「対話ができる関係を創る・『折り合い』への『つなげる』支援媒介モデル」
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媒介モデル 「交互作用理論」
A:職権一時保護に伴う対峙的な関係
B:対話の構築
・因子3 「子育ての対話」
・シンボルマーク3「まずは対話できる関 係を創る」
E:「対話ができる関係を創っていく」
「安全の対話」「成し遂げてきた子育てを聴く」
「言葉と態度にチューニングする」「不安に触れ る」「意味のある時間を作る」→「喪失と傷つ き」「関係機関不信」「選択肢なき選択」
C:希望・見通し・目標の共有
・因子1「目標・目的の共有」
・シンボルマーク5「希望が見通しとなり 目標を共有していく」
F:「『折り合い』への『つなげる』支援」
6つの要件
「1周りから支えられる」
「2共に動こうとする関係をつくる」
「3対話が作られていく」
「4子どもの思いを知る」
「5見通しが見えてくる」
「6希望につながっていく」
D:現実の受け入れと子どもの安全づく り
・因子4現実受入れ支援
・シンボルマーク7「現実の受け入れと子 どもの安全の話し合い」
G:「折り合おうとする保護者に寄り添う」
「寄り添う」「動き出すことを見守る」「主体者で あることを支える」→「自分から動く」「虐待者と された自分への対峙」「これからの子育て」
ここまで,子ども虐待対応における「協働」関係の構築について考察し,研究フェイズ3 においては,「協働関係構築のための『対話の構築/希望・見通し・目標の共有』媒介モデル」
を示した.これは,定量的な調査,分析等を通じてまとめられた言わば「協働」関係構築 のための実践モデルのフレームである.そして,「協働関係構築のための『対話の構築/希望・
見通し・目標の共有』媒介モデル」の中で媒介される「対話の構築/希望・見通し・目標の 共有」についての,実際の保護者と支援者の具体的な対話,そこに生まれる人間,環境,
時間,空間の交互作用については,研究フェイズ2,研究フェイズ 4 から研究フェイズ 5 に至る質的な研究プロセスとして「『折り合い』への『つなげる』支援」の交互作用理論」
として検討してきた.
本章では,これまで行ってきた大きな二つの研究の流れを統合し,子ども虐待対応にお いて,不本意な一時保護等を体験している保護者と,子どもの安全のために「協働」して いくための本論における最終的な実践モデルを提起する.そして,この実践モデルの実践 への適用可能性を2つの事例と当事者へのインタビューによってレビューする.
第1節 「協働関係構築のための『対話の構築/希望・見通し・目標の共有』媒介モデル」に
「『折り合い』への『つなげる』支援」の交互作用理論」を組み入れる
図1 「媒介モデル」と「交互作用理論」比較図
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研究フェイズ3によって創出された「協働関係構築のための『対話の構築/希望・見通し・
目標の共有』媒介モデル」(以下「媒介モデル」)と研究フェイズ5によって創出された保護 者と支援者の「協働」関係を構築する「『折り合い』への『つなげる』支援」(以下「交互作 用理論」)の交互作用理論を図1の通り比較した.
「媒介モデル」では,「協働」のプロセスは「A 職権一時保護に伴う対峙的関係」→「B 対話の構築」→「C 希望・見通し・目標の共有」→「D 現実の受け入れと子どもの安全づ くり」と展開する.「交互作用理論」では,大きくステージが「E対話ができる関係を創っ ていく」→「F『折り合い』への『つなげる』支援」→「G折り合おうとする保護者に寄り 添う」と展開する.
「媒介モデル」における「B対話の構築」は「交互作用理論」における「E対話ができる 関係を創っていく」と対応しており,図 1 の通り,同一のテーマを扱っていることが示唆 される.つまり,職権一時保護によって生じた保護者と支援者の対峙的な関係の中で,ま ず,何より対話ができる関係がなければ,何も始まっていかないのである.「協働」の始ま りは対話のできる関係をいかに作っていくのかがテーマとなることはこれまで述べた通り である.
この対話のできる関係を手掛かりに「媒介モデル」においては,「C希望・見通し・目標 の共有」のステージが展開される.「交互作用理論」においても,「F『折り合い』への『つ なげる』支援」にステージは展開していく.話し合える関係性の構築に連続する「媒介モ デル」における「C希望・見通し・目標の共有」のステージと「交互作用理論」における「F
『折り合い』への『つなげる』支援」におけるステージの展開は「協働」関係構築のプロ セスとして同じ展開を経ていく.そして,「交互作用理論」では,「見通しが見えてくる」「希 望につながっていく」が,統合されたコンセプトの中心にあって,これらが保護者と支援 者の「『折り合い』への『つなげる』支援」を展開する動因になっている.一方,媒介モデ ルにおいても「見通しがみえてくる」「希望につながっていく」が中核にあり,やはり重要 なテーマとされる.さらに「『折り合い』への『つなげる』支援」における「見通しが見え てくる」「希望につながっていく」以外の4つの領域つまり「周りから支えられる」「共に 動こうとする関係をつくる」「対話が作られていく」「子どもの思いを知る」は媒介モデル の基礎データとなったパス図「協働関係構築実践モデルおよび,KJ法A型図解化の表札に
「協働」のテーマとして,繰り返し顕れている.従って,「媒介モデル」と「交互作用理論」
における「協働」のプロセスと構造の共通性からから,「媒介モデル」における「C希望・
見通し・目標の共有」を具体的に実現するのが,「交互作用理論」における「F『折り合い』
への『つなげる』支援」であることが示唆される.
さらに,図1の中の点線の四角で囲われている複合ステージを媒介することによって,
「媒介モデル」においては,「D 現実の受け入れと子どもの安全づくり」と展開し,「交互 作用理論」では「G折り合おうとする保護者に寄り添う」と展開していくのである.
