• 検索結果がありません。

1. 敗血症診療ガイドラインはどう変わったか?

織田 成人

千葉大学大学院医学研究院 救急集中治療医学

 敗血症診療ガイドラインは、2004 年に発表されたSurviving Sepsis Campaign guidelines (SSCG)に端を発する。SSCGは 2008 年、2012 年と改訂され、本年第 4 版となるSSCG 2016 が発 表された。一方、わが国では敗血症に対して欧米と異なる治療法が行われていることや、考え 方の異なる治療法があるため、日本独自のガイドラインが必要であるとの考えから、2012 年 に日本集中治療医学会が「日本版敗血症診療ガイドライン」を発表した。このガイドラインで は、主に日本独自の治療や欧米と考え方の異なる治療法を取り上げ、日本語の文献や日本集 中治療医学会で行ったSepsis Registryの結果も参考に作成された。2016 年に、長年使用され てきた全身性炎症反応症候群( SIRS )の概念に基づいた敗血症の定義が変更され、「敗血症 は感染に対する制御不十分な生体反応に起因する臓器障害」と定義された( Sepsis- 3 )。今年 に入り、ほぼ時期を同じくして、 SSCG 2016 と日本版敗血症診療ガイドライン 2016 が発表さ れた。新しい日本版ガイドラインは、前回のものと異なり日本救急医学会との合同委員会で Mindsの手法に則って作成され、小児を含む 19 項目で 89 のクリニカルクエスチョン( CQ )が 取り上げられている。この中で、敗血症の定義は、 Sepsis- 3 に準じることが推奨されている。

一方、 SSCGでは、小児の項が削除されたが、それ以外はほぼ従来の項目が取り上げられてい る。いずれのガイドラインも同じエビデンス( RCTやメタアナリシス)を用いて作成されて いるが、いくつかの相違点がある。本講演では、敗血症ガイドラインの変遷と新しい敗血症の 定義、そして日本版敗血症ガイドラインについてSSCGと比較しながら解説する。

特別講演教育講演

教育講演

2. ARDS診療ガイドライン2016 公開1周年を迎えて

讃井 將満  

自治医科大学附属さいたま医療センター 集中治療部

  ARDS診療ガイドライン 2016 が上梓されて約 1 年が経過した。

 本ガイドラインは、病態生理、人工呼吸療法、周辺治療に関して教科書的な内容が記載 されたパート 1、世界標準の科学的ガイドライン作成法として認知されているGrading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation( GRADE )に 則 っ て 作 成 したパート 2 の、2 部構成になっている。本年 1 月に行ったウェブベースのアンケート調査

( http://www.jseptic.com/rinsho/questionnaire 59 .pdf 回答 94 名)では、「本ガイドライン の存在を知らない」、「知っていてもみたことがない」という回答が合わせて 40%を越えた。

フリーコメントでは、「本ガイドラインがなぜ存在するのかわからない」「エキスパートの主 観的な内容のパート 1 とGRADEに準拠したパート 2 が並んでいて、しかも両者の内容が対立 している。別々に発行すれば良かったのではないか」などの厳しいご意見をいただいた。

 またこの 1 年間、本ガイドラインの普及目的に、関連の学会やセミナーでパート 2 に関して 紹介させていただく機会をいただいた。しかし、聴講された方から「ガイドラインの作成過程 について話されても日常臨床には有益ではない」「ガイドラインの内容を実践的に講義して ほしい」という否定的なご意見をいただくことが多かった。

