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本節のガイダンスは、サイトの境界が認可の一部として明確に定められている許可施設内の事象 にのみ適用できるものである。当該ガイダンスは、レベル5以上と評価されることもあり得る放射 性物質の放出の可能性のある(起こりそうにないが)主要な施設においてのみ適用される。

いずれの事象も、人と環境への影響の基準、および深層防護への影響の基準に照らして検討する 必要があり、これら2つの基準は事象の評価において取り上げる必要のあるすべての問題を網羅し ていると言うことができる。しかしながら、これらの評価を行っても、2つの重要なタイプの事象 がその重要性に見合ったレベルに評価されないことがある。

その第一のタイプの事象は、大量の放出を阻止する一次バリアに重大な損傷が発生する場合であ る(例えば、原子炉における炉心溶融や、核燃料再処理施設における非常に大量の放射性物質の閉 じ込め機能の喪失)。このタイプの事象では、主要な設計防護設備が働かなくなり、非常に大量の 放射性物質の放出を防止する放射線バリアのみが残っている格納システムとなる。こうした事象を 取り上げる具体的な基準がなければ、深層防護の下での評価尺度はレベル3に評価するほかないこ とになり、これは、“多重性が残っていない事故に近い状況”と同一のレベルである。レベル4とレ ベル5に対する基準は、特にこの状況の事象を取り上げている。

第二のタイプの事象は、大量の放射性物質を取り扱う施設において、大量の放出を阻止するため の一次バリアは健全であるものの、かなりの量の放射性物質の漏出、あるいは、線量率の著しい上 昇が起った場合である。こうした事象は、多数のバリアが適切であるため、深層防護に基づきレベ ル1に評価できるであろう。しかし、これらの事象は、放射性物質の取扱いに関する運営管理にお ける大きな欠陥を示すものであり、このことは、それ自体が、人と環境に対する重大な影響を伴う 事象の潜在的リスクを示唆している。レベル2と3の基準は、特に、この第二のタイプの事象を取 り上げている。

汚染の重要性は、拡散放射能の量または結果としての線量率によって評価される。これらの基準 は運転区域内の線量率に関係するが、作業員が実際に存在したか否かは必要としない。これらの基 準は、実際に受けた被ばく線量に関連する2.3節の作業員の線量に対する基準と混同してはならな い。

レベル2の値を下回る汚染レベルは、この基準に基づいて事象を評価する目的からすれば、重要 ではないと考えられる。即ち、これら下位レベルにおいて考慮しなければならないのは、単に深層 防護に対する影響である。

損傷や汚染の正確な性質が、事象発生後しばらくの間、把握することができないかもしれないと 認識されている。しかし、事象評価票において適切な暫定的評価をするために大まかな推定を行う ことは、可能なはずである。状況に関する、その後の再検討によって事象の再評価が必要になるこ ともあり得る。

より高いレベルの評価結果になるかもしれないため、全ての事象について、人と環境(第2章)

及び深層防護(第4〜6章)に関連する基準も考慮しなければならない。

3.2 レベルの定義 レベル5

原子炉の燃料(研究用原子炉を含む)に関する事象について:

発電用原子炉の燃料の数%相当を超える溶融、または発電用原子炉の炉心インベントリーの 数 %を超える放射性物質の燃料集合体からの放出9をもたらす事象。10

この定義は、発電用原子炉の炉心の総インベントリーに基づいており、核分裂生成物ガス(「ギ ャップ インベントリー」)のみではない。このような量には、ギャップ インベントリーのみなら ず燃料マトリクスからの大量放出が必要となる。燃料破損に基づく評価は一次系の状況に依存する ものでないことに留意すべきである。

研究用原子炉に対し、影響を受ける燃料の割合は、3000 MW(th)の発電用原子炉の量を基に算出 すべきである。

他の施設について:

重大な過剰被ばくの可能性が高い 11施設での放射性物質の大量放出 9(炉心溶融からの放出と 同等)をもたらす事象。

原子炉以外の事故例としては、大規模な臨界事故、あるいは施設内で大量の放射性物質を放出す る大規模な火災や爆発が考えられる。

レベル4

原子炉の燃料(研究用原子炉を含む)に絡む事象について:

