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33 門委員会報告(提言)」)

虐待相談の経路別件数としては,先に述べたような事情により警察からの通告が 37%と 近年の虐待対応件数を増加させている大きな要因となっている.警察からの通告が平成1 8年度には7%であったことと比較すれば,いかに警察が徹底して子どもに対する夫婦間の 面前暴力,DV下におかれた子どもを被虐待児童としての疑いにより通告しているかがよく わかる.ついで,近隣知人 17%,家族9%である.児童本人からはわずか 1%である.児 童本人が学校の先生に訴えたことによって,学校が児童相談所に通告すれば,学校からの 通告と計上されるため,子どもからが相談経路となる割合が少ないこともあるが,やはり,

子ども自身が被害を訴えることの割合を増やしていく努力が必要である.特に,学校教育 等の中で,被害を受けている子どもはあなただけではないとノーマライズして,子どもが 訴えることができる環境を作っていくことが極めて大切である.

主たる虐待者は実母が50.8%,実父が36.3%で,養父母,継父母の順となる.養育の主 たる担い手となっている母親が,子どもとの関係の行き詰まりの中で,孤立し,虐待に発 展している姿がうかがえる.

虐待を受ける子どもの年齢は,幼児期で42.7%,小学生34.7%,中学生14.3%,高校生

等が8.3%である.平成11年度に高校生の割合が5%であったものが平成27年度では8.3%

となっていることに特徴がある.これまでは,幼い子どもに対する虐待が注目され,高年 齢児についてはかつて虐待されていたことの2次的症状,問題としての非行,神経症圏の 症状等として取り扱われていたものが,今,まさに生活の中で虐待を受けた被害児として 対応されることになっていることを示している.

虐待相談として受理された後の子どもの生活の場所について,平成27年度の虐待相談の

受理件数103,286件のうち,一時保護14となったのは17,801件であり17.2%であった.通

告に基づく一時保護は,保護者の同意を前提としない職権による一時保護になるため,本 論の研究テーマの一つとなっているように,保護者は多くの場合,不本意な形での一時保 護を体験することになる.一時保護件数が17,801件であり17.2%と言う数字は,児童相談 所とすれば,日常的に職権の一時保護がなされている感覚を覚える.さらに,児童養護施 設等など社会的な養護の対象となったのは,4,570件であり4.4%である.

つまり,一時保護された子どもの25%程度が社会的養護として里親,施設入所に至る ということになる.

一方では,虐待相談として受理したケースのうち,95%以上は家庭復帰しているという ことでもある.これは,全国統計であるが,都市圏の児童相談所,特に全国の通告件数の 8割を占める 5 つの自治体では,通告件数自体の母数が大きいため,社会的養護の対象と なって,里親,施設に措置委託される割合はさらに低くなっている.

14 児童福祉法第33条による行政処分.児童相談所は保護者の意思に反しても子どもの安全 を図る目的において一時保護を実施する.平成30年度より保護者の意思に反して一時保 護し根2か月を超える場合は裁判所による承認が必要になった.

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平成27年度中の児童福祉法第28 条15による施設入所の承認審判により承認されて施設 入所となったのは全国で208件であった.都市圏においても28条承認申請の件数には格差 がある.

(2)子ども虐待通告件数増加の背景とその対応

子ども虐待の通告件数の顕著な増加の背景には我が国の子どもの権利についての意識の 変化がある.我が国の子どもの権利条約の批准は1994 年であり,決して早くなかったが,

このこと等によって,徐々に子どもにおいても大人と全く同等の権利があることが社会的 に認識されるようになっていった.これまで,子どもへの権利の侵害と捉えられていなか ったことが,権利侵害であるという認識を持たれるようになっていった.子どもへの暴力 は,懲戒権の逸脱とされるようになっていった.かつてのスポ根漫画などに描かれている 暴力シーン,子どもへのかかわりは,今では明らかに子ども虐待である.

1980年代は子どもの権利条約につながる子ども虐待発見の時代と呼ばれることがある.

それ以前に子どもへの権利侵害がなかったかと言えば,そんなことはない.江戸時代に行 われた間引きは,バースコントロールができない時代の子殺しである.戦後に人減らしの ために人身売買が行われたこともそれほど古い歴史ではない.子どもが労働力とみなされ ていた時代でもあった.1970年代には,コインロッカーに嬰児の死体が発見されるという 痛ましい事件が発生し,年を追うごとに類似犯が増し,1973年には46件もの類似の事件 が発生した.

