第 6 章 全体に関する考察-事例研究と訪問調査
2. 北京大学
2.3 教員へのインタビュー
大学の概要、国際交流現状をHP等で調査することにより、北京大学の特徴をある程度 分析することができるが、これらのデータの意味を把握するためにも、北京のキャンパス に出向いて異なる学院に所属する教員から直接考えを聞くことは、極めて有意義である。
表6-2 北京大学における教員の基本状況
所属 性別 年齢 最終学位 外国学習や研修経験 職階 ど の 段 階 の 教 育 を 担 当 する C 教育学院 男性 52歳 博士 客員研究員 アメリカ1年
イギリス 半年
教授 大 学 院 課 程 多い D 教育学院 男性 53歳 博士 客員研究員
アメリカ1年 日本半年
教授 同様
E 教育学院 男性 41歳 博士 博士 アメリカ 4年 副教授 同様 F 教育学院 男性 41歳 博士 ポスドク 香港 2年 副教授 同様 G 教育学院 女性 43歳 博士 博士 アメリカ 5年 副教授 同様 H 教育学院 女性 34歳 博士 ポスドク アメリカ 2年 講師 同様 I 都 市 環 境
学院
男性 40歳 博士 博士 オランダ 4年 研究員 同様
J 都 市 環 境 学院
男性 39歳 博士 ポスドク フランス 3年 半
教授 同様
K 物理学院 男性 32歳 博士 ポスドク アメリカ 2年 研究員 同様 L 心理学系 男性 36歳 博士 修士、博士と教員
アメリカ 12年
研究員 同様
M 地球・空間 科学学院
男性 34歳 博士 ポスドク ドイツ 1年 研究員 学 部 生 と 院 生は同じ
筆者は、北京大学教育学院と国際合作部の紹介と協力を得て、2014年の6月と10月の2 回にわたって11名の教員を訪問し、各自の略歴と研究内容、国際的教育・研究活動の現状、
教員による国際的学術活動に対する意見、所属機関の研究評価システム、研究資金、学生 指導、大学の強みと課題などについてインタビューした。11名の教員は、教育学院、地球・
空間科学学院、物理学院、心理学系、都市環境学院の5機関に所属している(表6-2)。質 問は東京大学と同じであるため、ここでは省略する。
インタビュー結果
以下に、インタビュー結果を項目ごとに要約して記述する。インタビューに沿った形 で、できるだけ忠実に記述したが、最終的な文責は筆者にある。
C先生:
国際的教育・研究活動の現状:
資金:海外からの研修資金は多い。
国際的な活動:共同で国際的研究プロジェクトを行う、海外での授業(短期あるいは 一回だけ)国際会議やセミナーへの参加、海外の学術雑誌への発表、海外の学者を招待 する、海外への訪問、交換留学学生を送り出す等を実施している。
国内の学術雑誌と比べて、海外の学術雑誌への論文の発表は少ない。その他、海外の 学者との共著論文がある。
国内の学術会議と比べて、海外の学術会議への参加は同じぐらいである。
海外の関連文献を手に入れる環境は整っている。
教員による国際的学術活動に対する意見:
留学や研修の後、教育方法の転換があった。研究内容は自分の研究に長い影響を及ぼ している。
自分の研究対象は国内限定となっているため、国際的な交流をしなくても、研究もで きるはずである。さらに、学校からの国際化に関する要求もない。
国際的研究経験を積んだ人の方が優秀かというと、必ずしもそうではない。外国語の
北京大学は世界一流大学になるために、国際化は必要な条件の一つである。しかし、
分野によっては国際化を重視する程度が違う。自分の研究分野からみれば、国際化の深 さと広さがまだ足りない。
国際的な視野を持ち、国際的なルールを理解し、国際的な研究プロジェクトに参画で き、国際提携の技能を持っていることが、今や世界共通の人材評価基準になっている。
だから、国際的な経験と視野は重要だとされて、一定の水準にある若手教員を、世界一 流大学に派遣する必要がある。
学生の指導:
学生の海外経験を推奨している。海外に送り出した短期交換留学生(6 ヵ月或いは 1 年)が多い。
学生は海外の学術雑誌への投稿はないが、国際会議には参加している。
D先生:
国際的教育・研究活動の現状:
資金:海外からの研修資金は多い。
国際的な活動:単独で国際的研究プロジェクトを行っている(共同研究者なし)。共同 で国際的研究プロジェクトを行っている。海外での授業(短期あるいは一回だけ)、国際 会議やセミナーへの参加、海外の学術雑誌への発表、海外の学者を招待する、海外への 訪問、交換留学学生を送り出す等を実施している。
国内の学術雑誌と比べて、海外の学術雑誌への論文発表は少ない。しかし、海外の学 者との共著論文がある。
国内の学術会議と比べて、海外の学術会議への参加は同じぐらいである。
海外の関連文献を手に入れる環境は整っている。
教員による国際的学術活動に対する意見:
