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学校安全からみたメディア対策(ICT を含む)

ドキュメント内 学校医委員会/諮問 (ページ 74-81)

その他

Ⅱ 学校安全からみたメディア対策(ICT を含む)

1.メディアの抱える諸問題

(1)メディアの子ども成育コミュニティへの影響

①テレビの視聴と発達への影響

日本小児科学会「こどもの生活環境改善委員会」では、乳幼児のテレビ視聴の発達への影 響を検討した結果、長時間視聴は 1 歳 6 か月時点における意味のある言葉(有意語)の出 現の遅れと関係があること、とくに日常やテレビ視聴時に親子の会話が少ない家庭の長時間 視聴児で有意語出現が遅れる率が高いこと、このようなテレビの影響にほとんどの親が気づ いていないことが示され、乳幼児期は言語発達に重要な時期であり、テレビ視聴の影響につ いて親も社会も認識して対処していく必要があることから、提言がなされた経緯がある1)

今回、日本小児連絡協議会において、子どもと ICT(スマートフォン・タブレット端末など)の健全 使用や安全のための提言が、保護者や医療関係者、教育関係者などを対象に行われた(P.109)。

②多機能携帯電話のスマートフォンの普及と子どもの健康にもたらす問題性

手軽に持ち歩けて、パソコンのようにインターネットやメール、各種のアプリ(応用ソ フト)が利用できる多機能携帯電話のスマートフォン(スマホ)の普及は、子どもの健康 にもたらす問題性として、近年急速に、ますます強いものになったと考えられる。

実際にインターネットは、テレビやテレビゲームなどの他のメディアと比べても、多く の健康問題を引き起こしうる要素を持っている。従来のメディアについて心配されてきた ことは、基本的に悪影響という受け身主体の問題であるが、インターネットでは、これに 加えて悪用問題という反社会的な要素が加味される。

悪影響とは、その使用により、利用者の特質が望ましくない方向に変化させられること である。たとえば、視力や体力が衰える、長時間使用で生活リズムが乱れるなどは、これ に該当する。これに対し悪用問題とは、ネットいじめ、インターネットでのコンタクトに 起因する性犯罪、殺人事件にまでエスカレートするストーカー行為などが該当する。

子どもがスマホを持つことのよい点と悪い点(村田光範論文より)

よい点 悪い点

①開かれた、広範囲の仲間や組織に情報を発信 し、そして開かれた、広範囲の仲間や組織から 情報の収集ができる。

②メールはいつでも、どこからでも発信できるの で、電話のように相手が出ない限り(留守電は あるが)連絡が取れないという不安が少ない。

③保護者側からは、子どもに関する各種の情報収 集が可能である。

④子どもの側からは、緊急時に現在の位置情報な どを発信できる。

⑤漢字の読み方、書き方ゲームやパズルゲームな どの教育的な面での利用ができる。

①情報を交換する相手の現実の姿がみえない。

このためにトラブルや、ときに犯罪に巻き込 まれることがある

②情報の発信と収集が偏ったものになり、仲間 同士のトラブルの原因になる。ときには犯罪 に発展することがある。

③安易な情報の発信と収集、言い換えると情報 の信憑性の検討がなされないことが多い。

④二次情報や三次情報ばかりを収集して、一次 情報の重要性を忘れる傾向がある。

⑤インターネット嗜癖による健康障害が問題 になっている。

村田光範「子どもとICT、子どもたちの健やかな成長を願って」

(公益社団法人日本小児保健協会発行「小児保健研究2014」)より

すなわちインターネットは、利用者の特質を変化させるのではなく、問題行動をしよう とする人物の強力な道具となる点で問題性を持つことになる。また、間接的には個人情報 の流出もこれら両者に入るかも知れない。

このようにメディアの中でも、パソコン、スマホ、タブレット端末など、すなわち ICT は、インターネットの問題性として子どもの心身の健康に及ぼす影響は次の(2)に述べる ように、はるかに大きく重大であるので、その使用に関する情報モラル教育などの適切な指 導を急ぐべき状況について、教育関係者や保護者などに対して提言を要すると考えられる。

(2)ICTの悪用問題と子どもの健康被害

ICTの悪用問題と子どもの心身の健康被害の実例を以下に記す2)3)

①性犯罪

ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などを通じて小児性愛者や悪意ある大人 と接触し、直接会うことから性犯罪が発生する。

