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早材単一仮道管の破壊形態

﹈ 壊

1.3.8  早材単一仮道管の破壊形態

早材仮道管 と晩材仮道管 の稽造的な らびに強度的諸性質の相違 については これ までに多数 の研究成 果が報告 されてい る。 まず 構造 的相違 につ いてみれ ば

,早

材仮道管 は晩材仮道管 に比べ て

,薄

璧で肉 こうが広 く

,仮

道管の横断面形状は六角形 ない し長方形 で

,半

径壁

(radial wall)に

は多数の有縁 壁孔 を有す る(滝沢

 1979)。

さ らに早材仮道管の方が平均 フ ィブ リル傾角は大 きく(10〜30°),ミ セルの配列性 もやや劣 る(原田・谷 口

 1971)。

また主要構成成分の組成 については

,早

材仮道管 は 晩材仮道管 に比べ て ヘ ミセル ロースや リグニンの含有量 はほぼ等 しいが

,セ

ル ロース含有量 は常に低 い

(FENGEL 1969)。

壁層構成割合は,早・ 晩材仮道管 ともS2が圧倒的に多 く(80〜

%),壁

厚が 厚 くな る程 S2の 占める割合 もやや高 くな ることが知 られている

(FENGEL 1969,佐

伯 1970a,b)。

つ ぎに早材および晩材単一仮道管の強度的相違についてみれば

,早

材の方が晩材 に比べて破壊 (切断)

荷重, 引張強屡こともに/jヽさ く(」AYNE 1959, 1960, L EOPOLD・h/1C I N10SH 1961, JENTZEN l∝ 盟a,b,

日田 ら

 1966,PAGEら  1972),こ

の相違 はS2の ミクロフ ィブ リル傾角 とS2の 壁中に占める割合に 起因す るもの とされている

(SCHNIEWIND 1966,PACEら  1972)。

したが って,こ こでは仮道管の幾伺学的形状

,S2の

ミクロフ ィブ リル傾角

,壁

孔(第

3章

で詳述)

な どの点に着 目して

,こ

れまでに述べた晩材単一仮道管の破壊形態 とも比較 しなが ら

,ス

ギの ホロセ ル ロース化早材単一仮道管 な らびにスギの未処理早材単一仮道管(被検試料数 は少 ない )を 乾燥雰囲 気中で縦引張破壊 した ときの破壊形態について述べ る。本項で示す写真 は特 に断 らない限 りすべて ホ

9

ロセル ロース化仮道管である。

写真

71は

典型 的な切断破面を示す。 このよ うに壁 は繊維軸 とほぼ直角方向 に破 断 し

,そ

の 破 面

(と くに

S2)に

は短い とげ状の ものが多数観察 され る。 これは破壊時にS2中 を進 む亀裂の先端で ミク ロフ ィブ リル間の短 い裂 けを伴いなが ら ミクロフ ィブ リルが切断 され ることによ って生 じた ものであ ろ う。 このよ うな破壊は早廿単一仮道管の破壊過程の観察か らも推定 されているよ うに

,仮

道管が繊

維軸の まわ りに候れなが ら切断す るときに生 じる ものであろ う。 したが って

,早

材単一仮道管で この よ うな破面 を呈す る破壊様式はC―Ш型の破壊であろ う。

写真

72は

切断破面の一部を拡大 したところを示す。破面は平担でやや傾斜 していることか ら,こ 場合 の破壊様 式はC― Iも しくはC― ユ型であろ う。 しか しなが らこの型の破面 は早材単一仮道管の 切断破面では局部的に しか観察 されなか った。

写真

73は

典型的な裂け破面を示す。 S2は 晩材仮道管 に比べてかな り薄いため裂 け破面 を詳細に観 察す ることは困難であ った。 したが って このよ うな裂 け破壊の様式は破面の形態的特徴か らだけで推 定す るのは困難であ るが

,破

夢過程の観察結果 を参考にす ることによ って,この場合の裂 け破壊様式 はS―■ もしくはS―Ⅲ型の裂 けのいずれかであろ うと推定 され る。

 

また裂 け破壊の際にはS2以外 の壁層,と くに

P+Slは

S2の裂けに伴 って帯状 に引 き裂かれ るが

,S3は

S2の 裂 けに沿 って破断す る。

これ らの ことか ら

P+Slは

S2の裂 け破壊の進行 を若干阻止すると思 わねフるが,S3は裂 けの進行 の障害 にはな らない と思われ る。

写真

74は

破壊先端の マ ッチ ング写真であ る。以下 に示す破壊先端 もすべて マ ッチング写真 によ っ て検討 したが,こ こでは紙面の都合上 いずれか一方のみを示す ことにす る。

早材単一仮道管の切断破壊 は放射組織 との交差域 を横切 って生 じていることが多い。 この ことは検 鏡 した試料の

8割

以上の破壊先端 において認め られた(古川 ら 1975)。 この場合破壊 は交差域の端 付近 で生 じることが多 く

,そ

の際R―

T壁

子しは繊維軸方 向に

2分

され るか ,も しくは子と口に沿 って破 断 され ることが多 い。 これ らの ことか ら放射組織 との交差域 は早材単一仮道管 の強度上の弱点部 と考 えて差 しつか えないであろ う。また半径壁には多数のT―

