ミニレクチャー
2-1. 心エコーの基本
河合 利子
西武学園医療技術専門学校
エコー検査の特徴として迅速性と血行動態の評価があげられる。救急現場では判断の遅れ が生死を分けることもある。そのため通常のエコー検査と異なるアプローチが必要とされる 場合が多い。まず検査法の基本を理解し短時間で描出して診断に耐える画像を供給する。生 理学的にどのような状態にあるかを定性的に評価するためには肋骨弓下からの画像抽出法と 心尖部からの抽出法を習得する必要がある。傍胸骨からの長軸像及び短軸像は仰臥位では十 分な画像が得られないことが多くそのためMモードエコーを正確に記録する必要はない。得 られた画像からの主な評価項目は左室の大きさと収縮能、有意弁膜症の有無や血行動態の指 標となる下大静脈の形態、心嚢液貯留の有無等であるが、診断するための画像抽出方法につ いて基本知識を身につける必要がある。超音波診断装置の適切な使用法を理解し、抽出する ことを通じて病態認識の能力を身につけ診断に役立てていただければと思う。
ミニレクチャー
ミニレクチャー
2-2. 集中治療室での心エコー図検査
安田 理紗子
防衛医科大学校 循環器内科心エコー図検査の特徴は、非侵襲性およびリアルタイム性にある。
また、装置の小型化が進み、ベッドサイドや救急現場で、短時間で臨床上重要な情報を得るこ とができる。
繰り返し検査を行うことができるため、解剖学的評価に加えて心血行動態を詳細に評価す ることができ、単なる心疾患の診断だけではなく、病態生理を把握し、手術適応や治療方針の 決定・治療効果の判定・予後予測なども可能である。
そこで集中治療室で遭遇する代表的な症候に対し、それぞれ心エコー図検査で観察すべき ポイントを提示する。
<胸痛> 急性冠症候群、肺塞栓症・急性大動脈解離は急激な胸痛を呈する疾患の中でも致 死的な転帰をたどる可能性があり、迅速な対応が求められる。急性虚血性心疾患の評価には 左室壁運動異常の検出が重要である。壁運動異常が冠動脈領域と一致していれば虚血性心疾 患が疑われるが、心尖部のみの壁運動異常であればたこつぼ型心筋症との鑑別が必要である。
肺塞栓症の診断では、右心系の形態変化(右房・右室拡大、右室壁運動異常)と肺高血圧の評 価が重要である。急性大動脈解離では、フラップの有無、大動脈弁閉鎖不全症や心タンポナー デの有無の確認が必要である。
<呼吸困難> 急性心不全の診断・治療における心エコー図検査の果たす役割は大きい。心 ポンプ機能(左室収縮能、拡張能)の異常とそれに伴う左室充満圧の上昇を明らかにすること ができる。その他、肺塞栓症、弁膜症、心嚢液、シャント性心疾患の有無を確認することも重 要である。
<ショック> まずは心嚢液の有無を確認する。心嚢液貯留と拡張期に右室の虚脱所見を認
めた場合には心タンポナーデを疑う。心嚢液を認めない場合には左室拡大、左室壁運動異常
の有無を確認し、異常があれば拡張型心筋症や虚血性心筋症の可能性があり、心不全増悪や
心筋梗塞によるショックを疑う。
ミニレクチャー
3. ICUにおける呼吸管理とリハビリテーション
尾崎 孝平
神戸百年記念病院 麻酔集中治療部今春、「集中治療における早期リハビリテーション-根拠に基づくエキスパートコンセンサ ス- 」が本学会から発行された。本邦初の試みであり、今後の集中治療におけるリハビリテー ションの在り方を示すものになると確信している。ただし、本書冒頭に記したように、この領 域にはGradeレベルの高いエビデンスが未だ少なく、我が国での研究の多くは症例検討など に限定されているために、「ガイドライン」とすることは断念した。そこで、一定のエビデン スレベルを確保しながらも、多職種のスタッフが使いやすい手順書としても活用できること を目指した。
一方で、早期リハ領域の注目度は高くなり、学会の報告件数も急速に増え、早期リハは大き な変革期を迎えていることも事実である。すでにエキスパートコンセンサスの内容と意見を 異にする報告も散見される。委員会は 5 年を目処に本コンセンサスの改訂を行うことにして いるが、状況の変遷はさらに速い可能性があると考えておくべきである。
さて、早期リハビリテーションの重要性が声高に示されるようになった背景には、人工呼 吸などの集中治療管理が患者に安静を強いてきた歴史が存在する。本来、集中治療が目指す べきゴールは、患者が元の生活に復帰できることである。この視点に立つと長時間の安静は 目的の達成への障害、不利益に他ならない。このような考えのもとに人工呼吸中の呼吸理 学療法に力を注いできたグループも存在するが、 Early Mobilizationが早期人工呼吸離脱や ADL改善に貢献することが報告されるようになると状況が一変した。現在ではMobilization だけでなく、より包括的なリハ的な介入が必要という概念が主流となり、海外文献でもEarly Rehabilitationという言葉が採用されるようになってきた。
そして、いま早期リハの迷走が始まろうとしている予感がある。実施が必要であることは 理解できても、どの時点でどのようなプログラムが適切なのかが明確にされないまま早期リ ハが進められているように感じる。「早期」という時間に固執すると、原疾患が制御されない うちにリハビリテーションが開始されてしまう症例も出てくることになり、患者の不利益に つながる危険が生じる。たとえば、呼吸介助手技は自発吸気を促進するために経肺圧を大き くし、肺傷害を惹起する危険性の存在が指摘されるが、 ARDSがどの程度制御された時点で 開始すべきか示されない。
すなわち、包括的なリハビリテーションが遅延する事態は回避しなければならないが、早 期であればすべて効果が高くなるという訳でもない。エキスパートコンセンサスもあくまで も指針であり、集中治療におけるリハビリテーションは、その根本概念にあるように障害に 応じた機能回復であるべきである。したがって、今後の課題として、症例ごとに適切な開始時 期と相応のプログラム構成が検討されるべきと考える。
ミニレクチャー
坂本 哲也
帝京大学医学部 救急医学講座