第1回 日本集中治療医学会関東甲信越支部学術集会
長野 仁子1)、細井 聖也1)、藤井 千佳1)、野島 亜紀1)、 遠藤 身友希1)、北 円花1)、西上 めぐみ1)、橋本 賢一2)、 楠見 ひとみ3)
1)防衛医科大学校病院 看護部 集中治療室、
2)防衛医科大学校 集中治療部、
3)防衛医科大学校 医学教育部 看護学科
【はじめに】当院の口腔ケアは各病棟で手順が異なり、各自が 習得した手順で行われている。集中治療室では、一昨年度よ り口腔ケアキット Q ケアを導入し、物品の一包化、方法の簡 易化により、手順が統一された。等間隔で口腔ケアを実施す ることで、口腔内細菌の増加を予防できると考えるが、臨床 現場では、業務全体の優先順位から、等間隔に実施できない 場合がある。等間隔の実施に努め、良好な口腔環境を確立し て維持することを基本とし、口腔内細菌の誤嚥を最小限にす る取り組みについて明らかにする必要があると考えた。
【目的】気管内挿管患者の口腔内細菌数の推移を測定し、誤 嚥のリスクが増加する抜管前の口腔ケアの時期を明らかにす る。
【方法】1、期間および対象患者 2016 年 12 月 15 日から 2017 年 3 月 6 日までの肺炎の診断がない気管内挿管患者 46 名 81 症例2、方法 口腔内細菌数の測定は、細菌カウンタを 使用した。試料採取時間は、口腔ケア直前、直後、1時間後、
2 時間後、4 時間後の 5 回を 1 症例とし、1 患者 2 症例までと した。試料採取場所は、挿管チューブが接している舌背で統 一した。
【倫理的配慮】対象患者、又は代諾者へ説明文書と口頭で研究 説明を実施し、同意書への署名をもって同意とした。当院倫 理委員会看護分科会にて承認を得た。
【結果】直前 - 直後、直前 -1 時間後に有意差が認められた。
【考察】直前 - 直後に有意差があることから、看護師が口腔ケ アを実施することで細菌数が減少すると考える。さらに 1 時 間後の細菌数が最小限となることから、その間に処置を行う ことで誤嚥した場合の細菌の垂れ込みを最小限にすることが できると考える。
【結論】気管内挿管患者の誤嚥のリスクが増加する処置前 1 時 間以内に口腔ケアを行うことが有効である。
齋藤 豊、木多 秀彰、林 堅二 那須赤十字病院 救急集中治療部
【背景】心肺停止患者に対する bystander ー CPR( 心肺蘇生行 為)の実施率は増加しており、自己心拍再開(以後、ROSC)
を得られる症例は増加している。そのため、わらわれ集中治 療医が ROSC 後の症例の治療にあたる機会は増加すると思わ れる。その際に原疾患だけではなく、CPR に伴う合併症の ために治療に難渋する可能性も考えられる。しかしながら、
CPR に伴う合併症に関する報告は少ない。そのため、今回、
当院での心肺蘇生行為による合併症に関し、調査・検討を行っ たので報告する。
【対象】2015 年 4 月から 2017 年 3 月の期間で、CPR を行われ、
ROSC 後に集中治療室(以後、ICU)へ入室し、かつ入室の 前後に胸腹部または胸部 CT を撮影された症例とした。なお、
外傷と 15 歳以下の症例は除外した。
【結果】対象症例は 19 例であり、CPR に伴う合併症を認めた 症例はそのうちの 1 1例(57. 9%)であった。合併症の内訳 としては肋骨骨折9例(81.8%)、胸骨骨折 2 例(18.2%)血 胸 2 例(18.2%)、腹腔内臓器損傷 2 例 (18.2%) であった。また、
bystander ー CPR を行われた症例における合併症発生は 4 例 中 3 例(75%)、医療従事者のみに CPR を行われた症例にお ける合併症発生は 14 例中7例(50%)であった。
【考察】一般的に心肺停止から早期の CPR が救命率に寄与す ることが知られている。また、消防白書によると、心肺停止 患者に対して一般市民による応急処置が行われる割合は年々 増加し、平成 27 年では 48.1% と報告されている。つまり、救 急隊到着前の早期からの CPR が行われている現状であり、以 前より ROSC を得られる症例は増加していると予想される。
実際、同白書によると、一般市民の目撃のある心肺停止症例 においては1ヶ月生存率の向上を認めている。その他、JRC ガイドライン 2015 では一定の基準を満たした症例のみである が,体外循環補助を用いた CPR( 以後、ECPR) を弱い推奨な がら推奨している。これにより、ROSC を得る症例はさらに 増加すると考えられる。ROSC 後は呼吸管理、循環管理、体 温調節、血糖コントロールなどの包括的な治療が必要であり、
