3.5 施工及び施工管理
3.5.2 施工管理
仕上塗材の施工管理をa現場管理、s材料管理、d足場管理、f養生管理に大別した場 合の要点を以下に示す。また、表 3.1 に施工管理要領チェックリストを示す。
(1)現場管理
① 調合場所及び作業場所は、常によく整理整頓を行う。
② 作業用足場は、労働安全衛生規則に準拠したものでなければならない。
③ 塗付け面と足場との間隔は、仕上塗材の種類・模様などを考慮し、塗付け作業に支障のな い距離を保つため、あらかじめ工事管理者と施工業者が打ち合わせを行う。
④ 危険防止のため、塗付け作業による仕上塗材の飛散もしくは溶剤の蒸発により人体に有害 な影響がある場合には、労働安全衛生規則に準拠した適切なマスク及び必要に応じてメガ ネを着用し、作業をしなければならない。
(2)材料管理
① 材料の発注に当たっては、施工面積、下地の種類や面の精度を考慮し、綿密にその使用量 を計算した上で、貯蔵安定性の許す範囲で一括発注をする。また、追加工事の場合は前回 発注の材料見本、塗り見本を添付するか、もしくはロット番号を確認し、製造業者が単に 指示番号やマンセル番号によってのみ調色することのないように留意する。
② 貯蔵安定性の確認は、通常6ヶ月を一区切りとして材質確認を行う。その材料の保管は、袋 入りのセメント系材料などの無機系材料は、吸湿性があるので、風雨にさらされない場所 で、水分を遮断するように厚いパネルなどを敷いた上に置く。缶入りの水系材料の保管場 所は、保温処置のできる場所、特に冬期気温が 5℃以下にならないところを選ぶ。溶剤形 の材料は、火気に注意するよう「危険物」であることを明示して、引火のおそれがないと ころに保管する。
施工後は、養生テープを2日以上放 樋、アルミサッシなどはセメントのアル 2日以上放置
③ 使用時混合形の材料は、現場において十分に攪拌し、均一化した状態で使用する。攪拌が 不十分な場合は付着低下、飛び散り、砂落ち、硬化不良、色むらなどの原因となる。
④ 下塗材、主材、上塗材は、異なった製造業者のものを用いたり、混合したりすると異常な 凝固、付着低下、剥離などに結びつくので絶対に避ける。同一製造業者品で統一する。
(3)足場管理
① 作業足場と壁面との間隔; 吹付け工法…30 〜 50b ローラー塗り工法…40 〜 50b
② 天井と足場床面との間隔; 吹付け工法…1.3 〜 1.9 m ローラー塗り工法…1.9 〜 2.2 m
③ 足場架設が影響するむらの発生;
横布線の上、下から交差して横に二重吹きをした結果、仕上塗材の重なりからくる色むら を生じる場合がある。また逆に塗付け作業の盲点となり横布線を中心とした塗り不足で色む らを生じる場合もある。防止策としては、材料が下地面に対して直角に吹き付けられるよう に、スプレーガンのノズルをやや上向きに保ち、絶対に吹下げはしないこと。むしろ可能な 範囲で吹上げて仕上げるように心がけると、比較的横布むらが目立たない均一なテクス チャーが得られる。
④ つなぎ跡の補修;
タッチアップ性の良い仕上塗材、補修し易いテクスチャーを選択するよう考慮する。
(4)養生管理
① 塗付け作業前に材料の飛散、直射日光を避けるため、シート掛け養生を行う。
② 工事中は、他の部材及び仕上げ面を汚損しないよう適切な養生を行う。
③ 夏季に屋外で施工する場合は、急激な乾燥を防止するため、シート、ポリエチレンフィル ムなどで覆う。
④ 風などにより粉塵があがり、仕上げ面に付着するおそれがある場合は、防風養生を行う。
⑤ セメント系仕上塗材などは、早期乾燥を防止するためにシート養生及び散水養生を行う。
⑥ 養生紙やマスキングテープなどの取り外しは、塗付け塗膜の硬化の程度や塗膜厚などを考 慮して行う。
⑦ 養生の注意点
3章 施工方法と管理
表 3.1 施工管理要領チェックリスト 工程・項目 チェックポイント
施工計画 ①面積、施工部位、意匠、工期、作業管理など確認。
①下地の含水率10%以下、pH10以下であること。
下地調査 ②白華、レイタンス、ほこりなどを確認。
③既存塗膜の確認。
下地調整の調査 ①下地処理工法、下地調整の確認。
工法の選定 ①居住者、周辺への影響を確認。
①使用材料の確認。
材料の選定 ②数量の確認。
③施工範囲の確認。
足場 ①足場作業の基準に従い、壁と足場の間隔が設置されているか確認。
