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整形外科領域(創傷、運動器疾患)

ドキュメント内 学校医委員会/諮問 (ページ 36-39)

1.創傷に対する処置

創傷とは、機械的外力による皮膚や軟部組織の損傷で、裂傷(切創)、刺傷、挫傷に分け られ、また、皮膚損傷を伴う開放性損傷と非開放性損傷に区別される。

皮膚損傷を伴う開放性損傷では、創の洗浄は極めて重要である。洗浄の目的は、創内お よび創周囲皮膚表面を洗い流すことにより、付着している異物を除去したり、細菌数をで きる限り少なくしたりすることである。創洗浄には、一般的に生理食塩液が推奨される。

水道水では細胞外液との浸透圧により、細胞損傷の危険があるとの見方もあるが、流水に て洗浄する限り、その可能性は低い。洗浄液量は、創長1cmにつき10ml以上が望ましく、

それ以上の量に制限はなく、洗浄しすぎるということはない。

止血は圧迫止血を基本とし、清潔なタオルやガーゼなどで圧迫する。湿潤環境を保持す るため、創部を水で浸したタオルやガーゼで覆い、ラップで密閉する。なお、傷口をこす ると血が止まらないので、こすらないようにする。創部や血液には、感染予防の観点から、

できるだけ触れないようにし、アイスパックで冷やすことも良い。

釘やガラスを刺した刺傷の場合は、静かに抜いて洗浄し、圧迫止血を行うが、さびや土で 汚染されていることが多いので、化膿しやすく、破傷風の危険もあるので注意が必要である。

なお、外傷後に破傷風を発症するか否かを予想することは困難であるが、アメリカでは American College of Surgeons(ACS)が、破傷風を起こす可能性があるか否かを判定できる ように、創部の性状から基準を作成している。その基準によると、破傷風を起こす可能性の高い 創傷は、受傷後時間がたっているもの、創面に異物などを認め、壊死組織や感染徴候のあるもの、

創の深さが 1cm を超えるもの、神経障害や組織の虚血を合併しているものなどとなっている。

人間や動物の唾液にも、芽胞化した破傷風菌が存在することもあるので、注意が必要である1)。 動物や人による咬創も、傷口は小さいが深部に及んでおり、口腔内に存在する病原微生 物により感染率が高いので、注意が必要である。

2.運動器疾患の急性期の処置

損傷部位の障害を最小限にとどめるためには、初期の適切な処置が極めて重要であり、

RICE処置が基本である。

(1)安静(Rest)

損傷部位の腫脹や、血管・神経の損傷を防ぐことが目的である。副子やテーピングによ って損傷部位を固定する。

固定範囲は、けがの部位に隣接する上下2関節を固定することが基本である。上腕骨、

肘、前腕骨、手関節では、上腕から手まで副子固定を行い、その上から三角巾固定を行う。

手、手指では、手関節周辺から手指まで、膝から足では大腿から足まで固定する。

(2)冷却(Ice)

二次性の低酸素障害による細胞壊死と、腫脹を抑えることが目的である。ビニール袋 やアイスバッグに氷を入れて、患部を冷却する。15~20 分冷却したら(患部の感覚がな くなったら)外し、また痛みが出てきたら冷やす。

冷却の目的で冷湿布が用いられることが多いが、水分を含むパップ剤には冷却作用があ るものの、1℃程度の皮膚温低下であり、氷に比べて冷却効果は極めて弱い。

(3)圧迫(Compression)

患部の内出血や腫脹を防ぐことが目的である。スポンジやテーピングパッドを、腫脹 が予想される部位にあて、テーピングや弾性包帯で軽く圧迫気味にする。この際、ときど き指先などをつまんで、感覚や指の動き、皮膚、爪の色をチェックする。

(4)挙上(Elevation)

腫脹を防ぐことと、腫脹の軽減を図ることが目的である。損傷部位を心臓より高く上げ るようにする。

3.運動器疾患の慢性期の処置

(1)骨軟骨障害

少年野球選手を対象とした調査では、半数近くが肘の疼痛既往があり、X線検査で2割 近くに骨軟骨障害を認めたとしている2)

このうち、最も多いのが上腕骨内顆障害で、これは上腕骨内側上顆に付着している手や 指の屈筋群に、骨が引っ張られて生じるものである。外側の骨がぶつかることによる上腕 骨小頭障害は、頻度は少ないが遊離体を形成し、変形性関節症へ進行することがあるので 注意が必要である。いずれも初期や進行期では、投球の完全中止により治癒するが、投球 を続けた場合や発見が遅れた場合には手術が必要となる。

次に、成長期の肩痛の代表的な障害に、上腕骨近位骨端線障害がある。骨端線の開大と、

骨頭の滑りをきたす点に特徴があり、圧痛や最大外旋時の疼痛が消退し、開大した骨端線 が正常化するまでは投球を中止する必要がある。無理をすると骨端線の早期閉鎖をきたし、

