第2節で、非援助的な関わりは、子どもにとっても教師にとってもマ イナスの影響を与えるとともに、教師と子どもとの信頼関係の成立を妨 げてしまう重要な要因になることを述べてきた。そこで、教師の援助的 な関わりとは一体どのようなものかを探ることが必要になってくる。そ の際、人間関係のあり方の一つの方向性を示すカウンセリングにその示 唆を求めることができると考えるのである。
ただし、カウンセリングのほかにも、新しいアプローチのしかたの取 り組みを見受けることはできる。たとえば、人間関係ラボラトリー、T グループなどをはじめとして、体験学習の中から自分の関わりを見っあ 直す取り組みである。一例として、「人間関係研究会」は、全国各地で、
エンカウンター・グループを中心として年間プログラムを組み、実施し ている。宿泊を伴った講座を含め、今年度は26講座開催しているとい う(■)。また、南山短期大学の人間関係研究センターでは、ラボラトリ ー方式による人間関係の体験学習を社会人の学習や専門家の再学習のた めに実施している。20大学のスタッフにより、基本的に週1回、ある いは夏休みの集中講座などに実施している。特に夏休みに行われる集中 講義には、遠方からの教師の参加が目につくという〔2)。ほんの一例で あるが、自主的な形で研究グループができている。教師の気持ちの中に、
これまでの教師の関わりが十分ではないという意識があり、広がりを見 せていることがうかがわれる。
しかし、ここでは一つのモデルとして広く知られているカウンセリン グの中にある援助的な関わりに示唆を求めたいと思う。なぜなら、これ
ら体験学習の技法などは、カウンセリングに組み入れられているもので あり、カウンセリングがその基本をなしていると思われるからである。
では、カウンセリングから示唆を得ようとするのに、どんな意義が考 えられるのだろうか。ここでは、
{1)学校教育実践上のカウンセリングの意義
〔2)学校現場におけるカウンセリングの位置づけ について、検討していく。
(1)学校教育実践上のカウンセリングの意義
ここでは、学校教育におけるカウンセリングの意義を見ていくが、こ のカウンセリングを考えるにあたって整理しておかねばならない点とし て、カウンセリングと心理療法の関係がある。そこで、はじめにこの両 者の関係について見ていくことにする。
①カウンセリングと心理療法
教育相談で行われる治療の手段としては、心理療法やカウンセリング が用いられるが、心理的な治療には、それぞれの理論や立場の相違があ
る。精神分析的な立場、行動主義的な立場、人間学的実存主義的アプロ ーチなどさまざまである。その治療のあり方も、遊戯療法、行動療法、
集団療法、来談者中心カウンセリングなど多様であり、それぞれの理論 や特徴がある。これらのさまざまな理論や技法が、学校教育の中に投げ こまれているのである。これが学校における教育相談の立場を明確にで きない理由の一つとなっているといえよう(3)。
そこで、この論文では、心理療法とカウンセリングを区別して、カウ ンセリングについてみていくことにする。
さて、そのカウンセリングにも、非指示的カウンセリング、指示的カ ウンセリング、折衷的カウンセリングというようにさまざまな立場があ る。日本では、来談者中心カウンセリングを指すといわれるくらい、ロ ジャースを中心とする来談者中心カウンセリングの影響が大きい。しか も、学校における教育相談活動の出発と変遷を考えたとき、学校におけ る教育相談活動は、来談者中心のカウンセリングを中心に考えていくこ とができる。そこで、本論文のなかでは、原則として、非指示的カウン セリングを論じることをここに示しておく。
②援助的関わりの示唆をカウンセリングに求めることの意義
では、次に、援助的関わりの示唆をカウンセリングに求める意義につ いて述べることにする。
その理由の第1に、カウンセリングは、 「カウンセリング関係」とい われるように、教師と子どもの人間関係とは違った特質を持つことがあ げられる。カウンセリングは、セラピストがクライエントにいかに関わ るかという技術の示唆にとどまるだけではなく、むしろ、・関係のあり方 について多くのを示唆を含んでいる。ともすれば、教師が主導権を握っ て子どもに関わることが多いといわれる学校現場で、それとは違った側 面から関わりを提示することができると考えられる。
理由の第2に、カウンセリングは、人問を、独立した個性を持った統 一的存在としてとらえることがあげられる。これは、学校教育に不足し がちな子どものとらえ方の面を補うことができると考えられる。なぜな ら、知的な理解に片寄りがちな、あるいは、表面に現れる行動に目を向
けて子どもを評価しがちな現状があるからである。個人の価値を尊ぶこ とをめざしながら、現実には、子どものある一面をとらえて関わること が多く、子どもを全体的に統一的にとらえる面が不足しているためであ
る。
理由の第3に、カウンセリングは、行動そのものに目を向けることよ りも、行動の背景にあるもの、あるいは、行動がその人にとって持つ意 味を理解しようとすることがあげられる。学校では、表面を見てその理 由を考えずに対応することが多いからこそ、この見方が重要であると考 えられる。
以上、カウンセリングのもつ特質から、カウンセリングが学校教育の なかで援助的な関わりとして意義があると考え、取り上げたのである。
(2)学校現場におけるカウンセリングの位置づけ
では、援助としてのカウンセリングを考えるとき、学校現場には取り 入れられていないのだろうか。実は、学校現場では「教育相談」という 形をとって位置ついており、行政的側面から推進されている。
ここでは、福岡市の場合を参考にしながら、その教育相談の取り組み を中心に検討する。4)。
現在の「教育相談」の取り組みになるまでには、様々な変遷がある。
教師の関わりが社会的に注目されるに従い、教師の資質向上をねらう行 政としての取り組みにも変化が見られ、その位置づけも変化してきてい る。ここでは、この「教育相談」の変遷と、現在の取り組みの内容を検 討することにより、学校現場におけるカウンセリングがどのような位置 づき方をしているのかを明らかにする。
① 教育相談関係の講座数の変化
図1−2は、過去14年問の福岡市教育センターにおける研修講座の 講座数、教育相談関係講座定員数の移り変わりである。
図2−1 教育相談研修の定員数の移り変わり ならびに研修講座数の移り変わり(s}
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