第 4 章 大学教授職の国際的な活動に関する規定要因
1. 日中両国における大学教授職の国際的な活動に関する基本的特徴
図4-1 大学教授職の国際的な活動
出典:Futao Huang (2015) The internationalization of the Academy in Asia:Major findings from the international survey
以下では、日中両国における大学教員に関する国際化実態及び意識、所属大学における国 際的な活動の特徴について解明する。具体的には、日中両国における大学教員および所属大 学の国際化の全体的な変化を把握する一方で、機関別(985大学、211大学、一般大学)にみ る大学教授職と所属大学における国際化の関連変化も検討する。
まず、APAデータにより、本章は日中両国における大学教員の国際的な活動に関する基本 的特徴を次の4点から分析する。
1.1 教員個人レベルにおける国際的な教育活動
「アジアにおける大学教授職の変容に関する調査」では、回答者に授業で国際的な視点や 内容を重視しているかを「大変よく当てはまる」「当てはまる」「どちらともいえない」「当て はまらない」「全く当てはまらない」の5件法で尋ねられている。ここでは、「大変よく当て はまる」と「当てはまる」を統合し、機関別によりクロス集計を行う。
表4-1と表4-2から見ると、日中両国において、国際的な教育活動については、機関別に みると、「授業で国際的な視点や内容を重視している」に対する回答では、「当てはまる」と 回答した割合は、研究大学教員では一般大学教員より有意に高くなっていた。しかし、中国
教育 研究
教員個人 所属機関 外国人留学生の受け入れ
留学生の送り出し
外国人教員が授業を持った
国際会議やセミナーの開催
国際的視点や内容が授業への導入 国際学会への参加
海外での出版や外国語による論文等の 発表
の大学教授職は全体的に日本の大学教授職より、授業で国際的な視点や内容をもっと重視し ている傾向があるといえるだろう。
表4-1 教員個人レベルにおける国際的な教育活動(%)-日中両国
「はい」の回答 日本 中国
一般大学 研究大学 全体 一般大学 研究大学 全体 授業で国際的な視点や内
容を重視している
42.6 50.8 46.4 68.2 73.1 70.6
P * **
注:***0.1%で有意 **1%で有意 * 10%有意
表4-2 教員個人レベルにおける国際的な教育活動(%)-日本
日本 海外での授業 所属大学での授業言語と違う言語での授業
一般大学 3.0 6.8
研究大学 10.3 23.4
全体 6.7 15.1
p ** ***
注:***0.1%で有意 **1%で有意 * 10%有意
日本のデータは、教員個人レベルにおける国際的な教育活動には海外での授業と所属大学 での授業言語と違う言語での授業も含まれている。これらについては、研究大学における大 学教授職は他の大学の大学教授職より、「当てはまる」との回答の割合は高かった。
1.2 教員個人レベルにおける国際的な研究活動
表4-3と4-4から見ると、中国では、「国際学会への所属」、「国際学会への参加」、「外国語 で論文を出版した」という三つの教員個人レベルにおける国際的な研究活動に対する回答で は、機関別に有意な差が確認できる。研究大学に所属する大学教授職は一般大学に所属する 大学教授職より、国際的な研究活動をより活発に行っていることが明らかになった。日本に おいても、「外国の研究者と共同で研究を進めている」、「外国で論文を出版した」と「外国語 で論文を出版した」という三つの教員個人レベルにおける国際的な研究活動に対する回答で は、同様の傾向がある。
しかし、日本の大学教授職は中国に比べると、研究活動により積極的に取り込んでいると 言える。それは日本の大学教授職は研究活動に対して強い関心を持っていることがわかる。
表4-3 教員個人レベルにおける国際的な研究活動(%)-中国
中国 国際学会への所属 国際学会への参加 外国の研究者と共同で研究を進めている
一般大学 12.0 28.3 12.4
研究大学 24.6 49.8 34.2
全体 18.3 39.0 23.4
p *** *** ***
注:***0.1%で有意 **1%で有意 * 10%有意
表4-4教員個人レベルにおける国際的な研究活動(%)-日本
日本 外国の研究者と共同で研
究を進めている
外国で論文を出版した 外国語で論文を出版した
一般大学 36.7 36.0 56.4
研究大学 63.3 56.0 75.4
