-保護者の「折り合い」への「つなげる」支援の交互作用理論-
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子ども虐待における「協働」関係を論じる場合は,少なくとも二つの異なる視点,つま り,保護者の立場から捉えられる「協働」関係と支援者の捉える「協働」から考察されな ければならない.二つの立場の交わるところに「協働」関係があるからである.
ここまでの調査研究によって,保護者に対するインタビュー調査に基づく質的研究により
「折り合い」のプロセスが見いだされ,支援者に対するインタビュー調査に基づく質的研 究により「つなげる」支援のプロセスが見いだされた.本章では,これら二つの質的分析 を統合することで,保護者と支援者の「協働」における統合された領域密着理論としての グラウンデッド・セオリーを考察する.
第1節 研究方法
第2章おいて,子ども虐待における「協働」関係について,不本意な一時保護を体験し た保護者等に対するインタビュー調査をグレイザー派(クラシック)グラウンデッド・セオリ ーによって分析し(鈴木 2016),また,第4章において,サインズ・オブ・セーフティ,フ ァミリーグループ・カンファレンスなどの当事者参画を積極的に進める支援者に対しての 同様の調査,分析を行った(鈴木 2017a).本論では,この二つのグラウンデッド・セオリー を比較分析し,理論の統合を図ることで,子ども虐待対応における「協働」関係構築の在 り方を論じる.
1.グラウンデッド・セオリーについて
引用する二つの分析は,いずれもグレイザー派グラウンデッド・セオリーが用いられて いる.分析の特徴,手続きについては2章参照.
3. 研究協力者
二つの研究のうち,保護者等に対してのインタビューでは,子ども虐待に伴う不本意な 一時保護を経験し,その後,家庭引取りとなった保護者等に一時保護解除後にインタビュ
表1 インタビュー協力者(保護者)
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ーが行われた.調査の協力を得られた家族は表1の通り,10 家族20人,うち分析対象は 16人.子どもの年齢は乳児から中学生.ネグレクト6家族,身体的虐待3家族,心理的虐 待 1 家族であった.インタビューの場所は児童相談所の面接室,家庭訪問による研究協力 者自宅,研究協力者が指定した場所(駅)であった.インタビュー時間は30分から2時間で,
平均は1時間程度,調査期間は平成26年8月より27年8月であった. (鈴木2016) 支援者等に対してのインタビューについては,不本意な一時保護を体験した保護者と対 峙した経験のある支援者に対して調査が実施され,分析された.とりわけ,サインズ・オ ブ・セーフティ(Turnell 2012)やファミリーグループ・カンファレンス(林 鈴木 2011 )な ど当事者参画により子どもの安全づくりを「協働」する支援者を対象として,優れた実務 家の実践知から保護者との「協働」のためのプロセスと構造を明らかにしている.協力者 は表2の通り,関東地方4県の児童相談所に所属する12人である.男性6人,女性6人.
児童福祉司9名,児童心理司3名,年齢は30代が1人,40代が7人,50代が4名で,平 均は48才であった.児童相談所経験年数は5年から21年で平均10年であった.他職も含 めての経験年数は10年から32年で平均23年であった.インタビューの場所は児童相談所 の面接室,レンタルルームで行われ,インタビュー時間は50分から 100分で,平均は75 分程度であった.調査期間は平成28年2月より28年9月であった.(鈴木2017b)
第2節 .倫理的配慮
本論で扱われる二つの調査に係る研究等への活用については,すでに 2 章,4章で示し た通り,保護者等に対して文書で許可を得て,所属する機関の長の決裁を受けている(鈴木 2016).さらに支援者に対しても文書で許可を得て,所属する機関の長の決裁,分析者が所 属する東洋大学の倫理委員会の承諾を得て実施しているものである(鈴木 2017b).
表2 インタビュー協力者(支援者)
職種 性別 年齢(才) 職員歴(年) 児相歴(年) 所属 インタビュー時間(分)
1 児童福祉司 女 51 21 6 K県 69
2 児童福祉司 男 48 23 7 K県 70
3 児童福祉司 女 43 21 5 K県 65
4 児童福祉司 男 48 20 8 K県 75
5 児童福祉司 男 48 24 8 K県 50
6 児童心理司 女 44 18 15 K県 77
7 所長(福祉) 女 56 32 7 K県 60
8 児童福祉司 男 48 24 21 S県 95
9 児童福祉司 女 32 10 10 S県 100
10 児童心理司 女 52 25 13 I県 90
11 所長(心理) 男 52 29 13 T県 65
12 児童福祉司 男 48 23 5 K県 65
155 第3節 .結果
1. 二つのグラウンデッド・セオリーの比較
表 1「『折り合い』と『つなげる』支援の統合」は保護者インタビューに基づくグラウン デッド・セオリーによる分析結果(鈴木 2016)と,支援者インタビューに基づくグラウンデ ッド・セオリーによる分析結果(鈴木2017)を対比させたものである.右側に「保護者の『折 り合い』のプロセス」としてカテゴリー・コンセプトを,左側に「支援者の『つなげる』
支援のプロセス」としてカテゴリー・コンセプトがある.真ん中は,左右のステージ,カ テゴリーを「統合」したものある.