留学や研修の後、イノベーション人材の育成を重視するようになった。
事務職員の不足と研修資金に関わる煩雑な事務手続きが課題である。国家機関あるい
は学校からの研修資金はあまり使われていなかった。
北京大学に所属することで研究費が獲得しやすいというメリットがある。そのブラン ド力を生かし、国内外から多くの研究資金を獲得している。中でも、中国政府からの資 金が近年大幅に増えている。
若手教員に海外留学や研修のチャンスを積極的に与えるとともに、海外から人材を招 致している。一方、教員の昇進は、海外での経歴が重視されている。海外経験が1年以 上でなければ、教授昇進が難しい。
現在、自分の研究分野においての国際協力は、外国が主導権を握って、共同研究を進 んでいき、平等的に交流することができない。
学生の指導:
学生の海外経験を推奨している。海外に送り出した短期交換留学生(6 ヵ月或いは 1 年)が多い。
学生は海外の学術雑誌への投稿はないし、国際会議への参加もない。
E先生:
国際的教育・研究活動の現状:
資金:海外からの研修資金は多い。
国際的な活動:共同で国際的研究プロジェクトを行う、国際会議やセミナーへの参加、
海外の学術雑誌への発表、海外の学者を招待する、海外への訪問、交換留学学生を送り 出す等を実施している。
国内の学術雑誌と比べて、海外の学術雑誌に論文の発表は多い。さらに、海外の学者 との共著論文がある。
国内の学術会議と比べて、海外の学術会議への参加は同じぐらいである。
海外の関連文献を手に入れる環境は整っている。
教員による国際的学術活動に対する意見:
る。その他、海外大学は基礎研究を重視している。
教育に関しては、国際的な活動と内容は重要だけではなく、学生からの批判とインタ ラクティブが重要だと思う。
若手教員に海外留学や研修のチャンスを積極的に与えているが、国内の仕事などの原 因で、参加するものが少ない。他には、事務職員の不足と研修資金に関わる煩雑な事務 手続きも課題となっている。
学生の指導:
指導した学生は博士号を取るために、アメリカへ留学した。
学生は海外の学術雑誌への投稿はないが、国際会議への参加は多い。
20 年前の中国の大学生は、海外に行くチャンスが少なかったため、視野が狭かった。
それに対して、現在では、院生のほぼ全員が国外留学経験を持っている。おかげで、学 生は汎用的な能力が上昇しているだけでなく、視野も広がった。しかし、一つの課題と しては、短期交換留学生は少なくないが、より濃密な交流と国際協力はまだ発展してい ない。
F先生:
国際的教育・研究活動の現状:
資金:国家政府・国家機関からの研修資金は多い。海外からの研修資金は少ない。
国際的な活動:共同で国際的研究プロジェクトを行う、国際会議やセミナーへの参加、
海外の学術雑誌への発表、海外での授業(短期あるいは一回だけ)、海外の学者を招待す る、海外への訪問、交換留学学生を送り出す等を実施している。
国内の学術雑誌と比べて、海外の学術雑誌に論文の発表は同じぐらいである。しかし、
海外の学者との協力はされていなかった。
国内の学術会議と比べて、海外の学術会議への参加は同じぐらいである。
海外の関連文献を手に入れる環境は整っている。しかし、資料の更新はまだ遅い。
教員による国際的学術活動に対する意見:
留学や研修の後、教育方法の転換があった。
事務職員の不足と研修資金に関わる煩雑な事務手続きが課題である。
北京大学の国際化はまだ「輸出型」であり、高い水準の外国人教員と学生をあまり引 きつけていない。自分の研究分野においての国際協力は、外国が主導権を握って共同研 究を進んでおり、平等的に交流することができない。
学生の指導:
学生の海外経験を推奨している。海外に送り出した短期交換留学生(6 ヵ月或いは 1 年)が多い。
学生は海外の学術雑誌への投稿はないが、国際会議への参加は多い。
G先生:
国際的教育・研究活動の現状:
資金:国家政府・国家機関からの研修資金は多い。現段階では、海外からの研修資金 はまだない。
国際的な活動:共同で国際的研究プロジェクトを行う、国際会議やセミナーへの参加、
海外の学術雑誌への発表、海外での授業(短期あるいは一回だけ)、海外の学者を招待す る、海外への訪問等を実施している。
国内の学術雑誌と比べて、海外の学術雑誌に論文の発表は少ない。海外の学者と協力 された経験がある。
国内の学術会議と比べて、海外の学術会議への参加も少ない。
海外の関連文献を手に入れる環境は整っている。
教員による国際的学術活動に対する意見:
国内の学術環境と違って、国外の大学で研究者の意欲と能力が最大限に発揮される。
若手教員に国外留学や研修のチャンスを積極的に与えていながら、事務職員の不足と 研修資金に関わる煩雑な事務手続きが阻害の要因となっている。