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第4節 授業実践の考察
「切り紙の構成」のA教材の授業が終わった後で、生徒たちに「今日 の授業で、気づいたこと、思ったことを何でもいいから素直に書いてく ださい。」と頼んで、アンケート用紙に書いてもちった。このアンケー
トの内容に目を通すと、いずれも素直に自分の思いが書かれており、こ の授業実践を考察する上での要点が網羅されているものであった。
そこで今回の授業実践の考察をするに当って、このアンケート 3}を 基本に置いて考察するのが最も適当と考えそうした方法を取ることにし た。以下、上記の考え方から考察していく。
このアンケートの内容を大きく分類してみると、次のような項目に整 理できる。
A.条件・発想に関すること B.技術に関すること
C.鑑賞に関すること
また、アンケートに書かれた内容は、鑑賞に関することが圧倒的に多
かった。
次に、3つの項目について、生徒の回答とその読み取りについて述べ
て行く。
A.条件・発想に関すること
1辺から切りこんで同じ辺に出る切り方については、黒板に図解し 説明したので、条件について理解できなかったというような回答をし たものは1人もいなかった。生徒の回答をあげてみると、
・黒板の図を見ると、条件がかんたんですぐわかった。
・順番に説明してくれると、工作の場合ひじょうにやりやすい。
などである。
次に、条件をもとにして形を発想する活動について、数人の生徒が 自分のアイデアの乏しいことを回答している。この生徒たちの作品を 見てみると、他の生徒との差があるかと思ったが、私が見た感じでは
自分に厳しい評価をしているように思われる。これちの生徒には、今 後激励してやるなど、自信回復を図る指導が必要と思う。生徒の回答
をあげてみると、
・私は創造力がないなあと思った。
・自分のアイデアを多く出すのは難しい。(4人)
・似たような形ばかりになってしまう。
などである。
また発想の過程で、初めは簡単なように思えたが、形の違ったもの を考えようとすると枚数が進むにつれて、難しさを感じるようである。
これは発想の乏しさとも言えるが、こうした困難さを感じながらも、
生徒は休憩時間も惜しんで製作に当っていた。ここに集団学習の価値 があると思える。一人での学習ではなかなかがんばりきれず、途中で 放棄するところを、友だちの作業を見ながら、相互刺激を受けながち 学習することによってがんばり通すことができる。そのことが友だち とともに学習することの価値を知ることにもつながるし、工夫・努力 し、やり遂げるという貴重な体験ともなると思う。この内容の回答を あげてみると、
・まったくちがった形を考えるのは、意外と難しいものだと思いまし
た。
・だんだん模様を考える時間が長くなった。
・はじめは簡単な形で、だんだん細かい形になった。
このような生徒たちに、発想の拡散をうながし、やる気を持続させ るのは教師の生徒への対応にかかっていると思う。このことについて 生徒はこんな回答を寄せている。
・先生がみんなの間を回って一人一人に声をかけるのに、ほめことば、
たとえば「うまいね」とか「きれいだね」などしか言わず、注意や 忠告などはしない。
・失敗してもしかちないし、あせらさない。
またこの授業での条件発想については、
・はじめはそんなにパターンは多くないだろうと思っていたが、つく りだしてみるといくらでもあるなと思った。
・1辺から同じ辺にくる線を引いて切るという単純そうなことだけど けっこう頭を使うし、いくらでも違うものが作れる。
と回答している生徒のように、だいたいの生徒がこんな気持ちを抱い てくれたものと思う。この回答から見ても、中学生だからといって高 度な要求をしないで、やさしい学習内容の中に豊かな発想をさせるこ
とを考え、そのような体験を積み重ねていくことが価値あることと思
える。
さらに生徒の回答を見ると、この授業では「切る」という発想の技 法を使ったので、かくと異なった楽しさ、意外性を感じ取ったものも いる。デザイン学習において発想する場合、いつもアイデアスケッチ を繰り返すばかりでなく、操作的思考を取り入れていくことは効果的 と思える。この授業で「切る」ことから発想させたユニークさが、生 徒の発想を拡大・拡散できたとも言えるだろう。
