点や課題について(医師との連携に関する内容を 含む)。

(4)医師からの具体的指示が出されていない医行為を高度実践看護師が実施すると想定し た場合、懸念される点や課題と考える内容(医師との連携に関する内容を含む)。

(5)(4)で挙げられた課題に対する打開策として、どういった内容が考えらえるのか。

(6)在宅医療もしくは高齢者施設の居宅現場において、高度実践看護師による医行為実施の 必要性や求められる知識・技術内容。

103 4) 分析方法

質問票データの解析方法としては、IBM SPSS Statistics Ver.22 や Microsoft Excel を 用いて基本的な属性等を単純集計した。

半構成的面接調査データは、第 4 章に記した質的帰納的方法で分析した。

5) 倫理的配慮

「創価大学人を対象とする研究倫理審査」の承認を受けて実施した。研究対象者には、

本研究の主旨、参加と中断の自由、匿名性、個人情報の守秘性、研究終了後のデータ源の 消去、参加拒否によって不利益を被らないこと等を説明した。調査票は無記名回答とし、

返送によって同意を得たものとした。半構成的面接調査の実施においては、口頭と文書で 同意を得た。

3.調査結果

3.1 訪問看護師に対して実施した質問票調査と半構成的面接調査の結果 1) 質問票調査の結果

訪問看護師からの有効回答者数は 69 名、有効回収率は 85.1%であった。

① 訪問看護師の概要(表 6-1)

女性看護師による回答が 9 割以上と高く、年齢については 40 歳代が 5 割近くを占めた。

訪問看護経験年数では、8 割以上の看護師が1年以上を有していた。

  n=69 n( %)

18人 (26.1%) 34人 (49.2%) 17人 (24.6%) 11人 (15.9%) 11人 (15.9%) 10人 (14.5%) 16人 (23.2%) 21人 (30.4%) 22人 (31.9%) 9人 (13.0%) 3人 (4.3%)

11人 (15.9%) 18人 (26.0%) 6人 (8.7%) 1 年 以 上 3 年 未 満

有 限 会 社 株 式 会 社 医 療 法 人 社 団 法 人 社 会 福 祉 法 人 年 齢

訪 問 看 護 経 験 年 数

訪 問 看 護 事 業 所 設 置 主 体

    表 6-1.  訪 問 看 護 師 の 概 要 (質 問 票 )

性 別

男 性 2人 (2.8%) 女 性 67人 (97.1%)

そ の 他 3 0 ~ 3 9 歳 4 0 ~ 4 9 歳 5 0 ~ 5 9 歳

1 0 年 以 上 3 年 以 上 5 年 未 満 5 年 以 上 1 0 年 未 満

1 年 未 満

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② 在宅医療現場における医師との連携状況

表 6-2 には、医師との業務連携に関する訪問看護師の評価について示した。

5 割以上の訪問看護師が、利用者の診療内容や家族に関する情報について、医師から「十 分に情報は提供される」もしくは「一応は情報提供される」と回答した。「あまり情報提供 はされない」や「情報提供はされない」の回答を合計しても 2 割にも満たない結果になっ た。しかし、「十分に情報は提供される」と認識している訪問看護師割合を質問項目ごとに 見ても、最も高い割合は 11%であった。利用者の状態が変化した際の医師との連絡状況や 往診依頼に関する評価では、「あまり問題がない」や「全く問題がない」を合わせると、5 割弱の看護師が医師との連絡に大きな支障を感じていない結果が示された。その反面、利 用者に状態変化が生じた際の医師への連絡に関して「全く問題がない」とした者は 5.9%、

