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望まない妊娠の対応とケア 1.若者の性行動の現状

ドキュメント内 学校医委員会/諮問 (ページ 84-87)

1.PTSD

Ⅳ 望まない妊娠の対応とケア 1.若者の性行動の現状

10 代での人工妊娠中絶術は、平成 7(1995)年を境に増加傾向にある。それに並行し て性感染症も増えており、とくにHIVの新規感染者の約40%は10代・20代の若年者が 占めている。この問題は東京だけではなく、全国的にも同様の状況となっている。

若者の性行動は若年化しただけではなく、その性質も変化しており、性交渉の多数化が問 題となっている。不特定多数の性交渉は性感染症罹患、望まない妊娠・出産のリスクが高く、

社会的問題に拡大している。また、性交渉そのものが、いわゆるカジュアル化、スポーツ感 覚化しており、正しい性知識の欠如により、望まない妊娠・分娩を引き起こしている。

最近、思春期におけるメディアが問題になっている。インターネット、スマートフォン

(スマホ)、携帯電話による新しいかたちの「援助交際」の出現は予想もできないことであ った。商業主義による急速なメディアの普及によって、中高生は重大な健康問題をはじめ、

性犯罪に巻き込まれるなどの諸問題を抱えるようになった。

若年者は性行為によって生じるリスクを十分に理解していないことが多く、自らの性行為 をコントロールする力と、相手からの性行為をコントロールする力が低下している。インタ ーネットによる若年者の健康被害(視力や体力の低下)や日常生活のバランスの変化などは、

すでにスマホ依存症の問題もあり、今後十分に学校教育で検討されるべき問題である。

中学・高校生による人工妊娠中絶は、トラウマによって人生計画が大きく狂うことがあり、貴 重な人生の崩壊に通じるゲートウェイとなりうる。「自分を大切にすると同時に、他人も大切に する思いやりの心」の育成が強く求められるが、その土台となる「自己尊重の意識」は一朝一夕 で形成されるものではなく、時間をかけた家庭・学校・社会の教育ネットワークが必要である。

性教育に不信感を持ったり、その効果を認めたりしない教育者や、性教育そのものを否 定している政治家もいるが、性に関して自らの考え方と行為に迷いを持っている中学・高 校生に、健全かつ適切な性教育を教授することは不可欠である。

教育現場の養護教諭を中心としたスタッフが、学年に応じた精神的・身体的発達を考慮 した性教育のカリキュラムを系統的に作成・実施することは極めて重要である。保護者に 対しても同感覚の教育情報を伝達し、親子間で「性の話」ができれば理想的である。

近年のHIV感染者・エイズ患者の発生動向(平成24年速報値)

(出典:厚生労働省エイズ動向委員会報告)

2.若者の妊娠・中絶の現状

平成23年度における全国の小・中・高校生を含む未成年の女性による出生数は1万3318 件である。同年の人工妊娠中絶実施数は2万903 件であるが、そのうちの約10%が未成 年の女性に実施されている。

東京都における平成25年4月~26年3月の人工妊娠中絶数は2万6061件であり、そ のうち未成年に実施された数は1863件で、全体の7.2%にあたる。

人工妊娠中絶統計表 十代の人工妊娠中絶年齢別件数

(平成254月~263月) (平成254月~263月)

年齢 件数 比率

(%) 妊娠週数 年齢

~13 14 15 16 17 18 19

19歳以下 1,863 7.2 満 7週以前 8 26 64 143 197 372 810

20~24歳 6,707 25.7 満 8~11週 4 30 90 154 211 377 866

25~29歳 6,201 23.8 満12~15週 3 9 13 25 25 38 113

30~34歳 5,070 19.5 満16~19週 2 4 13 11 7 12 49

35~39歳 4,089 15.7 満20~21週 1 0 4 6 5 9 25

40~44歳 1,991 7.6 合計 18 69 184 339 445 808 1,863

45~49歳 139 0.5 (東京産婦人科医会)