炉心溶融および/または被覆管損傷の結果としての、発電用原子炉の炉心インベントリーの約

0.1%を超える放射性物質の燃料集合体10からの放出9をもたらす事象。

この定義もやはり、 ギャップ インベントリー のみならず炉心の総インベントリーに基づくも のであって、一次系の状況に依存するものではない。炉心インベントリーの0.1 % を超える放出は、

被覆管損傷を伴う一部の燃料溶融が起こるか、被覆管のかなりの部分(〜10 %)が損傷しそれによ って、 ギャップ インベントリー が放出される場合に起こる可能性がある。

研究用原子炉に対し、影響を受ける燃料の割合は、3000 MW(th)の発電用原子炉の量を基に算出 すべきである。

発電用原子炉の炉心インベントリーの0.1 %を超える放出に至らない燃料の損傷または劣化(例 えば、非常に局部的な溶融、または、少量の被覆管損傷)は、この基準の下で評価尺度未満/レベ

ル0  と評価し、その後、深層防護基準の下で検討すべきである。

他の施設について:

公衆に対する重大な過剰被ばくの可能性が高い11一次閉込め容器12からの数千テラ・ベクレル の放射能の放出9を伴う事象

レベル3

公衆に対する重大な被ばくの可能性は非常に低いが、設計で想定されていない区域13への数千 テラ・ベクレルの放射能の放出9をもたらし、是正措置を必要とする事象。

または  

運転区域14内でガンマ線と中性子線の線量率の合計が毎時1Svを超えるような事象(線源から1 メートル離れて測定された線量率)。

運転区域と見なされていない区域で高い線量率をもたらす事象は、施設に対する深層防護アプロ ーチを使用して評価すべきである(事例49を参照のこと)。

レベル 2

運転区域14内でガンマ線と中性子線の線量率の合計が毎時50 mSvを超えるような事象(線源 から1メートル離れて測定された線量率)。

12  本文における一次閉込め容器とか二次閉込め容器という用語は、原子炉以外の施設での放射性物質の閉じ込め容 器を指しており、原子炉格納容器について使用される類似の用語と混同してはならない。

13   

設計上想定されない区域とは、恒久的または一時的な構造物に対し、通常の運転時または異常事象後に、当該区 域で発生した汚染レベルを維持し、当該区域を越えた汚染の拡大を防止できることを設計基準で想定していな い区域である。設計上想定されない区域の汚染を伴う事象の例は:

または

設計で想定されていない区域13内においてかなりの量の放射性物質が存在し是正措置が必要と なる事象。

 

この文脈において かなりの量 は、次のように解釈すべきである:

(a)  10テラ・ベクレル程度の99Moの漏出と放射線学的に同等の液体放射性物質の漏出。

(b)  1テラ・ベクレル程度の137Csの漏出と放射線学的に同等の固体放射性物質の漏出であって、

かつ、表面と大気中の汚染レベルが運転区域に対する許可レベルの10倍を超える場合。

(c)  建屋内の雰囲気中への放射性物質の放出であって、数十ギガ・ベクレル程度の131Iの放出と放

射線学的に同等の場合。

3.3 放射線学的等価値の計算

表4では、施設の汚染に関する放射線学的等価値のための同位元素の増倍係数を示す。放出され た実際の放射能は、この係数を乗じた上で、比較のために使用する同位元素の各レベルの定義で与 えられた値と比較すべきである。もし、幾つかの同位元素が放出された場合には、それぞれに対す る等価値を算定し、その後で合算すべきである。これら増倍係数の導出についてはは、付録1に示 している。

3.4 実事例

これらの事例の目的は、本マニュアルの本章に記載された評価のガイダンスを説明することであ る。事例は現実の事象に基づいているが、ガイダンスの様々な部分の使用法を説明するため、わず かに修正を加えてある。表の最終行には、実際の影響に基づく評価が記載されている(即ち、第2 章と第 3 章の基準を考慮して)。最終評価を定める前に深層防護基準を検討する必要があるため、

これは必ずしも最終評価ではない。