児童生徒の実態に合った編曲を考えていくにあたって、まず、教 科書に見られる編曲を伴った教材を参考として取り上げてみたい。
編曲の違いによって∵第I章で取り上げた学習指導要領の各学年の 目標・内容を達成し得るものになっているか、また、異学年によっ て、どのような編一曲面での一工夫がなされているかを考えてみたい。
次の楽曲は、異学年の教科書に、それぞれ掲載されているもので
ある。
『聖者の行進』一アメリカ民謡
「小学音楽音楽のおくりもの3」教育出版 「新編新しい音楽4」東京書籍
『カントリーロード』B.ダノフ、T.ニバート、J.デンバー作詞作曲 「小学音楽音楽のおくりもの6」教育出版
「中学生の音楽 2・3下」教育芸術杜
『翼をください』山上路夫作詞 村井邦夫作曲
「小学音楽音楽のおくりもの6」教育出版 「中学生の音楽 2・3土」教育芸術杜
(1)『聖者の行進』について
A・・「小学音楽 音楽のおくりもの3」教育出版 B・・「新編 新しい音楽4」東京書籍。
前出の第I章、第1節に記した通り、学習指導要領では、小学校 3・4年生の器楽に関わる事項では、次のことが示されている。
①主となる器楽教材については、既習の歌唱教材も含めて二簡単な 重奏や合奏にした楽曲。
②節奏を聴いたり、ハ長調の楽譜を見たり一して演奏すること。
③曲想にふさわしい表現を工夫し、思いや意図をもって演奏するこ
と。
④互いの楽器の音や副次的な旋律、伴奏を聴いて、音を合わせて演 奏すること。
⑤音色に気を付けて旋律楽器及び打楽器を演奏すること。
⑥各学年で取り上げる打楽器は、木琴、鉄琴、和楽器、諸外国に伝 わる様々な楽器を含めて、.演奏の効果、学校や児童の実態を考慮し
て選択す一ること。
⑦第3学年及び第4学年セ取り上げる旋律楽器は、既習の楽器を含 めて、リコーダーや鍵盤楽器などの中から学校や児童の実態を考 慮して選択すること。
これらのことを踏まえて、A・Bそれぞれの教材について考えて
みる。
。A『聖者の行進』(「小学音楽 音楽のおくりもの3」教育出版
の楽譜より)
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(終わり)
・B『聖者の行進』(r新編 新しい音楽4」東京書籍の楽譜より)
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『聖者の行進』は、誰もが耳にしてことのあるスウィーングである。
黒人霊歌に起源を発するアメリカ歌曲で、現在はゴスペルやジャズ ナンバーとして有名である。ジャズ発祥の地ルイジアナ州ニューオ リンズでは葬儀の際に用いられ、この慣習は「ジャズ葬儀」と呼ば れている。しかしながら、これは、思わず 手拍一子をしたくなるよう な楽しいマ』チ風であるので、児童の感性に添いやすいタイプの曲
だといえる。
A・Bともに、教材化するにあたり、4分の2拍子、ト長調、
a(8小節)b(8小節)一にアレンジされている。Bはそれに、前 奏・後奏が付け加えられている。
学習指導要領に示されている①〜⑦の内容を含ませた授業は、
A・Bとも可能である。③に関しては、演奏の鑑賞も含めていくと
こによって、より一効一果が出一るであろう。
Aは、小学校3年生向けの教材である。
パートが、「主旋律・副旋律・低音」の3パートから成っている。
パート数が多くないことから、全員で一冬パートを練習することがで き、「主旋律のみで」「主旋律と副旋律で」「主旋律と低音で」「3つ のパ』トを合わせて」と、練習のパターンを組み合わせることで、
曲を成り立たせている各パートの役割をおのずと体験・実感するこ
とができる。
全員でパート練習することの良さとして、すでに音がとれている 状態で小グループでのアンサンブルに移行することになるので、グ ループの練習がスムーズにいきやすい。3年生ぐらいでは、1から
自分たちで講読みをす一ることは難しい。単元目標として、「パ』トの かけあいを楽しむ」とあるように、自分たちで合わせてアンサンブ ルしていくことに集中できる状態を下ごしらえとして作ってやりた い。これは、前出④や⑤の実現につながる。総じて3年生対象の教
材として扱いやすいもの一と思われる。
また、オプションとして、リズム伴奏例が示されている。これは、
表拍と裏拍から成るシンプルなもので、たいこ・タンブリン・手拍 子など、打楽器の組み合わせは、児童の様子や授業環境にあわせて アレンジが可能である。さらに、楽譜に歌詞が載せられているので、
