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支援のプロセスと構造

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第2章では,保護者の立場からの「協働」について,質的な分析を行った.3章では,支 援者の立場からの「協働」について,アンケート調査による定量的分析を行い,アンケー トの自由記載をKJ法によりまとめ,さらにこれらの二つをトライアンギュレーションによ って比較,統合することで「協働関係構築のための『対話の構築/希望・見通し・目標の共 有』媒介モデル」の枠組みを示した.さらに「協働」についての考察を深めるためには,

実際支援者がここに示された枠組みの中で,具体的に「協働」の実践をどのように進めて いるのかを,支援者から直接教えていただくことが必要となる.

ここでは,支援者が子ども虐待対応における「協働」をどのように捉えているのかを 2 章の保護者インタビューと同様の方法で行い,質的な分析を進める.

第1節 .研究方法

1. グラウンデッド・セオリーについて

本研究では職権による一時保護(児童福祉法第33条)等の危機介入にかかわり,保護者と の「協働」関係の構築に取り組んだソーシャルワーカー等にインタビューを実施した.そ して,これらのデータから新たな実践モデル構築の仮説生成を目指し,グラウンデッド・

セオリーによる質的分析をおこなった.グラウンデッド・セオリーには,その分析の手続 きによっていくつかの方法があるが,第2章同様本研究ではグレイザー派(クラシック)グラ ウンデッド・セオリーの手続きに従い分析を実施した.

2. 研究協力者

本研究では不本意な一時保護を体験した保護者と対峙した経験のある支援者に対しての インタビュー調査を実施し,分析した.とりわけ,サインズ・オブ・セイフティ(Turnell

2012 )やファミリーグループ・カンファレンス(林 鈴木 2011 )など当事者参画により子ども

の安全づくりを「協働」する支援者を対象として,優れた実務家の実践知から保護者との

表1 インタビュー協力者

職種 性別 年齢(才) 職員歴(年) 児相歴(年) 所属 インタビュー時間(分)

1 児童福祉司 女 51 21 6 K県 69

2 児童福祉司 男 48 23 7 K県 70

3 児童福祉司 女 43 21 5 K県 65

4 児童福祉司 男 48 20 8 K県 75

5 児童福祉司 男 48 24 8 K県 50

6 児童心理司 女 44 18 15 K県 77

7 所長(福祉) 女 56 32 7 K県 60

8 児童福祉司 男 48 24 21 S県 95

9 児童福祉司 女 32 10 10 S県 100

10 児童心理司 女 52 25 13 I県 90

11 所長(心理) 男 52 29 13 T県 65

12 児童福祉司 男 48 23 5 K県 65

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「協働」のためのプロセスと構造を明らかにする.協力者は表1の通り,関東地方 4 県の 児童相談所に所属する12 人である.男性6人,女性6人.児童福祉司9名,児童心理司3 名であった.今回の調査では,保護者と対峙した経験のある支援者として職種については,

限定しなかった.年齢は30代が1人,40代が7人,50代が4名で,平均は48才であっ た.児童相談所経験年数は5年から21年で平均10年であった.他職も含めての経験年数 は10年から32年で平均23年であった.インタビューの場所は児童相談所の面接室,レン タルルームで行った.インタビュー時間は50分から100分で,平均は75分程度である.

調査期間は平成28年2月より28年9月である.

3.インタビューにおける質問

グレイザー派グラウンデッド・セオリーでは,研究協力者からの自由な語りを求めて,広く質 問(グランドツアークエッスチョン)していく.インタビューガイドは推奨されない.面接者は研 究協力者が語った言葉,テーマに注目し対話を探求していく.

本研究では「職権一時保護によって対立的な関係から始まらざるを得ない保護者と,子どもの 安全のために協働するには何をすればよいのでしょうか」と言う質問を行い,対話をはじめ,デ ータを得た.

第2節 .倫理的配慮

本研究では研究協力者に個人情報は言及しないことを約束のうえ,研究の趣旨を説明し 文書で同意を得て,インタビューを実施した.インタビューは研究協力者の許可を得て録 音し,逐語化した.さらに,研究にあたっては筆者が所属する児童相談所長の決裁を受けると ともに,東洋大学の倫理委員会の承認を得て実施した.

第3節 .結果

表 2「『つなげる』支援におけるカテゴリー・コンセプト・主なインディケーター」は,

代表的なインディケーター,コンセプト,カテゴリーをまとめたものであり,以下,カテ ゴリー【 】コンセプト< >インディケーターを[ ]として示す.ステージは〔 〕で示 す.

分析に当たっては,インディケーターを逐語録から抽出し,それを比較し,32 のコンセ プトがまとめられた.表 1 にあるインディケーターは,コンセプトを最も代表するもので ある.さらに,コンセプトを比較検討することで,14のカテゴリーが創出された.そして,

これらのコンセプト,カテゴリーの関連を説明する核となる概念(core variable) として「つ なげる」が浮上した.「つなげる」は,研究協力者からのインタビューにおいて,様々な支 援の場面において,多義的にそして,繰り返し語られた言葉であり,インビボ・コード(in vivo

codes)である.in vivo codesとは,研究協力者特有の用語であり,「発話や意図の象徴的な

目印としての役目を果たし」さらに「用語を紐解いていくことは潜在する意味や行為を理

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解する素晴らしい機会を与えてくれるだけでなく,データと創発するカテゴリーを比較す ることも可能にする」(Charmaz=2008:65)とされている.「つなげる」を手がかりに,さ らにコーディングファミリーである6つのC を理論化の枠組みとしてコンセプト,カテゴ リーを配置していくと,支援者が行う「つなげる」支援の枠組みが浮かび上がってきた.