全体 50.0 46.0 65.9
p *** *** ***
注:***0.1%で有意 **1%で有意 *10%有意
1.3 高等教育の国際交流に対する意見
続いて高等教育の国際交流に対する回答者の意見を尋ねている。4 つの方面について当て はまるものを「強く賛成」「賛成」「どちらともいえない」「反対」「強く反対」の5件法で尋ね ている。ここでは、「強く賛成」と「賛成」のカテゴリを統合し、機関別によりクロス集計を 行う。
表4-5によると、中国では、「外国の学者との交流は自分の職業活動に非常に重要だ」、「自 分の専門分野の発展についていくには、外国の書物や雑誌を読む必要がある」と「大学は諸 外国の学生や教師との移動をもっと促進すべきだ」に対する回答では、機関間で明確な差が 観察された。その他、「外国の学者との交流は自分の職業活動に非常に重要だ」と「本学のカ リキュラムはもっと国際的視野から編成されるべきだ」についても類似の回答傾向が観察さ れるが、統計的には有意ではない。しかし、興味深いことは、一般大学と比較すると、研究 大学における大学教授職は「本学のカリキュラムはもっと国際的視野から編成されるべきだ」
について、「賛成」と回答した割合はより低かった。
日本では、「大学は諸外国の学生や教師との移動をもっと促進すべきだ」と「本学のカリキ ュラムはもっと国際的視野から編成されるべきだ」については、機関別に有意な差が確認さ れていなかった。日本の大学における教員が「自分の専門分野の発展についていくには、外
国の書物や雑誌を読む必要がある」と回答した割合が9割以上で、中国の大学のそれより高 かった。「外国の学者との交流は自分の職業活動に非常に重要だ」に対する回答では、機関別 に有意な違いが確認された。
表4-5 高等教育の国際交流に対する意見(%) 外 国 の 学 者 と の
交 流 は 自 分 の 職 業 活 動 に 非 常 に 重要だ
自分の専門分野の発展 についていくには、外国 の書物や雑誌を読む必 要がある
大学は諸外国の学 生や教師との移動 をもっと促進すべ きだ
本学のカリキュラム はもっと国際的視野 から編成されるべき だ
日本 中国 日本 中国 日本 中国 日本 中国
研究大学 88.9 84.9 95.7 87.1 68.2 95.1 49.3 85.0
一般大学 79.5 80.7 90.6 82.9 65.1 92.1 47.6 86.2
全体 84.0 82.8 93.0 85.0 66.6 93.6 48.4 85.6
p *** * ** *** n.s. * n.s. n.s.
注:***0.1%で有意 **1%で有意 * 10%有意
1.4 過去三年間に、所属機関における国際的な活動
最後に、所属機関レベルにおける国際的な活動について検討しよう。表4-6によると、所 属機関における国際的な活動について、中国では、「あなたの大学では、過去3年間に、以下 の事柄はどのぐらいありましたか」という問いに対して、機関別にみると、研究大学と一般 大学の間で違いが生まれており、統計的には0.1%水準で有意差が見られる。全体的には、研 究大学のほうが全ての領域において国際的な活動について、「多くあった」との回答の割合は 4 割ぐらいである、これとは対照的に、一般大学の大学教授職はの答え「多くあった」との 回答の割合は2割ぐらいである。言い換えれば、研究大学のほうが一般大学より全ての領域 において国際的な活動が進められてきたという認識を示した。日本でも、同様な傾向が見ら れる。全ての領域において研究大学のほうが一般大学より国際的な活動が進められてきたと 言える。全体としては、中国の大学教授職は個人レベルに国際的な活動を更なる発展させる べきとの意見に合意度が高かったものの、所属機関における国際的な活動があまり進んでな いという認識を示した。
表4-6 過去3年間に、所属機関レベルにおける国際的な活動(%) 外 国 人 教 師 が 授
業を持った
国際会議やセミナーが 開催された
留学生が入学した 留学生を送り出した
日本 中国 日本 中国 日本 中国 日本 中国
研究大学 48.0 42.0 55.3 37.4 77.1 39.4 66.6 40.3
一般大学 46.3 20.3 22.7 14.2 58.9 20.6 48.8 15.8
全体 47.1 31.2 39.1 25.8 67.7 30.1 57.5 28.1
p n.s. *** *** *** *** *** *** ***
注:***0.1%で有意 **1%で有意 * 10%有意