下地処理 ①下地処理状態の確認(下地に汚れ、付着物が著しくなく、仕上りを妨げ る突起物、段差、不陸、巣穴がないこと)。
仕上塗材の調合 ①メーカーの仕様書で材料の調合割合を確認。
①下塗りは、塗り残しのないように指示。
②塗り重ね時間の指示。
③材料粘度の調整を一定に指示。
④吹き付けの角度を一定に指示。
仕上塗材の施工 ⑤吹き重ねかすれのないように指示。
⑥均一に施工しているか確認。
⑦施工後、タレ、泡、ちぢみ、塗り残しのないことを目視で確認。
⑧気温5℃以上で施工されているか確認。
⑨材料の可使時間が守られて使用されているか確認。
二次仕上げ(ローラー押さえ) ①パターンずれのないように確認。
ダメ直し ①足場つなぎの変更を指示。
②元パターンと変わらない最小範囲を確認。
①乾燥硬化が正常に進行するように換気に配慮する。
養生 ②半硬化の時取ると取りやすい。放置が長いとテープが残ったり仕上材を
傷めないと取れない。
検査 ①塗り見本と比較してテクスチャー、色彩、光沢等に差異がないことを確認。
(建築改修工事監理指針参考)
シート養生をしていても強風のときな どは吹きこぼれに十分に注意する。
天井、壁仕上げを行う時、周りを汚 染しないよう天井から行い、すてテ ープ貼りの養生が大切。
4 章 塗替え改修
仕上塗材を施工する目的は、下地、構造体の保護と美観にある。一般に仕上塗材は紫外線、
水、汚染物質等により表面から劣化していく。劣化した場合は、建物の耐久性確保、美観の 保持のため、修繕・改修に努めるべきである。修繕・改修は、既存の塗膜層の劣化状況の調 査、診断により、劣化の程度に基づいて、修繕・改修措置の検討を行う必要がある。なお、本 章では、仕上塗材層の劣化状況の調査・診断及び修繕・改修措置について述べる。
4.1 仕上塗材に発生する劣化現象
仕上塗材に発生する劣化現象としては①汚れ、②変退色、③光沢低下、④白亜化、⑤摩耗、
⑥ふくれ、⑦ひび割れ、⑧はがれ、⑨浮き、⑩エフロレッセンス、⑪藻・かびの発生等があ る。劣化現象の種類と調査方法を以下に示す。
① 汚れ
塵あい、鉄さび、手あか、油脂などの付着、菌類藻類の繁殖により通常の洗浄方法では除 去できない状態。
〈調査方法〉目視診断
② 変退色
紫外線、風雨、熱などにより仕上塗材表面が劣化し色の色相、彩度、明度が変化する現象。
〈調査方法〉目視診断、色見本、カラーチャート
③ 光沢低下
仕上塗材表面の光沢が低下する現象。主に上塗材の劣化。
〈調査方法〉目視診断
④ 白亜化
チョーキングともいう。紫外線、風雨、熱などにより樹脂分が劣化し塗膜中の粉状物が離 脱しやすくなり表面が粉末状になる現象。
〈調査方法〉指触診断(塗膜表面を触り粉状物の付着で診断)
払拭診断(塗膜表面にセロテープを接着させて引きはがし黒色の紙などに貼 写真 4.1 汚れ
4章 塗替え改修
⑤ 磨耗
風雨、砂塵など物理的作用により塗膜厚が減少して行く現象。
〈調査方法〉目視診断
写真4.2 白亜化(チョーキング)(外装仕上げの耐久性向上技術、技報堂出版1より)
〈指触診断〉 〈払拭診断〉
劣化がない状態
劣化が進んでいる 状態
著しく劣化が進んで いる状態
写真 4.3 磨耗
⑥ ふくれ
塗膜が気体、液体、その他異物などを含んで盛り上がる現象。
上塗材のふくれや主材のふくれがある。
〈調査方法〉目視診断
⑦ ひび割れ
塗膜に裂け目ができる現象。上塗材の割れは浅割れ(checking)、主材の割れは深割れ
(cracking)に区分される。
下地モルタルや躯体コンクリートの割れに起因する場合もある。
〈調査方法〉目視診断(クラックスケール、クラック針ゲージペン等)
写真 4.4 ふくれ
写真 4.7 クラックスケール 写真 4.5 浅割れ 写真 4.6 深割れ
写真 4.8 クラック針ゲージペン
4章 塗替え改修
⑧ はがれ
塗膜が付着力を失って被塗物から離れる現象。
〈調査方法〉目視診断
⑨ 浮き
塗膜が剥離して浮き上がった状態。通常、裂け目や切れ目がなく、内部に気体又は液体(水 分)を含んでいる。
〈調査方法〉目視判断(打診棒、テストハンマー)
⑩ エフロレッセンス
塗膜表面へアルカリ分が析出し白色粉状物を生ずる現象。
セメントモルタル、コンクリート中の石灰などが水に溶けて表面にしみ出し、空気中の炭 酸ガスと化合してできたもの。
〈調査方法〉目視診断
写真 4.10 打診棒 写真 4.9 はがれ
写真 4.11 エフロレッセンス