T壁

子とが存在す る。 しか し写真

74に

も示 さ れてい るよ うに

,T― T壁

孔が破壊の際に

2分

され ることはな く

,む

しろ破壊は これ を避 けて生 じて い るよ うにみ える。 このよ うにR―

T壁

孔 と

T― T壁

孔 はいずれ も壁子し縁

(pit border)を

有す る 壁子とであ りなが ら

,そ

の破壊時の挙動 は著 しく異なる。

写真

75は

典型的な切断優先型破面 を示す。 しか し破面全体が このよ うに切断破面だけで構成 され るこ とは少な く

,多

くの場合裂 け破面 も同時に観察 され る。

写真

76か

79は

混合型破面 を示萌Э写真

760ま

裂 けが仮道管壁の陥没 に沿 って生 じてい る(矢 印)。 これは

PAGEら (1972)の

提案 しているよ うに

,S2の

ミク ロフ ィブ リルの らせん状配列 に沿 っ て生 じた裂 けか もしれない。写真

77で

は放射組織 との交差域で切断破壊が生 じているが

,そ

れ以外 の ところでは裂け破壊 によ って破壊 している。 これは

,破

壊が まず放射組織 との交差域で始 ま り

,つ

づいて仮道管が繊維軸のまわ りに捩れなが ら破壊す ることによ って生 じた もの と推 定 され る。写 真

(40)

78と 79で

,裂

け破壊が仮道管の隅に沿 って生 じているのが特徴であ る。 このよ うな裂 け破壊 は 晩材単一仮道管 では観察 されない。 この原因については薄い細胞壁が仮道管の隅で急激に折れ曲が っ てい るとい う単な る幾伺学的形状 によるものか

,ま

た この ところにおけるS2の ミクロフ ィブ リル配列 上の変異などの構造上の刻 Bこよるものか ,そ れともこれらとは別の原因によるものか現在のところ不明である。

写真

30と 81は

裂 け破壊優先型破面 を示す。 これ らの破面には放射組織 との交差域が含まれてお らず

,壁

孔 と壁孔 の間の細胞壁

(unpitted wa11)で

破 壊 して いる。 このよ うな場合は

,VAN DEN AKKER(1970)の

提案 して いるよ うに

,S2の

ミク ロフ ィブ リル間のせん断破壊 によ って破壊が開始 し た ことを示す ものか もしれない。ところで写真

81で

Sヮの裂 け破壊がT―

T壁

孔の縁 を周回す るよ う に生 じている。 これは早材仮道管の

T― T璧

子とが裂 け破壊 に対 して も抵抗性のあることを示す もので あろ う。

写真

32は

早材単一仮道管の典型的な縦引張破壊形態の1つで

,破

壊過程の観察結果で も示 したよ うに

,異

2つ

の亀裂 によ って破壊 した破壊先端 を示す。 この場合 はまず最初の亀裂

(一

次亀裂)が 放射組織 との交差域の端付近

(矢

印)に生 じ

,っ

づぃて別の亀裂

(二

次亀裂)が一次亀裂か ら少 し離 れた ところに生 じ

,そ

の後 これ らの

2つ

の亀裂の間を裂 け破壊が進行す ることによ って仮道管は破断 された もの と推定 される。 この型の破壊先端には

2つ

の亀裂 には さまれた部分が途中まで破壊 した状 態で破壊先端に付着 しているのが特徴であ る。

写真

33は

スギの未処理早材単一仮道管の破壊先端 を示す。 この場合 はS2の ミクロフ ィブ リルの ら せん状配列 に沿 った長い裂 け破壊が特徴である。 このよ うな裂 けの発生 は

,s2の

ミクロフ ィブ リル傾 角が大 きいため ミクロフ ィブ リルの切断破壊 に先だ って ミク ロフ ィブ リル間のせ ん断によ る裂 け破壊 が生 じたためであろ う。

これ らの観察か ら

,早

材単一仮道 管の縦引張破壊形態の特徴は,(1)放 射組織 との交差域の端付近で 切断破壊が生 じゃす いこと,(2)R―

T堅

孔 と

T― T璧

孔での破壊には相違が認め られ ること,(3)仮道 管壁 は切断破壊 と裂 け破壊の両者 によ って破断 され,と くに裂 け破壊はS2の ミクロフ ィブ リルの らせ ん配列な らびに仮道管の隅に沿 って生 じることが多い ことな どを挙 げることがで きる。

