第 5 章 容積移転ニーズの分析
5.2 推計方法
容積充足率の推計
移転先、移転元の容積移転需要を計算するためには、各敷地における容積充足率を計算する 必要がある。容積充足率(%)及び余剰容積率(%)は、以下の式により算出可能である。
容積充足率(%)
=現在建っている建物の延べ床面積(㎡)/各敷地の最大延べ床面積(㎡)×100 余剰容積率(%)=100-容積充足率(%)
各敷地の最大延べ床面積については、2016 年度区部土地利用現況調査土地利用現況
GIS
データ及び東京都都市計画地理情報システム(都市計画レイヤー)を用いて、敷地面積と指定容 積率を乗じることにより算出した。敷地によっては、前面道路幅員による容積率制限によって指定 容積率よりも実際に建てられる容積率が低い場合もあるが、特例容積率適用地区における容積の 移転可能量の算出においては、前面道路幅員による容積率制限によって制限された容積率では なく、指定容積率をもとに計算されることを踏まえ、指定容積率により計算をしている。また、現在建っている建物の延べ床面積については、2016 年度区部土地利用現況調査建物
GIS
データの「建築面積(㎡)」×「階数(地下階含む)」×「延べ面積換算係数40」により計算した。40 建物によっては、下層階の建築面積は大きいが、上層階の建築面積は小さいものがあるため、建築面積と階数を単純に掛け 合わせると延べ床面積が実際よりも大きく出てしまうものがある。それを補正するために東京都が採用している係数であるが、調 査員の目視によって本係数を決定しているため、一定の誤差の存在は避けられないものと考えられる。
なお、土地利用現況
GIS
データについては、図 25に示すように、土地利用が共通であれば1 つの土地利用として認識されるため、隣接する建物の土地利用が同一であれば、1つの敷地に複 数の建物が建築されているような扱いとなる。本稿においては、データの限界と考え、容積充足率 の計算にあたっては、各土地利用にまとめられた土地を1つの敷地とみなし、複数の建物が建って いる場合は、それぞれの建物の延べ床面積を計算することによって容積充足率を求めた。また、道路及び水面については、容積移転先、移転元の対象としてふさわしくないと考え、容積 充足率の計算対象から除外している。
図 25 利用したデータにおける敷地の表現方法
容積の移転先需要の推計
次に、容積の移転先の需要を推計する。どの敷地でどのような規模の建物が建つかを想定する ことは容易ではない。そこで、各町丁目において、過去の建築動態において指定容積率を使い切 っている建物と同等の建築面積が建築され、指定容積率の
1.5
倍が使われるという想定で、容積 需要量を推計した。ここで、指定容積率の1.5
倍という数値を利用したのは、エリアごとにどの程度 の容積の建物が建つかを推計するのが困難であるため、東京都の「大手町・丸の内・有楽町地区 特例容積率適用地区及び指定基準」に定められている上限容積率を代用したものである。そのた め、精度はその分低くなっていることに留意が必要である。以下の式により、推定を行った。今後15年間の移転先の容積需要量(㎡)
=容積を使い切る建築の見込み建築面積(㎡)×容積を使い切る建築の平均階数
=(建築見込み面積(㎡)×容積を使い切る確率)
×(容積使い切った建築物の平均階数×追加容積ニーズ率)
・建築見込み面積:2001~2016年までの建築面積41と同面積
・容積を使い切る確率
:2001~2016年に建築された建物の建築面積のうち、容積を使い切ったものの建築面積の比
・容積使い切った建築物の平均階数
:2001~2016年に建築された建物のうち容積を使い切ったものの平均階数(建築面積ベース)
・追加容積ニーズ率:0.5(これによって、指定容積率の1.5倍が使われる想定とした)
※大きい開発と小さい開発の影響の度合いを考慮するため、建築面積ベースとした。
容積の移転元における余剰容積率の推計(移転元を限定しないケース)
