第3章 短時間教材による
第2節 短時間教:材「切り紙の 構成」 の考え方
前にも述べたように短時間教材の授業は、発想、表現、鑑賞という過 程を、2時間の中に構成しなければならない。また、生徒たちが興味を
もって学習し、表現することを通して学習の目標を達成できるよう、授 業の構成を工夫しなければならない。
「切り紙の構成」による短時間教材の授業を展開するに当って、授業 構成上考慮した主な内容は、次のようなものである。
①はさみやカッターナイフでつくること
生徒たちは絵を描くことには抵抗を持っている。また、線で表すよ りも、面で表すことのほうが、明快な形をつかむことができる。この 2点から考えて、まず、はさみ、カッターナイフを使い紙を切って表 すことによって、生徒の技術的な抵抗感を除去することができる。さ らに、切り方によってさまざまに変化する形を見ながち発想していく ことは、その変化に興味・関心が持てるであろうし、また発想の拡散 が期待できると考えた。
②4cm×4cmの紙を基準にしたこと
与える紙の大きさは、生徒の作業姿勢に大きなかかわりを持つ。大 きな紙を与えれば複雑な形が期待できるが、それだけ時間を必要とし、
また、つくったものを並べて比較する広い場所を必要とする。それに、
極端に大きな面は生徒の集中力を失わせ、散漫な表現となる恐れを含 んでいる。生徒に学習の中で緊張感を持たせ、その持続を期待すると き、紙の大きさは作業における抵抗に配慮し、また作品の比較ができ、
発想の広がりが望める配慮が必要である。その結果、4cmX4cm
の紙を与えることが最適であると考えた。
③1辺から切りこみ、同じ辺に出る条件を守ること
生徒に豊かな発想をさせるためには、発想が拡大、拡散していく条 件を守らせることである。そしてその条件を満たしながら、違った発 想を次々に考えさせることが、発想の質の差の比較をさせるもとにも
なる。
例えば、「正方形の紙を2つに切ってつくる」という条件も考えら れるが、このように条件を緩めるとさまざまなタイプの発想が出てき て、切った形を集めて見させても、条件をもとに豊かな発想をさせる 意味はなくなり、質の差の比較もできない。生徒に満足感を与えるこ ともできないと考える。またこの場合、どのように切っても2辺に切 り分ければ条件を満たすことになるので、発想が安易に流れる危険性 がある。そこで、「1辺から切り込んで同じ辺に出る」という発想の 条件提示をすることに決めた。
④うまい、へたの判別ができにくいこと
生徒たちが美術で持っている表現抵抗は、作品の結果を比較して、
うまい、へたで評価し、その結果、表現への自信を喪失していくこと からくるものが多い。また、うまい、へたを意識していては、自由で 豊かな発想を期待することは無理である。
正確につくることと、うまい、へたの判別とは質が異なる。正確に つくることは、作業への注意力、集中力、持続力があればどの生徒で も自分の努力によって差を縮めることができるが、うまい、へたは、
生徒の芸術的センスが大きくものを言い、しかもこのセンスは一朝一 タには変えることができない。こうしたことから、生徒たちに友だち
の作品との比較をさせても、うまい、へたの比較よりも発想の違い、
形の違いということに目を向けさせるようにしたい。そのためにも技 術的抵抗差の少ない切り紙を取り上げることにした。また、切り紙に よる発想は、切り抜いた形を反転することによって予想もしない形の 生まれることが期待でき、偶然性、意外性があることから、どの生徒 も個性的なおもしろい形を考え出すことができると考えた。
⑤1人で12の形を創作すること
豊かな発想とは、この教材では、決めちれた条件のもとにさまざま なアイデアが生まれることである。初めにつくったAと違ったBを考 える、そしてA、Bと違ったCを考える、 Cができたらまた違ったD を考えるというように、自分が発想して切りぬいたものを並べて比較 しながら、次々と新たな発想に追い込む中に発想の拡大、拡散が期待 されると予想して、時間のあるかぎり創作することにした。しかし、