歌とリズムというパターンも考えられる。
曲の骨組みがしっかりとした上で、単純明快なアレンジである故、
声部の簡単化・追加など、児童の実態に合わせた楽譜の扱い方が工 夫しやすいと思う。
Bは、小学校4年生向けの教材である。
単元目標として「音色を重ねて楽しもう」とあるように、Aに比 べると、随分とパート数が多く、楽器の音色の重なりや、音が美し
く響きあう感じを、合奏を通して感じ取らせる.ことを目標とした教 材である。
児童の発達段階としては、コミュニケーションの能力が発達して くるとともに、3年生よりもグループでの活動が成り立ちやすくな ってきている。また、特に女子に多くみられるが、得意な児童が苦 手な児童を手伝ったり、教えたりする姿がみられるようになってく る。もちろん、3年生以下にも同様の行動はみられるが、手伝う方 も手伝われる方も幼いため、二・ミュニケ』ションカ の不足から混乱 に陥ることがある。
「主旋律、副旋律、和声(1〜2)、低音、リズム(2〜3)」と、
大まかに取り上げれば6パート、細かく取り上げると8パートから
成る。
担当楽器の指示例として、
・主旋律は、リコーダー ・副旋律は、鍵盤イトモニカ
・和声十前奏・後奏の主旋律は、木琴
・低音は、キーボード(バスマスター・シンセサイザーなど)
・リズムは、シンバル・大太鼓・タンブリン
となっている。
4年生の一読譜力からす一ると一、通常の授業で、これだけの一パートを グループ活動でアンサンブルを行うことは難しいと感じる。
実際、H小学校において、グループアンサンブルに用いたが、パ ートを省略するなど、少し楽譜内容を縮小して行った。それでも、
かなりのアドバイス・手一助けを求める声が多く、対応に苦慮した。
しかし、活動の仕上げとして、グループごとに聴き合って、「他の グループヘのアドバイスをしよう」と、グループの演奏ごとに発言 させると、ねらいにあるように「音色の重なり・音が美しく響き合 う」ために、「太鼓が強すぎると思う」「低音が小さい」な・ど、ハー モニーを美しく作る上でのバランスに関わるようなアドバイスを発 言する児童が多くみられた。そういう意味では、4年生の感性の発 達に見合ったアレンジなのかもしれない。また、前出⑥の内容を実
行しやすい。
しかし、やはり教師1人で行う授業に用いる教材としては、アン サンブル完成の実現までいくことが難しく、年間60時間(週にす ると、約1.5時間)の中では、このままでは扱いつらく感じた。
ただ、音楽会の練習一など複一数の教師が関一わる活動ができる場合は、
これくらいの編成・難易度でも大丈夫かと思うが、4年生の音・楽会 など行事用のプログラムとしては、担任教師・保護者ともに、プロ グラムとして物足りない楽曲だと思われやすいことが予測できる。
なぜなら、聴き手は、よく知一っている曲ばと、タイトルで難易摩を 計ってしまう傾向がある為である。
これらの理由から、少々中途半端な位置にある教材となってしま
う。
(2) 『カントリーロード』について
C・・「小学音楽 音楽のおくりもの一6」教育出版 D・・「中学生の音楽 2・3下」教育芸術杜
学習指導要領の小学校5・6年生の表現(主に歌唱分野)での指 導内容は次の通りである。
①歌詞の内容,曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって 歌うこと。
②呼吸及び発音の一仕方を工夫して,自然で無理のない,響きのある 歌い方で歌うこと。
③各声部の歌声や全体の響き,伴奏を聴いて,声を合わせて歌うこ
と。
④歌詞の内容,曲一想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって 歌うこと。
⑤呼吸及び発音の仕方を工夫して,自然で無理のない,響きのある 歌い方で歌うこと。
⑥各声部の歌声や全体の響き一,伴奏を聴一いて,声を合わせて歌うこ
と。
⑦指導に当たっては,学校や児童の実態等に応じて,合唱や合奏,
重唱や重奏などの表現形態を選んで学習できるようにすること。
⑧変声以前から自一分の声の特徴に関心をもたせるとともに,変声期 の児童に対して適切に配慮すること。
学習指導要領の中学校2・3年生の表現(主に歌唱分野)での指 導内容は次の通りである。
①一歌詞 の内一容や一曲一想一を味わい,曲にぶさ一わしい表現を工夫して歌う こと。