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5. ESCO 事業に係る政策提言

5.3 省エネ機器導入促進のためのファイナンススキームの提言

5.3.1 既存の日本政府による支援の活用

インドネシアの高金利、ESCO事業者の調達力不足の障害を克服し、省エネ設備の設置を 促進するために、日本政府の二国間クレジット制度(JCM)事業に対する支援や、ESCOや 省エネ機器普及のための国内の資金政策について考察する。

(1) 「一足飛び」型発展の実現に向けた資金支援(基金)

日本の低炭素技術を活かして、途上国が一足飛びに最先端の低炭素社会へ移行できるよう に支援する新たなスキームとして、環境省、JICA、およびアジア開発銀行との連携がある。

環境省とJICAとの連携は、我が国が支援する排出削減効果の高い事業を支援するための

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基金を設置し、その運用を通じ、初期コストは高価であっても、排出削減効果が高い、我が 国の先進的な低炭素技術の普及を図る。(図5-2参照)

出所)環境省6

図 5-2 低炭素技術普及のための基金

もう一方のスキームは、環境省がアジア開発銀行(ADB)の信託基金に資金拠出を行い、

初期コストが高いために導入が阻害されている先進的な低炭素技術の費用について協調資 金支援をする。導入コスト高から、ADB のプロジェクトで採用が進んでいない先進的な技 術がプロジェクトで採用されるように、ADB の信託基金に拠出した資金で、その追加コス トを軽減する。(図5-3参照)

出所)環境省

図 5-3 “一足飛び”型発展の実現に向けた資金支援(ADB拠出金)

(2) 政府及び国営企業建物向けESCO普及案

昨年度の調査から、政府機関の建物のエネルギー費用は、国の予算によって事前に決めら れ、削減分はそのまま国庫に返還されるため、建物の所有者は削減した分を他の目的に使用 する権限を持たず、したがって省エネのインセンティブとはならない。一方、インドネシア 政府は、国営施設での省エネが最も重要と考えており、その啓蒙にはパイロットプロジェク トを実施し、競わせ表彰するようなプログラムが有効と考えている。

現在、JICAはインドネシアのBAPPENAS、財務省(BMKG)に対して、「Project of Capacity

6 http://www.env.go.jp/guide/budget/h26/h26-gaiyo.html

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Development for Climate Change Strategies in Indonesia」を実施している。インドネシア政府は、

気候変動ファイナンシングおよび多国間政策センターを設立し、財務省財務政策庁(FPA)

内の気候変動ファイナンシングの問題を取り扱う。このセンターを支援するため、JICA は 2013年から2015年まで技術協力を提供する。活動は、以下の4点から成る。

 温室効果ガス排出削減のための国家行動計画(RAN-GRK)に関する資金メカニズムを 構築し実施するためのFPAのキャパシティ・ビルディング

 グリーンシティを促進するための資金インセンティブを構築するための FPA のキャパ シティ・ビルディング

 農業保険採用のためのFPAのキャパシティ・ビルディング

 環境および気候政策の実施を支援するための経済的手法範囲の評価をするための FPA のキャパシティ・ビルディング。

環境省のADB及びJICAとの低炭素技術普及のための基金を応用して、上記のJICAの事 業におけるグリーンシティ構築のためのファイナンシングメカニズムで、日本の機器などを 活用した具体的案件が発掘された場合(国営ビル等)に、パイロット事業として基金から拠 出して事業を実施することは考えられないだろうか。

たとえば、国営企業に対し ESCO を含めたファイナンス支援の提供を通じ、個別省エネ 事業へのインセンティブが生まれることが考えられ、ひいては日本の技術を普及することに もつながるのではないか。制約は多いが、図5-4は、現地国営会社の省エネを促進するため に、ESCO会社のシェアド・セイビングス方式を前提としたスキームの一例である。

国営企業の省エネ促進のための現地 ESCO 会社を新設し、同ESCO 会社は省エネ機器等 の資産を自ら保有するシュアードセービングス方式で ESCO 業務を行う。銀行借入負担・

調達コスト負担を軽減するために、JICA からの出資により資本金を厚くするとともに、環 境省の補助金を活用するものである。JICA 資金で、ESCO 事業における省エネ診断や省エ ネ効果のモニタリング等のオペレーションコストをカバーし、省エネ機器等の費用を環境省 の補助金でカバーするという発想である。

しかしながら、以下のような課題・制約があり、現時点での実現は容易ではないものの、

中長期的なモデルの一つと思料される。

 国営企業は単年度予算であることから、複数年度にわたるESCO契約の締結が困難。

 ESCO会社に国営企業の与信リスクを適切に判断し与信を許容する能力が必要。

 日系企業が、国営企業をターゲットとした ESCO 事業を行うには、インドネシア現 地に信頼できる合弁パートナーが必要。

77 出所)調査団作成

図 5-4 JICA連携基金の活用の可能性(例)