• 検索結果がありません。

地域包括支援センターは、市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任ケアマネー ジャーを配置して、3 職種のチームアプローチにより、住民の健康の保持及び生活の安定のため

チーム 高度実践看護師 ⇔ 医師

2 地域包括支援センターは、市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任ケアマネー ジャーを配置して、3 職種のチームアプローチにより、住民の健康の保持及び生活の安定のため

に必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを

目的にした施設である。(資料:厚生労働省,2012d)

158

定着し、その意義についての社会的評価が確立した段階で、本格的な法改正の検討に向か うのが現実的であると判断する。

すなわち、医師法第 17 条・31 条で定められた医師の医業独占を改正したうえで、保健師 助産師看護師法第 5 条・37 条の改正までをも伴うタイプの高度実践看護師ではなく、厚生 労働省を中心に検討が進められている、「診療の補助業務として特定の医行為を手順書に従 って担う看護師」が、当面、現実的な施策案であると考える。

このタイプの高度実践看護師であれば、医師の診療補助業務として医行為を担うのであ るから、責任所在は自ずと分散される可能性は高い。しかし、それでも第 6 章の 4 節でも 述べた通り、不測の事態が発生した場合はその因果関係を立証するために高度実践看護師 への責任追求は免れない可能性の方が高い。また、医師による何らかの指示に基づいて医 行為を行った場合でも、その指示内容が的確であった場合や、高度実践看護師の過失によ って不測の事態を招いたと結論づけられたならば、この看護師に対して賠償責任が命じら れる。いずれにせよこのタイプの看護師であっても、新たな裁量権が得られたと同時に責 任範囲も拡大する。

患者や家族、現場看護師の認識(前掲表 4-2、5-5、5-10、6-6、6-12)からも、看護師 の医行為実施に対しては無条件で容認しない傾向にあり、その主な理由は安全で効果の高 い診療サービスへの確固たる価値観が存在するためと考えられる。

特定の医行為を手順書に従って担う形での高度実践看護師活動が定着し、そうした活動 に対する患者やその家族を中心とした社会全般の評価が高まれば、次にはより本格的な関 連法の改正が視野に入ってこよう。その段階では、特定の医行為を手順書に従いながら担 ってきた高度実践看護師について、それまでの業務実績を評価し、その評価が高かった看 護師に対しては NP と類似した権限を与えることが考えられよう。こうしたことを展望で きるようになるまでの間に、実践能力を的確に評価するための基準作成を進め、その基準 をクリアした高度実践看護師に対して処方権等を含むより高度な裁量権を容認する制度 を構築し、利用者の安全性と利便性を考慮した質の高い医療サービスへと繋げていくこと 目指すというのが、現実的なプロセスと思われる。

2)抜本的な法改正を行わないままで高度実践看護師を機能させる場合の課題

プライマリ・ケアを中心として機能する高度実践看護師に関して、いま現場で最も求め られているのは、在宅や高齢者施設におけるヘルスケアの限界をこれまでよりも高めるこ とではないかと思う。高度実践看護師の医行為によって、回復期にある患者や慢性疾患患 者、終末期患者に対応できるまでの診療サービスが在宅・高齢者施設で提供できたならば、

病院での医療サービスに対するゲートキーパーとしての役割を果たすことが可能になる。

そして、本当に医療機関に搬送が必要と判断された場合には、躊躇することなくそれを行 えばよい。そのような体制が確立されれば、医療機関側は、緊急の場合に備えて療養者を 速やかに受け入れられるよう病床管理に万全を期す必要性が高い。更に、そういった体制 の整備によって、急性期医療を必要とする患者を中心とした病院運営が行える。また、居

159

宅におけるヘルスケアの限界を高めることができれば、急性期を脱した療養者の早期退院 が可能になる。

それでは、在宅や高齢者施設におけるヘルスケアの限界を高めるにどのような方法が考 えられるのであろうか。この点に関しては、現場看護師に対して実施した本調査の結果か ら、高度実践看護師に求められる医行為内容が明らかになった(前掲図 6-1~6-8)。まずは、

それらの医行為に高度実践看護師が対応できるための特定医行為を設定する必要がある。

「特定の医行為を定めたものの、在宅や高齢者施設ではその必要が低い内容ばかりであっ た」、ということにないためには、本調査で得られたような結果を加味した特定医行為の設 定が望まれる。

薬物処方を例にとってみれば、従来の看護師も前もって医師から出された具体的指示に 基づきその薬物投与や量調節を実施している。この場合、従来の看護師が具備している医 学知識のみでは、薬物を投与すべきか、量調整をどの位に変更すべきかを判断し兼ねる状 況があり得るが、より高度の知識の具備を想定している高度実践看護師に対しては、療養 者に起こり得るかもしれない状況を想定し、必要性の高い薬物や量調節に関する包括指示 を予め医師から得ておくという方法が考えられる。現場看護師によって高い支持率を得た グリセリン浣腸や下剤の投与時期・量決定を行う際でも、医師が指示した手順書に基づき、

