• 検索結果がありません。

5. ESCO 事業に係る政策提言

5.3 省エネ機器導入促進のためのファイナンススキームの提言

5.3.2 民間における省エネ事業促進のためのファイナンススキーム

77 出所)調査団作成

図 5-4 JICA連携基金の活用の可能性(例)

78 出所)調査団作成

図 5-5 リース料等補助:設備補助制度準用型

2)現地(海外)補助金事業受託会社設置型

第2案は、国内のエコリース制度およびグリーン利子補給制度をベースとしているが、補 助金を提供するための事業受託会社を現地側に設置し、現地ファイナンス会社へ一定の利率 で補助金を供与し、現地ファイナンス会社が省エネ技術導入のために利子やリース料を割り 引くものである。基本的に、補助金の原資は日本からのみとなる。

出所)調査団作成

図 5-6 現地(海外)補助金事業受託会社設置型

日本の、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年八月二十七日法律 第百七十九号)によれば、基本的に補助金は、日本国民から徴収された税金その他の貴重な 財源でまかなわれることに留意しなければならず、補助金が他国民に交付されるものではな いと解釈される。したがって、本案の実現は困難である。

環 境 省

非 営 利 法 人

日 本 法 人

(代 表 申 請 者

現 地 リ ー ス 会 社 等

補助金

補助金

補助金

J C M プ ロ ジ ェ ク ト

リース料 /割賦代金 国際コンソーシアム

リース契約/

S C O 事 業 者

esco契約 申請

79 3)政府系日尼共同基金設置・運営型

2) の案の場合、補助金の原資が日本からのみであるため、拡大普及に限界がある。そこ で第3案は、インドネシア側からも資金を調達するため、日尼政府間で事業受託会社(基金)

を設置する。

3) の現地における事業受託会社には、主に現地インドネシア政府から補助金、または、

インドネシアの民間事業者、地元金融などが出資を主にして、日本政府側からは出資をする。

ただし、出資に関しては、経営権を持たないマイナー出資とし、例えば、JICA の海外投融 資における出資規制と同様、25%を上限とする。日本政府の株主責任を極小化するという観 点からは、一般的には、経営権を有しない無議決権株式を取得することも考えられる。本案 では、設立手続きの容易さ等の観点から、現地事業受託会社は財団法人(Foundation)を想定 しているが(後述)、無議決権株式は、インドネシア会社法上、株式会社(Limited Liability Company)には認められてはいるものの、財団法人には認められていない。本案のように財 団法人を前提とした出資については、出資割合を 25%に留め、かつ、最大株主の出資割合 を超えないものとするという条件での出資が望まれる。この事業受託会社はその資金を元手 に、現地ファイナンス会社からの補助金の申請受理業務を行う。その際に、出資者に対して どのようなリターンを提供するのかの工夫が必要である。なお、本スキームで、日本側から 出資ではなく貸付も考えられるが、政府予算を前提とした融資の担い手を誰にするか、日本 政府側が貸付でインドネシア側が出資とした場合、基金にデフォルトが生じた場合に、債務 の弁済順位に関して、インドネシア側が日本に劣後することを理由にインドネシア側からの 出資が集まらないといったことも考えられるため、貸付には相当慎重な検討が必要と思われ る。

現地ファイナンス会社は、利子補給もしくはリース料補助の申請を事業受託会社に行い、

その補助金に基づいて、通常より割安な割賦契約を、省エネ技術導入事業者と結び、ファイ ナンス会社は確実に省エネができるよう、事業者に対して ESCO 会社との契約を推奨する ことにより、日本の技術の適用を促す。

出所)調査団作成

図 5-7 政府系日尼共同基金設置・運営型 環

境 省

非 営 利 法 人

現 地 に お け る 事 業 受 託 会 社

現 地 フ ァ イ ナ ン ス 会 社 等

補助金 出資

補助金

J C M プ ロ ジ ェ ク ト

リース料 /割賦代金

リース契約/

S C O 事 業 者

esco契約 申請

インドネシア政府等

出資 補助金

80

なお、本案である日尼共同基金設置・運営型の運営に関して、以下に示す検討事項があり、

これらについて、現地弁護士に依頼、または、既存のスキームを調査し、確認している。

a. 事業受託会社の設立に伴う事項

事業受託会社の設立形態に関しては、Foundation(財団法人)とLimited Liability Company (株 式会社)が考えられるが、財団法人の設立のほうが手続きは容易である。日本からの出資に 対して配当を求める場合には、事業受託会社を株式会社形態とした上で、一定の収益事業を 営む必要があるが、その際は、金融に関するライセンスが必要と判断されることもあり得る。