表 1 の通り,右側の「保護者の『折り合い』のプロセス」については逐語化したインタ ビュー分析の結果,33のコンセプトが抽出され,さらに12のカテゴリーにまとめられ,核 概念(core variable)として「折り合い」が創出されている.そして,「折り合い」のプロセ スとその構造を説明するため〔失う〕→〔折り合い〕→〔ひきとる〕の 3 つのステージに 整理されている.図1の「『折り合い』のプロセスとその構造」(鈴木 2016)は不本意な一時 保護をされた保護者が,子どもの安全のために児童相談所と「協働」し,困難な現実に対 処していくプロセスとその構造を示している.〔A失う〕〔B折り合い〕そして,〔C引き取 る〕の3つのステージにはそれぞれ3つのサークルがあり循環している.〔A失う〕は不本 意な一時保護に伴う保護者の体験を表している.そして,〔B折り合い〕は「B-1折り合い を促す6要件」を保護者と児童相談所が「B-2(子どもの安全という目標を共有し)折り合い を展開させるための協働関係」に参画することで展開している.そして,保護者によって
「B-3さまざまな困難に対しての『折り合い』」が実現されると,ステージは〔C引き取る〕
に移るとされている.
「折り合い」については「不本意な一時保護に伴い生じる喪失感と様々な感情及び,関 係機関への不信を抱き,児童相談所等と対峙する局面を経験しつつ,さらに,虐待者とさ れた自己に対する疑念と,子育てアイデンティティーの混乱を抱えながらも,児童相談所 との『協働』関係が進む中で,子どもを引き取るという現実的な課題や目標を実現するた めに保護者自身が受け入れ難い現実に調和していくプロセス」(鈴木 2016)と操作的定義が 与えられている.
表 1 左側の「支援者の『つなげる』支援のプロセス」の分析に当たっては,保護者イン タビューの分析と同様にインディケーターを逐語録から抽出し,それを比較し32のコンセ プトと,さらに14のカテゴリーにまとめられ,核概念として「つなげる」が創出されてい る.「つなげる」を手がかりにコンセプト,カテゴリーを配置していくと支援のステージと して〔対話ができる関係を創る〕→〔つなげていく〕→〔寄り添う〕の 3 つのステージに 分類されている.
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表3 「折り合い」と「つなげる」支援の統合
統合
コ ン セプ ト N O カ テ ゴ リ ー NO ステ ー ジ ステ ー ジの統合 ス テ ー ジ N O カ テ ゴ リ ー N O コ ン セプ ト 子どもの安全を守ることを
伝え続け目的を共有してい
く 1 1 混乱・困惑
児相にある権威の存在を 意識していく
2 2 無力・傷つき
常に話を聞く姿勢を持ち続
ける 3 3 不運
虐待に至ってしまった事情 を子育ての苦労として聞か
せてもらう 4 4 時間の剥奪
大変な子育ての中でも保 護者が成し遂げたことを探
していく 5 5 怒り
虐待者とされたことの傷つ
きを支えていく 6 6 あきらめ
保護者の言動にチューニン グし,対話のタイミングを
探っていく 7 7 自分を責め続ける
保護者の時間感覚に応え
ていく 8 8 つながっていない機関
親の中にある子どもに対し ての何となくの不安な気持 ち,関係性に触れていく 9
不安に触れる
(言語化できない子ど もに対しての潜 在的不安を ,現実の不安につなげて いく)
4 9 情報からの遮断
話し合える関係性を作って
いく 10 10 わからない保護理由
わかりやすい対話の枠組
みを作っていく 11 11 動かない児相
12 手続きの押し付け 13 選択肢のない選択 成し遂げ てきた子育てを
聴く
(保護者が,児相職員を 自分自身のこ とを 理解してくれる 存在として認識し ていくよ うになっていく.保護者にとっ て,児相が脅かされない関係としてつ ながっていく.)
3
1 喪失と傷つき
2 関係機関不信
言葉と態度にチュー ニン グす る
(保護者が,折り合っていくことができ る リズム,感覚,タイ ミン グでつなげ ていく.)
失 う
1 安全の対話
(子ど もにおきた危害を 率直に話し合 い,児相の心配と,保護者の子ど も に対する 思い,ビ ジョ ン とすり合わ せつなげていく)
3 選択肢なき選択
2
対 話 が で き る 関 係 を 創 る
支援者の「つなげる」支援のプロセス 保護者の「折り合い」のプロセス
支援者の存在を意識しても らえるようになっていく 12
意味のある 時間を作る
(子ど もの安全について話し合える 関 係性としてつながっていく.)
5
Ⅰ 対話ができる関係を創っていく
「Ⅰ対話ができる 関係を創ってい く」の統合ステー
ジは支援者の
「対話ができる 関係を創ってい く」ステージと保 護者の「失う」ス テージが、ステー
ジ単位で対応す ることで構成され
ている。
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158
イ ー イ
トE 折り合おうとする保護者に寄り添う ステージ の 統 合
•
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と思うようになっていく
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12 10 自 分 か ら 動 〈
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ていく 27 ま象割引につながってい
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28 動きだすことを見 への 疑念
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