生徒たちが興味をもって活発な活動をすることを期待しはするが、必 ずしも教師の期待に応えてくれるとは限ちないことも予想できる。発 想への興味の持続を図るための指示・助言の内容や方策を、生徒の活 動を予想しながら考えておく必要がある。
例えば、20以上創作すると最初に提示するか、あるいはAをつく つた後に友だちのと比較しながら、友だちと違うものをつくろうと言 ってB、Cと発展させ、形の違いの価値を具体的に知らせた後で20 以上というか、いろいろ考えられる。このことについては、生徒との 授業の中で、いつ、どのように提示するかを決めることにした。
ここでは12の形を創作するよう提示することにしたが、これは、
2時間の授業時間の中でできる目安を考え、また、作業の遅い生徒に とっても選べるだけの作品ができることを考えて提示した。
⑥友だちと協調して学習する価値を知らせること
競争は、生徒のやる気を刺激する1つの方法である。生徒たちは、
競争することにはなれている。しかし、この授業での競争は、だれが たくさん考えたか、だれがうまいかという競争ではない。友だちと違 つた発想、表現をするところに競争の価値がある。生徒間に差をつけ るものではなく、質の違い、個性の違いを見させることである。その ためには、友だちの作品を見ることである。そして比較しながら、友 だちと違うところに競争の価値を知らせることである。
また、友だちの作品を見ることからヒントを得て、DからE、 Eか らFへと新しく発想し、数を増やしていくことは、個人が1人で作業 する場と、みんなが同じ場で作業することとの明らかな違いであり、
そこで友だちといっしょに学習することの価値が生かされれば、望ま しい友だちづくりがなされることであり、協力、共存の姿勢が生まれ ることが期待できる。そうした考えから、自由に見て回る場をつくる ことを考えた。
⑦生徒が主人公になること
表現するのは生徒である。教師の提示する条件をもとに、どのよう な発想をし表現するかは、生徒の学習態度にかかっていると言える。
現実に、生徒が興味を持ち、意欲を持って問題解決に立ち向かえば、
必ず教師の能力以上のものが生み出されていく。教師がどんなにがん ばっても、教師の1つの頭と、生徒40の頭から考え出されるのでは 質はともかく、量的にかなうものではない。それぞれ異なったタイプ の作品が多量に生まれれば、その中には質の高いものも当然含まれて くるだろう。このように考えてみると、どんなに質の低いと判定され るものでも、条件を満たしていれば認めることである。また、教師の
考える枠の中で教師主導の授業をするのでなく、生徒の表現を見守り、
援助する立場に立って授業の活性化を図ることである。
こうした教師の姿勢が、生徒を主人公にして授業を展開することで あると確信して、授業を構成した。
以上が、
る。
「切り紙の構成」の授業構成に当って構想した主な内容であ
第3節 …Ei;2;i:=kfill}
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短時間教材「切り紙の構成」について、教材化の考え方については先に述べたが、
この教材の考え方が中学生にどのように受け取られるか、どのような成果が期待で きるかを調べるため、大阪府堺市立長尾中学校の2年生をかりて授業実践研究をす ることにした。この授業のために次のような学習指導案を作成した。
美術科学習指導案
・日時 昭和63年10月6日(水) 第5,6校時
・場所 第2学年2組教室
・学級 第2学年2組(男子22名,女子21名)
・指導者永井邦雄 1.教材名 切り紙の構成
2.授業の構成について
中学校美術科の教材は、えてして生徒の能力と比べ難しすぎるものが多い。
本教材に関して、長尾中学校の生徒の実態については、自分の経験と美術科担 当の谷山明氏との電話連絡のみで指導案を作成したので、この学級の能力と合 わせてみて適切であるか、あるいは難しすぎるか、やさしすぎるかについては 十分な検討が成されているとは言えないが、生徒にとっては無理のないもので あると予想して、指導の過程を立案した。
生徒の美術科授業における日常の態度やきまりについても、仮想のもとに立 案したので、できるだけ学習目標が達成できるよう生徒たちに理解しやすい段