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国際流動性による大学教授職の研究生産性への影響

第 3 章 大学教授職の国際流動性

3. 国際流動性による大学教授職の研究生産性への影響

浦田(2011)は、移動経験と学外共同研究者の有無が研究生産性に及ぼす影響を分析してい る。理系については、移動経験が研究生産性に対して有意であるのは中国とアメリカであるが、

いずれも、研究生産性に及ぼす影響は学外共同研究者の有無の方が大きい。

本研究は、APA調査に関する両国のデータを用いて、国際流動性経験の有無に与える過去3 年間に研究活動の影響を分析するために、分散分析を行った。結果は以下の通りである:

表3-10 国際流動性有無による両国における大学教授職の研究生産性への影響(中国)

博士号を取るための移動(平均値) 有意

確率

執筆あるいは共著した学術書(外国語) 0.6 0.2 ***

編集あるいは共編した学術書(中国語) 24.4 0.8 ***

学術書あるいは学術雑誌に発表した論文内、査読付 き論文数(中国語)

4.0 6.6 **

学術書あるいは学術雑誌に発表した論文内、査読付 き論文数(外国語)

7.6 3.7 ***

学会大会での論文提出を伴った発表 4.1 2.8 **

: ***0.1%で有意 **1%で有意 * 10%有意 表中の数値は、各研究成果の平均値を示している。

表3-11 国際流動性有無による両国における大学教授職の研究生産性への影響(日本)

博士号を取るための移動(平均値) 有意 確率

執筆あるいは共著した学術書 1.9 1.9 n.s.

編集あるいは共編した学術書 0.6 0.4 n.s.

学術書あるいは学術雑誌に発表した論文内、査読付 き論文数

10.8 7.0 n.s.

学会大会での論文提出を伴った発表 9.9 4.9 *

: ***0.1%で有意 **1%で有意 * 10%有意 表中の数値は、各研究成果の平均値を示している。

結果としては、学士号と修士号を取るための国際流動性有無は日中両国における大学教授職 の研究生産性への影響は特にみられなかった。しかし、中国では、博士号を取るための国際流 動性有無は執筆あるいは共著した外国語学術書、編集あるいは共編した中国語学術書、学術書 あるいは学術雑誌に発表した査読付き論文数、学会大会での論文提出を伴った発表数、に有意 な影響を及ぼす。日本では、博士号を取るための国際流動性有無は学会大会での論文提出を伴 った発表数、に有意な影響を及ぼす。

しかし、研究生産性を規定する要因は複雑であり、国際流動性の有無だけで簡単に説明でき るものではない。ここで示されていることは、大学教授職の国際流動性は必ずしも研究生産性 の向上をもたらしているわけではないということである。さらに、調査は、過去3年間の研究 成果という、いわば短期的な研究成果を把握したものである。まして、短期的成果が上がらな くても研究の継続が求められる基礎科学については、国際流動性の効果は見られない。

4. まとめ

APA調査を通じて集められたデータは、グローバルなレベルにおいて国際流動性に関する研 究へのライフコース・アプローチでよく適用される。

国際流動性は今日の大学教授職の国際化の一部として、複雑な要因によって規定されている。

大学教授職の国際流動性は、確かに国際的な教学、共同研究および学問伝播に関連しているも のの、異なるタイプの国際流動性は国際的な研究活動に異なる影響を及ぼす。

本章では、大学教授職に関する国際調査のデータを用いて、日中両国の大学教授職の国際流 動性について考察した。その結果、両国の大学教授職の国際流動性が依然として低い水準にあ ることがわかった。以上の論述に基づいて、両国における大学教授職の国際流動性に関する主 な特徴としては次のようなことが言える。

第一に、両国の大学教授職の移動者の特徴としては、①日中両国における大学教授職の国際 移動には、性別差がみられる。中国では、学位を取るための国際移動については女性の方が多 く、日本では男性の方が多い。これは、全体として、日本では、調査された女性のサンプルが 少ないことと関連していると考えられる。②年齢別に、中国は日本より若手大学教授職の移動 が多い。③日中両国では、配偶者が非大学教授職の場合は移動が頻繁である。④移動目的は所 属大学によって異なっており、中国では、研究大学における大学教授職は一般大学のそれより 学士号と博士号を取るための移動が多い。なお、修士号を取るための移動は一般大学と研究大 学で違いがなかった。日本も同じ傾向がある。⑤専門分野別に見ると、中国では学位を取るた めの移動者は社会科学専攻の出身者が一番多い。日本では、一番多いのは工学系専攻の出身者 である。

第二に、両国の大学教授職には移動しなかった者が多い。外国で学位を取得した者のうち、

アジア以外の地域で学位を取得した者は一番多い。

最後に、国際流動性は必ずしも研究生産性の向上をもたらしているわけではない。研究のた め(博士課程進学者)の国際流動性の有無は、学術書あるいは学術雑誌に発表した査読付き論 文数、学会大会での論文提出を伴った発表に有意な影響を及ぼす。

大学教授職の移動は、昔から高等教育の決定的な要素であり、現在では年々拡大しているこ とに伴い、高等教育の分野における国や地域を越えた優秀な人材を獲得するの競争が激化して いる、今後も増加が見込まれる。中国は、国外の研究者を引き付け、教育と研究の能力を大幅 な向上し、科学技術の進展や高度人材育成を実現している。現在、日本においても、「大学改 革、グローバル人材育成」が取り上げられ、世界中から優秀な研究者が強く求められている。

今後、大学教授職の国際流動性を高めるために、各大学自体の体制や組織文化の国際通用性が 要請されている。