 確かに、厚生労働省の委託事業である日本医療機能評価機構が運営するEBM普及推進事業

Mindsからは、「非常に優れたガイドライン」「日本国内でまだほとんど見られない先駆的な

取り組み」などの高い評価を受けた。しかし、現場を与る非エキスパートにとって、小難しい

用語、図表、評価スケールが併記された「 XXすることを推奨する(提案する)」という記載よ

りも、簡潔明瞭な“断言”の方がありがたい時がある。科学的であろうとすればするほど奥歯

に物が挟まったような物言いになるし、非エキスパートに対しては危険を覚悟で“言い切っ

た”方がかえって響くかもしれない。一方で、ガイドラインは所詮、既存の臨床研究結果の系

統的まとめに基づく見解集なので、知識も経験もあるエキスパートにとっては「ガイドライン

の内容を実践的に講義」されても面白くない。

教育講演

3. ICUに於ける医療の質

髙橋 英夫  

東京医科歯科大学医学部 生体集中管理学分野

 ICUケアを必要とする患者は病院内で最重症の患者であり、一般に予備力は少なく患者は 瀬戸際で病との闘いを余儀なくされている。それ故、我々は安全で高い質の医療を提供しな ければならない。

 米国では医学教育および卒後教育のカリキュラムに医療の質、 Quality Improvementが含 まれており、医療スタッフは自分が提供するケアの質、質改善という視点を持つことが求め られている。しかし、我が国ではそのような教育は十分提供されておらず、臨床現場では何か adverse Eventが発生した場合に医療安全管理部の介入とReactiveな対応処置がおこなわれ るという構図が一般的である。

 本講演では、医療の質に関して基本的概念を確認し、 ICUに於ける質管理、安全管理につい て概説、我々が行わなければならない事と今後の方向性について言及しようと考える。

教育講演

教育講演

4. 急性心不全を考える 血行動態評価・多臓器連関

石原 嗣郎  

日本医科大学武蔵小杉病院 循環器内科

  急性心不全は年々増加傾向にある。これは、超高齢化社会という社会的な問題だけでなく、

急性心筋梗塞という、従来であれば救命できなかった症例がインターベンションの普及・向 上に伴い死亡率が低下し、心機能が低下したまま退院するという、逆説的な意味での新たな 問題が生み出した結果でもある。ただ、心不全における問題は、ただ単に症例数が増加してい ることだけでない。予後も非常に不良であり、重症例であれば、悪性新生物を上回るほど予後 は不良である。では、予後改善を図るための方法論はどのようなものであるべきであろうか。

予後改善のための新たな薬剤の開発や患者を多角的な視点で捉えるためのチーム医療の確立 などは予後改善のための重要な因子であることは言うまでもないが、治療をより早期に介入 すること、心臓という単一の臓器だけでなく多臓器に目を配ること、さらに病態を把握し、適 切な治療を適切なタイミングで行うことも重要であると思われる。そのためには、急性心不 全という症候群を理解し、心臓超音波検査や肺エコーなどの非侵襲的に得られる情報だけで なく、必要であればSwan-Ganzカテーテルなどを参考にしながら治療方針を決める必要があ る。

 集中治療とは、疾患の治療ではなく生命を脅かす急性の臓器不全に対応する医療であると

いうことを考えると、急性心不全は単なる循環器疾患というより、集中治療領域にも関連す

る疾患であると言える。本セッションでは、急性心不全を血行動態や多臓器との関連という

観点から考え、改めて心不全とは何かを考えてみたい。

教育講演

5. 集中治療における心停止後症候群(PCAS)

長尾 建  

日本大学病院 循環器内科 研究所教授

 生命が危機的状況に陥った、または生命の危機が切迫している傷病者に対し、救命救急・

集中治療を展開し社会復帰に導くためには、救命の連鎖 :①心停止の予防、②心停止の早期 認識と通報、③一次救命処置( BLS )と自動体外除細動器 (AED) による電気ショック、④二 次救命処置 (ALS) と心拍再開後の集中治療 (Post cardiac arrest care) の迅速な連動が必要 不可欠である。

 本講演では、心拍再開後の集中治療 (Post cardiac arrest care)、

特に体温管理・低体温療法について以下の点を中心に報告したい。

  1 . 我が国の院外心停止患者の現況 (JCS-ReSSの分析)

  2 . 自己心拍再開した心原性心停止例に対する緊急CAG &PCI

  3 . CPR抵抗性の心原性心停止例に対するECPR下の緊急CAG &PCI&低体温療法   4 . 冠再灌流傷害に対する低体温療法

教育講演