50歳以上 1 0.0

合 計 26,061 100.0

3.若者の出産後の問題

未成年による望まない妊娠・出産の結果、結婚した例の離婚率は極めて高く、約75%と されている。また、児童虐待の頻度も高く、公私的機関や児童相談所への相談件数は増加 の一途を辿っている。

「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」(社会保障審議会児童部会児童虐 待等要保護事例の検証に関する専門委員会)第6・第7次報告では、「望まない妊娠・出産」

が虐待死事例の多くにみられると報告している。子ども虐待による死亡例の加害者は実母 であり、望まない妊娠は実母の妊娠期・周産期の主な問題点として挙げられている。

4.望まない妊娠・出産防止

妊娠・出産は女性の一生涯における重大なイベントであることを認知させ、安易な性交 渉に陥らないことを説くべきであるが、それ以前に正しい避妊(経口避妊薬、IUD、緊急 避妊)の方法を、性教育の一環として学校教育の中にカリキュラムとして取り入れ、徹底 教育を施すことが重要である。

望まない妊娠防御の根本は「自己尊重・自己決定」そして「思いやりの心」を育てること である。性教育は人間教育の一環であり、「性(セクシャリティ)」は決して精神的・身体的・

社会的・経済的に無視できないものであることを示すものでなければならない。若年者は自 ら性を直視すべきであり、生じた疑問を解決できる環境を用意することは社会の責務である。

東京都教育委員会による「性教育の手引~高等学校編~」(平成17年3月)では、小・

中・高等学校いずれの学習指導要領にも「性交」を具体的に指導することは示されていな いという考え方が明記されている。また、「性感染症の予防方法について、性的接触を避け ること。コンドームの利用が有効であることを理解させる」としながらも、「中学 3 年生 にはコンドームの装着に関しては指導してはならない」としている。

若年者の性感染症・人工妊娠中絶が依然として改善方向に向いていない現在、中学・高 校生に対しては、具体的な指導を実施する時期に来ている。性感染症予防にはコンドーム、

インフルエンザ予防にはマスクの着用という常識レベルになれば望ましい。

避妊に最も有効であり、副効用も多くあるピルに関しては、東京都教育委員会の「性教 育の手引~高等学校編~」には

ほとんど記されていない。低用 人工妊娠中絶時の避妊の状況

量ピルは確実で簡単な避妊法で (避妊なし52%、避妊あり48%)

あり、ドイツでは15~49歳ま での女性のピル服用率は60%

近くになっている。欧米諸国で は、高校レベルでピルに関する 教育が充実しており、女性健康 の確立に貢献している。

ピルは避妊以外にも、月経困 難症、過多月経、子宮内膜症、

良性乳房疾患、卵巣がん、大腸 がん、貧血、にきび、良性卵巣 腫瘍、子宮外妊娠などに有効で あることが判明している。わが 国もピルに関して教育現場で指 導する時期に来ているが、養護 教諭や保健体育教諭だけではな く、地域の産婦人科医師の助言

を受けて、正確な知識の普及に (平成19~20年度厚生労働科学研究、

努めるべきである。 876名の中絶患者への調査より)

5.若年者の妊娠出産等についてのサポート

若年妊娠の周産期予後に関しては、周産期死亡、低出生体重児、早産、妊娠高血圧症候 群などの周産期異常の頻度が高く、産後のうつ病発生リスクも高い。身体的、精神的、経 済的、社会的にも問題が多く、児の父親との継続関係、友人・家族との疎遠により孤独感 が増し、育児に関して不都合な状況が発生する。学業の中断なども大きな不安材料となり、

児の発育・発達の障害や虐待の原因となっている。

これらの諸問題解決のために、個人レベルでは解決不可能な問題に対しては、家族・友 人・教育現場・地域・行政の支援が不可欠である。分娩後の若年母親のおよび出生児のフ ォローアップ、養子縁組の法制化・充実化など課題は山積である。

Ⅴ 児童虐待

ドキュメント内 学校医委員会/諮問 (ページ 84-87)