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仮道 管壁 の厚 さと破壊線

第 2章   針葉樹材 の切片の縦 引張破壊

2.3.3  破壊線の形状 ―マクロな破壊形態

2.3.3.2  仮道 管壁 の厚 さと破壊線

ここでは仮道管壁の厚 さの異な る切片 として同一年輪内の早材部か ら晩甘部にかけての

4つ

の部位 か ら採取 した

4種

類の板 目切片 を用 い

,こ

れ らの

RCP破

壊部の破壊線の形状について比較検討す る。

写真

95は

早材(写真①

),早

材部 に近 い中間材(写真②

),晩

材部 に近 い中間材(写真③ )そ れ と晩材(写真④)の各切片の典型的な破壊先端 を示す。写真④以外 はすべて切片の破壊直後 を示す(

④ は破壊先端 を見やす くす るため破壊先端 を互い少 し引 き離 して撮影 した)。

 

破壊直後の向い合 った 破壊先端が引張方向に対 して全 くずれていない ことか ら判断 して

,こ

れ らの切片 はいずれ も正確 に引 張破壊 された と考 えて差 しつか えないであろ う。 また破壊はすべて ノ ッチ先端か ら開始(写真中矢 印)

した ことは言 うまで もない。

 

写真か らも明 らかなように

,壁

の薄い早材切片の破壊線は繊維軸に対 し て ほぼ直角方向に画線状であ るのに対 し

,中

間材か ら晩狩切片へ と壁が厚 くなるに したが って

,破

壊 線 は波状か ら階段状へ と変化す る。 しか もここで観察 された早甘切片および晩材切片の破壊線はこれ まで に平滑切片で観察 されている破壊線 と同 じで ある。

仮道管壁の厚 さと破壊線の形状の関係 について

,SAIKI(1970b)は

スギの場合

,接

線壁 の厚 さが

2.5〜 35μ

舵 までは早材型の破壊線 を

, 35〜

4.O μη 以上では晩材型の破壊線を示す と報告 して い る。 このよ うに壁が厚 くな る程破壊線の形状が複雑 にな るのは

,前

(223)で

も指摘 したよ う に

,重

複細胞壁の ところで壁の裂 け破壊や壁間での剥離破壊が発生 しゃす くな るためであろ う。 しか

しこのよ うに破壊線が複雑 になればな る程切片中を亀裂が伝幡す るのに要す るエネルギ も多 くな り,

破壊靭性が大 きくな ると考 えられ る。

また

,こ

こで観察 され る破壊線が平滑切片のそれ と同 じであることか ら,ノ ッチ付 き切片の破壊の機 構 も平滑切片のそれ と基本的に同 じであると考 えられる。

 

したが ってノッチ付き切片のノ ッチは本実験 の 追初の 目論 どお り平滑切片中に既存の欠陥部 と同質の もの とみな して差 しつか えないであろう。

2.3,3.3  亀裂 の伝 播方 向 と破 壊線

これまではすべ て亀裂が接線方向に伝搭す る場合の破壊線につ いて述べた。 ここでは亀裂が半径方 向 に伝幡す ることによ って生 じる破壊線(すなわ ちま さ目切片の破壊線)の特徴 を板 目切片 のそれ と 比較す る。

写真

96お

よび

97は

ま さ目の早材切片

(写

96の

① )と 中間材 を合 む晩材切片

(写

真96の ② と写真

97)の

代表的な破壊線 を示す。

ま さ目早材切片の破壊線の形状は板 日早材切片のそれ と同 じである。すなわ ち破壊線はノ ッチの先 端か らほぼ直線状 に繊維軸 と直角方向に生 じている。 しか もこの場合 ,ノ ッチを放射組織のあるとこ ろに入れて も

,放

射組織 と放射組織の間の仮道管だけの ところ

(写

真96の①)に入れて も

破壊線 の形状 に変化は認 め られなか った。 この ことは早材切片では放射組織 と亀裂の伝幡 との間にはなん ら

(561

関連性 はない もの と考 えられ る(板目切片の場合 も同 じ)。 また破壊先端の形状か ら判 断 して,この 場合の重複細胞壁 中における亀裂の伝幡様式 も板 日早材切片のそれ と同 じであろ う。

