• 検索結果がありません。

第 3 章 移動型クリニック車導入の巡回方法

3.3 CT 搭載移動型クリニック車

3.3.2 CT 搭載移動型クリニック車導入の可能性

本研究の発表の場として、数年にわたりインドで開催された遠隔医療に関す る国際学会(Telecom 11, Telecom 12 及び Transforming Healthcare 12)や2度にわ たりハイダラバード市のワークショップに参加した。そこで問われたのが、移 動型クリニック車(Mobile Clinics)に搭載する医療機器はレントゲン機器、心電図、

血液検査、尿検査、血糖値検査測定、体重測定、耳鼻咽喉検査、マラリヤ検査、

そして結核検査等の比較的軽量の医療機器の現状であった。地方病院では設置 が難しい CT を搭載した移動型クリニック車の導入の可能性についての質問が 多くでた。そこで、本節では日本における CT搭載移動型クリニック車の実用事 例をもとに、途上国への技術移転の可能性について述べる。

㈱フリール社(本社群馬県富岡市)の資料にもとづき日本におけるCT搭載移動 型クリニック車の現状について分析を行う。同社は 13 台の CT搭載移動型クリ ニック車を保有している。群馬県をはじめ東京都、茨城県、埼玉県、愛知県、

岡山県そして、佐賀県で事業展開を行っている。

事業の特性は CT搭載移動型クリニック車のなかで、高度画像診断ができるこ とである。第2の特性は本体と別に電源車を設置するなどして、搭載車の全長

が 8.6m、高さ 3.8m と世界で最小の搭載車を保有している。欧米ではトレラー

の全長 14m、高さ 4m 以上と巨大である。第3の特性は道路や敷地が狭い場所 でも挿入・運用が可能な小回りがきく医療機器搭載車としている。また、レン トゲン複写機器もドライプレーザーイメージャー(CODONICS 製 Horizon G)や シャウカステンを搭載、撮影フィルムを車内で現像し、診断できるシステムを 設置している車輌も保有している。特に、被験者が健診を受けやすいように CT 搭載車の後部にパワーゲートの昇降による、ストレッチャーや、車椅子で被験 者の搬出入が可能な装置を設置している車体もある。

以下、超音波、心電図、レントゲン撮影機搭載内部の構造及び CT 機器搭載 車の内部についての図解を示す。

図 3.14 医療機器搭載車内部 出所:㈱フリール社

図 3.15 バリアフルータイプの CT搭載車

出所:㈱フリール社

また、社団法人移動 CT サービス社は図3.16 に示す日本で唯一の 16スライス

CT を搭載したクリニック車を運営している。広島県内の移動検診車として肺が ん予防に特化した事業展開をしている。肺がんは罹患率、死亡率ともに増加し 続けており、通常の胸部 X 線検査で発見されたときは手遅れというケースが少 なくない。社団として早期発見で医療費負担の軽減、ITを使った移動検診車で 山間地域でも受診が得られるシステムの構築を目指している。政府は 2012年度 までに肺がん受診率 50%を目指していることが牽引力となった事業展開を行っ ている。

本提案では、地域による疾病分類により CT機器が必要な地域には、CT搭載 の移動型クリニック車の導入が必要と考えているが、現状の CT 搭載クリニッ ク車に対して劣悪な道路状況に対応するための改良も必要であると考えられる。

図 3.16 移動型 CT搭載車(2,495mm)、高さ3,685

出所:社団法人移動 CTサービス社