また、これらのライセンスのインドネシア当局から許認可には多くの時間を要する可能性が ある。

b. 制度構築・運営にかかわる事項

環境省のエコリース促進事業(「家庭・事業者向けエコリース促進事業補助金制度」)では、

指定リース事業者に対して、能力・知識・経験の有無等の要件を設定している。また、補助 対象機器等については、機器・装置等の区分ごとに基準を設けるとともに、補助率を明記し ており、国による機器購入に係る他の補助金との併用は不可としている。制度構築にあたっ ては、こうした諸点に加え、指定リース会社については、日系に限らず非日系リース事業者 も参加を可能とする。事務受託会社の運営に際し、日本政府は経営権は持たないことから通 常業務は事務受託会社に委ねるものの、補助率や対象機器などの重要事項に関しては、約款 で株主全員の合意によるとしておけば、マイナー出資であっても、我が国が得意とする技術 の採用と、その補助率については提案し、他の出資者の合意があれば、我が国の技術の導入 につながる。

一方、インドネシア側の補助金、出資などをどのように引き出して基金を設立するかとい うことについては、容易ではないと思料される。インドネシアの財務省が現在検討している 省エネに関するリボルビングファンドの機能の一つとしてリース料補助制度を組み込むの も一案かと思われる。

c. インドネシアにおける為替管理

2) もしくは、3) 案の場合、検討しなければならない点として、為替管理がある。以下に、

主な留意点を列挙する。

 資本取引規制

 インドネシアの外国為替及び外為レートに関する法律(1999年法第24号)(以下、

「外為法」という。)は、外国為替に関する自由取引を認めており、インドネシア に居所を有する自然人及び法人は、原則自由に外国通貨を保有し、使用することが できる。なお、一定の場合にインドネシアの中央銀行であるインドネシア銀行への 報告義務が発生する。

81

 外為法は資産及び負債をインドネシアの居住者と非居住者の間で移動させること も原則自由に認めており、外国資本がインドネシアで設立した外国資本企業(PMA 企業:Penanaman Model Asing)がインドネシア国内で資産を保有する場合に、当 該資産を海外に持ち出すことも原則自由である。この点に関しては、投資法上にも 重ねて規定があり、同法は投資家が第三者との間において、外貨で送金又は送還す る権利を保証している。

 ルピアによる外貨購入規制

 インドネシア銀行は、インドネシア銀行規則No.10/28/PBI/2008においてルピアに よる外貨購入に制限を加えている。同規則によれば、外国資本がインドネシア国内 の銀行を通して1ヶ月あたり10万米ドル相当を超える外貨をルピアで購入する場 合、かかる外貨購入が必要であることを証明する書類の提出が義務付けられている。

 現地通貨の持ち込み/持ち出し規制

 ルピアの持ち込み及び持ち出しについては、インドネシア銀行通達2002年第4号 において、①現金1億ルピア以上をインドネシア国内に持ち込む場合には、事前に 税関による偽札識別検査を受けなければならない、②現金1億ルピア以上をインド ネシア国外に持ち出す場合には、事前にインドネシア銀行の許可を得なければなら ない。これらの規定に違反した場合には、持ち込み又は持ち出しルピア総額の10%

相当に最大3億ルピアを加算した罰金が科される。

(2) 各ファイナンススキームの課題の整理

各ファイナンススキームの実施可能性に関わる、主要な課題点を整理する。

 ライセンス

オプション 1)

本案では、現地に事務受託会社は設置しないことから、事業受託会社に係るライセンスの 検討は不要である。なお、リース業はインドネシアの有限責任会社(PT 会社)または、協 同組合だけが実施可能であるため、外国事業者は、インドネシアのパートナーとの合弁事業 における有限責任(PT)会社の形式の子会社を設立することによってのみ、リース業に従 事できる。この場合の外国当事者はリース業に従事するPT会社の最大85%の株式を保有す ることが可能である。(社団法人リース事業協会、三菱東京UFJ銀行資料)

オプション 2)

現地法制上、事業受託会社の設置・運営は可能であるが、前述のとおり、形態は非営利法 人に相当する Foundation として設立するほうが手続きは容易であろう。また、設立に関す る一定の許認可手続きは必要ながら、資金の受渡し事務を行なうための特別なライセンスは 不要と思われることを、現地の弁護士と確認済み。