集中治療室(以後、ICU)での治療が必要とされる。そのため、
われわれ集中治療医は、ROSC を得られた症例に原疾患だけ ではなく、CPR による合併症の可能性を考慮し、治療にあた らなければならない。しかしながら、CPR による合併症の報 告は少ない。今回の我々の報告では、CPR による合併症は高 頻度で起こりうることが示唆された。さらにその合併症に、
血胸や腹腔内臓器損傷といった出血性合併症も認めた。ICU では、抗凝固療法などが必要な状況が多く、このような出血 性合併症は時に危機的状況をもたらす可能性がある。そのた め、我々集中治療医は CPR による合併症にも注意し、治療に あたらなければならない。
OA-1
「優秀演題選定」(口演)OA-2
「優秀演題選定」(口演)気管内挿管患者の抜管前口腔ケアの時期に 関する研究
心肺蘇生行為に伴う合併症に関する検討
一般演題
神田 潤1) 2)、三宅 康史1)、清水 敬樹2) 3)、坂本 哲也1) 1)帝京大学 医学部 救急医学講座、
2)日本救急医学会 熱中症に関する委員会、
3)東京都立多摩総合医療センター
【背景】
日本救急医学会2年ごとに実施したHeatstroke STUDY(HsS)
では、2012 年の転帰が 2010 年以前に比べて、大幅に改善し たことが報告されているが、その主要な要因についての検討 が今後の治療・予防の方針を定める上で重要である。
【方法】
HsS2010 と HsS2012 において、深部体温が 38 度以上で冷却 法が明らかな 412 症例を対象に、冷却法と転帰、実施年度の 関係について、chi-square test と Fisher’s exact test を用い て検討した。冷却法は体外冷却(微温湯・扇風機・氷嚢など の体表面の積極的冷却)、併用冷却(胃洗浄・膀胱洗浄などの 体内冷却を実施した積極的冷却)、受動冷却(補液・空調のみ で積極的冷却を実施しない冷却)の3群に分類した。死亡も しくは後遺症残存を転帰の悪化と定義した。
【結果】
受動冷却(転帰悪化率 44.4%)は、体外冷却(同 20.9%)と 併用冷却(同 23.2%)より転帰が有意に悪化していたが( p
< 0.05)、体外冷却と併用冷却の間の転帰の有意差はなかった(
p > 0.05)(表1参照)。また、2010 年(253 例)は受動冷却 が 80.2% で体外冷却が 13.4%、併用冷却が 6.3% だったのに対 して、2012 年(168 例)は、受動冷却が 23.2%と有意に減少 した一方で、体外冷却が 51.8%、併用冷却が 20.5%と有意に 増加していた( p < 0.05)(表2参照)。
【考察】
重症化が予想される深部体温 38℃以上の高体温例の冷却法と して、2010 年では転帰が悪化しやすい受動的冷却が多かった が、2012 年では転帰が良好な体外冷却・併用冷却が増加して おり、冷却法の選択の変化が、経験的な転帰の改善に貢献し た主要な要因だと考えられた。
OA-3
「優秀演題選定」(口演)OA-4
「優秀演題選定」(口演)熱中症の転帰と冷却法の関係
演題取り下げ
大嶋 浩司郎1)、辻 明1)、安藤 正恵2)、鈴木 修2)、細井 聖也3)、 藤井 千佳3)、野島 亜紀3)、高瀬 凡平4)、橋本 賢一4)、 椙田 広明5)
1)防衛医科大学校病院 血液浄化療法部、2)材料部、
3)看護部、4)集中治療部、5)防衛医科大学校 看護学
【目的】敗血症は集中治療領域での死亡原因として最多であ り、未だ予後不良因子である。Early goal-directed therapy
(EGDT)等により救命率は向上傾向にあるが、依然として 重症敗血症の死亡率が高いことは周知の事実である。エンド トキシン吸着療法(PMX-DHP)は敗血症患者に対して高い 治療効果を発揮するとされているが、導入時間における生存 率の検討報告は少数である。そこで、敗血症患者における PMX-DHP の導入時間による生存率を retrospective で検討し た。
【対象】当院の ICU、CCU、HCU および救急救命センターで 2013 年 3 月から 2015 年 2 月までに PMX-DHP を施行した敗 血症患者 25 名(平均年齢 72 ± 12 歳、男性 20 名、女性 5 名)
を対象とした。疾患別内訳は、下部消化管穿孔 7 例、汎発性 腹膜炎 4 例、癌に起因した疾患が 4 例、尿路感染症 2 例、急 性心筋梗塞 2 例およびその他 6 例であった。