関節の変形や、上腕骨の成長障害をきたす。

このような成長期の骨軟骨障害の予防は、over useに主眼を置き、成長に応じた質量の スポーツ活動の実施が重要であり、障害の早期発見のための検診制度の確立や、選手・指 導者・保護者を含めた学校や競技団体、行政、医療の三者の連携強化が必要である。

(2)シンスプリント

陸上選手やサッカー、バスケットなど、ランニングやジャンプをよく行う競技に起こり やすく、運動時および運動後に、脛骨中央から遠位1/3の内側後方を中心に痛みが起こる 過労性障害で、脛骨疲労性骨膜炎とも呼ばれる。

足関節を底屈する筋や筋膜の、繰り返し加えられる牽引による脛骨の骨膜の炎症である。

発生の要因としては、痛みが強い場合、慢性化を避けるために運動量を減らす必要があり、

アイシング、筋力強化やストレッチを行う。インソールも効果的で、クッション性が良く、

かかとの安定したシューズを選ぶことも重要である。

(3)疲労骨折

1 回の大きな外力による通常の骨折とは異なり、骨の同じ部位に繰り返し加わる小さ な力によって、骨にひびが入ったり、これが進んで完全な骨折に至ったりする状態をいう。

発生要因としては、選手の筋力不足や柔軟性不足、また、オーバートレーニングや不適切な靴、

固すぎたりする練習場などがあげられる。年齢は16歳がピークであり、上肢に比較して下肢が 圧倒的に多く、約90%を占める。部位別では、脛骨、中足骨、腓骨の順に多く、下肢全体の85%

を占める3)。運動を制限し、ギプス固定や足底板を用いれば、ほとんどが骨癒合を得られる。

(4)腰椎分離症

スポーツを活発に行っている 10 歳代前半の青少年に、運動時の腰痛で始まる。発症年 齢のピークは13~14歳であり、第5腰椎に好発し、体を反らす動作で腰痛が増すのが特 徴である。腰椎の後ろ半分であるリング状の椎弓の、力学的に弱い斜め後方部分に疲労骨 折を起こしたものである。運動を休止し、コルセットや薬物療法で痛みをコントロールし た後、腹筋や背筋の筋力強化とストレッチを行う。

(5)側弯症検診

脊柱側弯症の 80%を占める特発性側弯症は、10歳以降に発症し、ほとんどが女子で、

右凸の胸椎側弯が多く見られる。背が伸びる思春期に進行する例が多く見られ、側弯が一 度進行すると自然に治ることはない。

側弯症発見のチェックポイントは、肩の高さの非対称性、肩甲骨の非対称性、ウエスト ラインの非対称性、肋骨隆起があげられる。前屈検査では、左右差が7~8mm、傾斜計に よる傾斜角で5°以上になるようであれば専門医を訪れる必要がある。疑わしいものには、

ぜひX線検査を含めた二次検診の受診を勧めていただきたい。

二次検診で異常と報告された児童生徒については、学校医、学校関係者は児童生徒およ び保護者に対して、早期に治療を受ける必要性を説明し、十分に理解を得る必要がある。

専門医による診察の結果、側弯が20~24°の軽度のものであれば、約20%は何も治療 しなくても改善し、約 60%のものは治療しなくても進行しない。しかし、残りの約 20%

の側弯は進行性であり、残念ながら、これらの側弯の予後を初診時に判定することはでき ない。経過観察しながら適切な治療法を決めることになる。この間、単なる牽引や民間療 法は、側弯の進行を防ぐのにはまったく無効である。また、治療の必要がある場合には、

多くは身体の骨が成長を続ける期間のみであることを説明する必要がある。

装具治療では、装具の装着時間を厳しく守る必要がある。自分の都合で装具を外してし まうと、治療の効果は得られない。

進行性の側弯を、それ以上進行させない方法は、装具を使って側弯を矯正し、同時に、

この矯正した位置を装具で常に保っておくこと以外にない。医療機関で定期的な観察が必 要とされる生徒には、専門の整形外科医のもとで、定期的に診察を受けるように指導する ことが大切である。さらに、異常なしと報告された生徒についても、少なくとも中学校卒 業までは、毎年定期的な脊柱検診を受けさせる必要がある。

【参考文献】

1)山根一和ほか:外傷後の破傷風予防のための破傷風トキソイドワクチンおよび抗破傷風ヒト免疫 グロブリン投与と破傷風の治療.IASR Vol.23 No.1:4-5.2002

2)柏口新二ほか:成長期のスポーツ障害、NEW MOOK整形外科No.3.スポーツ傷害(越智隆弘 編):68-77.金原出版.1998

3)内山英司:疲労骨折の疫学.臨床スポーツ医学20:92-98.2003

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