アメリカでは,ケンプが受診してくる子どもの中に説明がつかないけがをしている子ど もたちの一群がいることに気づき,The Battered Child Syndrome として虐待の存在を世 に知らせた.(Kempe,C,H 1968) 日本にも紹介され,注目を浴びるようになっていった.

子ども虐待は,これまでなかったものが新たに見つかったのではなく,1980年代からの 子どもの権利意識の高揚に伴って,わが国においても重大な子どもの権利侵害があり,子 ども虐待があること,そして,この社会問題に対して社会が直面し,あらゆる英知によっ て解決を目指すことの認識がなされた年であると言ってよい.

そして,2000年に虐待防止法が議員立法によって成立したことによって,わが国は子ど も虐待への対応を本格化させていくことになる.この間に,社会の関心を集める痛ましい 虐待事案がマスコミに取り上げられていった.死亡事例検証(児童虐待等要保護事例の検証 に関する専門委員会)にあるように,それらの事例の中には,明らかに児童相談所等,子ど もの福祉を守るはずの第一線機関による瑕疵と思われる事案があった.児童相談所は厳し い社会の批判を浴びていった歴史でもある.この間に,子ども虐待の定義の見直し,「虐待 を受けた思われる児童」も通告対象とする通告義務の範囲の拡大,市町村が一義的な児童

15 里親,施設に措置委託する場合に親権者の同意が取れない場合は,児童相談所は家庭裁 判所に対し施設に入所することの承認の審判を申し立てる.承認される期間は2年間であ り,更新する場合にはさらに更新審判を申し立てる必要がある.

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相談の窓口となること,要保護児童対策地域協議会の法定化,立ち入り調査の強化,保護 者に対する面会通信等の制限の強化,乳児家庭全戸訪問事業,養育支援訪問事業等子育て 支援事業の法定化,里親制度の改正等家庭的養護の拡充,民法改正による親権停止制度の 新設などが次々に実施された.28年度にも児童福祉法の改正がなされた.

さらに,この間に起きた社会的に注目された痛ましい子ども虐待事件を契機として,様々 な通知が厚生労働省から発出された.これらは,児童相談所職員としての行動の指針とな る「児童相談所運営指針」や「子ども虐待対応の手引き」16に反映されている.例えば,通 告を受けた場合,48 時間以内の目視による子どもの安全確認が求められている.当然,休 日や夜間を挟んでの対応も求められている.また,施設から家庭復帰する際に,一定期間 の児童相談所によるモニター指導が課せられ,居所不明児童の中に重篤な虐待事例が潜ん でいることから徹底した児童の追跡調査等が行われている.

そして,今日の子ども虐待対応の仕組みが作られていった.社会の子どもの権利に対す る認識はさらに高まり,子どもが示す小さなサインも見逃さない努力がなされ,子ども虐 待の通告は,右肩上がりの増加を示していくことになるのである.

一方で,批判が集中した児童相談所の実態も明らかになることとなっていった.地区を 担当する児童福祉司が一人100件以上の担当を抱えて,身動きが取れない状態も浮き彫 りになっていった.マスコミも,児童相談所の瑕疵だけを追求していっても,問題の本質 的な解決にならないことから,瑕疵が起きる仕組みの変容に論調を変える動きもみられる.

厚生労働省も児童相談所強化プランを打ち出し,児童相談所の近未来像を示している.

児童福祉司の配置基準を31年度には人口4万人に1人の割合とすることで,27年度比1 9%の増員を目指している.しかし,現場は常に緊急の子ども対応に追われ,48 時間以内 の子どもの安全確認と,職権の一時保護,膨大な警察からの通告に翻弄されているという のが実態である.また,これらの対応職員が,採用間もない職員が行わなければならない 実態があり,専門性の確保,職員の育成においても大きな課題を残している.(鈴木2017 b).

(3)子ども虐待における死亡事例検証

子ども虐待による死亡事例については,平成 16 年 10 月に社会保障審議会児童部会の下に「児 童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」が設置され,年に一度,死亡事例について事 例を分析,検証し,明らかとなった問題点や,課題となったことについて提言がなされている.

子ども虐待対応の絶対的な優先事項は,子どもの命と安全を守ることである.子ども虐待の諸課 題を論じる場合は,この絶対的な優先事項を前提としなければいけない.本論も同様である.

第 1 次から第 12 次報告までの死亡事例の検証件数の合計は 545 件であり,きょうだいケースも 含まれるため対象人数は 582 人となっている.親子心中17による死亡事例の検証は平成 27 年度ま

16 厚生労働省ホームページ参照http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv12/00.html

17 「親子心中」という表現を使うことには様々な意見があるが,最も深刻な虐待の一類型 であり,予見が難しく対策が求められている.