【方法】ICU および CCU に入室してから PMX-DHP を導入 するまでの時間が 1 時間 30 分未満を Early 群(11 症例)、そ れ以上を Late 群(14 症例)として 2 群に分類した。両群 の身体所見、PMX-DHP 施行時間、血中乳酸値(Lactate)、
APACHEII score、SOFA score、28 日および 400 日生存率 を比較検討した。
【結果】年齢、性別、PMX-DHP 施行時間、Lactate、
APACHEII score、SOFA score は両群に差を認めなかった。
28 日生存率は Early 群が Late 群に比べて有意に高値を示し た(Early 群 ; 59, Late 群 ; 41 %:p < 0.05)。Kaplan-Meier 法を用いた生存時間分析では、400 日で Early 群が Late 群に 比べ有意に生存率が高かった(p < 0.001)。
【結語】敗血症治療に対するプロトコルやガイドラインに加え て、PMX-DHP の早期導入は生存率の向上に寄与する可能性 が示唆された。
八木 司1)、立花 栄三1)、足田 匡史2)、林田 啓1)、渥美 渉1)、 川守田 剛1)、國本 聡1)、谷 樹昌2)、松本 直也2)、平山 篤志3) 1)川口市立医療センター 集中治療科・循環器科、
2)日本大学病院 循環器病センター 循環器内科、
3)日本大学医学部内科学系循環器内科学分野
【背景】ST 上昇型心筋梗塞 (STEMI) の早期診断において標準 12 誘導心電図は最も簡便で診断的価値の高い検査である。昨 今、標準 12 誘導心電図のデータを基に演算処理で導出した導 出 18 誘導心電図 (Nihon koden Co. Ltd.) が開発され、その有 用性が報告されている。特に後壁梗塞や下壁梗塞では、梗塞 責任冠動脈が右冠動脈 (RCA) である症例と左回旋枝 (LCX) で ある症例が存在する。今回、ST 上昇型心筋梗塞における導 出 18 誘導心電図の所見と梗塞責任冠動脈について検討した。
【方法】本研究は後ろ向き観察研究であり、2012 年 4 月から 2016 年 3 月に急性冠症候群で当院へ来院した 363 例のうち導 出 18 誘導心電図の記録が残っている ST 上昇型心筋梗塞 196 例を対象とした。冠動脈造影による責任病変、特に下壁誘導 (II, III, aVF) や導出背側部誘導(syn.V7 ~ syn.V9 誘導)で ST が上昇する症例における責任病変と導出 18 誘導心電図所 見について比較検討した。
【結果】対象の 196 例のうち左主幹部 (LMT) の 3 例を除いた 193 例で、これらの梗塞責任冠動脈別の導出 6 誘導で ST 上 昇が認められた割合は、RCA で 50/79 例 (63.3%)、左前下行 枝 (LAD) で 27/96 例 (28.1%)、LCX で 12/18 例 (66.7%) と 3 群 間で有意差を認めた (p < 0.001)。次に、下壁誘導で ST の上 昇を認める症例において同様の検討を行うと、RCA で 50/78 例 (64.1%)、LCX で 9/13 例 (69.2%) と同等であった (P=0.720)。
他方、導出背側部誘導で ST の上昇を認める 40 例において、
梗塞責任冠動脈が RCA のものが 24/40 例 (60.0%) で、LAD のものが 5/40 例 (12.5%) で、LCX のものが 11/40 例 (27.5%) と 3 群間で有意差を認めた (p < 0.001)。導出背側部誘導で ST 上昇を認める症例で下壁誘導でも ST 上昇を認める症例は RCA で 24/24 例 (100%) に比し、LCX で 8/11 例 (72.7%) と有 意に少なかった (p=0.003)。
【結論】STEMI 発症早期の再灌流療法は予後を改善する確立 された治療法であり、早期診断、早期治療が重要である。早 期診断のために心電図は必須であり、さらに、梗塞責任血管 や閉塞部位や心筋傷害の程度や範囲など多くの情報が得られ る。今回、通常の 12 誘導心電図と同様に簡便に記録が可能な 導出 18 誘導心電図を用いることにより、更なる診断精度を上 昇させ、早期診断、早期治療に寄与する可能性が示唆された が、前向き研究でその効果を判定する必要があると考えられ た。
OA-5
「優秀演題選定」(口演)OA-6
「優秀演題選定」(口演)敗血症患者におけるPMX-DHPの導入時間 による生存率の検討
ST上昇型心筋梗塞における梗塞責任冠動脈 と導出18誘導心電図の関係
一般演題