以上のことから,本論における結論として,「『折り合い』への『つなげる』支援」の交
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互作用理論」を「協働関係構築のための『対話の構築/希望・見通し・目標の共有』媒介モ デル」に組み入れることで,実践モデル「対話ができる関係を創る・『折り合い』への『つ なげる』支援媒介モデル」を図2の通りとした.
本実践モデルは量的調査に基づく統計的な分析を主にして導き出された「媒介モデル」
と保護者,支援者の質的分析から得られたグラウンデッド・セオリーである「交互作用理 論」のトライアンギュレーションによってまとめられた.統計的分析によって実践のフレ イムを発見し,そこに質的な分析の両者から分析によって創出された「協働」のためのリ アリティのある交互作用を搭載することで実践モデルを示したことで,現場実践に資する 一定の信頼性,妥当性が得られたものと期待したい.
なお,「対話ができる関係を創る・『折り合い』への『つなげる』支援媒介モデル」の実 践への適用については,この後に事例のレビューとして紹介するが,実践で活用できるも のとするには複雑な説明はそぎ落とし,職権の一時保護によって保護者と対峙する場面で 支援者が携えておくサイズにしなければならない.
つまり,保護者との対峙的な関係がある時,支援者は「対話ができる関係」を創ってい くために,煎じ詰めれば,保護者の「喪失と傷つき」「関係機関不信」「選択肢なき選択」
の体験を理解し,「安全の対話」「成し遂げてきた子育てを聴く」「言葉と態度にチューニン グする」「不安に触れる」「意味のある時間を作る」支援を行っていく.対話ができる関係 ができたならば,保護者の「折り合い」への「つなげる」支援のテーマとなる6つの支援,
つまり,「周りから支えられる」「共に動こうとする関係を創る」「対話が作られていく」「子 どもの思いを知る」「希望につながっていく」「見通しが見えてくる」を繰り返し行ってい くことで「協働」関係が進展していくのである.
図2 「対話ができる関係を創る・『折り合い』への『つなげる』支援媒介 モデル」
A:職権一時保護に伴う対峙 的な関係
D:現実の受け入れと子どもの安全 づくり
因子4「現実受け入れ支援」
シンボルマーク7「現実の受け入れ と子どもの安全の話し合い」
B:対話の構築 因子3「子育ての対話」
シンボルマーク3「まずは対 話できる関係を作る」
C:因子1「目標・目的の共有」
シンボルマーク5「希望が見通 しとなり目標を共有していく」
E:対話ができる関係を創って いく
F:「折り合い」への「つなげる」
支援の6つの要件
G:折り合おうとする保護者に 寄り添う
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第 2 節 「対話ができる関係を創る・『折り合い』への『つなげる』支援媒介モデル」の可 能性
~二つの事例に対する家族へのインタビューから学ぶ~
ここでは,実践モデルとして提起された「対話ができる関係を創る・『折り合い』への『つ なげる』支援媒介モデル」の実践への適用の可能性について,二つの事例を通して検討す る.二つの実践は,同モデルを最初から意識して,適用させたものではない.しかし,優 れた実践(good practice)をレビューすると,その中に同モデルにおける「対話ができる関係 を創る」及び「折り合い」への「つなげる」支援の6つの交互作用のいくつかが内在して いることに気付かされる.ここでいう,優れた実践とは「子ども虐待対応において,対立 的な関係になりながらも子どもの安全に向け『協働』し,家庭復帰を実現し,子どもの安 全が維持されている事例」である.事例の中で,対話を創り,6つの「折り合い」への「つ なげる」支援の交互作用がいかに営まれているのかをレビューすることで実践への適用の 可能性,さらには,「協働」関係を構築することに課題を有する事例への適用の一般化,普 遍化を検討する.なお,二つの事例は,子どもの安全づくりの方法としてサインズ・オブ・
セーフティ(SofS)の手続きによって実践が進められている.
二つの事例は,筆者が所属していた児童相談所で行われた実践である.筆者は直接の担 当者ではなく,子ども支援課長として担当者をスーパーバイズする立場にあった.二つの 事例の家族,あるいは担当児童福祉司へのインタビューは事例の終結時に筆者が行った.
ここで紹介する二つの事例については,家族等と支援者による「協働」の体験,ご両親,
家族へのインタビューを研究として紹介することについては両親に文書で許可を得ている が,個人情報にかかわる可能性がある情報については,「協働」の文脈を損なわない範囲で 修正した.さらに担当児童福祉司にもインタビューを掲載することについて文書で許可を 得ている.以上のことから,ここで紹介する事例は事例の文脈を残したフィクションであ り,インタビューについては実際の記録の逐語録を使った.真摯に当事者から教えていた だくという姿勢で,分析を進めたい.
まず,実践の枠組みとなったサインズ・オブ・セーフティについてその概要を説明する.
1 サインズ・オブ・セーフティ(SofS)による安全づくりのプロセス
サインズ・オブ・セーフティは 1980 年代に西オーストラリアでアンドリュ・タネル,ス ティーブ・エドワードによって始まった子どもの安全づくりの体系である.その後,世界 に実践は広がり,わが国においても子ども虐待対応のソーシャルワークの体系として広が りを見せている.全国の児童相談所の 25%が何らかの形で導入しているとの報告もある(加 藤 2013).サインズ・オブ・セーフティは当事者(子どもとその養育者)の意見・考え,家 族自身が持っている強さ,資源(リソース)に焦点を当て,当事者と専門職が「協働」する ことによって,家族自身と安全を守る人が安全を構築していくことを支援するアプローチ