②ストーカー行為

私立高校 3 年生の女子が、フェイスブックで知り合った男子と交際を始めるが、その後 ストーカー被害に遭い、殺害されるという事件が起きた。

③いじめ

インターネットを通じて、相手を罵るメールを送ったり、書き込みを行ったりして、相 手に心理的ダメージを与えるもの。

④自殺

自殺を肯定しうる情報は、インターネットでは容易に触れることができる。そこでは自 殺の手段に関する情報があり、また自殺仲間を集めるツールとして使われる。自殺を助長 する潜在力が強いと考えられる。

⑤薬物

インターネットでは、違法薬物やその入手方法に関する情報や、SNSを通じて入手でき る密売サイトが存在する。

⑥SNS依存症

2 年前まではインターネットから離れられないネット依存症の多くは、オンラインゲー ムにはまってしまった人たちだったが、最近はスマホやタブレット端末を使って SNS に 熱中する依存症が大きな問題となっている。

いつでもどこでも持ち歩き、ネットを通じて他者とコミュニケートできるため、SNSが 気になって一瞬でもスマホを手放せない。同級生のメッセージの交換から抜け出せない。

昼夜が逆転し、食事中でも手放さず、成績は落ち、家族との会話が無くなる。とくに小さ な子どもを育てている母親たちに多い。ママ友同士で SNS を始め、子育てをほったらか しで一日中SNSに熱中する。

その他、⑦暴力性、⑧不適切な性情報、⑨うつ、⑩視力と体力、⑪アプリの利用者に対 するプライバシー保護の無い不正アプリの横行など3)の問題がある。

【参考文献】

1)乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です,日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会.

(http://www.hakujyuji.com/media-syounikagakkai.htm)

2)社説:ネット依存 付き合い方を考えよう,毎日新聞,平成25819日.

(http://mainichi.jp/opinion/news/20130819k0000m070117000c.html)

3)坂元章:インターネットとヘルスプロモーション,小児内科vol.44,1354-1357,2013.

4)村田光範:子どもとICT、子どもたちの健やかな成長を願って,小児保健研究73No.3,384-396,

2014.

2.精神科領域

学童期の小学校 5~6 年生で、子どもの脳は大人の脳と同じように完成されていき、男

子は 1400g、女子は 1300g ぐらいの重量になる。この頃までの生活環境が、心と体の成

長にとって大切である。

たとえば、野原、山、川、畑などで見つけたカエルやトンボとの出会いが、体験記憶と して観察力を育てる。あぜ道を走り回った運動量で筋力が強化され、体力作りになる。心 と体の両方を育てることで、大人としての判断力が身につくようになる。やがて中学入学 となり、勉強量が増えてくる。それに耐え抜く心と体が作られるのがこの時期である。

現在、小・中学生が学校と塾との間の時間に、スマホや携帯電話、携帯ゲーム機などの 機械文明と触れることが当たり前になってきている。この弊害を防ぐため、機械と接する 時間を1日1~2時間に制限する必要がある。

(1)接する時間を制限する理由

① 学校を卒業して社会人になったが、就職後、半年から1年で会社を辞めてしまう人が 多い。社会人になるまでに機械文明と付き合ってきているので、他人と付き合う時間が 少なくなり、対人関係(上司、同僚)がうまくいかないコミュニケーション障害から体 調不良を起こして、仕事を辞めてしまう。

最近、多くの若者(18~25 歳ぐらい)が「現代型うつ病」を患っている。また「サ ザエさん症侯群」といって、日曜日の夜6時頃になると、動悸、めまい、吐き気、うつ 気分を生じる人がいる。明日、会社で上司から怒られるのではないかという不安から、

本格うつ病に入る人も目立っている。

② 小・中学生の脳は、大人の脳に完成したばかりである。刺激の強い機械文明と長時間 接することで、脳がダメージを受けやすくなり、やがて社会人として生活するようにな った数年後に、テクノストレス症侯群を引き起こす。症状としては、眼の奥の痛み、耳 鳴り、めまい、頭痛、吐き気といった自律神経症状が中心である。また、車の運転中に 一時的記憶喪失(5秒程度)を起こし、交通事故の原因になることもある。

テクノストレス症侯群は最近始まったばかりの病気であり、この先かなりの広がりをみ せるであろう。そして、テクノストレス症侯群とともに、現代型うつ病も若い世代で増加 している。どちらも携帯電話などの機械と長時間接した末に、脳疲労を招いて起こる。

小・中学生の育ち盛りは、友だちと運動して、大いにしゃべり、大いに笑い、大いに 考えるといった、人間としての自然の生活時間を大切にしなければならないといえる。

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