これを支援のステージとして整理すると〔対話ができる関係を創る〕→〔つなげていく〕

→〔寄り添う〕の3つのステージに分類された.

図 1「『つなげる』支援のプロセスと構造」は,保護者支援のプロセスと構造をまとめた ものである.保護者は職権による不本意な一時保護を体験することで,児童相談所と対峙 していくことが多い.保護者は,この事態に「喪失と傷つき」を体験し,混乱,困惑し,

無力感にさいなまれ,傷ついていく.時間が止まったかのような感覚に陥り,怒りがこみ あげたり,あきらめたり,自己を責め続けたりする.これらの感情は,同時に児童相談所 をはじめとした「関係機関不信」となるが,子どもを一時保護されている状況の中で,児 童相談所の指導に従わざるを得ないという,いわば「選択肢なき選択」を迫られ,無力化 された状況におかれるという(2016 鈴木).そして,これらの状況の中で保護者と児童相談 所が対峙することから,関わりが始まっていく.「つなげる」支援は図1にある通り,3つ の支援ステージの連動によって展開していく.それぞれのステージにはカテゴリーによっ て構成されたサークルがあり,その中心にはそのステージの中心的支援テーマとなるカテ ゴリーがある.そして,その周囲にはその中心的支援テーマを実現するための構成要因と なるカテゴリーが囲んでいる.支援者はそれぞれのカテゴリーにある支援テーマに取り組 み,それらの支援が展開することを通して,中心的な支援テーマにアクセスし,それらの テーマとテーマがつながることで,中心的支援テーマの実現を促進させていく.一方で中 心的支援テーマの進展が,周囲にあるそれぞれのカテゴリーの支援テーマを活性化させ,

そこに持続的な交互作用を生じさせる.さらに,中心的な支援テーマの進展は,3つのサー クルにあるプロセスを展開させていく原動力になり,サークルをつなぐ双方向の矢印とし て示した.

〔対話ができる関係を創る〕ステージにあるサークルの中心には【安全の対話】があり,

中心的支援テーマである.この周囲に【成し遂げてきた子育てを聴く】【言葉と態度にチュ ーニングする】【不安に触れる】【意味のある時間を創る】がある.ここでの支援課題は,

子どもの安全について話し合うことである.子どもを「奪われた」保護者との対峙的な関 係から,この主題に取り組む対話の実現をサークルは示している.ここで話されるのはま さに,子どもの安全についてである.ここで保護者は必ずしも児童相談所と関わっていく ための目標が共有できているわけではない.強い不信がある場合もある.だからこそ【安 全の対話】の周囲にある 4 つのカテゴリーの支援課題に取り組むことで,保護者の潜在的 な力に働きかけ,エンパワーする.保護者にすれば児童相談所の権威を背景とした「選択 肢なき選択」と感ずるような子どもを引き取るためには取り組まざるを得ない状況におか れつつも,矢印にある子どもの「安全について話し合える関係の維持」が原動力となって,

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プロセスが展開していく.これにより,話し合える関係ができていくと〔つなげていく〕

ステージに展開していく.ここにあるサークルの中心にあるのは,【希望につなげる】であ り,この周りを【見通しを立てる】【リフレイムを探す】【親子の思いの伝え合い】【親族や 友人との再会】【新たな対話が生まれる】がある.「つなげる」支援においてつながるもの は多義的であり,インディケーターからは人,対話,思い,場所(空間),時間などが浮かび 上がり,概念化された.これらがつながっていくことで,創出されるものは保護者にとっ ての希望である.希望は 3 つのサークルの中心にあり,サークル間の交互作用を活性化さ せる中核に位置づいている.希望が持てると,単に子どもを引き取るということだけでな く,子どもの未来を引き取り,子どもとの生活の再開に希望を抱くようになっていく.こ こでは,つなげる支援がいかに保護者の希望につながっていくのかを示している.さらに,

つなげる支援が展開し,矢印にある「希望を持ち続けられる」ことが原動力となって〔寄 り添う〕にあるステージに展開していく.ここにあるサークルの中心にあるのが【寄り添 う】であり,この周囲に【動き出すことを見守る】【主体者であることを支える】がある.

このサークルのテーマは,当事者として子どもの安全と未来を創っていこうと動き出した 保護者を支持し寄り添うことである.〔対話ができる関係を創る〕〔つなげていく〕のプロ セスを経ることで,当事者として動き始めた保護者に支援者は〔寄り添う〕のである.

支援者の立場から捉える「協働」のプロセスはここにある 3 つのサークルを構成してい る14のカテゴリー,更にそれを構成する32のコンセプトを実践課題として重層的に支 援に取り組むことで,螺旋階段を少しずつ昇っていくように保護者と児童相談所における

「協働」関係が展開していく.そして,これにより子どもの安全について率直に話し合う 関係ができ,保護者は当事者性を高め,子どもの安全づくりに取り組もうとするのである.

以上を踏まえ「つなげる」支援を定義すると「不本意な一時保護を体験し,児童相談所 と対峙的な関係にある保護者に対して,対話を構築し,支援者が保護者等に対して,人,

対話,思い,場所(空間),時間などをつなげることによって,子どもの未来に希望を持つこ とで,主体者となろうとする保護者に寄り添い子どもの安全という目標に向かって児童相 談所と協働していくプロセスを創ること」となる.