次に、容積の移転元となる敷地の推定を行う。表 14 に、建て替えを行った場合も同用途かつ
H28 GISデータに存在するが、H13の同データに存在しないものを、「H13~H28の間に建築されたもの」とみなした。
共同 住宅
共同 住宅
共同 事務所 住宅
低容積の開発が見込まれる用途と、建て替えが行われた場合に現在よりも高容積率で開発される 可能性が高い用途に分類し、容積の移転元候補とすることとした。なお、未利用地や駐車場につ いては、開発の可能性があるため容積の移転元候補とはしていない。
表 14 容積の移転元となる用途の分類 建て替え等を行っても同用途かつ低容積の開発が
見込まれる用途 寺社、墓地、教育文化施設、公園
古いものは取り壊されて高容積で開発される可能
性が高い用途 住宅、商業・住商、事務所、工業・住工、
官公庁、宿泊、医療
建て替えが行われた場合に高容積で開発される可能性が高い用途についても、築年数が浅い 場合は当面の間は建て替えが行われないと考えられることから、余剰容積を移転することに合理性 があると考えられる42。そのため、築年数が浅く当面は取り壊されないものとして、木造の場合は
2006
年以降に建築されたもの、非木造の場合は1996
年以降に建築されたものを容積移転元と 想定した43。なお、建築物の用途、木造か非木造か、また、建築年代の特定については、全て各年代の建物
GIS
データを参照した。これらの条件により容積移転元候補とした敷地について、容積充足率が高いと容積移転元とな りにくいと考えられるため、容積充足率が
25%以下のものに限定した
44。そして、容積移転元とした敷地の余剰容積率を、町丁目ごとに集計することにより、町丁目ごとの 容積移転元の余剰容積を推定した。
容積の移転元となる敷地の推定(移転元を限定するケース)
最後に、東京都の基準に基づいて容積の移転元を限定した場合の容積の移転元の推計手法 を以下に示す。東京都の基準については
2.8.2
を参照されたい。「歴史的建造物」については、国指定重要文化財である建造物45、都選定歴史的建造物46を対 象とした。
「地区計画で高さの最高限度が定められている地区」については、東京都の基準において、「都 計法第 12 条の5の規定に基づく地区整備計画で、建築物の高さの最高限度等が定められてい る 区域(法第 68 条の2第1項の規定に基づく条例で、建築物の高さの最高限度等の制限が定 められている区域に限る。)内にある建築物」と定められているため、建築物の高さの最高限度を定 めている地区計画の区域47のうち、条例で高さの最高限度の制限を定めているものに限定した上
42 容積移転市場が発達した場合、いったん容積を他の敷地に移転しても、その後自らの敷地において高容積で開発しようとする 場合に、余剰容積がある他の敷地からさらに容積移転を受けて建てることが可能となる。
43 敷地内に複数の建物が存在する場合は、全ての建物が築年数が浅い(木造の場合2006年以降、非木造の場合1996年以 降)の場合のみ容積の移転元と想定とした。これは、古い建物の建て替えとともに同敷地内の他の建物も建替えられる可能性が あるという判断に基づくが、これにより移転元が過少に推計されている可能性がある。
44 容積充足率については、25%以下、50%以下、75%以下の3パターンで分析してみたが、算出した余剰容積量に大きな違い が見られなかったため、余剰容積量を過大に推計しすぎないことを優先して充足率25%以下とした。
45 国指定文化財等データベース(文化庁HP)より緯度経度情報を得て、建物GISデータと照合した。
46 東京都HPに掲載されている対象歴史的建造物の住所をアドレスマッチングすることにより、建物GISデータと照合した。建 物GISデータと重ならない場合は、地図を元に手作業で特定した。
47 一部の地区計画においては、区域の一部のみに高さの最高限度を設定している場合があるが、東京都都市計画地理情報シ
で、5.2.3でも対象となる敷地に限定した。
「社会教育施設、文化施設」については、建物