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第 8 章 提案内容の総合評価

8.5 今後の課題

本研究は、インドの医療格差是正策として、インドの人口大国、国土の広大 国という特徴に注目して ICT の活用である遠隔医療についての研究である。現 在のインドでの移動型クリニック車の運営は、政府主導で都市部近郊のスラム 地域を対象に不定期的に実行されている。貧困層の多い地方部への運営も不定 的な運営で行われているのみである。

本研究の移動型クリニック車の実証実験の範囲は、首都ディリー近郊都市ジ ャイプール市と約 100km 四方の近郊地方部の病院・診療所を巡回した実測であ る。今後はさらに地方部の深層部に位置する村落を小型クリニック車で巡回の 距離を広げた実測を行いクリニック車の検診範囲を広げ、より広範囲な地域の 地方部住民の検診件数を増やすことを検討したい。

さらに、移動型クリニック車の導入システムが構築された後の持続的管理が 可能となる医療従事者への教育環境の整備が必要と考える。また、搭載医療機 器は途上国では移動型クリニック車が走行する道路事情によって搭載する医療 機器を大型機器(CT や MRT 機器)と小型軽量機器と二分類した移動型クリニック 車の運行体制が必要と考える。

チャット式遠隔カンファレンスは、日本の医療技術の途上国への技術移転を 目的として、日本で実験を行った。その杉並区医師会で行なった実験はインタ ーネットを使った画像診断にパソコンを使用してチャットを使った遠隔カンフ ァレンスの実験であった。今後は、インドの地方部拠点都市と地方部の間で同 内容の実験を行ない、途上国インドでのチャット式遠隔カンフェレンスの有効 性を確認したい。

地方部拠点病院と同地域内の病院・診療所の地域連携は、インド社会の特徴 である多言語社会の中、統一言語を英語とし、検診データの地域拠点病院への 集中や疾病分類を行うことにより地域別データの分類を目指した。地域医療連 携における連結決算については、国際会計基準に準じた会計原則に準じた地域 医療連携における連結決算を行った。インドは固有の会計基準であるインド会 計基準(Indian Accounting Standards)により規定されている。このことを鑑み規定 に沿った連結決算を踏まえる必要がある。インドは、国際会計基準(IFS)につい て導入の動きはあるが、インド会計士協会(The Institute of Chartered Accountants

in India)によればローカル版 IFSを導入するとしている。

国際会計基準は医療機器の高額化に合わせてリース取引関係についても強制 開示となっている。このことを鑑み、今後は途上国でもリース取引は増加する ものと考えられるので、リース取引についても考察を進めていきたい。

マイクロ保険の地方部への導入拡販は、地方部における貧困層が金額的に利 用可能な医療環境の拡充が必要であることより導入を提案するものである。今 後は、地方部の IT インフラの発達によって、保険者はエージェントや病院等と の迅速な情報処理を行えるようになり、契約や保険金請求・支払い等の処理が 効率化されるとともに、エージェントによる保険料徴収や病院による医療費請 求が適切に行われているかを保険者が監視することが容易になることが予想さ れる。このような、IT インフラと保険会社の適正な保険料の算定について研究

する予定である。

最後に本研究はインドの医療格差を改善するため、地域医療連携を通した移 動型クリニック車の活用につき述べた。今後は医療のシステム面やコスト面か らの医療格差の是正策のみならず、インドの社会的特徴である多民族、多宗教、

カースト制度と混沌としたインド社会の側面から医療格差是正について考察す る予定である。