第4章 教科書の編集・発行過程とCl&Eによる検閲
第2節 「数表」の扱いをめぐって
教科書の編集が始まろうとしていた10月30日,文部省教科書局と教科書出版会社の間 の意思疎通が欠けていたというトラブルがあり,和田はそれを嘆いている.
この記述は,新制高等学校の数学教科書の著作権は,文部省外の中等学校教科書株式会 社にあるものの,教科書の内容選定に関しては,数学教科書の編集長である和田やその委 員から直接の指示がなされていたことを示している.新制高等学校の数学教科書は,中等 学校教科書株式会社発行の1種類だけであり,文部省の数学教科書編集委員会の編集方針 が厳格に表れていると見るのは必然で,この検定教科書が,新制高等学校数学科の教科内 容を定めたものとして重要な意味を持つことに変わりはない.
出される見込みであることを説明した.
2.第3学年の試し刷り原稿は, 3月20日までに提出されるであろう.
3.署名官は,第4,5学年の算数教科書の印刷は既に認可されており,第6学年は4月1日の
リストに,中学校の第1,2学年は, 5月1日のリストに優先的に組み入れられる計画であると和 田から説明を受けた.
4.数表は,別冊として印刷するのではなく,数学教科書自体に組み入れるよう念を押された.
そうしない限り,学校年度のかなり後まで,どのような表も使えない可能性が高い,と和田‑の 注意がなされた.
5.数学の高等学校の教科書を書くために出版会社に雇われていた大学教授が死去したため, 別の著者に連絡が取れるまで,原稿の準備が遅れる.
第4段落に注目したい.
「4.数表は,別冊として印刷するのではなく,数学教科書自体に組み入れるよう念を 押された.そうしない限り,学校年度のかなり後まで,どのような表も使えない可能性 が高いと,和田‑の注意がなされた.」
"
4.The matter of incorporatir唱the mathematics tables in the mathematics textbooks themselves rather than printing them as a separate volumes was
reemphasized and itwas pointed out to Mr.Wada that, unless this is done, there will very probably be no tables until very late in the school year・以
とある.この約2ケ月後, 5月22日の"RegularWeekly Conference"(10)にも,
「新制高等学校用の数表の冊子を復刻とする問題が再度持ち出された. 」
"The question of the re・printing of the volume of mathematics tables丘)r use in the upper secondary courses was brought up agaln."
と報告されており,和田は, 「数表」の「復刻・別冊」を再三ハ‑クネスに申し入れている.
和田は,なぜ「数表」の「復刻・別冊」にここまでこだわったのだろうか.その真意は 分からない.他の教科書原稿の完成が遅れており,原稿の組みなおしに時間を費やしたく
なかったのだろうか.生徒の「使い勝手」を考えてのことだろうか.それとも別の意図が あったのだろうか.
いずれにせよ, CI&Eは,紙不足を理由に和田を退ける.これで, 「数表」という別冊教 科書が実際に発行されることはなくなるのである.結局, 『解析編(Ⅰ)』, 『解析編(Ⅱ)』,
『幾何編(1)』,それぞれの巻末に「附録数表」として,平方・立方・平方根・立方根表, 三角関数表,数の対数表が掲載されるのである. (本論文p.145. 「表1」参照.)
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昭和18年4月4日 印 耕
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配給元 日本的坂i監鈴株式食敢
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※ 旧制中学校用『数表(中学校用)』の奥付.