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第 1 章 序論

1.4. 本研究の目的と概要

以上に述べた通り、HTB ナノ粒子の示す光吸収の機構については多くの先行研究がなさ れてきたが、いくつかの未解明点が残されていた。具体的には、①工業的に製造された Cs-HTB ナノ粒子でも Cs-HTB 構造に起因する誘電応答の異方性と、粒子ごとに誘電応答がばら つくという 2 つの仮定により、実用 Cs-HTB ナノ粒子の吸光曲線を説明可能である。しか し、これら仮定が真実であるかどうかの検証実験はなされてこなかった。またドープ元素の 異なる Rb-HTB と Cs-HTB は、バルクの単結晶試料では類似した誘電特性が報告されてい るにもかかわらず、②工業的プロセスで製造した Rb-HTB ナノ粒子は Cs-HTB ナノ粒子と 異なる光学吸収(より高い透明性)を示し、その原因も解明されていない。本研究の目的は、

工業的プロセスで製造されたタングステンブロンズの未解明点①と②をナノプローブを用い た電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いて解明することにより、熱線遮蔽材料の光学特 性改善のための開発指針を得ることである。

第3章では、工業的プロセス(気流還元+湿式粉砕)で合成した Cs-HTB ナノ粒子が異 方的な誘電応答を示すか否か、及び個々の粒子の誘電応答がばらついているか否か、の 2 点

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の解明を目的とした研究を行った。Aloof-beam を用いた EELS 測定を行い、電子線とナノ 粒子の相互作用の方向を制御することで、HTB 構造の各方向に対応する異方的な誘電応答 を誘起することを試みた。プローブ位置に応じて異なるエネルギーにピークを持つことを 実験的に観測し、工業的に製造された Cs-HTB ナノ粒子 1 粒の異方的な誘電応答を初めて 観測した。13 個の粒子に対して測定を実施し、全粒子で異方的誘電応答の存在を確認した 一方、粒子ごとのピークエネルギーが測定誤差を超えたばらつきを示すことを明らかにし た。またばらつき範囲がナノ粒子分散体の吸光曲線の半値幅とおおむね一致したことから、

広い近赤外吸収が異方的誘電応答と粒子間ばらつきにより実現されている事を初めて明ら かにした。さらに、ばらつきの要因を考察し、粒子形状の異方性と結晶方位の相対関係がピ ークエネルギーのばらつきの主要因である事を明らかにした。以上の知見から、粒子形状ば らつきの抑制/意図的導入による吸光曲線幅の制御が可能であることを示した。

第4章では、q 分解 EELS を用いて、工業的プロセス(気流還元)で合成されたバルク Rb-HTB について、Cs-Rb-HTB よりも高い透明性の起源の解明を目的とした研究を行った。工業 的プロセスで製造された Rb-HTB の電子回折図形には Cs-HTB では観察されなかったスト リークが存在し、周期の乱れが示唆された。工業的プロセスで製造された Rb-HTB におい ても、⊥c 方向と//c 方向の2つのピークが観測され、2 つの異方的なプラズマ振動の存在 が確認された。しかしながら、q~0 において//c方向のピーク強度が弱く明瞭に観察されな いことが分かり、これが Rb-HTB ナノ粒子の光学吸収(q~0)で Cs-HTB ナノ粒子と比べ 透明性が高い理由であると特定できた。また、Rb-HTB の EELS ピークエネルギーは Cs-HTB より小さく、またピーク半値幅が大きいという特徴を示した。化学組成分析により、

Rb-HTB 試料は、Cs-HTB に比べアルカリ欠損が多く、酸素欠損は少ないことが分かった。

プラズモンのダンピングは Rb 欠損に起因する一方、プラズモンエネルギーの違いは、Rb-HTB の酸素欠損量が Cs-欠損に起因する一方、プラズモンエネルギーの違いは、Rb-HTB よりも少ないことに起因することが明らかとなった。以上の 知見から、アルカリ及び酸素欠損量の制御による Cs-HTB の透明性制御の可能性を示唆す

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