6. 特定の施設での事象に対する深層防護への影響の評価
6.2 事象評価のための詳細なガイダンス
6.2.4 付加的要因の考慮
情報の欠如又は誤解を招く情報によって、幾つかの系統の運転に問題を起こすような事象も、共通 要因故障に基づく評価値の格上げ対象として考慮することができる。
6.2.4.2 手順上の不備
不適切な手順のために、深層防護の幾つかの防護層に対し同時に脅威が生じることがある。したが って、こうした手順上の不備も、基本評価値を引き上げるための理由となり得る。
6.2.4.3 安全文化に関連する事象
安全文化は、「全てに優先して、防護と安全の問題が、その重要性に相応しい注意を集めることを 確保する組織及び個人の特性と態度を集約したもの」として定義されている。良好な安全文化は異常 な事象の防止に役立つが、その一方で、安全文化の欠如は、運転員が設計者の想定に沿わない方法で 行動するという結果を招きかねない。したがって、安全文化は、深層防護の一部として考慮しなけれ ばならず、結果的に、安全文化の問題は、事象の評価値を1レベル引き上げることを正当化すること ができる。(INSAG 4 [7] には、安全文化に関して更なる情報が示されている。)
安全文化の問題による評価値の格上げを行う場合には、安全文化に関する問題を実際の指標として、
その事象を考えなければならない。
許可された制限値の違反
安全文化の問題に関して最も容易に定められた指標の1つは、運転制限条件と呼ばれる認可された 制限値の違反である。
多くの施設において、認可された制限値には、当該プラントの運転が安全要求の範囲内に維持され るよう安全系の最低限の作動性を含んでいる。これにはまた制限された時間内での安全系の利用可能 性が低下した状態での運転を含んでいる。いくつかの施設では、技術仕様が用意され、それに認可さ れた制限値が含まれている。更に、その要件が満たされない場合、復旧に与えられる時間及び適切な 代替措置状態を含め、取るべき対応が技術仕様に記されている。
仮に運転員が許された時間を超えて安全系の作動性が低下した状態(技術仕様書で定義されてい る)で放置した場合、あるいはプラントを許された状態から外れた状態に導くような意図的な対応を とった場合、安全文化の問題を理由に、その事象の基本評価値の格上げについて検討すべきである。
(例えば、定例試験後に)系統の作動性が認可された制限値を満足しないことが判明したが、運転 員が、直ちに、技術仕様に従ってプラントを安全な状態に戻すための適切な措置をとった場合、技術 仕様の要件が遵守されたため、当該事象は6.2.3.1節に記されているように評価すべきであり、格上 げすべきではない。
正式に認可された制限値に加えて、一部の国では、機器の長期的な安全に関係する制限など更なる 要求をその技術仕様に入れている。 こうした制限値を短時間超えた事象については、評価尺度未満
/レベル0 の方がより適切となるかもしれない。
停止中の原子炉に対しては、技術仕様書により、利用可能性に関する最低限の要件を規定すること になるが、より安全な状態を特定することができないため、一般的には、復旧時間あるいは代替措置 状態は規定されていない。このため、当該要件は、当初のプラント状態にできるだけ早く戻すことと なる。プラントの利用可能性が低下し、技術仕様により要求される作動性を下回っても、時間制限を 超えない場合、この状態を認可された制限の違反と見なすべきではない。
その他の安全文化の問題
安全文化の欠如に関する指標の他の例には以下のものがある:
− 事前許可がない手順の違反;
− 品質保証プロセスの欠陥;
− 人的過誤の繰り返し;
− 単一事象に起因した法定年間線量限度を超える公衆の被ばく;
− 法定年間線量限度を超える放射線作業従事者または公衆の累積被ばく;
− 環境への放出、汚染の拡大、あるいは線量管理システムの故障を含む、放射性物質に対する適切 な管理維持の失敗。
− 最初の事象後に教訓が得られたこと、又は是正措置がとられたことを担保するために、運転員が 適切な注意を払わなかったという証拠がある場合の事象の繰り返し。
本ガイダンスの目的は長期にわたる詳細な評価を開始するためではなく、事象の評価を行う者が迅 速に判断を下すことができるかどうかを検討するためであることを留意することが重要である。事象 発生後すぐに、安全文化の理由によって、その事象の評価値を引き上げるべきか否かを判断すること は往々にして難しい。このような場合、その時点で判明しているものに基づき暫定的な評価値を提示 すべきであり、その後、詳細な調査で得られた安全文化に関係する追加情報を、最終評価で考慮する ことができる。