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 髙岩寺は「おばあちゃんの原宿」として知られ、毎年 800 万人の参拝者を迎えています。地 元が長年「街の安全・安心」に取り組む一方で、病身をおして地蔵尊参拝に訪れる高齢者もあ り、院外心肺停止(CPA)を含む的確な現場対応が期待されています。

 そこで演者は住職就任時より「寺院の病院化」を狙い「救急救命法普及と禁煙推進」すなわ ち、①寺の内外でAED 24 時間運用 ②BLS講習会定期開催 ③卒煙勧奨と受動喫煙防止、など の実践をはじめました。平成 25 年にはまだ救命実績がない状況でしたが、門前の商店街が応 急手当奨励団体第1号に認定され、27 年には寺のAEDが作動した最初の救命例、28 年には教 え子がバイスタンダーとして活躍してCPA 1例が社会復帰し、いずれも消防署長表彰をうけ ました。しかし、 BLS習熟率・AEDアクセス状況はいまなお不十分と考えます。オリジナル のエビデンスはありませんが、在野の実践者の立場からは ( 1 )気軽に受けられるBLS講習会、

気楽に触れるマネキンとAEDトレーナー ( 2 ) タバコ販売・消費を伴わないAED 24 時間運用

推進( 3 )地域の脱タバコ推進、などを中心とした「公衆衛生環境の底上げ」が、 CPAの発症率

低下と予後改善に寄与するものと考えます。

シンポジウム1  院外心停止の予後改善を目指して

4. 心肺停止蘇生後脳傷害で認められる前頭葉萎縮の評価

杉田 篤紀、櫻井 淳、木下 浩作

日本大学医学部 救急医学系救急集中治療医学分野

【目的】心停止蘇生後脳傷害で認められる脳萎縮の進行と転帰について蘇生後の頭部 CT の経 時的変化として解析する。また、脳傷害のバイオマーカーと脳萎縮に関して検討を行う。

【方法】心停止蘇生直後と蘇生後 1 週間から 3 週間の間の 2 点で行われた頭部 CT について前 頭葉萎縮の評価を 8 例で後方視的に行った。前頭葉萎縮の評価には尾状核間とそのレベルで の頭蓋内版間の比を測定する Bicaudate index (BI) を用いた。BI を蘇生後 (BI1) とフォロー (BI2) の頭部 CT で測定し、その差と BI2 との比より変化率をもとめた ( ⊿ BI)。転帰により 神経学的転帰良好群 (cerebral performance category: CPC 1, 2) 3 例、不良群 (CPC 3 - 5) 5 例に分けて評価した。更にはバイオマーカーの NSE(neuron specific enolase)と⊿ BI の 関連も検討した。

【結果】経時的変化では BI1 は 12.8 ± 4.0, BI2 は 14.4 ± 5.0 であり有意差を認めた ( P = 0.012)。

⊿ BI は CPC と正の相関を示していた (r = 0.745, P = 0.034) が、神経学的転帰の 2 群間には 有意差を認めなかった ( ⊿ BI; 良好群 11 ± 8.67 vs 不良群 37 ± 23.44, P = 0.122)。48 時間 後 NSE は⊿ BI と正の相関 (r = 0.90, P = 0.006) を示した。

【考察】結果より CT を経時的にみた 8 例では脳の萎縮が蘇生後 3 週間の間に進んでいること が BI の比較によりわかった。⊿ BI で評価された脳萎縮は脳傷害 (NSE) や神経学的転帰 (CPC) と相関した。しかし神経学的転帰の違いによる有意差はなく、神経学的転帰良好群でも脳萎 縮が生じることが示された。

【結語】心肺停止蘇生後の頭部 CT の検討で、経時的な脳萎縮は CPC や NSE と正の相関を示 した。

シンポジウム

稲葉 俊郎

東京大学医学部附属病院 循環器内科

シンポジウム1  院外心停止の予後改善を目指して

5. 院外心停止の予後改善のために 大学病院の循環器内科医としての立場から

 院外心停止の予後改善には、様々な部門との良好な関係性が最も重要である。(1)最初の 目撃者の初期対応、(2)その後の救急搬送、(3)病院到着後の対応。大きく 3 つの要素に 分けられるが、それぞれの部門が最善の努力を果たさない限り予後改善にはつながらない。