適応患者や禁忌、投与量の範囲を見極めたうえでの実施とする。

検査実施の判断は、現行法の規定に基づき医師の独占業務に該当する。医師は、診察の みでは診断し兼ねる場合、検査実施指示を行い、その所見も踏まえ診断に至る。つまり、

医師が診断・治療を行うには、検査所見の把握も重要になる。

必ずしも医師が常駐しない在宅や高齢者施設の現場において、療養者が検査を必要とす るたびに病院受診をしなければならないのでは、地域包括ケアシステムは円滑に機能しな い。そこで、検査実施についても手順書を予め準備し、それに従って高度実践看護師が所 見評価までを的確に行えるとするならば、居宅診療の限界は高まろう。手順書の中で、検 査適応と禁忌について具体的な取り決めを示し、その範囲内で実施されるのであれば、安 全性の確保に繋がる。

著者は、高度実践看護師が医師の指示に基づきながら診療の補助業務として特定の医行 為を手順書に従って担う形であっても、このように地域包括ケアシステムにおける医療サ ービスの向上に寄与する余地は少なくないと考える。

ただ、現場の状況を考えると、回復期患者や慢性疾患患者、終末期患者のヘルスケアに 対応できるまで、特定医行為を設定することが望ましいと考える。高度実践看護師に求め られると思われる医行為内容の傾向は、多岐にわたっていた(前掲図 6-1~6-8)。これを、

厚生労働省が示した「診療の補助における特定行為(案)」(厚生労働省,2013e)と照らし 合わせた場合、後者には、居宅や高齢者施設で必要と考えられる医行為に該当する内容も 存在する反面、とくに、検査実施や薬物処方に関する内容が不足しているように思われる。

厚生労働省は、地域包括ケアシステムの構築という重要課題を基盤としたうえで、居宅や

160

高齢者施設で必要性が高いと考えられる医行為について、もう少し踏み込んだ検討を行う ことが望まれる。

なお、高度実践看護師が手順書に従って行う医行為の幅が広がった場合、実施した医行 為の妥当性について、連携する医師と共に評価できる環境が存在してこそ安全で質の高い サービスへと繋がるものと考えられる。そのため、両者の物理的距離間を縮小させる必要 性は高く、高度実践看護師と医師は共に同じ医療機関や施設に勤務することが望ましい。

仮に将来、関連法の抜本的改正を行い、高度実践看護師の自律的判断に基づく医行為実践 の幅を大きく広げることを可能にするとした場合、それまで間に、手順書の範囲内で医行 為を実践し、医行為の適応や禁忌、その実施に関する留意点の理解を高めた高度実践看護 師層がある程度の規模で蓄積されていれば、新しい制度への移行はスムーズになるのでは なかろうか。こうした観点からも、安全性の高い医療サービスの提供という点に鑑み、検 査指示や診断書の記載、薬物処方といった、現在では医師が担うべきとされる医行為権限 を高度実践看護師に付与するにしても、まずは手順書による医行為から担い始めるという、

段階的なキャリア形成過程を展望するとことが現実的と思われる。

4.3 高度実践看護師の養成に必須となる移行教育及び研修

在宅や高齢者施設でサービスを受ける療養者の家族と地域医療を担う現場看護師は、高 度実践看護師が医行為を行う前提としての条件を挙げている(前掲表 7-1)。その一つが、医 行為を担うに相応しい移行教育及び研修の徹底である。

そこで、教育及び研修に関し、以下の提言を行う。

1) 高度実践看護師に課す移行教育及びこの研修の徹底

現在、わが国において看護基礎教育に加えて専門領域の教育・訓練を受けた看護師のタ イプとしては、専門看護師や認定看護師がある。しかし、「専門看護師」や「認定看護師」

は、名称や業務の独占を持つ国家資格ではない。また、日本の法規定により医行為実践が 許可されていないにも関わらず、わが国の看護系大学院修士課程でも、米国における NP に 匹敵する、高度な医行為を担う能力を有する高度実践看護師の養成が続けられている。

こうした状況のもと、どういう条件をクリアした看護師に対して法的に裏付けられた裁 量権を付与すべきかも、非常に大切な論点である。

療養者や家族、現場の看護師は、従来の看護師が傷病者に対する療養上の世話業務、及 び、医師の診療における補助業務を主体とするものと考えており、高度実践看護師につい ては、安全・安心な医療サービスを提供できるよう、十分な移行教育と研修の徹底を望ん でいた。

この点に関し、日本学術会議健康・生活科学委員会看護学分科会(2011)は、わが国にお ける高度実践看護師教育とその認証制度に関して以下のように指摘している。

「高度実践看護師と経験を積んだ看護師の最も大きな違いは、大学院教育を必要とする かどうかである。看護だけではなく専門性の発展は系統的な大学院教育によって行われる