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人体は、外部環境に変化があっても体内を常に一定の状態に保とうとする作用を持つ。この 人体内部環境の維持機能を「恒常性」という(資料:近藤,008)。

34 4.2 高度実践看護師の起用に関する政策的位置づけ

厚生労働省は、チーム医療の更なる普及に向けた「平成 23 年度チーム医療実証事業報告 書」を発表した(厚生労働省,2011a)。この報告書は、チーム医療とは「近年、医療の質や 安全性の向上及び高度化・複雑化に伴う業務の増大に対応するため、多種多様なスタッフ が各々の高い専門性を前提とし、目的と情報を共有し、業務を分担するとともに、互いに 連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供する」とし、在宅分野でチー ム医療を推進するための課題の一つとして、「広範な多職種によるチーム医療の実践に基づ いて、患者視点に立った 24 時間支援体制を構築できるか」を挙げている。そして、24 時間 支援体制の構築に向けては、医師と看護師、並びに、看護師と介護職のチーム・アプロー チを必要とする。

著者は、療養者の視点に立った 24 時間体制のヘルスケアサービスを具現化するには、高 度実践看護師の活用が、以下のような理由から効果的と考える。

まず、医師数が限られた診療所に勤務する医師が、療養者からの緊急連絡にすべて直接 対応するとした場合、医師の負担は非常に大きいばかりか、診療のキャパシティを制限し てしまうことに繋がりかねない。「地域医療を担い得る医師数を増やす」という見方もでき るが、医師の数を増やすだけでは解決に至らない。地域包括ケアシステムに“療養者の生 活を支える”という視点が求められる以上、在宅や高齢者施設でキュアだけが単独で提供 されるのでは不十分である。地域包括ケアシステムのサービスには、診療と生活支援の両 方の視点からサービスを創出できるスペシャリストが必要になる。高度実践看護師は、ま さにその機能を備え持つ。

また、地域包括ケアシステムには 24 時間にわたって多種多様な対応が迫られると考えら れよう。このため、医師や看護師のみのサービス提供体制では不十分であり、その他の医 療専門職や介護職との連携・協働によって生み出されるサービスも重要になる。そして、

チームで療養者を支えるという理念に基づきながら、チーム自体をマネジメントできる職 種も必要と言える。

著者は、ヘルスケアサービスも含めた 24 時間体制の生活支援に貢献できるうえ、チーム 医療という枠組みの中でマネジメントも行えるスペシャリストは高度実践看護師のほかに 存在しないと考える。従って、政府が提言した地域包括ケアシステムを構築する過程にお いては、高度実践看護師の活用も重要な政策的位置づけとして捉えるべきである。

5. 市民ニーズに基礎づけられた看護の追求

5.1 医療サービスを提供するにあたっての基本理念

医療サービスがわが国で提供されるに当たっては、基本理念が存在する。著者は、医療 サービス提供体制が崩壊の危機にある中で様々な課題への施策を講じる場合にも、その基 本理念を遵守した政策構築が必要と考える。

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日本国憲法第 25 条で明言されている通り、健康で文化的な最低限度の生活を国民に対し て保障するため、国は、社会福祉、及び、社会保障、並びに、公衆衛生の向上・増進に努 めなければならない。更に、わが国の医療サービスは、日本国憲法第 13 条に謳われる「個 人の尊厳」を大切な理念の一つとしながら、家族構成や地域コミュニティ、職場といった 時代毎の変化にも対応しつつ、国民の生活保障の強固な基盤づくりを目指している。

このため政府は、国民全体の利益を重視した制度改革の全体像を提示するため、今まで 以上に国民の意向を取り入れていく意思を表明している(厚生労働省,2012a:218-245)。

「医療サービス」という概念がはじめて公的な文書に登場したのは、厚生白書(1995 年版) においてであり、ここで医療とは、「人が生まれる時から死ぬときまで、国民一人ひとりに 密接に関連するサービス」とされた(厚生省,1995;井部,2007)。

広辞苑によるサービスとは、「奉仕、給仕、接待であり、物質的生産過程以外で機能する 労働」である。そして近藤(1999)は、「人間や組織体に何らかの効用をもたらす活動であり、

市場で取引の対象となる活動」と定義付けている。

著者は、サービスとしての保健医療は、生命の誕生から臨終を通して、生命の尊重と個 人の尊厳を貴重とした国民にとって欠くことのできないサービスの一つであると考える。

医療サービス利用者との信頼関係に基づきながら、単に治療のみに止まらず、疾病の予防 のための措置、並びに、リハビリテーションを含む良質で適切な人的支援とも言える。そ して、近年における保健医療の現況としては、患者を中心とした道を進むべく、インフォ ームド・コンセントやセカンド・オピニオン、個人情報の保護といった医療サービス利用 者を護るための施策(黒田,2012b)の徹底が推し進められている。

