4. 動的な状況を考慮した献立計画支援手法 41
4.2 献立計画支援手法の仕様検討
4.3.2 方法
提案手法の有効性を検証するため,食事検索,食事予定登録機能を有する献立 計画支援手法を実装したウェブアプリケーションを開発し,1日単位で制限の課 せられる既存手法と,提案手法における満足度の違いを調査した.図14に実験 に用いたアプリケーションの構成を,図15に実験に用いたアプリケーションの 画面を示す.
図 14 アプリケーションのシステム構成図
表 10 実験における対象患者の食事摂取基準
エネルギー(kcal) たんぱく質(g) カリウム(mg) 食塩(mg) 最小値 最大値 最小値 最大値 最小値 最大値 最小値 最大値
1500 2100 48 60 - 2500 3 6
事前に,我々は独自に慢性腎臓病患者向けの食事リストを作成した.食事リス トは,朝昼晩それぞれ4,14,14種類から成り,すべての食事に対して微量栄養素 についても配慮されている.今回の実験は,比較的軽症であるステージ3a程度 の患者を想定した献立を使用し行った.献立ごとに栄養素量が異なるため,その 組み合わせによって腎臓病の食事療法基準を満たす場合と満たさない場合が存在 する.今回の実験における食事摂取基準は表10のように設定した.今回用いた 献立の場合は,朝昼晩の組み合わせの総数784通りのうち,慢性腎臓病の1日の 食事療法基準を全て満たす組み合わせは319通りであった.この食事情報をデー タベース化し,アプリケーションに組み込んだ.
本アプリケーションでは,1日ごとに献立計画を作成する仕様となっている.
我々の開発したアプリケーション使用時の献立計画立案の手順を図16に示す.献 立計画を立てる際,対象日において選択可能な献立を朝昼晩で横並びに表示して
図 15 実際の献立検索画面
いる.ここでの選択可能とは,朝昼晩の組み合わせによって,規定された基準内 に収まる献立の組み合わせが一つでも存在する食事を意味しており,食事療法基 準を1日ごとに課すものが既存手法,複数日ごとの食事内容に対して課すものが 提案手法である.朝昼晩のどれか一つの食事を選択すると,残りのタイミングに おいて選択可能な組み合わせが限定される可能性があるため,再度選択可能な献 立を計算し直し,表示内容を更新する.そのため,例えば朝,昼ごはんに高栄養 価なものを選択した際に,晩ごはんで選択可能な献立が1種類しか表示されない,
という状況も発生する.
本実験において被験者は,本アプリケーションを用い,一週間分の献立計画を 立案する.比較実験には,下記の3条件を用いた.
条件1 : 既存手法(1日ごとの栄養素量に制限を課す)
条件2 : 提案手法(3日ごとの栄養素量に制限を課す) + 外食予定なし 条件3 : 提案手法(3日ごとの栄養素量に制限を課す) + 外食予定あり
図 16 アプリケーションを使用した献立計画手順
既存手法では摂取基準を適用する期間は1日ごとであるが,今回の提案手法では 3日ごとの栄養素の合計摂取量に対し摂取基準を適用する.また,提案手法にお いては外食が可能となるため,高栄養価な外食予定をあらかじめ設定した条件も 用意し,比較を行った.本実験では外食の内容として,外食のカロリーガイド[47]
より焼肉を含む定食を選定し,外食モデルとした.
実験は,下記の順番で実施した.
(I) 同意書の記入
被験者に本実験が慢性腎臓病の食事療法に関する実態調査である旨を説明 し,参加に同意する場合に同意書を記入させる.
(II) 慢性腎臓病の食事療法に関する説明
食事療法には複数の栄養素摂取量の適切な管理が必要である旨を説明する.
(III) 実験における想定の説明
被験者は,慢性腎臓病の患者であると想定するよう説明する.
(IV) アプリケーションの使用方法の説明
被験者は実際にアプリケーションを使用し,1日分の献立選択を行い操作 に慣れる.献立選択画面には,すでに栄養素量が基準値内であると判断さ れた献立が表示されることを説明する.
(V) 献立計画作成
被験者は下記を3条件について繰り返し実施する.
(IV-i). 被験者は,表示された献立の中で,自分が食べたいと思う組み合わせ
で1日の献立を自由に選択する.
(IV-ii). (ii)を繰り返し,自分が食べたいと思う1週間分の献立計画を立案する.
(VI) アンケート記入
被験者は,一週間の食事に関する満足度,一生続く場合の満足度等につい て回答する.
被験者は奈良先端科学技術大学院大学の男子学生15名とした.本来であれば,
実際の患者を被験者として実施すべきではあるが,現段階で病院での実験を行 える状況ではなかったため,今回の実験は傾向を掴むための予備調査として実施 する.
なお,アンケート調査においては,満足〜不満の5段階のリッカート尺度を用 いて満足度を測定する.アンケート調査の内容と我々の仮説は以下の通りである.
(I) 一週間の食事選択の満足度
帰無仮説H0 :条件1 = 条件2,条件1 =条件3,条件2 =条件3 対立仮説H1 :条件1<条件2,条件1<条件3,条件2̸=条件3 (II) 一生この手法が続く場合の満足度
帰無仮説H0 :条件1 = 条件2,条件1 =条件3,条件2 =条件3 対立仮説H1 :条件1<条件2,条件1<条件3,条件2<条件3
(III) 1日ごとの食事選択の満足度
帰無仮説H0 :条件1 = 条件2,条件1 =条件3,条件2 =条件3 対立仮説H1 :条件1<条件2,条件1>条件3,条件2>条件3
1日ごとの食事選択の満足度に関しては,条件3は外食予定の日の満足度の評 価値は抜いて分析を行う.また,外食予定を優先するために前後の日程の食事を 制限するシチュエーションを想定しているため,外食前後の食事の満足度に関し ては,外食に行ける満足度を踏まえて場合の評価結果も回答してもらう.
アンケート結果の分析には,R ver. 3.2.2を用い,各被験者から得られた回答
結果からBartlett検定を実施し当分賛成の確認を行う.等分散でないという仮説
が棄却できない場合には,ANOVAを用いて3群の分散分析を実施する.その後,
文献[18]を参考にして,対応のあるt検定を実施するとともにBonferroniの調 整を行い多重比較を実施する.等分散でないという仮説が棄却された場合には,
Friedman検定を用いて差の検定を行い,その後にScheffe法を用い対比較を行う.