往診依頼に関して「全く問題がない」と回答した者の割合も 2.9%に止まった。

十 分 に 情 報 は 提 供 さ れ る

一 応 は 情 報 提 供 さ れ る

ど ち ら と も い え な

あ ま り 情 報 提 供 は さ れ な い

情 報 提 供 は さ れ な

利 用 者 や 家 族 に 対 す る 病 状 説 明

6.4 46.8 27.7 17.0 2.1

病 名 告 知 8.0 52.0 24.0 16.0 0.0

利 用 者 や 家 族 が 要 望 す る 治 療 内 容

5.3 52.6 28.9 13.2 0.0

新 た な 処 方 や

変 更 点 10.2 53.1 20.4 16.3 0.0

新 た な 処 置 や

変 更 点 10.6 55.3 19.1 14.9 0.0

検 査 結 果 11.1 52.8 22.2 13.9 0.0

と て も 問 題 が あ る

ま あ 問 題 が あ る

ど ち ら と も い え な

あ ま り 問 題 が な い

全 く 問 題 が な い 24時 間 365日

に お い て 、 状 態 が 変 化 し た 時 (利 用 者 死 亡 時 を 含 む ) の 医 師 へ の 連

2.9 22.1 26.5 42.6 5.9

24時 間 365日 に お い て 、 状 態 が 変 化 し た 時 (利 用 者 死 亡 時 を 含 む ) の 往 診 依 頼

2.9 26.5 22.1 45.6 2.9

医 師 と の 連 絡 状 況 に 関 す る 訪 問 看 護 師 評 価

単 位 : % n=69

単 位 : % n=69 表 6-2.    医 師 と の 連 携 状 況

        医 師 か ら の 情 報 提 供 に 関 す る 訪 問 看 護 師 評 価

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③ 高度実践看護師による医行為実施に対する賛否(表 6-3)

訪問看護師に対して、在宅医療の現場における高度実践看護師の医行為実施の賛否につ いて質問した結果、その 6 割が賛意を示した。更に、反対の意向を示した約 4 割の訪問看 護師が考える主な反対理由は、「看護の専門性から外れている」や「医行為実施によって引 き起こされるかもしれない利用者の病状悪化に対する緊急対応への懸念」、「利用者及び家 族からの同意を得られない可能性が大きい」、という内容であった。

④ 医行為実施における医師の指示の必要性と責任所在に関する認識(表 6-4)

約 5 割の訪問看護師が、高度実践看護師による医行為は事前に医師から出された包括指 示に基づいて実施する必要性があると認識していた。高度実践看護師であったとしても、

医師による具体的指示が必要と考えていた者は 2 割強存在した。高度実践看護師の判断で 行う以上、医師からの指示や医師への報告が必要ないと回答した者は存在しなかった。

また、高度実践看護師の医行為実施における責任所在に関する問に対しては、高度実践 看護師と訪問看護指示を行う医師の両者にあると考える者の割合が 36.2%で最も高かった。

その責任が、高度実践看護師及び訪問看護指示を行う医師、並びに、訪問看護事業所の 3 者であると回答した割合は 26.1%、高度実践看護師のみにあるとした者の割合は 5.8%であ った。

 反対n=27

反対理由

看護の専門性 から外れてい るため

高度実践看護師による 医行為の実施によって 引き起こされるかもし れない利用者の病状の 悪化に対して、緊急対 応が難しいため

新たな資格や認証制度 の創設によって、現場 の混乱を招く恐れがあ るため

利用者やこの家 族の同意が得ら れない可能性が 大いにあるため

いかなる場合も医師の 具体的指示の下に医行 為を実践することが利 用者の安全につながる ため

%(n) 29.6(8人) 25.9(7人) 14.8(4人) 18.5(5人) 11.1(3人)  表6-3. 医行為実施に対する賛否割合(全体n=69)

        賛成 : 60.9%(42名)  反対 : 39.1%(27名)       

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⑤ 在宅医療現場で必要と認識された高度実践看護師による医行為内容 (ⅰ)診断と応急対応の必要性(図 6-1)

フィジカル・イグザミネーションや検査所見を統合した診断と応急対応を実施する必要 性に関する問いに対しては、皮膚系疾患(52.9%)、呼吸器・循環器系の疾患(48.5%)、消 化器系疾患(47.1%)の順で回答された。

また、どの系統別疾患についても、約 2~3 割程度の訪問看護師が「どちらともいえない」

と認識していた。

図 6-1. 診断・応急対応の必要性 (n=69)

n=69 医師の指示の必要性 n(%) 責任の所在 n(%) 原則として、事前に医師から出

されている包括指示(プロトコー ル等)は必要

34人(49.3%) 高度実践看護師 4人(5.8%) 原則として,医師の具体的な指示

が必要 16人(23.2%) 訪問看護指示を行う医師 16人(23.2%) 緊急時に医師との連絡がつかな

い場合のみ、医師の指示は不要 14人(20.3%) 高度実践看護師・訪問看護

指示を行う医師 25人(36.2%) 事前の医師の指示は必要とせ

ず、実施した内容の事後報告で よい

5人(7.2%) 高度実践看護師・訪問看護

事業所 6人(8.7%) 高度実践看護師の判断で行う以

上、医師の指示や医師への報告 は必要はない

0人(0.0%)