ところが

,ま

さ目切片の中間甘および晩材部では破壊線の形状にい くつかの特徴を認めることがで きた。 まず第1は放射組織 に沿 った破壊線が多 い ことで あ り

,第

2は典型的な晩材部 とそれ以外の部 分 との境界部に繊維軸 に沿 った長 い破壊線 (こ れ を平井

(1947)の

呼び方 に したが って縦裂線 と呼 ぶ)が認 め られ ることであ る。

写真

96の

② は ノッチを放射組織 と放射組織の間の部分 に入れたにも力均ゝわ らず亀裂は放射組織に沿 って伝搭 した ことを示す。

 

また写真には示 していないが,ノツチを初 めから放射組織のところに入れてお いた場合 は

,亀

裂 は必ず放射組織に沿 って伝幡す るのが観察 された。 これ につ いては

,放

射柔細胞 と 接 してい る部分の仮道管壁 とそれ以外の仮道管壁 との構造的 もしくは強度 的相違が早材 に比べて晩材 では大 きい もの と考 えられ る。

写真97はまさ目切片でよくみ られ る縦裂線の1例を示 した ものである。 この よ うな縦裂線 はノ ッチ を早材側 (こ こでは中間材中)に入れた場合

(写

真97の )も 晩甘側 に入れた場合(写真

97の

)

もいずれ において も晩材 との境界部付近で観察 された。 ところで このよ うな縦裂線 は これ までに も指 摘 した よ うに仮道管壁が縦 に裂 けたのではな く

,仮

道 管間(多Sl近傍 )が 剥離破壊す る ことによ っ て生 じた もの と思 われ る。 とくにま さ目切片では縦裂線の発生部位が晩材部 との境界付近に限定 され てい ることは

,こ

の部分での仮道管壁の厚 さおよび ミクロフィブ リル傾角 (と くに

S2)の

象激な変化 に伴 って

,こ

の部分の重複細胞壁間には大 きな層 間応力が発生 してい ると考 えられ,こ れ と亀裂先端 での応力集中 とが相 ま って このよ うな ところに縦裂線 を発生 させ るもの と思われ る。 したが って縦裂 線 は早材か ら晩材へ の移行が急な木材程顕著 に現れ る もの と予想 され るが

,現

在の ところ縦裂線の発 生位置 と仮道管壁厚 さの変化 との関連性 を定量的に把握す るまでには至 っていない。

ところでま さ目切片 にみ られ る縦裂線 につ いて もう

1つ

注意すべ きことは

,こ

の縦裂線が必ず しも 切片の最終的な破断に導 く破壊線 とは限 らないことである(写真

97の

)。

 