次に生徒の回答をあげて、条件・発想についてのまとめとする。
・ただ紙を切るのでなく、切る前に「どんな形にしよう」、「どんな 形になるかな?」と想像して切るところに興味をもった。
・自分で作ってて、書いてるとき、きれいだと思っても、実際切って 広げてみると、それほどでもないという模様(その逆もある)が多
く、意外に思うことが多かった。
・いざ切ってはってみると予想外の形になった。頭の中で想像するの にょい工作だし、自分で思ってたのと違う形になったりしておもし
ろい。
・どんな形になるか、想像しながら切るのはおもしろい。
・はじめてこんなことしたので、とまどった。
・思わず熱中して工作した。工作はふしぎな魅力をもっている。
・けっこうきれいな模様ができるもんだと思った。
B.技術に関すること
西洋紙をはさみで切るということは幼児の頃から経験してきたこと で、最初は抵抗を感じなかったようだが、作業をした結果、生徒たち は正確に線を引き、正確に切ることの難しさを体験を通して知ること ができたようである。この体験が、形をつくるときの慎重な作業につ ながり、切り抜いた作品を見ても、雑な切り方をしたものはほとんど みあたちなかった。この内容について生徒たちの回答の中からあげて
みる。
・正しく線を引き、正しく切ることは難しい。(5人)
・手作業でまったく同じ大きさに紙を切るのは、不可能に近い。
・線を書いたり切ったりする単純な作業でも、むずかしいんだなあと
いうことがわかる。
・ハサミは、切りにくい形は本当に切りにくくなるので、練習しなけ ればうまく切れない。
切り方とはり方で、よくも悪くもなる。
このように、学習を通して改めてはさみの使い方を知り、慎重な作 業の大切さを感じたようである。ただ、この学習を通して生徒たちの 作業を見ていると、
・毎日の生活に使用するもの(のり、はさみ、さしなど)を使って学 習する楽しさ。
という回答に見られるように、楽しそうに取り組んでいる様子が印象 的であった。
C.鑑賞に関すること
この授業の中で、生徒たちに表現、鑑賞することを通して教えたい ことの一つは、学級の友だち相互の望ましい刺激が、いかに自分の表
現を高める力となるかということである。
そのため、学級の生徒が真に協調して効率のよい学習を進めるため の連帯感と、その中で自己主張し、自分の存在価値が実感できること を期待した。このような教師の授業に対する願いに関して、生徒は次 のように回答している。
作業中にアイデアがあるときは、だまって一人でしているが、アイ デアがないと回りをキョロキョロしてしまう。
・友だちのを鑑賞するのも、大切な授業だと思った。
・友だちのを見ると、新しい考えがうかんでくる。みんなで作品を鑑 賞するのは大切なことだ。
人の作品を見ることで、自分にはない新しいアイデアがうかんだ。
・作品を作ってみると、自分と同じものを作っている人が、あちこち にいるので、ぜひお互い友だちどおしで鑑賞しあうほうがいいと思
う。
また教師の方には、学級の生徒全員が条件に縛ちれて、作る形が固 定化するのではないかという二二と、狭い条件の中で表現が拡散する ことによって作品をきびしく判別する目が育つという願いが併存した が、生徒たちは後者の方に視点が行ったようで、この教材の価値のあ
ることを確認できた。この視点からの生徒の回答をあげると、
まったく同じものがなかった。
同じように作品を作っていっても、一人一人ちがうものができてく るのでおもしろい。
・単純な形かち複雑な形まで人さまざまで、1つとしてまったく同じ というものがなかった。
というように言っている。
また、自分の作品というよりも、学級全体でこんなにたくさんのア イデアを生み出したという驚きや喜びを共有し、友だちを認める目も 育っているように思われる。友だちと比較した個人の成績に追われる 日常の中で、このように友だちを認める目が今までの中学校の教育の 中に失われていたことを痛感し、この心を育てる教育の大切さを知ら される思いがした。次にこのような回答をあげる。
・すごくこった作品がたくさんあった。
・アイデアの良さに感心した。
・楽しい作品が目についた。
・他の人はじょうずにできているので感心した。