(1)に関しては、一般向けの心臓マッサージやAED講習、心臓の予備知識への講習を広く行

う必要がある。ACLSやICLSなどの教育システムもあるが、それ以上に医療者と一般の人と

の間の垣根を下げ、ボランティアだけではなく積極的に地域とつながる活動をあらゆる方向

から行っていく必要がある。(2)に関しては、救急医療体制は地域の病院との関係性でもあ

り、区や町など、まとまりやすいコミュニティーの間で、素早く適切な病院に搬送できる救急

医療包括システムを、土地や地域に合わせて形作っていく必要がある。そのためには災害時

にも対応できる縦割りではないシステムを作る必要がある。ドクターカーの検討も必要であ

る。(3)に関しては、循環器内科医や心臓外科医と救急医との連携、看護師を含めた医療ス

タッフの連携が極めて重要である。東大病院では、定期的なカンファレンスを重ねている中

で、救急医も循環器内科医と協力しながら密なコミュニケーションがとれている。ACLSでは

脳低体温療法の有効性も示されており、当院でも救急医と協力して必要に応じて脳低体温療

法も積極的に行っている。PCPSなどの体外循環の適応は予後改善につながるかどうか、症例

ごとに慎重に行う必要がある。循環器内科も専門分野に分かれていることが多いため、それ

ぞれの能力や技量に応じてその場にいるスタッフをコーディネートする力も必要になる。多

職種の中で院外心停止の予後改善をはかるためには、全体を俯瞰してみる新たなリーダー像

が必要となる。

竹内 純平

1)

、梅井 奈央

1)

、市場 晋吾

1)

、間瀬 大司

1)

、小川 雄太郎

2)

、 亀井 信孝

2)

、神谷 歩美

2)

、近藤 優香

2)

、坂本 篤裕

2)

1)日本医科大学附属病院 外科系集中治療科、2)同 麻酔科

シンポジウム1  院外心停止の予後改善を目指して

6. 心臓血管外科手術周術期においてV-A ECMOを導入した13症例の検討

【 背 景 】 心 臓 血 管 外 科 手 術 の 周 術 期 に お い て、veno-arterial extracorporeal membrane oxygenation (V-A ECMO) による循環補助を必要とする症例は稀ではあるが、死亡率が高く 予後不良である。今回当院で心臓血管外科手術の周術期に V-A ECMO を導入した13症例 について、予後の予測と周術期管理の改善を目的とし、それらの症例の特徴と転帰について 検討した。

【方法】心臓血管外科手術周術期に V-A ECMO を導入し、2015 年 5 月 1 日から 2017 年 5 月 1 日までの2年間に当院 ICU に入室した症例の患者背景、V-A ECMO 離脱率、V-A ECMO 装着期間、合併症発生率、死亡率、神経学的予後等について後方視的に検討した。

【結果】周術期に V-A ECMO を要した症例は 13 例で、基礎疾患は心筋梗塞 5 例、大動脈弁 狭窄症 1 例、大動脈弁狭窄症 + 狭心症 1 例、三尖弁閉鎖不全症 + 狭心症+心房細動 1 例、感 染性心内膜炎 1 例、左室破裂 1 例、川崎病 1 例、ICD リード感染 1 例、大動脈解離 1 例であっ た。V-A ECMO の導入理由は、extracorporeal cardiopulmonary resuscitation (ECPR)9 例、

切迫心停止 2 例、開心術後の人工心肺離脱困難症例 1 例、開心術後低心拍出量症候群 1 例で あった。V-A ECMO が導入された時期としては、開心術前の導入が 8 例、開心術中手術室 での導入が 1 例、開心術後 ICU での導入が 4 例であった。大動脈解離症例を除いた 11 例で は IABP を併用した。V-A ECMO 離脱率は 76.9%、V-A ECMO 装着平均期間は 10.5 ± 5.9 日、

ICU 生存退室率は 46.1%、ICU 退室前における CPC 1 or 2 の良好な神経学的予後率は 15.3%

であった。脱血不良などで十分な Flow が得られない症例では術後に適切なカニューレサイ ズに入れ替えが必要となり、13 例中 8 例で入れ替えを行った。

【考察】術前に蘇生処置として V-A ECMO が導入され、DIC、臓器不全を呈している症例が 多くあり、その状態での開心術は止血に難渋することも多かった。また開心術後は術後出血 に対して十分な止血・凝固機能維持が求められる一方、ECMO 回路の安定した運用には抗凝 固療法が必要であり、それらのバランスを診ながら厳重な抗凝固管理が要求される。カニュー レサイズは脱血・流量が不十分になる状況では適切なカニューレサイズに入れ替え、または 追加する必要がある。

【結語】心臓血管外科手術の周術期に V-A ECMO が必要となった症例の予後は不良であった が、ECPR 後の開心術でも予後良好な転機をたどる症例もあり、さらに救命率をあげるため に症例を蓄積し努力する必要がある。

シンポジウム