しか しこの縦裂線の発 生 は破壊力学的にみれば

,板

目晩材切片で見 られた仮道管間の剥離破壊

(2.24参

照 )と 同様に

,亀

裂先端 に集中 したエネルギが この裂 けによ って緩和 され ることによ り

,亀

裂が再び生長 しだすために は さらに余分なエネルギを必要 とし

,そ

の分だけ破壊靭性 を高める役割 を果 している もの と解釈で き る。

以上の観察か ら

,ま

さ目切片の破壊先端では

,放

射組織 に沿 って現れ る破壊線 と晩材 との境界付近 で繊維方 向に沿 って現れ る縦裂線の2つの特徴的な破壊線が認 め られ

,こ

れ らはいずれ も仮道管壁 の 比較的厚 い部位(中間材

,晩

材)で顕著に現れ るのが特徴である。

2.3,4  仮道管壁破面の形態 ― ミクロな破壊形態

ここではノ ッチ付 き切片の破壊先端における仮道管壁 の破面形態について亀裂の伝播速度および伝 播方 向 との関連性 を

SEMで

観察 した結果 について述べ る(古川 1976)。

2,3.4。

1  亀裂 の伝播速度 と破面形 態

1)SCP破

壊部の破面

写真

98,99と 100は

板 目中間材切片 の ノ ッチ先端付近においてみ られた典型的な

SCP破

壊 部 を示す。 このよ うに亀裂がゆ っくりと伝幡 した ところでは

,仮

道管壁のS2が主 に裂 け破壊 されるこ

とによ って

,個

々の仮道管壁は長い とげ状 もしくは リボン状 を呈す る。

破壊先端 にみ られ る仮道管 には引 き抜 けた よ うな格好で裂 け破壊 しているもの

(写

真99の矢印)も あれ ば

,隣

接す る壁が互 いに逆傾斜 をな して裂 け破壊 しているもの (写 真100の矢 印 )も あ る。いずれ に して も裂 け破壊 した ところの壁の側面では剥離破壊が観察 される。すなわ ち

SCP破

壊では仮道管 壁 は歌1離破壊 を伴 いなが ら裂 け破壊 され るもの と推定 され る。その際

,仮

道管壁の剥離 と裂けの うち どちらが先 に発生す るか とい うことが問題であるが

,こ

の点につ いて

h/1ARK(1967)は

剥離が生 じた 後壁が破壊す ると指摘 している。 ところが重複細胞壁中の亀裂の挙動 を直接観察 した限 りでは

,そ

の よ うな ことはな く

,む

しろ切片中の仮道管壁は隣接壁中の亀裂 によ って最初 に裂 け破壊が引 きお こさ れ るもの と思われ る

(古

 1978b)。

この よ うに

,中

M切

片の

SCP段

階では ,ノ ッチ先端か ら 裂 け破壊が生 じ

,こ

の裂 けの先端で さらに隣接す る壁に裂 け破壊 を発生 させ

,こ

れが次 々 と隣接壁 中 を伝播す ることによ って破壊は進行 するもの と推定 され る。

写真

101は

板 目晩材切片の ノ ッチ先端およびそれ につづ く

SCP破

壊部の一部 を示す。晩材切片 において も破壊形態は中間梅のそれ と基本的 に同 じで

,S2の

裂 け破壊 と仮道管 間での剥 離 破 壊が観 察 され る。ただ しこの場合 は これ らの破壊が繊維方向に沿 って長 く生 じるため

,仮

道管が引 き抜 けて

破壊 した よ うに見 える。

写 真

102は

板 日早材切片 の ノ ッチ先端 とそれ につづ く

SCP破

壊部の一部 を示す。 ノ ッチ先端で は短 い とげ状 を呈す るS2の裂 け破壊が生 じてお り

,SCP破

壊部で もS2の裂 け破壊 は部 分 的に しか 認 め られない。 しか し早材切片の

SCP破

壊部では

,中

間材や晩材切片の場合 と異な り

,仮

道管 間で の剥離はほ とん ど認 め られない。 この ことは隣接す る仮道管壁 同志のせん断変形が十分拘束 されてい ることを示唆す るとともに

,剥

離破壊 に伴 う余分な仕事 をしな くてすむため

,亀

裂先端での破壊 に要 す る仕事量 も中間材や晩材切片の場合 よ り小 さい と考 えられ るか ら,この場合の破壊はかな り脆性的

1こ進イ子す る もの と推定 され る。

2)RCP破

壊部の破面

写真

103と 104は

写真

98に

示 したの と同一切片 (板 目中間材 )の

RCP破

壊部の一部 を示す。

RCP破

壊 した破壊先端の破面では

,SCP破

壊部でみ られたの と同 じよ うな裂 け破壊や剥離破壊の 他 に S2の 切断破壊 した ところがみ られ

,し

か もその破面上にはひだ状模様が観察 され る。

 

裂 け破壊

した部分の破壊形態は

SCP破

壊部のそれ と同 じであ る。

ところで

RCP破

壊部の切断破面において見 られ るひだ状模様 については,これ と同様の模様が こ れ まで に も観察 されている

(佐

伯 ら

 1972,奥

 1977,FuRUNOら  1977)。

さらに禾処理単一

(58)