高度実践看護師・訪問看護 指示を行う医師・訪問看護 事業所

18人(26.1%) 表6-4. 医行為実施における医師からの指示の必要性と責任所在に関する認識

107 (ⅱ) 薬物処方の必要性(図 6-2)

在宅医療現場で高度実践看護師に求められる薬物処方に関する能力として最も高い割合 を示したのが、グリセリン浣腸・坐剤の実施時期決定(72.1%)であった。続いて、下剤 (67.6%)、抗不安薬・睡眠薬の処方(63.2%)、総合感冒薬処方(58.8%) の順で上位を占め た。必要性が低いとされた薬物処方は、静脈内注射による抗生物質薬剤の決定、並びに、

その量の決定であった。

(ⅲ) 処置対応の必要性(図 6-3)

高度実践看護師が実践することに 5 割以上の割合で支持された処置内容は、吸入の実施 判断(67.6%)、栄養補助食品の選択及び決定(60.3%)、酸素供給量の調節(55.9%)、壊死 組織のデブリードマン(55.4%)、酸素吸入の開始と中止の判断(50.0%)であった。気管カ ニューレや胃瘻チューブの交換を必要と考える看護師割合は 36.8%であった。

(ⅳ) 検査実施決定と所見評価の必要性(図 6-4)

最も高い割合で支持された検査内容は、検体検査結果の評価(39.7%)や実施の決定 (35.3%)であった。続いて、単純 X 線撮影の実施決定(29.4%)、12 誘導心電図検査の実施 決定(27.9%)、12 誘導心電図検査結果の評価(20.6%)、単純 X 線撮影の画像評価(19.1%) の順になった。

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図 6-2. 薬剤処方(新たな処方・投与量の変更・中止・再開)の必要性 (n=69)

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図 6-3. 処置対応の必要性 (n=69)

図 6-4. 検査実施決定と所見評価の必要性 (n=69)

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しかし、これらの検査実施決定や所見評価に対する必要性が低いと考えている看護師は、

支持する割合よりも高い結果になった。そして、単純 X 線や CT・MRI の画像評価について は、5 割の看護師が「必要性が低い」と認識していた。

2) 半構成的面接調査の結果

① 訪問看護師の概要(表 6-5)

面接調査で回答した訪問看護師 5 名の性別は、全て女性であった。年齢幅は、30 歳代後 半から 50 歳代後半であり、看護師経験年数の平均は約 17 年、訪問看護経験年数の平均は 約 6 年であった。

② 高度実践看護師の裁量権拡大に対する訪問看護師の認識

訪問看護師の語りから、3 つのカテゴリーと 9 つのサブカテゴリーが抽出された(表 6-6)。

以下、カテゴリーは【】、サブカテゴリーは[]で表す。

【高度実践看護師の裁量権拡大に対する賛意】は、[医師との連携がスムースに行えない 場合の補完的役割]や[サービス利用者及び提供者相互のメリット]の、2 つのサブカテゴリ ーから構成された。訪問看護師の一部は、医師との連携がスムースに行えない場合や緊急 対応時において、高度実践看護師による医行為判断・実施の必要なケースがあると認識し ていた。更に、利用者は様々な疾病や症状を抱えながら療養生活を行っているため、生活 面の視点も持ち備えた、従来の看護師よりも疾病管理に対応できる職種が必要と考えてい た。そして、医師からの訪問看護指示を得るための時間的・身体的労力の大きさを理由と し、一時的な指示を含めた高度実践看護師からの判断によって業務の効率化が図れると感 じていた。訪問看護師の中には、現在の訪問看護師の知識・技術では担うに相応しくない 医行為を医師から依頼されることがあり、高度実践看護師が代替的役割を担える点に期待 を示した。

高度実践看護師の存在によって、サービス利用者側と提供者側の両者においてメリット があるとも感じていた。訪問看護を行うには原則として、利用者の主治医から具体的指示 を受けなければならない。しかし、主治医の中には業務による多忙さを理由とし、その指 示をタイムリーに出し兼ねる場合もある。このため、高度実践看護師の判断による医行為 によって、医療サービスを滞りなく提供できることへの期待が存在した。そして、利用者

No. 性別 年齢 看護師経験年数 訪問看護経験年数

1 女性 30歳代後半 約10年 約1年

2 女性 40歳代後半 約22年 約7年

3 女性 40歳代後半 約24年 約12年

4 女性 50歳代前半 約12年 約6年

5 女性 50歳代後半 約20年 約8年

表6-5. 訪問看護師の概要(半構成的面接調査)