5.2 医療サービスを受ける人々や現場の主権を重んじた政策構築

先に述べたように、わが国の医療サービスは、国民が健康で文化的な生活が送れること に寄与できることを目的とすると同時に、その提供にあたって個人の尊厳を重視する。

橘(2004)は、従来における内閣提出法律案に関して、政策決定過程が「官僚主義」で行 われてきた点を踏まえながら、政治家がより政策形成に関わっている事実を国民に示すべ く、「議員立法の活性化」の高まりについて述べている。

新川(2004)は、「相互の特性の認識・尊重」を基礎として、市民団体・NPO と国が対等関 係のもとで「協調・協働」する当事者同士の関わりを支持している。更に、2000 年に自治 省が掲げたパートナーシップの定義を土台としながら、住民の意向を広く的確に集め、行 政への参加(あるいは参画)を拡大する市民・NPO・行政の新たなガバナンスの展望として「パ ートナーシップ型市民社会のガバナンス」の必要性も指摘し、パートナーシップ型社会像 が生み出す具体的な成果として、行政だけでは行えない市民ニーズに合致したサービスの 提供に繋がる点を示唆している。

イグナティエフ(1984)は、人間のニーズに関して語られる際に、単に人間の生存維持の ための基礎的必需品といった必要条件としてのニーズ以外にも、人間が才能を開花させて

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生きるための十分条件に該当するニーズの存在について述べている。更に、ニーズについ ては当事者だけが知っているはずの内容であり、政治を通して充足されうるニーズはいか なるものであり、そうでないニーズはどういったものなのか、この区別がどこに存在する のかについて論考し、政治が本分とすべきは人々が現に表出している欲望を充足させるこ とにあるとする。政治や社会がこの欲望を充足させ、国民の帰属を保障することによって、

国民自身が国家や社会に対してより広範な忠誠心を立ち上げる点にも言及している。

イグナティエフの論考に関連して、ディーン(2010)は、これまで驚くほど多様なやり方 で解釈され、潜在的に捉え難い概念に止まる性質を持ったヒューマン・ニーズについて、

できる限り包括的な視点で捉えようとし、その結果、人間主義的あるいは人道主義的アプ ローチであるとする。そして、ヒューマン・ニーズの概念に基づいた政治学の必要性につ いても述べ、「自己充足としての」人間の相互依存性という本質的性格を効果的な人権へと 転換するには、ヒューマン・ニーズに基づく政治学が必要であり、ヒューマン・ニーズこ そが社会政策を立案する上で中心的な存在になるべき点を示唆する。

大沢(2010)も、多様な形態と程度をとるニーズが政府や組織の側から簡略に規定できる ものではないため、種々のニーズを持つ人々自身がサービス設計の主体者となる必要性の 高さを指摘する。

著者は、医療サービスに関する政策決定においても、市民の意向を含めたニーズを的確 に反映した立法や、パートナーシップ型を生かした施策の構築が適応されるべきと考える。

公的な皆保険制度のもとで行われている医療サービスであるが故に、より一層、市民ニー ズに敏感であってほしい。「誰の、何のための医療サービスなのか」という根本的な視点を 見失うことなく、「市民の利益を向上させるためにはどうあるべきか」に関する議論の末に 導き出された医療政策は、国民の生命、並びに、生活の尊厳を保障する基盤となり得よう。

但し、わが国の医療を取り巻く財政状況や人的資源に関する制約、既存する制度によっ て提供され続けているサービス内容に基づいて、現行の医療サービスをどういった形で発 展させていけるのかについては今後の課題となる。

施策に市民ニーズを取り入れようとしても、現実的な制約から不可能な場合もある。ま た、市民ニーズを重視すべき分野と、そうすべきでない分野が存在する。これまでの医療 サービスは、国家資格を持つ専門職集団によって提供されてきた。そのため、近代日本に おけるサービス利用者は、医療サービスそのものの知識を十分に有しているとは言い難い。

市民ニーズばかりに重点を置いた政策が、好ましくない結果を生む場合も想定できる。し かし、市民が医療に関する知識を十分に持ち備えていないことが、市民ニーズを軽視する 隠れ蓑になってはならない。市民や医療現場がどういったニーズを持つのかに関する情報 は、政策構築のための重要資料である。更に、部分的であったとしても市民ニーズを取り 入れられたならば、国民が望む制度に近づけると同時に、施策の定着に一層の期待が生ま れる。そして、市民ニーズを反映させようとする姿勢こそを、わが国の医療サービス提供 における新たな根本的理念とすべきである。故に、看護職機能に関する政策構築について