1日

4  要 約

1.木

材単 繊維の細胞壁

(単

一細胞壁 )中 における縦引張破壊時の亀裂の挙動 を直接可視化す るた めの方法(動的観察法 )を 検討す るとともに

,こ

の方法をスギの早材

,晩

材お よび圧縮 あて材単一仮 道管の破壊過程の観察に適用 した結果

,以

下の ことが 明 らか とな った。

1)SEM鏡

体 内に装着で きるよ うな小型で高精度の引張試験装置 を考案す るとともに,テ レビ走査 装置 と

VTRを

用 い ることによ り

,単

一仮道管の破壊過程 を

SEMレ

ベルで直接可視化す ることが可 能であ る。

2)早

材単一仮道管の破壊過程 は特徴的な

2つ

の破壊段階を もつ。すなわ ち破壊の第

1段

階では

,亀

裂 は放射組織 との交差域の端 に近 いR―

T壁

孔な らびに分野の細胞壁 を繊維軸に対 してほぼ直角方向

(41)

に切断す るよ うに発生 し

,こ

rq′と同時に破壊 した ところにずれが観察 され る。破壊の第

2段

階では最

初 に発生 した亀裂 とは異 る場所 に別の亀裂が発生 し

,こ

れ ら

2つ

の亀裂の端 と端 をつな ぐよ うに仮道 管壁の裂 けを主 とす る亀裂が発達す ることによ って仮道管 は2つに分断 され る。早材単一仮道管壁中 を伝替す る亀裂の先端 における破壊 モー ドは伝幡の途中で変化す るもの と推定 され る。

晩材単一仮道管の破壊過程 も

2つ

の破壊段階をもつ。

 

破壊の第

1段

階では

R― T壁

孔 もしくは

T

T壁

孔 に発生 した亀裂が S2の ミクロフ ィブ リルを切断す るよ うに繊維軸 に対 して ほぼ直角方向に伝 碁 し (こ のよ うな破壊 を切断破壊 と名づ ける

),つ

づ く破壊の第

2段

階ではS2の ミクロフ ィブ リル間 を引 き離すよ うな仮道管壁の裂 け考主 とす る亀裂が発達す る (こ のよ うな破壊 を裂 け破壊 と名づける) のが認 め られ る。

4)圧

縮 あて材単一仮道管の破壊過程 は正常な単一仮道管の それ と異な り

,ま

ず亀裂 は らせん状 うね 間の溝 に沿 った裂 け破壊 で発生 し

,つ

づ いて裂 けた ところが リボン状 に変形 し

,最

終的に各 うねが切 断破壊 され ることによ って仮道管 は破断す る。

針葉樹材単一仮道管の縦引張破壊形 態 をフラク トグラフィー的に研究す るための観察方法(静的 観察法 )を 検討す るとともに,この方法 を代表的な

9種

の針葉樹材単一仮道管

,主

として晩材単一仮 道管のS2の 破面形態の観察 に適用 し,仮 道管壁の破壊機構な らびに破壊形態に関与す る

2,3の

因子 につ いて検討 した結果

,以

下の ことが 明 らか とな った。

1)化

学的処理 を受 けていない単一仮道管(未処理単一仮道管 )を 調製す ることによ り

,木

材中に存 在す る状態 に最 も近 い状態の単一 仮道管壁の破壊形態 を観察す ることが可能 であ る。 また単一仮道管

を引張破壊す るのに適 した引張装置 を考案 した。

2)未

処理晩材単言仮道管のS2の 破壊形態を

SEMで

詳細 に調べ た ところ

,切

断破壊お よび裂 け破壊 した破面は さらにそれぞれ次の

3つ

の破壊様式 に類別で きることが分か った。 す な わ ち切 断 の

I型 (C一 I),切

断の Ⅱ型

(C― IL),切

断のⅢ型

(C―

),お

よ び裂 けのI型

(S― I),裂

けの ユ型

(S一 Il),裂

けのⅢ型

(S―

Ⅲ)破壊であ る。 これ ら

6つ

の破壊様式の発生 はS2中 における亀 裂の先端に支配的に作用す る応 力 の 種 類 (引 張 応 力 とせん断 応力 )と その作用方向

(S2の

ミクロフ

ィブ リル配列方向に平行 もしくは直角方向)によ って決定 され る もの と推定 した。

 

晩材単一仮道管 の破 面全体 はい くつかの破壊様式 によ って生 じた破面 で構成 されてお り,これ ら の破面の構成 を大別す ると

,切

断破壊優先型

,裂

け破壊優先型

,混

合型の

3つ

に分類す ることがで き

る。

4)リ

グニ ンを除去 (ホ ロセルロース化)することによ って晩材単一仮道管の S2の 破面の構成は切断 破壊優先型 に変 り

,と

くにC―

I,C―

■破面が顕者に現れ る。また これ らの破面上では独特の同心 円状模様が観察 され ることか ら

,S2に

は潜在的 にラメラ惜造が存在す ると推定 され る。

 

さらに リグ ニ ンとヘ ミセル ロースの両者 を除去 (α ―セルロース化 )し た晩材単一仮道管の外観には著 しい変化 (肉厚 円筒状 に変形)が認 め られ るばか りでな く

,破

面の構成 も切断破壊優先型 とな って

,C一

Il破

面が顕者に出現 し

,破

面上 は微細な とげ状の もので覆 われているのが認め られる。 α一セル ロース化