仮道管の縦引張破壊 した破面 において も局部的ではあるがひだ状模様が観察 されている(古川 1978a)。

 

これらの観察例から推測して,ひだ状模様の発生には壁のせん断変形がある程度拘束 された 状態で壁が切断破壊 され ることが必要条件 の1つと思 われ る。すなわ ち縦引張 りを うけて いる重複細 胞壁の各壁,と くに S2中 にはせん断変形 しようとす る力が働いてい るが

,破

壊 しない時は各壁が細胞 間層によ って固定 されてい るため

,見

か け上はそのよ うな力が存在 しないよ うにみ える。 ところが重 複細胞壁の片側に破壊が生 じると

,各

壁 間での力学的平衡状態は崩れ

,亀

裂の先端 には単一仮道管の 破壊でみ られ るよ うなせん断応力が作用す ることによ って裂 けを伴 った切断破壊が進行す る もの と推 定 され る。 このよ うな裂け破壊 と切断破壊が小刻みに交互に進行す ることによってひだ状模様は形成

され るのであろ う。

以上 中間材切片の

RCP破

壊部の破面の形態について述べたが

,晩

材切片 および早材切片の

RCP破

壊部で も同様の特徴 を認めることがで きた。 これ らの切片の破面形態は亀裂の伝幡方 向 とも関連す る ので次の ところで述べ る。

2,3,4.2  亀裂 の伝播方 向 と破面形 態

RCP破

壊部では切片中の亀裂の伝播方向(各写真中⇒ 印 )と 個 々の仮道管壁の破面の形態 との間 には一定の規則性を認め ることがで きた。まず第1は前掲の写真

103に

も見 られ るよ うに

,切

片 中の 個 々の仮道管内において裂け破壊は必ず亀裂の伝幡方向に対 して手前側で生 じてぉ り

,し

か も切断破 壊 は この裂 け破壊に続 く部分で生 じてい ることであ る。 この ことは個 々の仮道管内での破壊はまず裂 け破壊 によ って始 ま り

,続

いて この裂 けの両端か ら切断破壊が生 じることを示唆す る ものであろう。

この ことは

224で

示 した観察結果 とも矛盾 しない。すなわ ち,こ こで観察 される裂 け破壊は隣接壁 中の亀裂 によ って じゃっ起 された もの と考 え られ

,こ

の裂 け破壊が

RCP段

階では途 中か ら切断破壊 に変化す るもの と推定 される。

 

21よイ固々の仮道管中において生 じる裂 けの上端 に見 られ る切断破面 上のひだの方向 と下端 に生じる破面上のひ酒の方向が異なることで ある。

 

これは個 々の仮道管中におけ る亀裂の伝播方向に関係 していると思われる。すなわ ち

, 1個

の仮道管壁中において破壊は裂 け破壊 か ら切断破壊へ と変化す るもの と考 えれ ば

,仮

道管を上か ら見下 した とき

,裂

けの上端 に生 じる切断 破面では亀裂は反時計 まわ り方向に伝幡す る もの と考 え られ

,一

方裂 けの下端に発生す る切断破面で は亀裂は時計 まわ り方向に伝幡す ると考 えられ る。 もっとも実際の破壊時にはこれらの切断破壊が裂 け 破壊 した ところの両端か ら同時に発生することもあれば

,片

方 だ けか ら生 じることもあろ う。 このよ う な亀裂の生長 を想定 した うえで実際の切 断破面(例えば前掲の写真

102)を

観察すれば

,裂

けの上 端 の切断破面でのひだの方向は

,上

か ら見て反時計まわ り方向 とな っているのが分 る。 これ らの ことか ら切片 中における個 々の仮道管壁の切断破面のひだの方向は壁 中における亀裂の伝幡方 向を,さ らに 各仮道管 において裂 け破壊 している部分 は切片中にお ける破壊の進行方向を示唆 してい ると考 えられ

る。

ところで

RCP破

壊 した破壊先端の重複細胞壁の破断面では

,前

掲の写真

103に

も示 され てい るよ

I

∴ 窄

t足

デ 糊 と は し